- 著者
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壇 須寿雄
- 出版者
- 大阪産業大学
- 雑誌
- 大阪産業大学人間環境論集 (ISSN:13472135)
- 巻号頁・発行日
- no.9, pp.325-335, 2010
近年の「中国のエネルギーと環境問題」について,日本へのインパクトを中心に解題する。考察の背景には,中国はその目覚ましい経済発展とともに世界第二位のエネルギー消費国であり,間もなく世界最大のエネルギー消費国になることが確実であり,海をはさんで隣り合う日本への環境影響,経済影響には計り知れないものがあるということが挙げられる。日本の国産エネルギーはわずかに4%であり,エネルギーをほとんど外国へ依存している。日本は,中国の旺盛なエネルギー消費による国際的なエネルギー価格や量の影響をもろに受けることになろう。また,日本と中国は,海を挟んで国境を接していることから東シナ海の石油,天然ガスなどの資源の争奪戦も起こっている。黄砂やNOx, SOx等の飛来に見られる大気汚染は中国の環境が日本の環境と直結していることを示す。さらに,地球温暖化の問題である。国際的には中国は新興国扱いで,これまで削減義務を負っていない。しかし,CO_2の排出量は統計上世界で二番目となり,実質的にはアメリカを追い抜いている。エネルギー全体の使用量はアメリカより少ないが,世界最大の石炭大国である。石炭由来のCO_2は石油の2倍近くあり,近年の電力需要の急増にともない石炭の消費も急激に伸びている。さらに中国は,新エネルギーである風力,太陽光エネルギーとともに,2020年頃には世界有数の原子力発電国になるという。が,そうなると,万が一の事故の場合,影響を直接被るのは風下の日本である。中国の環境問題は,このように日本と抜き差しならない関係にあると考えねばならない。以上の内容を最新の資料に基づいて記述している。