著者
木村 充 舘野 泰一 松井 彩子 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.105-115, 2019-09-30 (Released:2019-09-30)
参考文献数
46

本研究は,大学の経験学習型リーダーシップ教育における学生のリーダーシップ行動尺度を開発し,尺度の信頼性・妥当性を検討することを目的とする.経験学習型リーダーシップ教育とは,経験学習を理論的基盤として行われるリーダーシップ教育のことを指す.先行研究や予備調査に基づいて54の項目案を作成し,リーダーシップ教育を国内で大規模に実施しているA 大学の学生156名(Time1)および110名(Time2)を対象に調査を実施した.因子分析の結果,リーダーシップ行動は,「率先垂範」「挑戦」「目標共有」「目標管理」「成果志向支援」「対人志向支援」の6因子によって構成された.さらに,項目を精選し,30項目からなる尺度を作成した.開発した尺度の信頼性及び妥当性の検討を行った結果,概ね良好な値が得られた.
著者
田中 聡 中原 淳
出版者
The Japanese Association of Administrative Science
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.13-29, 2017 (Released:2017-09-08)
参考文献数
44
被引用文献数
2

The aim of this study is to examine learning by middle management through the experience of new business incubation. We carried out a study consisting of semi-structured interviews of 15 middle managers working in new business departments of private enterprises. We analyzed the qualitative data from the 15 participants on the basis of the Modified Grounded Theory Approach(M-GTA) and constructed a learning process model. As a result of the M-GTA based analysis, it became clear that the learning of middle management through the experience of new business incubation had four phases: I. the responsibility avoidance phase, II. the reality acceptance phase, III. the critical reflection phase, and IV. the perspective transformation phase.
著者
中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-35, 1999-06-20
被引用文献数
12

近年の学習環境論において学習者自身が学習過程の再吟味を行うことの重要性が主張されている.本論文の目的は,学習過程を重要視する学習環境のデザインと,それが学習者にもたらす変容を明らかにすることである.研究方法としては,「エスノグラフィー(ethnography)」を採用する.より具体的には,ある学習環境における空間配置・学習材・ストラテジ- (strategy)の3つの学習活動を構成する「リソース(resource)」について考察を加える.それをふまえた上で,他者に対する学習過程の内省的認知活動である「語り(Narrative)」とそれらリソースとの関係を論じる.上記の認知活動は,研究対象の実践において特異に観察された.「語り」は,3つのリソースが「協調(coordination)」して構成される内省的な認知活動である.学習者にとっての「語り」の教育的効果は,学習そのものをどう定義するかという認識のレベル-「メタ学習観」の転換・変容に存在する.以上の議論をふまえ,学習活動支援の方法としての「語り」を概観し,「語り」を誘発する学習環境のデザインについて本稿からの示唆を述べる.
著者
保田 江美 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.221-240, 2017-02-20 (Released:2017-03-23)
参考文献数
59

本研究の目的は,新人看護師の学習の場として病棟内の看護チームに着目し,看護チームのチームワークが新人看護師の臨床実践能力に及ぼす影響を明らかにすることである.本研究では,5病院の新人看護師とその実地指導者各314名を対象に質問紙調査を実施した.また,質問紙調査の結果を補完するため,中堅看護師と実地指導者計10名に面接調査を実施した.質問紙調査の結果,チームワーク構成要素のうち,1)チーム内で業務量をモニタリングし調整するメンバーの行動,2)対人関係を維持・強化するリーダーシップの発揮,3)メンバーへの的確な指示・指導を行うリーダーシップの発揮,4)チーム内の対人関係の良好さ,が新人看護師の臨床実践能力を高めることが明らかになった.また,新人看護師の臨床実践能力向上に資するチームワーク形成の基盤として,チーム内で発揮されるリーダーシップの重要性が示された.面接調査ではこれらの結果を補足する発話を得た.
著者
中村 晃 神藤 貴昭 田口 真奈 西森 年寿 中原 淳
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.491-500, 2007-12-30
被引用文献数
3

本研究では,大学教員初任者がもつ教育に対する不安について検討し,さらにこのような不安と同時に周囲からのサポートについても考慮し,これらがどのように仕事に対する満足感と関係するかを検討することを目的とした。そのため,まず教育不安尺度を作成し,次に教育不安が周囲からのサポート,および職務満足感とどのような関係にあるかを質問紙により検討した。その結果,教育不安尺度では因子分析により「教育方法に関する不安」「学生に関する不安」「教育システムに関する不安」の3因子が見出された。また教育不安と職場におけるサポート,および職務内容満足感との関係を検討した結果,教育に関する不安が高い場合,先輩教員のサポートが満足感を上げる要因になること,および教育システムに関する不安が高い場合,同世代教員によるサポートが少ないと満足感が低くなることが示唆された。これらのことから,特に不安の高い教員に対しては,職場のサポートが仕事の満足感を上げるうえで重要であると考えられる。
著者
辻 和洋 中原 淳
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.37-54, 2018-12-12 (Released:2019-02-02)
参考文献数
37

本研究は2001年に新聞協会賞を受賞した高知新聞社「高知県庁闇融資問題報道」を事例に,調査報道のニュース生産過程を明らかにした事例研究である。取材のきっかけとなる情報をつかむ基礎的調査の段階から,発展的調査の段階を経て,第一報の記事化の準備の段階までを,記者のインタビュー調査によって明らかにした。とりわけ,日本のマスメディアが持つ構造的な問題の一つとして指摘されている編集権の問題に着目し,編集権を持つ編集幹部が,ニュース生産過程において記者にどのような影響を及ぼすのかを考察した。研究の結果,記者が編集権を持つ幹部の介入を危惧して,情報管理を徹底し,取材対象者を慎重に選択したり,社内でも情報共有を行わなかったりするような行動が見られた。また,編集幹部が報道リスクを考え,記者に対して条件を提示,報道の先送り,代替案の提示といった介入を行ったことが明らかになった。それに対し,記者は報道することを強く促す上申,条件に対応,組織外の影響力の活用といった対応策を講じていた。本研究では,地方紙の単一事例の検証かつ記者のみのインタビュー調査にとどまるものの,石川 (2003) や花田 (2013) が指摘するように,編集権が,記者の行うニュース生産過程に影響を及ぼしうる可能性があることが示唆された。代表性に課題があり,編集権の影響が事例固有のものであるかどうかは検証の余地が残されている。しかし,本研究により調査報道の質的・量的向上をもたらす上で,調査報道のニュース生産過程における記者の取材行為だけでなく,組織内における記者と編集者の相互行為にも着目する重要性が示された。
著者
木村 充 舘野 泰一 松井 彩子 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.105-115, 2019

<p>本研究は,大学の経験学習型リーダーシップ教育における学生のリーダーシップ行動尺度を開発し,尺度の信頼性・妥当性を検討することを目的とする.経験学習型リーダーシップ教育とは,経験学習を理論的基盤として行われるリーダーシップ教育のことを指す.先行研究や予備調査に基づいて54の項目案を作成し,リーダーシップ教育を国内で大規模に実施しているA 大学の学生156名(Time1)および110名(Time2)を対象に調査を実施した.因子分析の結果,リーダーシップ行動は,「率先垂範」「挑戦」「目標共有」「目標管理」「成果志向支援」「対人志向支援」の6因子によって構成された.さらに,項目を精選し,30項目からなる尺度を作成した.開発した尺度の信頼性及び妥当性の検討を行った結果,概ね良好な値が得られた.</p>
著者
舘野 泰一 大川内 隆朗 平野 智紀 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.241-254, 2013

本研究では,正課課程外におけるアカデミック・ライティングの指導を想定し,チューターによる学生の「執筆プロセスの理解」を支援するために,レポートの執筆プロセスを可視化することのできるシステム「レポレコ」を開発した.「執筆プロセスの理解」とは,チューターが,学生の文章生成過程を把握することである.開発したシステムの特徴は執筆プロセスの記録・可視化である.学生がレポートを執筆する過程を一字一句自動で記録し,可視化することができる.このシステムを使うことで,チューターの「執筆プロセスの理解」を促すことができる.実験の結果,システムを使用することで,チューターの「執筆プロセスの理解」につながることが示唆された.
著者
舘野 泰一 中原 淳 木村 充 保田 江美 吉村 春美 田中 聡 浜屋 祐子 高崎 美佐 溝上 慎一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-11, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
27

本研究では,大学での学び・生活が就職後のプロアクティブ行動にどのような影響を与えているかを検証するために質問紙調査を行った.本研究の特徴は2点ある.1点目は縦断調査という点である.近年,大学教育において「学校から仕事への移行」に関する調査研究は増えてきているが,その多くは振り返り調査という限界があった.2点目は,就職後のプロアクティブ行動に着目した点である.プロアクティブ行動とは,個人の主体的な行動のことであり,近年大学教育で議論されてきた「主体的な学び」の成果に関連が深い.しかし,これまでその影響について検証されてこなかった. 共分散構造分析を行った結果,1.授業外のコミュニティを持っている学生,2.大学生活が充実している学生ほど,就職後にプロアクティブ行動を行っていることが明らかになった.
著者
加藤 走 木村 充 田中 聡 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46077, (Released:2023-06-07)
参考文献数
51

大学のリーダーシップ教育プログラムが増加することに伴い,大学生の個人的要因と大学生のリーダーシップ行動との関係についての検討が求められている.本研究の目的は,大学生のリーダーシップ行動とリーダー・アイデンティティの関連を定量的データに基づき明らかにすることである.本研究では,大学生291名を対象にwebによる質問紙調査を実施し,取得したデータに対してパス解析を行い仮説の検証を行った.分析の結果,大学生の関係水準のリーダー・アイデンティティならびに集団水準のリーダー・アイデンティティがリーダーシップ行動と正の関係があること,集団水準のリーダー・アイデンティティが関係水準のリーダー・アイデンティティよりも率先垂範,挑戦,目標共有,目標管理のリーダーシップ行動と強い正の関係があることが明らかになった.最後に,以上の結果から考えられる本研究の意義や教育実践への示唆,今後の課題について考察した.
著者
中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.23-35, 1999-06-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
31
被引用文献数
4

近年の学習環境論において学習者自身が学習過程の再吟味を行うことの重要性が主張されている.本論文の目的は,学習過程を重要視する学習環境のデザインと,それが学習者にもたらす変容を明らかにすることである.研究方法としては,「エスノグラフィー(ethnography)」を採用する.より具体的には,ある学習環境における空間配置・学習材・ストラテジ- (strategy)の3つの学習活動を構成する「リソース(resource)」について考察を加える.それをふまえた上で,他者に対する学習過程の内省的認知活動である「語り(Narrative)」とそれらリソースとの関係を論じる.上記の認知活動は,研究対象の実践において特異に観察された.「語り」は,3つのリソースが「協調(coordination)」して構成される内省的な認知活動である.学習者にとっての「語り」の教育的効果は,学習そのものをどう定義するかという認識のレベル-「メタ学習観」の転換・変容に存在する.以上の議論をふまえ,学習活動支援の方法としての「語り」を概観し,「語り」を誘発する学習環境のデザインについて本稿からの示唆を述べる.
著者
加藤 走 木村 充 田中 聡 中原 淳
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.207-216, 2023-06-20 (Released:2023-07-14)
参考文献数
51

大学のリーダーシップ教育プログラムが増加することに伴い,大学生の個人的要因と大学生のリーダーシップ行動との関係についての検討が求められている.本研究の目的は,大学生のリーダーシップ行動とリーダー・アイデンティティの関連を定量的データに基づき明らかにすることである.本研究では,大学生291名を対象にweb による質問紙調査を実施し,取得したデータに対してパス解析を行い仮説の検証を行った.分析の結果,大学生の関係水準のリーダー・アイデンティティならびに集団水準のリーダー・アイデンティティがリーダーシップ行動と正の関係があること,集団水準のリーダー・アイデンティティが関係水準のリーダー・アイデンティティよりも率先垂範,挑戦,目標共有,目標管理のリーダーシップ行動と強い正の関係があることが明らかになった.最後に,以上の結果から考えられる本研究の意義や教育実践への示唆,今後の課題について考察した.
著者
堀尾 志保 中原 淳
出版者
産業・組織心理学会
雑誌
産業・組織心理学研究 (ISSN:09170391)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-52, 2022 (Released:2023-05-24)

The purpose of this study is to identify gaps in existing research of shared leadership focusing on its antecedent and moderator factors and to look ahead to what kind of research is required for the future. A detailed review based on a scoping review identified research gaps in each of the following research groups : 1.antecedents research group focusing on vertical leader factors, 2.antecedents research group focusing on factors other than vertical leader factors, 3.moderators research group focusing on factors other than vertical leader factors, 4.moderators research group focusing on the vertical leader factors. Group1. lacked research on the process and mechanisms by which vertical leaders’ leadership behaviors positively influence shared leadership. Group2. lacked research on organizational level factors and research on the relationships among antecedents those have already been identified. Group3. lacked research on commonality needed to leverage differences among members, also research on moderator effects of external environment factors of the team were also lacked. As to Group4., none of research was done in this group. According to above gaps in existing research, future research possibilities for further development of the shared leadership research field were discussed.
著者
中原 淳
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.28-37, 2014 (Released:2015-04-25)
参考文献数
81
被引用文献数
1

近年,組織論の研究領域において,「職場(workplace)」内部の学習(集団レベルの学習)に焦点化する研究が増えている.具体的には,職場の上司—メンバー間の相互作用を通して生起する学習を解明する実証的研究の増加である.本稿の目的は,こうした研究動向に鑑み,筆者がこれまで行ってきた研究を適宜引用・参照にしながら,職場における学習の研究群を紹介することにある.
著者
北村 智 中原 淳 荒木 淳子 坂本 篤郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.92-103, 2009-06-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
37

本研究ではPutnam(2000)の議論に基づいて組織における社会関係資本を結束型社会関係資本と橋渡し型社会関係資本に弁別した上で,組織における社会関係資本と業務経験を通した個人の能力向上の関係について階層線形モデルを用いて検討した.その結果から,業務経験を通した個人の能力向上について論じる上で,組織レベルの要因と個人レベルの要因の交互作用を検討する重要性を示した.
著者
見舘 好隆 舘野 泰一 脇本 健弘 望月 俊男 宮田 祐子 中原 淳 三宅 なほみ
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.209-227, 2013-11-20 (Released:2016-08-10)

本研究の目的は,キャリア・コンサルタントが遠隔操作したロボットをピア・カウンセラーに位置付けた上で,ロボットが主導する学習者間のグループ・カウンセリングが成立するのかを探究することにある.研究方法は,自己効力感をたずねる質問紙調査,および大学生の主体的発話の数を測定し,統制群(キャリア・コンサルタント)と実験群(ロボット)とで結果を比較した.両群の大学生の主体的発話内容の分析も行った.この結果,ロボット主導であっても学習者の自己効力感を高めることができることと,またロボット参加により主体的発話が増えることが示唆された.さらに主体的発話のカテゴリ分析の結果,統制群ではほぼ生じなかった3種類の主体的発話が確認され,これらの発話が大学生のアクティブリスニングを促しグループ・カウンセリングに必要な主体的発話を引き出すことが観察された.最後に本結果をもとに今後のロボット開発に資する改善点を考察した.
著者
田中 聡 中原 淳
出版者
経営行動科学学会
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.13-29, 2017

The aim of this study is to examine learning by middle management through the experience of new business incubation. We carried out a study consisting of semi-structured interviews of 15 middle managers working in new business departments of private enterprises. We analyzed the qualitative data from the 15 participants on the basis of the Modified Grounded Theory Approach(M-GTA) and constructed a learning process model. As a result of the M-GTA based analysis, it became clear that the learning of middle management through the experience of new business incubation had four phases: I. the responsibility avoidance phase, II. the reality acceptance phase, III. the critical reflection phase, and IV. the perspective transformation phase.
著者
望月 俊男 藤谷 哲 一色 裕里 中原 淳 山内 祐平 久松 慎一 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-27, 2004
被引用文献数
12

本研究では,CSCLにおける協調学習に参加している学習者の発言データをもとに,学習者自身や教師がその学習コミュニティのコミュニケーション活動を評価するための方法を提案した.その方法とは,電子掲示板の議論内容と個々の学習者との関係を,コレスポンデンス分析を用いて可視化することである.この方法を用いて,実際に異文化間CSCL実践の一部のデータを分析し,可視化した議論データについて,日本人学習者・外国人学習者の約半数,および日本人教師1名にインタビューを行い,評価情報としての妥当性と適用可能性を検討した.その結果,可視化されたマップによって,コミュニティの話題の分担や,学習者一人一人の知識共同体への関わりの状態が示され,自分や他者の興味関心に対する内省や気づきを促進し,学習者間の議論を活性化する可能性が示された.また,教師にとっては教育プログラム期間中の討論の評価やモデレーションに有効である可能性が示された.