著者
赤堀 正宜
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-18, 1998

アメリカにおける公共放送の発達に及ぼしたフォード財団の貢献を否定する人は一人もいないであろう。エングルマン(Ralph Engelman)は「フォード財団はアメリカにおける非商業放送の揺籃期を注意深く育て上げ、カーネギー財団はその後の少年期の育成に努力した。この両財団の連携による貢献なしには、今日の公共放送はありえなかったであろう。」とのべ、2つの巨大篤志財団の貢献を証ししている。さらに、フォード財団成人教育基金の副会長を務め、「アメリカの教育放送」を著したブレイクリー(Robert J. Blakely)は、「1951年、フォード財団は多くの教育テレビ・ラジオ局より補助金の要請をうけ、これらの要求を実現するために成人教育基金と教育革新基金を設立し、公共放送の発展に寄与した。」とのべ、フォード財団の活動を詳述している。事実連邦政府が公的資金を公共放送の発展に支出したのは1962年公共放送設備法成立以後のことであり、それ以前は民間の資金によって公共放送は成長してきた。本論文では、初期の公共TV放送の基礎形成に貢献したフォード財団の活躍に焦点をあて、アメリカ篤志財団の篤志行為(Philanthropy)への理念、公共放送育成の理念を明らかにし、民主社会における公共放送のあり方を追求する。
著者
徳井 厚子
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.115-127, 2002

小論では、日米学生の討論場面をビデオ録画したものを参加者と共に振り返るプロセスリコールの実践例を紹介し、その有効性を述べたものである。プロセスリコールは、録画したビデオを視聴しながら、討論に参加した被験者がコミュニケーションスタイルや心理状態を振り返りながら、それらを討論に参加した学生が他の参加者と意見を共有する方法である。当実践の有効性として、以下の3点が挙げられた。1)異文化摩擦の場面を参加者自身が分析することにより、自ら意識的に摩擦の過程を解明し、解決する能力を養うことができる。2)振り返りの過程を他者と共有することにより、多様な立場から摩擦の要因を考えることが可能である。3)映像を利用することにより、より具体的、視覚的に討論場面が喚起され、非言語的側面も含め、相互作用の過程のより詳細でかつ客観的な観察が可能であり、場面をモニターする能力が向上する。また、プロセスリコール後のアンケートでは、異文化接触における対面相互作用の過程をより客観的に分析し、摩擦の原因、解決方法について考察するものが多くみられた。
著者
佐賀 啓男
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.167-183, 1998

メディア教育(media education)は、教育におけるメディアや情報テクノロジーの利用と密接な関連を保ちながらも、その実践的文脈ではメディアによる教育とは区別され、「メディアについての教育」と考えられてきた。しかし、最近における情報テクノロジーの進展は、伝統的なメディア教育観に影響を与えている。そこで、本稿は、これまで、メディア教育の概念がどのような変遷を経てきたかのあらましを把握することを目的とした。そのための材料として用いたのは、西ヨーロッパと北米における1970年代おわりから90年代はじめにかけての報告書、手引書、雑誌論文等であるが、主たる関心を、国際映画テレビジョン協議会(IFTC)が示した定義、スコットランドとフランスの教育実践、及び、アメリカの視覚リテラシーの教育実践に置いた。これらをとおして、メディア教育の概念の変遷をたどり、その実践の評価にふれたうえで、新たな情報テクノロジー、とくにコンピュータとそのネットワークの教育利用が伝統的メディア教育観に与えている影響を指摘し、それらが融合する可能な方向を示唆した。
著者
篠山 浩文 三尾 忠男 吉田 雅巳 伊藤 秀子
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
no.2, pp.81-85, 1999
被引用文献数
1

ビデオカメラおよびビデオフレームアルバムの授業への活用を検討した。すなわち、学生にビデオカメラを持たせて、大学構内を自由に散策させ、その際気がついたこと、興味をもったことなどをビデオカメラで記録させた。さらに著者らがその映像記録をフレームアルバム化し、後日授業時間内で学生に返却して、見せるといった一連の授業を試みることにより、今回の試みが学生の新たな発想や興味対象の発見へのきっかけ作りになりうるかどうか検討した。ビデオカメラによる野外活動の行動様式への影響を支持する学生が多く、その理由として「ビデオを手にすると注意深くなる」「自分の印象深いものを人にわかるように撮った」といった感想と関連していると考えられる。また、自分の興味対象の発見に対してフレームアルバムを分析することは、比較的効果的であると評価され、「ビデオフレームアルバムはビデオを視聴するよりも全体の流れがわかってよい」といった感想も見られた。また、教授者にとっても映像記録を画像要素ごとに分類し、類似した画像のコマ数の多いものに注目することにより、各学生の興味対象を容易に比較分析することができた。今回の試みは、学生の野外観察時の行動様式や新たな興味対象の発見などに何らかの影響をおよぼしたものと考えられる。さらに、教授者が学生の興味対象を容易に比較分析できるため、学生との議論材料にも活用できるものと思われる。
著者
宮川 繁
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-8, 2004

高速通信をベースにした双方向メディアが普及するにしたがって、「パーソナル・メディア」の出現という現象が起こっている。「パーソナル・メディア」は、「マスメディア」とは対照的に、ユーザーが双方向な場に、まさに双方向参加することで形成されるものであり、メディアの生産者と消費者の間に引かれた境界線が曖昧になってゆくような視点をもたらしてくれる。本論では、私がMITで製作した「スターフェスティバル」(starfestival.com)というプログラムを通じて、「パーソナル・メディア」のいくつかの特徴を解説する。「スターフェスティバル」では、プログラム内に準備されたモデルをベースにして、ユーザーは自分自身の視点を見つけ、自分だけのストーリーを作り出してゆくことができる。また、それをするために、様々な他のメディアの流用をすることもできる。このような自分のストーリー作りや、流用といった視点は、「パーソナル・メディア」が持つ重要な特徴である。
著者
中原 淳 西森 年寿 杉本 圭優 堀田 龍也 永岡 慶三
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.61-74, 2000

近年、教師教育において情報技術を用いた学習環境が注目されており、その中のひとつの可能性としてCSCL(コンピュータを用いた協調学習支援)がある。本論文では、教師を対象としたCSCL環境を具体的にどのようにデザインすればよいのか、という問いに対して、状況的学習論とCSCLの先行実践、教師教育の知見を理論的に考察することを目的とする。より具体的には、CSCL上で展開されるべき教師同士の相互作用の室と、そうした相互作用を支援するインタフェースの2点に言及する。教師教育を目的としたCSCLは、学習者としての教師が自らの教育実践を他の教師と語り、批評しあい、それをもとに教育実践に対して内省を深めることができる環境としてデザインされるべきである。
著者
望月 俊男 小湊 啓爾 北澤 武 永岡 慶三 加藤 浩
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.25-37, 2003
被引用文献数
9

本研究の目的は、ポートフォリオ評価法の理論的枠組みと、ポートフォリオ評価法をe-Learningに導入した研究の知見を概観し、ポートフォリオ評価法を応用したe-Learning環境のデザインについて考察することにある。ポートフォリオ評価法の研究は勃興期に位置づけられる。多くの研究が学習者中心型アプローチの立場から、ポートフォリオ評価法をe-Learning環境に導入するフレームワークを検討し、一部の研究はその効果を検証している段階にある。ポートフォリオを作成することや、そのための支援ツールの実装に注目が集まっている。ポートフォリオ評価法の理念に立ち返れば、学習者と熟達者間、あるいは学習者相互によるポートフォリオの検討やその評価、学習活動の改善に向けた内省や計画立案といった学習活動を行うためのコミュニケーション環境を充実させることが重要である。また、様々な学習方法に対応して、その学習プロセスに対する内省を促進するようなポートフォリオ作成を支援することが、e-Leamingにおける学習環境デザインに必要である。
著者
トーステン マリー
出版者
放送大学
雑誌
メディア教育研究 (ISSN:13441264)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.53-60, 1999

In the past decade, the number of NGOs (nongovernmental organizations) has risen dramatically. At the same time, various forms of media have also proliferated. At the intersection of these two juggernauts, where international organizations take advantage of media, we can look forward to new perspectives on international education new ways of critically thinking about the world. This paper will consider a documentary film that was made available to the public through satellite educational programming in the United States. Produced by an NGO, Hope is a Literate Woman (Laubach Literacy International, 1997), is available through the Adult Learning Satellite Service (ALS) of the Public Broadcasting Service (PBS), which makes a variety of media resources available to educators. As this film demonstrates, women in ten different countries use literacy programs at the local level to overcome larger problems of poverty, disease, calamity and injustice. The extraordinary determination of these women in inspires viewers to think globally about the international sharing of problem-solving skills, and about local and personal issues common to many women in both rich and poor countries.