著者
曽田 修司 石田 麻子
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
pp.37-58, 2003-03-15

筆者(曽田,石田)は,財団法人北九州市芸術文化振興財団等が主催した「海の上のピアニスト」北九州公演に関して,ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社,株式会社シアター・テレビジョン,財団法人北九州市芸術文化振興財団の協力のもとに,多角的な観客動向調査を行った。その結果,いわゆるコアな演劇ファンの周囲に演劇ファンに類似した心性を持つ層がかなり広範に存在することがわかった。現段階の仮説として,演劇ファン以外の層へのマーケティングについては,効果的な惰報提供を行うことで,新たに舞台鑑賞行動への動機づけを与えることが十分可能である,と考えられる。
著者
村松 正隆
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
pp.103-115, 2003-03-15

論者は本橋において,フランス革命期に学問上のリーダーシップをとると同時に,現実の医療政策にも少なからぬ影響を与えたイデオロジスト,カバニスの議論を取り上げる。カバニスの哲学は市民に対して,「自らの情念が公益のかわりを占めてしまうことがないように」良識を要求するものであったが,この要求は何らか超越的審級への訴えによってなされるものではなく,人間本性それ自身に基盤をもつものであった。この論点を理解するためには,カバニスの主要著作『心身関係論』の議論を整理しなければならない。「感覚性」の概念を導きの糸としつつ人間における「肉体的なもの」の重要性を強調するカバニスは,さらに人体において諸器官がお互いに「共感」しあいながら,全体的なネットワークをなしていることを強調する。この「共感」の概念は,さらに他者とのコミュニケーションの場面においても重要な意義を持つようになる。人間は他者に「共感」することによって初めて自らの情念ではなく公益に従う存在となる。だからこそカバニスにとっては,「共感」の能力,ならびにこれと密接なつながりをもつ「模倣」の能力を陶冶することが重要となる。
著者
櫻川 幸恵
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.109-128, 2005-03-15

全要素生産性(TFP)の計測の方法として、Solow(1957)によるソロー残差がある。本稿では、Solowの研究と、その後のHall(1988、1990)やBasu and Fernald(1995)による、ソロー残差を用いたTFPの計測方法の修正を理論的に整理する。さまざまな規模に関する収穫の程度や市場の競争状態であるときには、生産額に対して粗生産額を用い、分配率に関しては費用ベースシェアを利用する方法が望ましいことが示される。
著者
曽田 修司
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.51-62, 2005-03-15

日本の公立文化施設は、これまで「貸し館」といわれる運営方式が中心であったが、近年、芸術監督やプロデューサーを選定し、質の高いオリジナルな舞台作品の創造・提供を志向する劇場・ホールが次第に増えてきている。これまでは、専門家による劇場運営は地域の文化力向上につながらないという考え方が一般的であったが、筆者は、むしろ専門家が文化施設の運営にもっと深く関わることによって、市民が創造力を身につけ、文化の発信力を高めていくことが可能になると考える。そのためには、行政機関が民間と協働し、民間のイニシアティブを活かすような取り組みが必要である。既にいくつかの地域の公立文化施設では、民間のアートNPOとの協働による個性的な運営のしくみづくりによって地域の文化活動に関する「新しい公共性」の形成に貢献している。今後、それらの取り組みが地域の文化的なオリジナリティの涵養、文化を活かした産業育成につながることが期待される。
著者
宮崎正浩・籾井まり 籾井 まり
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.147-163, 2009-09-15

人類の存続の基盤である生物多様性の損失が加速化している.このため,生物多様性条約(1992年)が採択されるなど,世界的に政府や市民社会の主導によりその保全への取り組みが行われているが,十分な効果は上げられていない.このため,最近では,生物多様性に依存するとともに大きな影響も与えている企業がその社会的責任(CSR)として自主的に保全活動を行うことが期待されている. 本研究の目的は,環境の持続可能性の視点から,CSRとしての企業の活動が生物多様性の保全にどの程度貢献するかについて分析し,それをより有効なものとするためのNGOや政府の役割について明らかすることである. 本研究の結果,環境の持続可能性の視点からは,生物種の絶滅リスクを高めることを防止する必要があるが,これを達成するためには,現状のような企業のCSRとしての自主的取り組みでは不十分であり,企業が生物多様性に与えている影響を定量的に評価し,その公表を法的に義務化するとともに,生物多様性のネットでの損失をゼロすること(ノーネットロス)を目標とした政府の規制や,生物多様性へ影響を与える原材料の国際取引において生物多様性に配慮し持続的な管理がされた原材料のみを適法とする法的拘束力のある国際条約の検討が必要であると結論付けた.
著者
小川 功
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-18, 2009-09-15

平成22年4月本学マネジメント学部に観光マネジメント学科が新設されるのを機に,「観光マネジメント」という学科の領域全体での検討すべき新たな課題・問題意識を取り上げてみたい。地域の観光にかかわる個別企業や人物が各々どのような役割を果すことで,著名な観光資源がいかにして一流の観光地へと形成されていったのか,その際に地域全体で「観光マネジメント」がいかに推進されていったのかを,明治末期から大正前期にかけて観光資源として売り出すことに成功した奈良県・長谷寺の牡丹を素材に第一段階の試論として検討したい。同寺は一見遠く離れた寺院のようであるが,信者の分布状態を反映し東国の末寺住職が本山役僧に累進する例が多く,同寺を総本山とする豊山派本部は文京区の名刹・護国寺境内に位置し,本学文京キャンパスとも至近距離にあるという浅からぬ地縁もあり,興味深いことに旧初瀬町(現桜井市)には跡見なる由緒ある地名もあることからここに取り上げた。本稿は門前町の関係者が協議して長谷寺参詣客を飛躍的に増大させるべく,夜間点灯など一連の観光振興策を門前町が一丸となって打ち出した"観光まちづくり"の諸活動に直接・間接に関わったと思われる初瀬鉄道,鉄道院,初瀬水力電気などの関係法人と,地元旅館主をはじめとする門前町・初瀬の地域社会の指導者達という長谷寺の牡丹に貢献した人物群を順次取り上げ,かれら相互の関係を管見の限りの文献から可能な限り解明しようと試みたものである。とりわけ鉄道院旅客係に勤務していた異才の鉄道員・森永規六(後の運輸公論社主幹,多くの観光案内書や旅行趣味鼓吹雑誌を刊行)が外部から観光客誘致に尽力したという今日の「観光カリスマ」にも相当する先駆的な功績にも注目した。今後は更に必要な現地調査・資料探索を重ねて未解明部分に迫っていくとともに,来春には観光マネジメント学科に集結する各観光分野の専門家各位からお知恵とご示唆を頂いて,当該分野の研究をさらに深化させていきたい。
著者
内藤 歓修
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-113, 2008-03

Jane Austenの前期の小説3作品の中で,本作品は書き直しの箇所が極めて少なく,初期の形態を保ったままで出版された.作者は作品を書き上げた後も,いろいろ手を加え改編したと言われている.本作品は出版者とも問題があって,書き上げた後殆ど手を加えていない状態で出版されたので,作者の小説作法の原型が読み取れる.Austenの6編の小説は全て「夫探し」がテーマになっている.ヒロインは,将来夫となる若い男性との交際や周囲の人々との付き合いを通じ,幾つかの障害を乗り越えて,人間的成長をしていき,理想的な男性と結婚するに到るのである.特別異常な事件も起らず,日常の平凡な生活の中でストーリーは展開していく.その典型的な形は既に本作品に現れている.しかし,本作品は当時流行のゴッシク小説に対して,批判的な面を多くもっていて,明らかにそのパロディである箇所が随所に見られる.ヒロインが成長をしながら結婚を成就していく筋と,ゴッシク小説のパロディ的側面を両立させながら物語は進んで行く.Northanger Abbeyは作者の前期の作品で,しかも手を加えることが少なかったために,ヒロインを始めとして登場人物像が粗削りで,完成度が低い代わりに,作品全体が若々しい感じを与え,かつ作者の基本的な小説作法がはっきりと読み取れ,興味深いものとなっている.本論ではヒロインらしくないヒロインのCatherineがゴシック趣味に惑溺しながらもそこから脱却し,またThorpe兄妹の欺瞞に満ちた人間性を見抜けるようになり,人間的成長をして,Henryと結ばれて行く過程を分析し,考察する.
著者
柴田 徹
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.175-194, 2008-03

本小論では,米国マイクロソフト社のウインドウズをオペレーティング・システムとするパーソナル・コンピュータの日常的な使用において,少なくないエンド・ユーザが経験するであろうソフトウェアのインストール/アンインストール作業に着目し,ソフトウェアのインストール/アンインストール作業の完遂に必要とされる技術的な知識・技能の一端を,複数のソフトウェア・ベンダが公開する技術情報文書の記述を分析することによって明らかにするとともに,わが国の大学学士課程における全学共通教育としての情報処理教育の若干の課題について検討した。複数の技術情報文書を分析した結果,ソフトウェアのインストール/アンインストール作業の完遂には,主要には, 1.コマンド・ライン(コマンド・プロンプト), 2.ウインドウズ・レジストリ, 3.ファイルとフォルダ, 4.オペレーティング・システム付属のユーティリティ・ソフトウェアなどに関する知識・技能,すなわち,オペレーティング・システムの機能およびオペレーティング・システム付属のユーティリティ・ソフトウェアの機能を一定程度活用することができるような知識・技能が必要とされることが明らかとなった。現状においては,制度的にも現実的にも,そうした知識・技能の教授は,大学学士課程における全学共通教育としての情報処理教育において取り扱わざるを得ない。そこで本小論においては,大学教育としての当該内容の取り扱いに関して,現実的な諸問題も考慮して,オペレーティング・システムの発達の歴史をふまえた教育内容の編成・体系化と,教育用シミュレーション・ソフトウェアの開発を提案した。
著者
柿崎 環
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.41-57, 2004-03

現在、内部統制とは「業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性、関連法規の遵守という目的達成に関して合理的保証を提供することを意図した、事業体の取締役会、経営者およびその他の構成員によって遂行される一つのプロセス」とする米国のCOSO報告書による定義が、デファクト・スダンダードとされている。しかし、米国において内部統制概念は、単なる会計マターではなく、証券市場の情報開示・会計・監査を支える個々の企業のガバナンスの根幹部分としての法的側面に一貫して重大な意義があることに留意すべきである。すなわち、企業の内部統制システム構築は、証券市場の公正性確保にむけた情報開示の「質」の向上の前提条件であるとともに、経営者の対市場責任の基礎として把握され、その更なる充実が、適時開示の法的基礎をその実現手続と共に示す2002年米国企業改革法においてみてとれる。わが国においても平成14年、委員会等設置会社の取締役会が、商法施行規則において内部統制構築の基本方針を定めることを義務付けられたが、ともに証券市場を活用する公開株式会社を前提とする以上、共通の問題意識をもって内部統制の構築やその法規制のあり方を検討する必要がある。本稿においては、米国の内部統制規定をめぐる歴史的展開を踏まえて、我が国においても早急に対応が求められる商法施行規則193条等について検討し、そこに列挙された内部統制構築のための具体的項目から浮かび上がる問題点や課題について、さらには監査役設置会社における内部統制構築のあり方と委員会等設置会社の場合のその違いについて若干の考察をくわえ、最後に、我が国の内部統制に対する市場法的視点からみた法規制のあり方について言及した。