著者
丹羽 哲矢 布野 修司 モハン パント 山本 麻子 山田 協太
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.189-200, 2006 (Released:2018-01-31)

本研究では,血縁婚姻関係を持たないもの同士を含む同居を行う住居を共住住居と定義し,事例調査により,その空間構成と利用形態を明らかにした。利用形態の特徴として,①個の空間より,共同で住む事により得られるものを重視する。②生活時間帯にずれにより共用部の適時利用が計られる。③経験者は人/場所を考えながら継続的に居住住居に住む場合がある。④居住者の他住居滞在や定期的に来訪する非同居者の存在があることが確認された。空間構成の特徴として,①個室の確保と同時に共用空間の快適性を求める。②最も広い空間を造り共用空間として利用する。③所有物のうち共用可能なものは共用空間に配置する傾向があることが示された。
著者
明石 達生
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.33-43, 2010 (Released:2018-01-31)

人口減少下でも,都市は拡散を続ける。モータリゼーションが立地選択を平準化したからである。住宅需要が減っても,高層住宅の建築紛争は郊外・地方部へと拡がる。緩めに設定された容積率の規制値が,利益最大化を当然とする開発企業の達成目標値となるからである。 そうやって生じる都市空間の混乱と荒廃は,デュラビリティ(耐久性)という不動産の特性 によって長期に是正されず,時とともに助長される。だから,都市の空間形成の制御は人口減少時代であっても計画に基づく規制を手段とすることが不可欠 だ。しかし,「緩いが硬直的」なわが国の土地利用規制を「安定的だが柔軟」なものに変えるにはどうしたらよいか。この主題を考察する。
著者
加藤 雅久 若木 和雄 中村 亜弥子 志岐 祐一
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.381-392, 2007 (Released:2018-01-31)

国家総動員体制となった昭和13年から,戦後の本格的な住宅建設体制が整う24年までの約12年間は,軍や工場,輸出などに資源が振り向けられ,住宅をはじめとした一般需要は,代用品から新興建設材料に至る新興建材で補おうとしていた。本研究は,これら代用建材の供給とその品質確保の変遷を,建材行政の視点から検証し,戦後復興期を支えた新興建設材料の歴史的経緯を解明した。戦後の新建材につながる新興建材の品質確保と普及活動,およびそれらを担い行政と建材産業とを結びつける仕組みは,戦中期にその骨格が形成され,戦後は戦中期の体制を継承しつつ復興をすすめていったことがわかった。
著者
大原 一興 佐藤 哲 安藤 孝敏 藤岡 泰寛
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.247-258, 2010

社会福祉施設とくに入所施設において,その集団管理的な環境の見直しが進んでいるが,それぞれの施設において「施設らしくない」「ふつうの暮らし」を求めている。しかしその実態は,それぞれの施設によってまちまちである。同様の言葉に「家庭的な環境」「その人らしく」など環境とケアの概念が定着している。職員がこれらの言葉に対してどのようにイメージを持っているのか,職員自ら言葉に対しての写真を撮影し,その写真を分析することで,概念の共通化をはかることを試みた。とくに高齢者施設においては,食事や家事作業などを居住者がおこなっている光景が取り上げられ,職種別にもそのとらえ方に特徴が見られた。
著者
菊地 成朋 山口 謙太郎 柴田 建 田島 喜美恵
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.189-200, 2010

公営住宅標準設計51Cは,日本の住宅計画史上におけるダイニングキッチン成立の契機として位置づけられ,さらに昨今ではnLDK蔓延の起源であるかのように語られることもある。ただし,51Cが実際にどう建設され,どのような住まいを実現させたのかについてはあまり知られていない。この研究は,福岡県内に現存する51Cを発掘し,実測調査によってそれらの記録を作成し,これに資料分析を加えて地方都市圏における51Cの展開を明らかにすることによって,51Cの実像への接近を試みたものである。
著者
境野 健太郎 鈴木 健二
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.215-226, 2009

本研究は,史資料の散逸が激しく,また語り手である入所者の高齢化が進むハンセン病療養所において,「隔離施設」として発展した施設構成の変遷を明らかにした上で,居住の自由を奪われた「隔離施設」での居住の実態を寮舎及び患者住宅のプラン変遷から解明した。また,入所者による居住環境改善過程について詳細な分析を行い,人権が激しく毀損され,自己のアイデンティティを問い直される環境に長期におかれる中で,自律を獲得し,自分らしい生き方を回復していく過程/手段のひとつとして,居住環境の改善が行われてきた事実を明らかにした。
著者
藤原 美樹 石丸 進 松本 靜夫
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.201-212, 2010 (Released:2018-01-31)

本研究は,書院造の三要素である,床の間,付書院,違棚と中国古典様式家具との関連性を検証し,書院造の室内意匠の成立に起因する中国家具文化の受容と変容を探ることを目的としている。まず関連文献史料の収集,分析そして,中国寺院建築や伝統的民居,園林建築の室内意匠の実地調査を行い検証した。その結果日本では,留学僧(渡海僧)などによる文物交流により,請来された中国古典様式家具文化は家具として定着せず,独自の展開がみられ,建築の室内構成要素として日本的な家具文化を形成したものであることを明らかにすることができた。