著者
八木 絵香
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.29-34, 2013-01-01
参考文献数
6
被引用文献数
2

<p> エネルギー・環境戦略に関する「国民的議論」において,世界初の試みとなった政府主催の「討論型世論調査」。これらの結果に接した人々,特に筆者が出会う原子力分野の人々に少なくない感想は,「あれは『特殊な』人達の声で,サイレントマジョリティの考え方は違う」というものである。本当に討論型世論調査で示された国民の声は「特殊な」人々の声なのだろうか。その結果はどう読み解かれるべきだったのか。このような観点から,2012年夏のエネルギー・環境戦略に関する国民的議論を振り返り,今後のエネルギー政策の具現化に向けて,改めて原子力専門家が問われる役割について解説する。</p>
著者
田中 隆則
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.382-386, 2018

<p>  近年,海外において小型モジュール炉(SMR)の開発に向けての様々な取り組みが行われている。特に,米国,英国,カナダにおいては,政府も積極的に開発を支援する動きがみられており,IAEAやOECD/NEAなどの国際機関においても,SMRに関連する報告書が取りまとめられるなど,国際的にSMRへの関心が高まっている。このようなSMRの特性を分析し,今後,世界のエネルギー需給に与える影響を考察する。</p>
著者
小木曽 洋一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.350-355, 2015 (Released:2020-02-19)
参考文献数
2

福島第一原発の事故以降,全国の原発は全て停止し,再稼働に向けた動きも始まっているが,容易ではない状況にある。また,我が国の原子エネルギー政策の基幹である核燃料サイクルは稼働できない状態が長きにわたって続いている。原子力産業が右肩上がりであった1980年代から90年代にかけて,核燃料サイクルの中心に位置づけられるプルトニウムの生物影響リスクを評価するために,我が国で初めての動物実験施設「内部被ばく実験棟」が放射線医学総合研究所に建設され,実験研究が行われた時期があった。その一翼を担った研究者の立場から,実験棟の設計,建設,運用に携わった経緯を織り交ぜながら,プルトニウムを実験動物に吸入曝露あるいは注射投与して発がんのリスクを評価する研究を進めていった体験を概説する。
著者
桜井 久子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.701-702, 2011 (Released:2019-09-06)

平成23年6月中旬,日本原子力産業協会は協力協定を有するロシア国立研究センター「クルチャトフ研究所」のエフゲニー・パーブロビッチ・ベリホフ総裁(=写真)が来日したのを機に,東京都内で「チェルノブイリ事故から25年―福島第一原子力発電所事故への教訓」と題する講演会を開いた。4号機の事故の収束に大きな力を発揮した同研究所の実績を紹介するとともに,「チェルノブイリ原発事故は原子力産業の発展のみならず多方面に影響を及ぼした。が,事故に備え,対策を講じることは事故前にもできたはずである」と述べ,国際原子力事象尺度(INES)でレベル7を記録した同事故を述懐した。
著者
真鍋 勇一郎 中村 一成 中島 裕夫 角山 雄一 坂東 昌子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.705-708, 2014 (Released:2020-02-19)
参考文献数
15

マラーのショウジョウバエの実験以後,放射線のリスクは,総線量で決まることが示され,LNT(直線しきい値なし(仮説))が放射線防護の基礎となった。しかしながら,後にラッセルらによって,線量率効果の存在が示された。これらの異なった種に対する結果を,統一的に理解し,それをヒトまで援用する手法として数理モデルを提案する。更にスケーリング則を導入すると,様々な種の実験データを統一的に理解できる。これは放射線リスク評価に新しい知見を加えるだろう。
著者
秋山 勝宏
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.499-502, 2011 (Released:2019-09-06)
参考文献数
5

「パラジウム触媒によるクロスカップリングの発展への寄与」の功績により根岸英一,鈴木 章,R. E. Heck先生らが2010年にノーベル化学賞を受賞した。クロスカップリングは1970年代から盛んに研究され,有機合成ではこの分野は日本のお家芸といえるほど,日本人の貢献が大きい。今回はクロスカップリングについて,その基本的な知識や考え方を解説する。まず総論としてクロスカップリングの反応形式や反応機構について説明し,医薬品やエレクトロニクス材料への用途について述べる。各論として代表的な反応である熊田―玉尾カップリング,根岸カップリング,鈴木―宮浦カップリングと溝呂木―Heck反応について反応の特徴や問題点について解説する。最後に,最近の研究として固定化触媒の開発や安価な鉄触媒を使用する研究を紹介する。
著者
林 勉
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.91-96, 2012 (Released:2019-10-31)
参考文献数
4

わが国の自然エネルギー発電はどれだけ有効かについて,導入目標,導入可能ポテンシャル等から評価したが,最大導入可能量は総発電量の15%ぐらいが限度であることを示した。現実にはこれを達成するためには高いハードルがあることおよび自然エネルギーを導入する上での様々な問題点やドイツの例も踏まえた政策上の問題点についても考察した。電源別構成は当面,原子力,火力,水力が主体であり続けるというのが結論である。
著者
遠藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.561-567, 2014

<p> レーガン政権の下でようやく始まった日米原子力協定交渉は難航した。米側は,日本の原子力活動に包括事前同意方式を認めることには同意したものの,具体的な個々の点については厳しく,また行政府部内でもさまざまな異論が出てきた。何とか正式に署名にこぎつけたものの,その後の議会審議は波乱の連続であった。</p><p> プルトニウム空輸に対するアラスカ州からの反対,核不拡散強硬派からの反対などで審議は予断を許さなかった。この波瀾を何とか乗り切ったのは,レーガン大統領の決断,レーガン・中曽根の信頼関係によるところが大きかった。この協定が発効したのは,1988年7月であり,正式交渉が始まってから6年もの年月が経っていた。</p>
著者
吉元 勝起
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.107-111, 2011 (Released:2019-09-06)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

1977年の日米再処理交渉を機に,基本設計まで終えていたシュウ酸沈殿法によるプルトニウム単体転換プロセスは,日米再処理交渉によって断念を余儀なくされたことから,核不拡散上の観点から,プルトニウムとウランの混合溶液を転換する新たな方法の開発が必要となった。 日本が独自に開発したマイクロ波加熱直接脱硝法は,電子レンジと同じ原理を応用した日本独自の技術である。マイクロ波加熱直接脱硝法を核拡散抵抗性に優れたプルトニウム・ウラン混合転換プロセスの中核技術として採用し,東海再処理工場に隣接してプルトニウム転換技術開発施設を建設し,1986年より開発運転を行っている。この技術を短期間にいかに育み,開花させるに至った経緯について,その歴史的背景等を交えながら解説する。
著者
早野 龍五 澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.566-572, 2017 (Released:2020-02-19)

事実の解明は科学者の発した素朴なツイートから始まった。あっという間に多数の協力者が協力を申し出てボランティアとクラウドファンディングの輪が広まり,それを学術論文4本で世に問うた。陰膳調査,BABYSCAN,D-シャトルが明らかにしたこととは何か。