著者
堀田 弥生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.452-457, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)

災害において情報の入手は我が身を守ることに直結する。本稿では事前の備えが有効な洪水災害を中心に,有用な情報の入手や活用例について取り上げる。ハザードマップや,災害リスクを読み取ることができる地理院地図,今昔マップon the webなどを紹介し,水害リスクの高い土地の実例として東京東部を挙げ,災害リスク,広域ハザードマップ,積極的なリスク情報の公開,過去の大水害と認知度の低さなど,水害リスクと共生する自治体の姿を示す。また,令和元年東日本台風を例に防災情報の課題に言及し,事前の備えとして有益なタイムラインや防災教育サイトを紹介する。
著者
小豆川 裕子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.447-451, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)

本稿は,非常時に業務を継続させるためのテレワークの有効性に着目し,導入にあたっての留意点について,概説を行う。コロナ禍前では,テレワークの導入・普及のスピードは緩やかで,政府が設定したKPIにはかなり隔たりがあったが,新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて,一気に導入・普及が進んだ。テレワークの導入・普及にはICT環境とICT以外の環境整備が必要で,総合的に検討することが求められる。今後は,メリット・デメリット,課題解決策を相互に共有して学習し,さらなる改善・革新を行っていくことが求められる。
著者
林 秀弥
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.440-446, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)

2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震,2019年の台風19号等では,従来の行政主導・中央集権型のトップダウンの公助による災害対策の限界が強く指摘されている。また,戦後の災害対策は,ダムや堤防といったハードの整備に重点が置かれてきたが,公助の限界を踏まえ,住民自身による自助やコミュニティ内の助け合いである共助を組み合わせた災害対策が求められている。そこで,災害対策基本法で規定された地区防災計画制度によるICTを活用した住民主体の自助・共助によるコミュニティ防災の強化策について,法律学の観点から社会実装のための考察を行う。具体的には,過去の先行研究を踏まえつつ,ICTを活用した防災・減災の強化の在り方について提言を行う。
著者
光森 奈美子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.439, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)

2020年9月号の特集は「災害に備える」です。近年,豪雨や地震など大規模な災害が立て続けに発生しました。2018年の西日本豪雨,大阪北部地震,北海道胆振東部地震,2019年の台風15号と台風19号による被害は記憶に新しいかと思います。2020年7月にも各地で豪雨災害が起こりました。また「コロナ禍」と称されるように,新型コロナウィルスの感染拡大を受けた一連の状況も災害ととらえることができます。こうした災害時・非常時であっても,あるいは災害時・非常時にこそ情報は必要とされています。利用者の情報要求に応えるためには,資料を守るだけではなく,資料へのアクセスを確保しつつ,可能な範囲で業務を続けることも必要です。そこで今回の特集では,事業継続も含めた災害への事前の備えに焦点を当てました。まず,名古屋大学 林秀弥氏には,防災・減災のための地区防災計画や事業継続計画(BCP)について,ICTの活用を交えつつ論じていただきました。常葉大学 小豆川裕子氏には,業務を続けるためのテレワーク環境整備についてご紹介いただきました。これらを合わせてお読みいただくことで,平時から備えるべきポイントや環境整備について知ることができます。次に,防災専門図書館 堀田弥生氏には,災害情報の入手方法や活用例をご紹介いただきました。東北大学 柴山明寛氏には,様々な自然災害デジタルアーカイブとその活用方法についてご紹介いただきました。自然災害に備えるために必要な情報を,どこから入手し,どのように活用できるのかという点について,2つの記事を参考にしていただければと思います。最後に,今般のコロナ禍においては図書館の休館・利用制限が相次ぎました。資料へのアクセスに困難が生じる一方,様々な形で有料コンテンツの無償公開も行われました。北海道大学附属図書館 山形知実氏には,非常時であっても資料へのアクセスを確保するという側面から,オープンアクセスについて論じていただきました。9月は防災月間です。災害への備えに,本特集を役立てていただければ幸いです。(会誌編集担当委員:光森奈美子(主査),海老澤直美,當舎夕希子,南山泰之)
著者
田邊 稔 山田 雅子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.257-264, 2005
参考文献数
20
被引用文献数
1

外国雑誌における電子化の動きは年々加速しており, 大学図書館では煩雑な管理を強いられている。慶應義塾大学においても, ここ数年で電子ジャーナルを取り巻く環境が急激に変わってきている。また, 利用者から見ても, 利用形態が多岐に渡っていることや, オフキャンパスからのアクセス制限など不便を感じている。このような変化を受け, 慶應義塾大学において, 電子ジャーナル管理の現場担当がどのように取り組んでいるか, 今後どのようなシステムモデルを描いているかを示した上で, さらにアクセス管理の現状と展望について言及する。
著者
今野 穂
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.166-171, 2006-04

札幌医科大学総合情報センターは2006年4月,附属図書館と附属情報センターの統廃合により新設された組織である。当センターは北海道立の機関の使命として学内所属員はもとより,北海道内に在住する地域医療従事者の学術コミュニケーション活動を支援することを目的としている。目的達成のために当センターが取り組む事業は,医学医療情報発信のための学内ネットワークなどのインフラ整備や学術コンテンツシステムの整備をはじめさまざまなものがあるが,学術コミュニケーションの推進の点において特に旧附属図書館が実施してきた文献情報提供支援を重要な事業として位置付けている。本稿では当センターが実施する文献情報提供による地域医療従事者サービスについて学術ポータルシステムPIRKAの概要を交え,報告するとともに,今後の文献情報提供支援の推進において当センターが取り組むべき課題について述べることとする。
著者
今満 亨崇
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.391, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

本特集ではRDF(Resource Description Framework)/SPARQL(SPARQL Protocol and RDF Query Language)による検索と可視化について特集しますが,特集の紹介をする前にまず弊誌がこれまでRDF/SPARQLについてどのような特集記事を掲載してきたか振り返ってみたいと思います。RDFについては当初から扱っており,1999年には当時W3Cにて検討中だったRDFについて,Dublin Coreのメタデータ記述と関連付けて紹介しています1)。時代が進むにつれ,身近なシステムがRDFデータを提供する動きが出てきました。2014年の特集「Web API活用術」2)ではCiNiiにおけるRDFデータの提供やその活用事例を紹介する記事を掲載しています。システム側での提供が増えると,それを利活用する動きも活発となり,2017年の特集「つながるデータ」では古崎晃司氏がLOD(Linked Open Data)活用コミュニティの取り組みの中でRDFにも言及していたり3),神崎正英氏の記事ではIIIF(International Image Interoperability Framework)のデータ構造がRDFでモデル化されていること等が紹介されています4)。ここに挙げたものに限らず,RDFについてはこれまで様々な記事を掲載してまいりました。一方SPARQLについてはどうでしょうか。2011年頃から言及する記事自体は複数掲載していますが,その利用方法などについて具体的に言及しているのは神崎正英氏ら5)の記事や,古崎晃司氏の記事6)に留まります。近年ではWeb UIでSPARQLの入力を受け付けるサービスも増えつつあり,インフォプロがRDF/SPARQLを利用する機運が高まっています。そこで本特集ではインフォプロが主体的にRDFデータを収集・利活用することを想定しました。まずはライフサイエンス統合データベースセンターの山本泰智氏にRDF/SPARQLの概要を非常に分かりやすくまとめて頂きました。次に,ゼノン・リミテッド・パートナーズの神崎正英氏に,様々なWebサービスにおけるSPARQLでの検索クエリ,及び得られるRDFデータについて概観して頂きました。個々のWebサービスからデータを得られるようになった次のステップとして,大阪電気通信大学の古崎晃司氏には得られるデータをいかにしてつなげるか,その作成方法についてご解説頂きました。ところでRDF/SPARQLはその性質上,複数ソースのデータをつなげて大規模なデータセットを作成することが可能ですが,そのままでは役に立ちません。可視化することの重要性について,コミュニケーションの媒介としての観点からノーテーションの矢崎裕一氏にご解説いただきました。最後は多摩美術大学の久保田晃弘氏に,可視化された複雑なデータの分類について人間の認知と関連付けてご紹介頂くとともに,大量かつ複雑で一貫性に欠ける現実の情報の世界にシステム的な共通の枠組みを適用する方法として圏的データベースをご紹介頂きました。最近はデータ駆動型社会の到来などと言われております。インフォプロがそのような社会を生き抜くための資料として,本特集をご活用いただけますと幸いです。(会誌編集担当委員:今満亨崇(主査),炭山宜也,野村紀匡,海老澤直美,水野澄子)参考文献1) 杉本重雄.〈特集〉メタデータ:メタデータについて:Dublin Coreを中心として.1999,vol.49,no.1,p.3-10.2) 情報科学技術協会.情報の科学と技術64巻5号.2014.3) 古崎晃司.〈特集〉つながるデータ:コミュニティ活動を通したLOD活用の“つながり” -LODハッカソン関西を例として-.2017,vol.67.no.12,p.633-638.4) 神崎正英.〈特集〉つながるデータ:リンクの機能を柔軟に生かすデータのウェブ.2017,vol.67,no.12,p.622-627.5) 神崎正英,佐藤良.〈特集〉典拠・識別子の可能性:ウェブ・オントロジーとの関わりの中で:国立国会図書館の典拠データ提供におけるセマンティックウェブ対応について.2011,vol.61,no.11,p.453-459.6) 古崎晃司.〈特集〉ウェブを基盤とした社会:ウェブの情報資源活用のための技術:ナレッジグラフとしてのLOD活用.2020,vol.70,no.6,p.303-308.
著者
棚橋 佳子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.344-348, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

機械学習や深層学習等のAI技術を取り入れて,データベース提供サービスを充実させることは,コンテンツ業界において,スタンダードになりつつある。本稿ではAI技術が高品質のコンテンツと融合することで見られる変化を,コンテンツ・プロバイダーの立場から考察する。ユーザの関わりや観点からAI技術とコンテンツの融合がもたらすインパクトを3つのパターンに分けた:1)製品やサービスの中にAI技術を組み込むことによる“製品+AI技術組み込み型”,2)コンテンツの製作過程にAI技術を組み込む“AI技術間接享受型”,3)ユーザとコンテンツ・プロバイダーが協働でAI技術を駆使し業務改善を実現する“AI駆動・個別構築型”。本稿では,これらの事例を概観する。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.335, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

知的財産管理が求められる業務は,事業戦略,情報分析,価値評価,発明・創造支援,ブランド・デザイン,デューデリジェンス,契約,リスクマネジメントなど様々です。こうした業務は,それぞれの専門家が様々に連携し合い,協働しながら進めてきました。一方,近年のIT技術の進展は,AI,RPA,IoTなどを駆使したより高度な情報化社会を生み出し,知的財産の分野ではIPランドスケープという言葉も頻繁に聞かれるようになってきました。こうしたいわばAI時代において,インフォプロの今後はどうなるのでしょうか。本特集号では,「知財活動に従事するインフォプロとしての心構え」,そして近年注目されている「IPランドスケープ」について解説された今年1月の新春セミナー「情報調査・分析およびインフォプロの今後」を軸に,知財情報の調査・分析業務の効率化,ツールとの協働・共創,インフォプロが吸収・成長すべきこと,身に着けたほうが良いスキル・知識・経験など,各国の状況や知財AI活動,学術文献調査の実態も含めて,各分野で最も輝いている専門家に執筆をお願いしました。はじめに,野崎篤志氏(株式会社イーパテント)の今年1月の新春セミナー「情報調査・分析およびインフォプロの今後」を,録音とプレゼン資料を基に再現しました。これを受けて,棚橋佳子氏(クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社)には,コンテンツ・プロバイダーとしてのお立場から,特許のみではなく学術文献についても含めて,今後のデータベースはAIの発展とともにどのように変化していくのかについて解説いただきました。平尾啓氏(アイ・ピー・ファイン株式会社)には,知財AI活用研究会の研究事例についてご紹介いただき,AIの具体的な知財活動への活用について解説いただきました。酒井美里氏(スマートワークス株式会社)には,「AIとの付き合い方」という視点で,各国のAI活用状況を紹介いただきながら,サーチャ-がAIと向き合うための心構えについて解説頂きました。つづいて桐山勉氏(はやぶさ国際特許事務所)に,IPランドスケープと各種AIを駆使してC-Suiteを説得できる,将来のインフォプロ像について提言いただきました。最後に,和田玲子,中村栄両氏(旭化成株式会社)に,企業におけるIPランドスケープの取り組みについて,自社の戦略的な知財情報活動を振り返りつつご紹介いただき,インフォプロが吸収すべきこと,身に着けたほうが良いスキル・知識・経験などについて,人材育成の立場からもまとめていただきました。今回の特集は,AI情報検索の分類からその活用,インフォプロのAIへの向き合い方,そして未来のインフォプロ像と人材育成までを盛り込みました。是非皆様の知的財産業務にお役立ていただけたらと存じます。PD委員会(佐藤秀顕,大島優香,桐山 勉,江口佳人)知財担当理事(屋ヶ田和彦)