著者
壷阪 龍哉
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.66, pp.12-18, 2014-03-15

どのような記録を残し、後世の人々がこれらを利用して過去の事実を検証し、将来の動向を予想することができるだろうか。このテーマと取り組むには、アーカイブズの役割をさまざまな角度から議論を深め、広く社会的認知を高めることが前提となろう。しかしながら、我が国は、アーカイブズあるいは記録管理の分野において、後発の発展途上国と評価されている。そこで、現用、半現用文書の改善整備活動に携わってきたコンサルタントの視点から、非現用文書(古文書)の評価選別、安全な保存・保護、公開利用、そして専門職養成と働く場の確保など、現状および問題点を明らかにし、アーカイブズの未来のために役立つ提言をする。
著者
高山 正也
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.66, pp.4-11, 2014-03-15

著者は2006年4月から理事として、2009年7月から館長として勤めていた(独)国立公文書館を2013年5月で、退職した。国立公文書館在職中に課せられた主な使命は、主要諸外国に比較し、異常に小規模で低水準の国立公文書館の水準を向上させるべく、関連法令の制定、施行に始まり、末端行政組織と化した国立公文書館の活性化とそれを公文書館本来のアーカイブズ専門業務担当組織に変質させることにあった。しかし、長い伝統の下で硬直化した公文書館のような公的な組織の変革は著者のごとき理屈だけを、公文書館同様日陰の存在になっている図書館を対象とした経験しかない者の手には余るものであった。その様子が法律の制定、公文書館業務の実態等を経営の要素としての、ヒト、カネ、資料等の扱いといった具体例に触れて記述される。結局、日本における国際標準から外れた公文書類の扱いは公的組織の奥深くまで浸透しており、今後息の長い取り組みが必要との結論が述べられる。
著者
橋本 陽
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.66, pp.42-56, 2014-03-15

本稿は、個人文書の編成を論じるものである。編成はISAD(G)などのある記述とは反対に標準が未だ決定されていない。その上、個人文書やマニュスクリプトは、組織のアーカイブズとは異なり、多くの場合において出所及び原秩序の尊重の原則が適用できず、編成は非常に困難である。本稿の狙いは、このような大きな問題を解決するために貢献し得る一事例を提示することにある。本稿は法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズが所蔵するサリドマイド関連資料を素材として、その特質を丹念に調べ、日本と英語圈における編成の方法論を検討し適応可能なモデルを探した。最終的には、これらの方法論を組み合わせ新しい編成の方法論を作り上げ、それをサリドマイド関連資料に適応することで、資料を編成することが可能となった。ここで示した方法論は、同種のマニュスクリプトや個人文書を編成するための一つの道標となるはずである。
著者
嶋田 典人
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.66, pp.19-41, 2014-03-15

国の公文書管理法に基づき各地方自治体でも公文書管理条例が制定されている。また、公文書館の設置も進みつつある。それら動向は古文書等の「収集アーカイブズ」よりも公文書の「組織内アーカイブズ」が中心である。そこで「収集アーカイブズ」を中心にアーカイブズの現状と課題、望ましい方向性について述べる。そして、現実的な「収集アーカイブズ」の積極的・戦略的保存と利活用の方策について提言したい。
著者
壷阪 龍哉
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.66, pp.12-18, 2014-03-15

どのような記録を残し、後世の人々がこれらを利用して過去の事実を検証し、将来の動向を予想することができるだろうか。このテーマと取り組むには、アーカイブズの役割をさまざまな角度から議論を深め、広く社会的認知を高めることが前提となろう。しかしながら、我が国は、アーカイブズあるいは記録管理の分野において、後発の発展途上国と評価されている。そこで、現用、半現用文書の改善整備活動に携わってきたコンサルタントの視点から、非現用文書(古文書)の評価選別、安全な保存・保護、公開利用、そして専門職養成と働く場の確保など、現状および問題点を明らかにし、アーカイブズの未来のために役立つ提言をする。
著者
高山 正也
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.66, pp.4-11, 2014-03-15

著者は2006年4月から理事として、2009年7月から館長として勤めていた(独)国立公文書館を2013年5月で、退職した。国立公文書館在職中に課せられた主な使命は、主要諸外国に比較し、異常に小規模で低水準の国立公文書館の水準を向上させるべく、関連法令の制定、施行に始まり、末端行政組織と化した国立公文書館の活性化とそれを公文書館本来のアーカイブズ専門業務担当組織に変質させることにあった。しかし、長い伝統の下で硬直化した公文書館のような公的な組織の変革は著者のごとき理屈だけを、公文書館同様日陰の存在になっている図書館を対象とした経験しかない者の手には余るものであった。その様子が法律の制定、公文書館業務の実態等を経営の要素としての、ヒト、カネ、資料等の扱いといった具体例に触れて記述される。結局、日本における国際標準から外れた公文書類の扱いは公的組織の奥深くまで浸透しており、今後息の長い取り組みが必要との結論が述べられる。
著者
平井 孝典
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.30-47, 2013-11-30

フィンランドのアーカイブズの文化あるいは制度は、1809年9月17日にスウェーデンとロシアとで締結されたフレデリクスハムン講和条約の結果としてフィンランドが大公国となったときに始まったと言われている。実際には、中世以来、多数の「地方アーカイブズ」が発展してきた。本稿では、その条約、ストックホルムからオーボへのドキュメントの移送、1816年の議会公文書館成立などを扱う。
著者
西川 康男
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.144-148, 2013-11-30

This report briefly summarizes background information and major topics in preparation and results of the Record Managements and Archives Annual Convention (Japan) held in Tokyo in September 2013. This report is only prepared by an individual committee member with his experience and impression. This is not an official report of the event.
著者
元 ナミ
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.79-99, 2013-11-30

近年、記録管理の重要性が社会的に大きな反響を及ぼしている中、日本では2011年4月から「公文書等の管理に関する法律」が施行され、国の行政機関や独立行政法人等において公文書管理が規定された。この法律により、地方の公文書管理について努力義務が規定された。しかし、公文書館運営については、地方によってその設立背景や経緯、根拠となる法律、管理・運営主体、主に受け入れる資料などが異なる場合が多く、法律的な設置義務も定められていない。地方自治体ごとに公文書館が設立されている状況でもないため、地方の公文書や歴史資料の保存は将来を保障できないといえる。そこで地方自治体に「記録館(Records Center)」が定着していく韓国における公文書管理と地方公文書館の設立・運営の現状と事例を紹介し、そのうえ日本の地方公文書館の現状と比べながら、両国の地方公文書館設置・運営の持続的な発展を図るための望ましいあり方を探る。
著者
佐々木 和子 水本 有香 小川 千代子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.134-143, 2013-11-30

2011年3月11日におこった東日本大震災では、文化庁は文化財レスキュー事業を立ち上げた。歴史資料ネットワーク(神戸)は、宮城資料ネットとともにその事業に加わり、地域の「記録」の救出をおこなった。救出対象となった「文化財」の範囲は、非常に幅広く、いわゆる「文化財」「美術工芸品」だけでなく、通常「文化財」と認識されていないものも救出した。そこには被災行政文書も含まれた。宮城資料ネットは、津波被災地をまわり、90件の緊急資料救出活動を実施した。そのうち、67件を仙台市に搬送し、ボランティアの手で応急処置を施している。神戸大学は、阪神・淡路大震災での救出された資料がその後どうなっているかの調査をおこなった。その結果、すべての資料の保存先と、約80%の資料の目録作成がおこなわれていることが判明した。中越地震の後では、資料ボランティアの仕事の細分化をおこなったことにより、東日本大震災では、多くのボランティアの参加が可能となった。
著者
石井 幸雄 浜田 行弘 菅 真城 松岡 美佳
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.109-133, 2013-11-30

多くの大学が改革を加速させている。社会からの要請、18歳人口の減少、法令改正など外部環境の変化に的確に対応することは、大学が生き残る上で不可欠だからである。大学があるべき姿を実現するために、どのような戦略をたて、ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源をどのように管理していくのかが喫緊の課題だと認識している。本稿では、大学の事務組織の業務を対象として、私物化意識の排除、事務の効率化支援、意思決定の最適化支援の観点から文書管理について考察する。大学認証評価制度の観点から内部質保証に資するための情報共有について言及し、「文書管理は大学経営の基盤である」という仮説の検証を試みる。
著者
上田 雄太
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.100-108, 2013-11-30

情報リテラシー教育の目的は、「情報の収集・分析・発信までを総合的に学ぶ」ことである。その為には、IT機器の使い方やインターネットの活用方法だけではなく、アーカイブや図書館の活用方法についても学ばなければならない。図書館と情報リテラシー教育の連携は、既に行なわれているものの、アーカイブと情報リテラシー教育の連携は、まだ行なわれていない。一方で、アーカイブは、社会科や総合的な学習の時間との連携を深め、授業への支援を行っている。そこで本稿では、情報リテラシー教育とアーカイブの連携の可能性について考え、高等学校の情報リテラシー教育におけるアーカイブ活用教育の必要性とその導入案を提案する。
著者
小形 美樹
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.65, pp.65-78, 2013-11-30

学業も職務も全うする際の拠り所となるのは文書(記録)であるが、これらを適切に管理することについては、昨今、注目されているキャリア教育や職業教育でも、さほど扱われることはなく、学生が文書管理の意義や方法について学ぶ機会はほとんどない。そこで、本研究では、文書管理に関する講義を受講した大学生を対象に行ったファイリングに関するアンケート調査の結果から、学生の文書管理の現状と意識について報告する。