著者
平井 孝典
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.50-70, 2014

本稿では、19世紀初期の「アーキビスト」アルヴィドソンやグロンブロードらの情報アクセス環境を整える活動をとりあげる。次の内容が扱われる。最初に、いかにアーキビストや図書館員がフィンランド及びスウェーデンの公文書を持ち得たか。第二に、フィンランド人アーキビストはどのようなアーカイブズの知識をスウェーデンで学んだか。第三に、どのようにアルヴィドソンはフィンランドに関係のあるアーカイブズ資料について考えていたのか。第四に、いかにグロンブロードは、人々がフィンランド研究を進めるよう、アーカイブズ資料を扱ったのか。最後に、上述したことと関連し、私たちはどのようなフィンランド関係のアーカイブズ資料にインターネットを通じアクセスしうるのか。
著者
森 顕登
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.63-79, 2015

戸籍制度は親族関係を公証する国民登録制度であるが、この制度のもとに作成される戸籍は災害のたびに存在の危機にさらされてきた重要文書の一つである。昨今の例では2011年の東日本大震災で4つの自治体の戸籍正本が滅失しているが、先の大戦でも空襲によって戸籍を滅失させた自治体が相次いだ。例えば旧東京市部では7区の戸籍が被害を受け、そのうち3区はそのすべてを滅失している。来たるべき空襲に備えて戸籍はどのように管理されていたのか。そして、滅失した戸籍はいかにして再製が図られたのか。この二つの問いの答えを得るべく、法務省民事局編『民事月報』26巻2号(1971年刊)に掲載された戸籍実務家による座談会を分析する。
著者
嶋田 典人
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 = Records management : journal of the Records Management Society of Japan (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.70, pp.37-56, 2016-03

本稿は、公文書と地域資料双方を保存・利活用する意義、適切な保存と利活用促進の必要性について考察するものである。香川県旧本島村製錬所設置計画に関する公文書は、100年前に作成された。この公文書は、議事録と契約書である。中でも「意思決定過程」を表す公文書の保存・利活用する意義を考察する。公文書等の管理に関する法律の第4条は、文書作成時の「意思決定過程」を規定している。製錬所設置計画を巡る記録には地域資料もある。地域資料は、民間所在資料と新聞資料を扱う。民間所在資料からは、住民による反対運動の実態がわかる。
著者
金 甫榮
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.70, pp.15-36, 2016-03-25

本稿では、ビジネス・アーカイブズの保存・利用について長年にわたり国を挙げ戦略的に取り組んで来たイギリスの先進事例から、その歴史的背景を含め基本理念と具体的な実践スキームについて紹介する。そして、現在までの日本のビジネス・アーカイブズの状況を整理しつつ、ビジネス・アーカイブズのとらえ方、実践面でどのような課題があるかを明らかにする。その上で、イギリスのビジネス・アーカイブズのための戦略を評価軸にして、日本におけるビジネス・アーカイブズの将来像を意識しつつ、その発展に資する戦略や方法について検討する。具体的には、ビジネス・アーカイブズの連携及び統合化のための共有プラットフォームとも言える「全国ビジネス・アーカイブズ登録簿」の構築を提案すると共に帝国データバンク史料館を例にあげ、有効な登録簿の構築方法を具体的に示す。
著者
小川 千代子
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.70, pp.3-14, 2016-03-25

2015年3月15-16日、当時の記録管理学会理事会メンバーによるブレーンストーミングを行った。記録管理学の体系化をめざし、記録管理学会の将来像を描きたいというのが、その企画の根底にあった。以下はその成果報告書である。主な報告内容は、記録管理学とは(1.)、記録管理法制度(2.)、記録管理の実務と実業(3.、4.)、記録管理の道程(5,)、記録管理と社会(6.)、多用な記録管理(7.)にまとめ、執筆者は末尾に掲げた。
著者
清水 惠枝
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.54, pp.30-40, 2007-12-25

これまで公文書館の設置は、歴史資料保存運動や自治体史編纂事業と関連付けられ、資料保存に力点をおいて進められてきた。このことから公文書館の性格は文化的側面が強調されてきた傾向がある。しかし、近年では社会の変容とともに、公文書館が担う役割に変化が生じ、公文書館の趣旨に行政的な側面が表れるようになった。そのような傾向であるにもかかわらず、公文書館の組織における権限や位置付けは弱く、業務基盤が貧弱である。非現用の文書を扱う公文書館が行政的な役割を担うには、自治体と公文書館で同一の情報資源を扱うことを考慮した業務が図られなければならない。公文書館が行政情報を着実に蓄積して恒久的にそれを提供することにより、住民の行政参画が促進され、より民主的な自治運営が期待される。
著者
橋本 陽
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.66, pp.42-56, 2014-03-15

本稿は、個人文書の編成を論じるものである。編成はISAD(G)などのある記述とは反対に標準が未だ決定されていない。その上、個人文書やマニュスクリプトは、組織のアーカイブズとは異なり、多くの場合において出所及び原秩序の尊重の原則が適用できず、編成は非常に困難である。本稿の狙いは、このような大きな問題を解決するために貢献し得る一事例を提示することにある。本稿は法政大学大原社会問題研究所環境アーカイブズが所蔵するサリドマイド関連資料を素材として、その特質を丹念に調べ、日本と英語圈における編成の方法論を検討し適応可能なモデルを探した。最終的には、これらの方法論を組み合わせ新しい編成の方法論を作り上げ、それをサリドマイド関連資料に適応することで、資料を編成することが可能となった。ここで示した方法論は、同種のマニュスクリプトや個人文書を編成するための一つの道標となるはずである。
著者
嶋田 典人
出版者
記録管理学会
雑誌
レコード・マネジメント : 記録管理学会誌 (ISSN:09154787)
巻号頁・発行日
no.66, pp.19-41, 2014-03-15

国の公文書管理法に基づき各地方自治体でも公文書管理条例が制定されている。また、公文書館の設置も進みつつある。それら動向は古文書等の「収集アーカイブズ」よりも公文書の「組織内アーカイブズ」が中心である。そこで「収集アーカイブズ」を中心にアーカイブズの現状と課題、望ましい方向性について述べる。そして、現実的な「収集アーカイブズ」の積極的・戦略的保存と利活用の方策について提言したい。