著者
坂田 晃一
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.63-70, 2004-12-31

日本のテレビ・ドラマのテーマ音楽は、近年、そのあり方の諸相に於いて変化を見せている。それらの変化の原因を探り、その結果としてのテーマ音楽の現状について検証する。更に、その現状が抱える問題点と弊害を明らかにし、そうした現状から脱却するための方策を提案する。
著者
鶴原 勇夫
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.89-120, 2004-12-31

ガブリエル・フォーレは19世紀から20世紀にかけて、フランスで活躍した作曲家である。ロマン主義の時代から現代に至る変化の激しい時代において、彼は、古い権威に頼ることなく、新しい流行に惑わされず、自己に忠実に独自の作風を築いた。彼の音楽の特色は、優美な旋律とユニークな和声進行にある。特に彼の和声進行と転調方法が、当時としてはあまりに斬新だったために、師匠であるサンサーンスが「とうとう彼は気が狂ってしまった」と叫んだくらいである。この研究はそうしたフォーレの作品の中から和声進行と転調の特色を発見することを目的としている。この研究で私が彼の音楽の独創性に少しでも近づくことが出来ていれば幸いである。
著者
霧生 トシ子
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.129-144, 2004-03-31

1930年-40年から発展した様式を持ち、インプロビゼーション(improvisation)を主体とした極めて高いレベルを持ったビ・バップはジャズを集約しているものと考える。ジャズの歴史の背景に沿って、その永遠性、現代性にていて社会的考察をしてみる。
著者
山崎 岩男
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.165-184, 2004-09-30

声楽発声に必要な人体諸器管の働きに関する知識と、さまざまな指導者により考案された声楽発声の方法、またそれを習得するためのトレーニング方法を比較検証し、演奏、指導の場での合理的な活用の形を模索し提言する。
著者
石井 満 門田 幸久
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-16, 2004-03

テレビジョン放送の歌謡番組では、カメラワークとスイッチングの技法を駆使して、歌手などがスタジオにて演奏、歌唱する様子が撮影される。これらの独特な映像表現の機能について楽曲分析を交えた事例研究によって考察した。歌謡番組の撮影は、被写体の変化が少ない中で歌手の顔を良く見せ、音楽の流れにそった形で変化をつけるという繰り返しが基本構造である。この冗長性を緩和するためにも多彩な構図と動きのあるカメラワークや印象的なショットの接続が必要とされる。事例においても音楽の高揚を表現するため、アップショットの提示と近接する動きが多用されていたが、これらの必然的な強調にも音楽の構造に基づく段階がある。限られたカメラ台数によってなされる撮影技法のバリエーションでは適切な表現と冗長性の緩和の両立は難しい。
著者
野地 朱真
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.9, pp.11-23, 2006-03

水流、風といった流体のモーション作成には、一般的にCGアプリケーションが提供するパーティクルダイナミクス(粒子を扱う力学)の手法が用いられている。微小な平面、または物体を対象としてそれらの相互干渉と重力などの外的環境要因を流体力学の近似として動作を算出する。しかし、力学に疎遠なユーザやアーティストにとって、アプリケーションが用意する膨大なパラメータを意図どおりに制御し望むモーションを得るのは至難の技である。また力学シミュレーションゆえの問題点として、時系列に算出した各パーティクルのベクトルデータを蓄積できない、などの欠点もある。本論文は流体状の表現を作成するにあたり、ユーザの負担を軽減し演出意図の要求を容易に満たすことを目的とし、力学の代わりに幾何学計算のみで人工的に微小平面のモーションを制御する手法を提案する。また微小平面のモーションデザインを応用し、2次元と3次元空間を行き来する新しい人工的なモーションデザインの手法を紹介する。
著者
鈴木 常恭
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.8, pp.11-33, 2005-12

現実あるいは架空の出来事や事態を時系列および因果関係に従って、一定のまとまりをもって記していくものが「物語」である。ドキュメンタリーも出来事を時系列、因果関係を意味づけ、解釈し、解明するという点では「物語」である。しかし、ドキュメンタリーの「物語」に対し「反物語」が突きつけられた。本稿は、環境化したテレビにおいて「ドキュメンタリー」が、どのように「物語るドキュメンタリー」として生成され、どのように「物語らないドキュメンタリー」へ変容していくかを考察する。考察の中心となるのは、テレビ草創期の1950年代半ばから変容が顕在化てくる1960年代後半までである。テレビド・ドキュメンタリーが、他の番組と同じように演出的変容は、当然演出家の問題として顕在化する。が、機器の開発・導入によっても演出に変容をうながし顕在化させる。本稿では、この点についても言及する。
著者
井上 道子
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-64, 2004-03-31

レオシュ・ヤナーチェク(1854-1928)はチェコの近代音楽を代表する、どのジャンルにも属さない独自の作法を編み出した作曲家である。それゆえ、正統派の間で長い間無視され50歳頃になってようやく世の中に認められるようになり、その後亡くなるまで次々に名作を発表していった。彼の音楽を語るときオペラやモラヴィア民謡なしでは語れない。交響曲や器楽曲にも必ず背景にはドラマがあり、話し言葉や人間の内に秘められた内容そのものに密接な繋がりがある。人間の持つあらゆる感情思考が音符に刻み込まれており、音楽の解釈は決して理論的であってはならない。また、彼はしばしば「瞬間の真実」を最も大事だと考え、ダイナミックスやテンポや発想記号をその場で変えたりもした。ヤナーチェク自身は"氷のような冷たい美とは何だろうか? 私は、どの音もただ指の運動を通して出たものではなく、燃える心を通して響いた音を聴きたい。"(注1)と言っている。ここでは、オペラを語る以前に長年にわたってモラヴィア民謡収集家として活躍してきたモラヴィア民謡に彼の音楽表現の原点があると考え、ピアノ曲「草かげの小径」を通してその関連性を探ってみた。
著者
大村哲弥
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.2, pp.39-56, 2003-03-31
被引用文献数
1

ギリシャ以来の大問題である音楽現象は、名曲・名演奏の仕組みを解明するという究極の大問題へ向かって、今日の音楽心理学、音響心理学等に引き継がれて取り組まれてきた。特に音楽心理学では1956年のL.B.MeyerのEmotion and Meaning in Music の歴史的論文に端を発してアメリカを中心に著しい研究成果を挙げてきたが、それでも究極の問題には辿り着いていない。私がこれまで発表してきた論文は、リズム、和声に関わる楽譜から読みとれる内容に限定され、音楽現象で最も重要な聴き手の意識の持続が何によってなされるのかという見地から判断すると、荒っぽい内容といわざるを得ない。私は音楽を、ベルグソン哲学に根拠をおく「凝縮された進化体験」と位置づけている。"今"は過去(記憶)と相互浸透されることで意味を生じ、鳴らされている今の音(現在)も,聴いた音(過去)との関係で音楽性を獲得できるといえる。こうした考えは、古典の名曲とりわけバッハ作品の分析から導き出されたものである。名曲の仕組みと音楽現象の解明とを結びつけることがこの論文の目的である。全体は考察編と楽曲分析から成り立つが、当論文はその中の前半部分の考察編からの抜粋で、楽曲の作品分析を主体とする後半は省かれている。
著者
岩佐 靖夫
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.8, pp.69-80, 2005-12

ウラディーミル・ホロヴィッツは、20世紀を代表するピアニストとして、晩年に数本のビデオ録画を通し、自己の演奏以外に、一般の聴衆に自己の演奏表現形式、価値観、人生などについて語る機会があった。小稿では、そうしたホロヴィッツの直接の言より、演奏表現形式について述べられているものを中心に、現場教育でそれを実践した場合にどのような方法が考えられるかを、日本語教授法と日本語教育の科目を事例にとり具体的に考察する。
著者
皆川 弘至
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.71-164, 2004-09-30

1790年から今日に至る凡そ200年余の間に、我が国を訪れた外国人音楽家の公演歴を包括した調査資料は無いに等しい。特に、明治時代以前(1868年以前)、明治時代(1868-1912)、大正時代(1912-1926)の記録は、本稿巻末の参考資料に示した通り、わずかに記録として残されている程度であり、現在は絶版で入手不可能でもある。そこで本稿では、外来クラシック演奏家公演に限定し、新聞記事、刊行物、当時の公演プログラム等を渉猟し、調査・整理・分析・統合を加え、(1)明治時代以前 (2)明治時代 (3)大正時代 (4)昭和時代I<第2次世界大戦前> (5)昭和時代II<戦後> (6)平成元年から現在、の6つに分類した。その主脈を時系列的に概観することにより浮き彫りとなる諸点の中から、特に世界的に著名なオーケストラ14団体の来日公演に絞り、入場料金の推移を、厚生労働省調査による「大卒者初任給額及び対前年増減率の推移」及び総務省調査による「消費者物価総合指数」、「持家の帰属家賃を除く消費者物価総合指数(全国)」と対比し、更にアート・マネージメントの視点から考察を加えた。
著者
大村 哲弥
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.45-90, 2006-03-31

ギリシャ以来の大問題である音楽現象は、名曲・名演奏の仕組みを解明するという究極の大問題へ向かって、今日の音楽心理学、音響心理学等に引き継がれて取り組まれてきた。特に音楽心理学では1956年のL.B.Meyerの歴史的論文Emotion and Meaning in Musicに端を発してアメリカを中心に著しい研究成果を挙げてきた。が、それでも究極の大問題にはたどり着いていない。名曲の仕組みと音楽現象の解明とを結びつけることが論文の目的である。全体は考察と楽曲分析から成り立つが、理論編前半を「その1」、分析編を「その2」として、既に発表している。この「その3」は、未完成だった理論編の後半部分に位置し、認知と情動から音楽を考察する。それは生成音楽論への挑戦でもある。
著者
金子 晋一 Shinichi KANEKO 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-67, 2002-03-31

In this article an attempt is made to examine the features and essence of the following three types of music : Tonal music, Blues music, and Shamisen music. Basically, Eastern music and Western music are very different from each other. Western tonal music primarily has a harmonic pitch and the fundamental chords are always fixed, and evenly tempered. For example, the tonic chord I (A-Major key) is always determined by Concert pitch A 440 : the number of vibrations in the sound. 0n the other hand, the tone at the center of Eastern Shamisen music is free-floating, with freer uses of pitches. The first issue I focus on in this paper is the tonal music, especially of the late stage. I will discuss the fundamental chord and harmonic pitch of Wagner's Tristan und Isolde and Schoenberg's Verklaerte Nacht. I will also examine the Mode music of Olivier Messiuen and his floating pitches, as well as the Bluesy tonal music of George Gershwin, specifically Rhapsody in Blue and An American in Paris and their harmonic pitches. The second issue focused on is Blues Music : blue tonality (Bluesy harmonic pitch) exemplified in Dizzy Gillespie's Blue 'N' Boogie or the chord changes in Charlie Parker's works. Finally, I will discuss the uniqueness of Shamisen music and its tonal center such as Hon-Choshi, Ni-Agari and San-Sagari. My discussion and examination are meant to search for ideas aimed at creating new fresh music for the 21st century. I believe that an equal treatment of Western and Eastern music, and their distinctive notions of tone techniques, will play a key role in the creation of a new type of music.
著者
皆川 弘至 Hiroshi MINAGAWA 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.71-164, 2004-09-30

1790年から今日に至る凡そ200年余の間に、我が国を訪れた外国人音楽家の公演歴を包括した調査資料は無いに等しい。特に、明治時代以前(1868年以前)、明治時代(1868-1912)、大正時代(1912-1926)の記録は、本稿巻末の参考資料に示した通り、わずかに記録として残されている程度であり、現在は絶版で入手不可能でもある。そこで本稿では、外来クラシック演奏家公演に限定し、新聞記事、刊行物、当時の公演プログラム等を渉猟し、調査・整理・分析・統合を加え、(1)明治時代以前 (2)明治時代 (3)大正時代 (4)昭和時代I<第2次世界大戦前> (5)昭和時代II<戦後> (6)平成元年から現在、の6つに分類した。その主脈を時系列的に概観することにより浮き彫りとなる諸点の中から、特に世界的に著名なオーケストラ14団体の来日公演に絞り、入場料金の推移を、厚生労働省調査による「大卒者初任給額及び対前年増減率の推移」及び総務省調査による「消費者物価総合指数」、「持家の帰属家賃を除く消費者物価総合指数(全国)」と対比し、更にアート・マネージメントの視点から考察を加えた。In the slightly more than 200 years from 1790 until the present day, research documents covering the history of performances of foreign musicians who have visited Japan are virtually non-existent. In particular, as shown in the reference material at the end of this document, records of the Pre-Meiji Era (before 1868), the Meiji Era (1868-1912), and the Taisho Era (1912-1926) barely remain, and furthermore are currently out of print and unobtainable.In light of the above, in this document, newspaper articles, printed publications, contemporary performance programs, etc. relating to the performances of visiting foreign musicians have been extensively read, organized, analyzed, and consolidated, and have in addition been classified into six categories: (1) Pre-Meiji Era; (2) Meiji Era; (3) Taisho Era; (4) Showa EraI (pre-World WarII); (5) Showa EraII (post-war); and (6) Heisei Era through the present.In addition, from among the points which come into focus as a result of taking a broad overview of the main currents therein, and in particular drawing from the performances in Japan of 14 eminent orchestras, an examination of admission prices is provided from the perspective of arts management, in correlation with "Transitions in Year-on-Year Differences in University Graduate Starting Salaries" from a survey by the Ministry of Health, Labor, and Welfare, and with "General Consumer Price Index" and "General Consumer Price Index Excluding Rent of Homeowners (for entire country)" from surveys by the Ministry of General Affairs.
著者
丸山 恵美子
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.57-69, 2004-09-30

G.ヴェルディのオペラ《トロヴァトーレ》と《運命の力》に登場するレオノーラは、名前だけでなく、共通する部分が多い。二人とも身分の高いスペイン貴族、美しく清純で年の頃は20歳前後、信仰深いが一途で情熱的な女性、そしてどちらもアウトサイダー(ジプシー、インディオの末裔)を愛している。しかし歌の内容からは異なるところが多く、それぞれ別の歌唱表現が求められる。《トロヴァトーレ》のレオノーラには華麗なテクニックとともに情熱的で迫力のある声が、《運命の力》のレオノーラにはいっそうの重厚さと悲劇性が必要となる。そして両者いずれもが、「ヴェルディの声」、すなわちベルカントからさらにドラマティックな表現の可能な声で情熱的な人物像を描き出し、観客に感動を与えることが肝要となるのである。
著者
橋本 慶隆
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-44, 2004-12

映像記録メディアの変遷を振り返り、今後の課題について考察する。情報を記録する技術は、筆記技術から印刷技術を経て信号記録技術へと変化してきた。さらに、信号記録技術はアナログ方式からディジタル方式へと変化し、マルチメディア時代となった。この流れに沿って、まず映像記録メディアの歴史を概観する。次に、筆者が初期の開発に携わったディジタルVTRを例として、映像記録メディアがアナログからディジタルへ変遷していく過程とディジタル化の意義について述べる。最後に、映像記録メディアに対する課題と期待について述べる。今後も、映像記録メディアの高速・大容量化という目標に向けた技術開発が進められることは疑う余地が無い。一方、長期保存媒体としての性能向上を目指した技術開発も推進されるべきである。文化財保護の意味からも、映像記録メディアを中心とするディジタルアーカイブの今後の発展が期待される。
著者
山崎 岩男
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.165-184, 2004-09-30

声楽発声に必要な人体諸器管の働きに関する知識と、さまざまな指導者により考案された声楽発声の方法、またそれを習得するためのトレーニング方法を比較検証し、演奏、指導の場での合理的な活用の形を模索し提言する。
著者
田中 孝志
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.8, pp.35-49, 2005-12

本論はスピーチでどのような表現方法が聞き手の興味を引くのかを考察するために失言を分析し、同時に失言が発生する原因を究明する。特に本論では話者のメッセージの描写方法に対する聞き手と第三者間での視点と解釈という観点を重視する。分析方法に関してはボーマンのファンタシー理論を応用し説明する。
著者
小池 保
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-67, 2006-11-30

かつての売り声は、なぜ日本人の心の原風景に流れるBGMとなり得たのか—— 心に響く表現が、どのように工夫されていたのか、音声分析を用いながら考察を重ねるうち、売り声が「市井の詩」となり得たいくつかの条件をはじめ、高いコミュニケーション力を備えていることが明らかになってゆく。やがて、拡声器で売り声を聞かせる時代が到来する。なぜ拡声器が用いられたのか、日本人の住まい方の構造変化にまつわる問題点が見えてくる。その点に注目しながら探るうちに、戦後に起こったコミュニケーション上のパラダイム・シフトとの関係が浮かび上がる。日本人に親しまれた売り声の文化は、事実上、消えてしまった。しかし、それは生活の片隅でさえずっていた小鳥がいなくなったというレベルの、ささいな出来事ではなかった。忍び寄る気体の毒性をいち早く知らせる、カナリアの死であったのかもしれない。
著者
石井 満
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-12, 2007-03-31

テレビジョン放送におけるクイズ番組を、その出題傾向から分類すれば、知識を問う知識指向タイプと、謎掛けに近いパズル指向タイプに分けることができる。後者の番組内でなされる出題の映像表現には、言語とイメージのレヴェルを跨いだ多様なテクスト表層での記号表現が行われているものが見られる。その修辞技法の記述の試みとして、映像表現技法の修辞について事例に則した考察を行った。これらのクイズは、修辞学的に捉えれば、解答が規範表現で、対応する問いが、或る隔たりを設定した逸脱表現であると見ることができる。主に、解答となることばを音韻レヴェルで別の意味を成すことばに分節した後、転義的なイメージを付加的に配列したものである。イメージ記号の性質は、記号表現と記号内容が分節しがたい個別性を持っているが、ここでは言語に対応する抽象的な記号として用いられている。その修辞的技法は、映画芸術において詩的な叙述が成されていると指摘される場合の事例と非常に似た表現傾向を示す。