著者
渡久山 清美 渡久山 幸功 Tokuyama Kiyomi Maedomari Kiyomi Tokuyama Yukinori
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.29, pp.153-187, 2013-03

This paper explores the potential of ecological feminism (ecofeminism) to transcend patriarchal societies, which promote capitalistic development,and to construct an alternative society with ecologically sustainable development. Feminism has a great potential since it has multiple branches such as Marxist feminism,Socialist feminism,Cultural feminism,Radical feminism and so on. Among these branches,ecofeminism has been severely criticized by other feminist branches that have reproached it for regarding motherhood that some ecofeminists affirm as"essential."Particularly,this is the case with Japan where ecofeminism sank into oblivion while ecofeminism in the Western and developing countries has persisted even under biting criticism. This paper analyzes women soldiers in Hollywood films to prove both war and military institutions to be the epitome of patriarchy in which women's human rights and environment have been oppressed and violated in order for men to maintain masculine power and wealth. Our argument concludes that ecofeminism maintains the potential of rectifying every kind of discrimination by subverting patriarchal capitalist system when other feminist groups start cooperating with ecofeminist activists.正誤表有
著者
西本 裕輝 Nishimoto Hiroki
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.19, pp.67-82, 2007-03

全国的に少人数学級化の動きが加速している。それは学級規模が小さければ小さいほど教育効果は高まるとする仮説に基づいていると言える。しかしながら、こうした仮説を支持する研究データはほとんどない。そうしたことから本研究では校長・教員を対象とした全国調査の結果から、学級規模と教育効果の関係について検討を行った。分析から、学級規模が小さくなるほど教育効果は高まるという結果が得られた。これは校長調査の結果も教員調査の結果も同様である。このことから、少なくとも校長や教員の意識の上では、少人数教育の効果はあると結論づけることができる。ただし、この結果からただちに「少人数学級化によって教育効果は高まる」「学級規模が小さいほど教育効果は高まる」と結論づけるわけにはいかない。今後行う児童生徒調査の結果も踏まえて、慎重に結論を出す必要がある。
著者
武井 弘一 Takei Koichi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.27, pp.181-204, 2012-03

享保の改革では、享保7年(1722)に、いわゆる新田高札を立てることで、商人資本をもとに新田開発が進められたと考えられている。その実態を確かめるべく、琵琶湖、青野原・蜷子野新田、猪名川・藻川という3か所の動向をとらえた。その結果、新田高札でもって有力商人の協力をうながしたというのは誤りであることが判明した。すなわち、享保7年に幕府は新田高札を立てて新田開発を奨励したが、商人資本の開発そのものは幕府が問題ないと判断した場合のみに許されたのである。ところが、開発を奨励しても、耕地化しやすい低地の開発はピークに達しつつあり、利水・治水などの水問題を解決できないことも相俟って、耕地はあまり増加しなかった。未公開:論文中の〔図〕酒井村絵図は著作者の意向により削除
著者
田中 寛二 Tanaka Kanji
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.10, pp.71-95, 2002-09

本研究では,大学生の大学構内と公道における交通行動を規定する要因を明らかにするために,大学生281人を対象とした信号無視,駐車違反,スピード違反,飲酒運転,及び危険運転の目撃,許容,行動に関する調査を行った。その結果から以下のことが明らかにされた。①各種の違反行為に対する許容と行動の各得点は低く,許容的でも,頻繁に行動するものでもないことが示された。②大学構内では各種の違反に対する許容性が公道よりも高いが,駐車違反と飲酒運転では公道にいて,信号無視とスピード違反については大学構内の方が高いことが示めされ,違反の内容によって行われやすい状況に差があることが示唆された。③行動と関連する要因として,大学構内では,概して目撃と許容が関連しているが,公道では必ずしもそのような一貫した傾向は認められなかった。すなわち,大学構内では目撃によって各種の違反行為が比較的直接的に誘発される可能性が高いことが示唆された。
著者
山里 純一 Yamazato Junichi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 = Human Science (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.31, pp.145-192, 2014-03

琉球諸島の民話には星を題材としたものが多い。その中には「天人女房」のように、中国や日本本土の影響を受けたものもあれば、琉球諸島独自の星や星座の由来譚、または季節や物事のたとえとして語られ、伝承されたものも少なくない。こうした多様な民話を生み出した背景には、星や星座の運行を観察することによって時節や気象を知り、農業や航海の目安とした琉球諸島の人々の暮らしがあった。
著者
山里 純一 Yamazato Junichi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.28, pp.1-55, 2012-09

久米島出身の吉浜智改は、朝鮮の通書『諺文家庭宝鑑』に記された「土亭行年法」という占いテキストを自ら琉球語による解説を施し、運勢判断に利用していた。『行年運琉訳』と名づけられたその資料は、朝鮮語によって書かれた「土亭行年法」の単なる翻訳本ではない。そこには当時の沖縄の風習や、筆者自身巧みな言語表現がみられる。また沖縄における朝鮮の占い文化受容の実態を知る上でも興味深い資料である。
著者
稲村 務 Inamura Tsutomu
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.23, pp.35-80, 2009-03

本稿はC・ギアツの解釈人類学的理論を沖縄の大学生向けに解説するための教育的エッセイである。ギアツの解釈人類学は今日の文化人類学において様々なパラダイムの基礎と考えられるものであり、是非理解しておくべきものである。本稿ではゼンザイ、桜、ブッソウゲ、雲南百薬、ニコニコライス、墓、巫者といった沖縄・奄美の身近な事例を検討することでその理論を理解させる目的をもっている。
著者
高良 美樹 金城 亮 Takara Miki Kinjo Akira
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.8, pp.39-57, 2001-09

本研究では、職業レディネスおよび進路選択に対する自己効力感を指標として、インターンシップ(職場実習)の前後における大学生の就業意識の変化に焦点をあてた検討をおこなった。沖縄県内の3大学に通う文系の3年次学生398名(男子217名、女子181名)を対象に調査を実施した。職業レディネス21項目および進路選択に対する自己効力感30項目の各合計得点を従属変数として、インターンシップのタイプ(実務型・専門教育型・実習なし)×調査時期(実習前・後)の2要因混合計画による分散分析をおこなった結果、両得点ともに有意な効果は認められなかった。一方、インターンシップ経験に対する全般的満足度が高い群では、低い群に比べて事後調査における両得点が有意に高くなっており、インターンシップ・プログラムへの関与や満足が、職業レディネスや進路選択に対する自己効力感に促進的な影響を与えていることが示唆された。
著者
稲村 務 Inamura Tsutomu
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 = Human sciences : bulletin of the Faculty of Law and Letters, University of the Ryukyus, Department of Human Sciences (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.36, pp.105-144, 2017-03

Kunio Yanagita considered "les traditions popularies" as his main research interest. At the global intellectual framework,including the ABS (Access to Genetic Resources and Benefit Sharing), there has been increasing pressure to separate the concept of folklore and traditional knowledge. Nihon minzokugaku is not a folklore studies of Jap an. It is necessary to repositioning it as a science of traditional knowledge.
著者
吉満 昭宏 浜崎 盛康 Yoshimitsu Akihiro Hamasaki Moriyasu
出版者
琉球大学人文社会学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学人文社会学部人間社会学科紀要 = Human sciences : bulletin of Faculty of Humanities and Social Sciences, University of the Ryukyus, Department of Sociology and Human Sciences (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.39, pp.59-92, 2019-03

本論文では、クリティカル・シンキングが「道理性」を旨とし、「最適解」の主要なオルガノンであることを論じる。まずはアリストテレスまで遡り、 道理性の起源を探ってみる(第1節)。次に、現在の哲学系クリティカル・ シンキングについての概要を与え(第2節)、これを道理性の概念と結び付 けて論じる(第3節)。更に、最適解とその導出について論じ(第4節)、 この技法をクリティカル・シンキングと教育(いわゆる「新しい能力」)と に結び付けて論じる(第 5・6 節)。最後に、以上を踏まえて、今後の課題 を提示する。
著者
西本 裕輝 Nishimoto Hiroki
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.2, pp.61-76, 1998-09

本研究は、家庭環境と進路選択の関連を検討することを通して、学校の持つ再生産機能を浮き彫りにすることを目的とする。沖縄の高校生を対象とした計4回にわたる調査で得られたデータを分析した結果、主に次のことが明らかになった。(1)家庭環境と進路選択は大きく関連しており、格差が存在する。(2)その格差は学校により平準化されるどころか、より広げられている上の(1)は重回帰分析の結果、家庭環境から進路選択への直接効果が見出されたことによる。また(2)は、パス解析で家庭環境から進路選択への直接効果「家庭環境→進路選択」と、家庭環境から学校を媒体として進路選択に影響を与える間接効果「家庭環境→学校→進路選択」の双方が見出されたことによる。いずれにせよ、こうした結果が見出されるのは明らかに「学校による教育の平等化」の失敗であり、近年他県、あるいは欧米において指摘されてきている問題である。さらに沖縄の場合は経済的格差とあいまって、状況はより深刻と言える。
著者
津波 高志 Tsuha Takashi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.23, pp.3-34, 2009-03
被引用文献数
1

本論文では、奄美・沖縄において火葬の導入に伴って葬祭業者が関与し、葬送儀礼の外部化が起きたとする説を奄美で検証するために1村落の事例を記述した。また、近代初頭あたりまで遡って見れば、奄美における葬送儀礼の外部化は2度あったことを明らかにした。その2度の外部化を1村落の事例に読み取りつつ、琉球弧の文化の研究において、こと奄美に関しては薩摩・鹿児島の影響を十分に考慮する必要があり、葬送儀礼の外部化もその例外ではないことを指摘した。
著者
宮城 徹 Miyagi Toru
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 = Human Science (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.37, pp.71-101, 2017-09

10世紀後期の修道院復興期において、イングランド東部のイースト・アングリア周辺には多数の修道院が復興・創設された。本稿では、その中からソーニー修道院を考察の対象に取り上げ、創設以後11世紀後期に至るまでの所領形成のための土地集積のプロセスを検証すると共に、そのような歴史的経験を踏まえて11世紀後期の史料に現われる修道院の所領景観について歴史地理学的見地より考察を行なった。結果として、当該期の史料に現われるその所領景観の性格が、修道院の歴史的経験に根差して形成されていることを明らかにした。
著者
山里 純一 Yamazato Junichi
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 = Human sciences : bulletin of the Faculty of Law and Letters, University of the Ryukyus Department of Human Sciences (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.32, pp.55-77, 2015-03

旱魃は人間の生存を脅かす最たるものの一つである。気象学や科学技術が発達した現代においてさえ、降雨は自然に委ねる他はないが、これを人間の力を越えたものに頼って雨を得ようとする行為が雨乞いである。雨乞いは地域共同体や行政レベルで行われ、一定の儀礼を伴うが、本稿は宮古・八重山を中心に、沖縄本島の中北部および久米島の事例も参照しながら沖縄における地方の雨乞い儀礼について、概観したものである。
著者
浜崎 盛康 川元 恵美子 Hamasaki Moriyasu Kawamoto Emiko
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 = Human sciences : bulletin of the Faculty of Law and Letters, University of the Ryukyus Department of Human Sciences (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-16, 2015-09

沖縄県南城市の久高島はイザイホーに代表される神の島として知られるが、高齢化がすすんでおり、55歳以上の高齢者が島の人口に占める割合は40%にもなる。しかし、島には入所型の介護施設がないため、高齢で要介護状態になると島を離れ島外の老人ホーム等に入所し、そこで亡くなり死後に島に戻るという現実がある。このことは島では、「連れて行かれる」と表現する事態であり、スピリチュアルペインを生じさせるものである。本稿は、久高島の調査に基づいて島におけるそのようなスピリチュアルペインを確認し、これに対する島の取り組みが福祉制度におけるスピリチュアルケアとして捉えられることを示し、さらに、その際固有の信仰を尊重することも必要であるということを論じるものである。
著者
鍬塚 賢太郎 Kuwatsuka Kentaro
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.14, pp.89-119, 2004-09
被引用文献数
4

インドでは経済自由化以降、ITサービス輸出が拡大しており、インド経済に少なからぬインパクトを与えている。なかでも近年急速に成長しているのが、アメリカ合衆国を最大の需要先とする情報通信技術を活用した業務受託サービスである。本稿ではインドにおける業務受託サービス輸出の動向について把握するとともに、その生産拠点として捉えることのできるコールセンターの立地の特徴についてナショナル・スケールから検討し、大都市部へ集積していること確認した。これを受け、業務受託サービスの輸出拠点となっているデリー首都圏を取り上げて、都市スケールからみた立地の特徴を把握するとともに、それが既存の都市構造に与える地域的インパクトについて、オペレーターの就業形態に着目しながら考察した。
著者
高良 美樹 金城 亮 Takara Miki Kinjo Akira
出版者
琉球大学法文学部
雑誌
人間科学 : 琉球大学法文学部人間科学科紀要 (ISSN:13434896)
巻号頁・発行日
no.29, pp.89-115, 2013-03

本研究は,自己効力感とソーシャル・サポートが入院状況における治癒志向行動(患者・看護師評定)とストレス反応にどのような影響を及ぼすかについて入院患者を対象とした質問紙調査に基づき検討したものである.調査対象者は,入院患者137名(平均年齢56.30歳,男性64名・女性70名・不明3名)であった.本研究の仮説は,「自己効力感高群は,低群に比べて治癒志向行動が多く,ストレス反応が低いであろう」「ソーシャル・サポート高群は,低群に比べて治癒志向行動が多く,ストレス反応が低いであろう」であった.主要な結果は,以下の通りである.①自己効力感の下位尺度『健康統制感』の高い者は,低い者に比べて治癒志向行動(患者評定)がより多く, 『苛立ち』を感じる程度が低かった.また,自己効力感の他の下位尺度『対処行動の積極性』の高い者は,低い者に比べて治癒志向行動(患者評定)がより多かった.②ソーシャル・サポートの構成要素の『行動的サポート』をより多く受けている者は,そうでない者に比べて,『苛立ち』および『無力感』を感じる程度が低かった.全般的に仮説を支持する結果を得た.一方,看護師評定による治癒志向行動においては有意な効果が得られなかったこと,自己効力感は治癒志向行動(患者評定)の促進,ソーシャル・サポートはストレス反応の抑制に効果があることなど,仮説が支持された範囲は限定的なものであった.