著者
澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.776-779, 2014 (Released:2020-02-19)
参考文献数
11

正力大臣車中談(案)という風変わりな標題の史料がある。昭和31年の原子力委員会で諮られている。正力は東京から選挙区富山に電車でお国入りする車中で,随行記者団にさまざまな真情を披瀝した。同年1月中旬のお国入りの際には,原子力委員会発足直後の声明書の内容に関して談じた。原子力委員の湯川は,新聞紙面に踊った正力の車中談に接し,困惑と憤りを露にした。そんな背景に湯川ら物理学者と正力ら政治家の思惑の違いが根強くあった。それが,結果的に原子力ムラと御用学者を生む発端になったのではないか。史料をもとに論考する。
著者
澤田 哲生
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の原子力開発の黎明期(1950年代)から、2011年3月11日の東日本大震災・福島第一原子力発電所事故を経て今日に至るまで、原子力界の歴史と様々な変遷を湯川秀樹博士の遺した歴史資料などに基づいて分析した。その結果、「原子力ムラ」がどのようにして形成されて来たのかについて、その構造的仕組みを明らかにし、系統樹を作成した。また、同時に原子力ムラの癒着構造に関して、その原型を歴史資料の中から発見し、その意義を論じた。さらに、主に反原発・脱原発派との情報交換・情報共有および対話を通じて、原発の推進vs.反対という二項対立構造を乗り越えるための要件を見出した。
著者
澤田 哲生
出版者
日本メルロ=ポンティ・サークル
雑誌
メルロ=ポンティ研究 (ISSN:18845479)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.45-65, 2017-09-01 (Released:2017-11-09)
参考文献数
17

Dans ses cours de Sorbonne (1949-50 et 1951-52), Merleau-Ponty présente brièvement à ses étudiants la conception d’« ultra-chose » telle qu’elle est proposée par Henri Wallon, spécialiste de la psychologie de l’enfant, dans son chef-d’oeuvre Les origines de la pensée chez l’enfant (1945). Loin d’insister sur la contradiction logique (l’« antinomie » selon Wallon) de la pensée enfantine, le phénoménologue souligne son caractère « spontané » en la rapprochant de l’expérience du sublime kantien (« absolument grand »). L’affirmation de l’« ultrachose » n’est pas momentanée dans la carrière philosophique de ce phénoménologue. Car, en discutant des oeuvres de Claude Simon dans ses cours de Collège de France (1960-61), il la reprend pour décrire le phénomène d’« emboîtement », énormément en jeu dans sa dernière pensée, dans lequel l’expérience du sujet s’associe à d’autres de façon à ce qu’il ne puisse les anticiper dans sa prospective et intelligence. Il nous est dés lors permis d’affirmer que, malgré la mention momentanée, la conception d’« ultra-chose » contribue au développement et au déploiement de la pensée phénoménologique de ce phénoménologue.
著者
有馬 朗人 澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-4, 2018 (Released:2020-04-02)

「科学技術立国をめざしてきた日本の技術が,2005年を節目に凋落し始めている。大学進学率の上昇によって政府のサポートが十分にいきわたらなくなり,科学技術を推進する学と官とのスクラム体制も弱体化した」――東大総長,文部大臣,科学技術庁長官を務めた有馬氏は,今の日本の科学技術の水準の低下をこう憂える。そのための処方箋として同氏は,エネルギーや科学技術を進めていく司令塔を作ることと,科学技術推進のために予算措置を含めた高等教育の強化を訴える。また,原子力界に対しては未来を見据えた視点で将来を切り開いてほしいと述べた。
著者
西村 丹子 船木 勇佑 澤田 哲生 齊藤 正樹 川部 隆平 小島 良洋
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会 年会・大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.184, 2003

軽水炉の炉心溶融事故時における原子炉圧力容器の溶融破損を回避するためのアクシデントマネジメント策の一つとして考えられている外面冷却方策の有効性を調べるため、原子炉圧力容器冠水を想定した模擬実験及び一連の解析を行った結果について報告する。
著者
坂東 昌子 真鍋 勇一郎 澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.252-258, 2015 (Released:2020-02-19)
参考文献数
1
被引用文献数
1

2011年3月11日の福島第一原子力発電所事故。引き続き事故の余波は,福島県浜通りなどから今なお避難を強いられている12万人の皆さんに止まらない。福島に住み続けること選択した多くの人々をも心配させている。事故後4年を経ても「いつまで続くのかも分からない事故の影響」のことが多くの人の心にひっかかっているという状況である。そんななか,それまで放射線被ばくの生体影響というテーマに取り組んだことのなかった物理学者が,“なにかしなければいけない”との思いで学の境界線を気に留めず,乗り込んで来た。学術の越境が知の統合を生み,ここに新たな叡智が生まれようとしている。80年以上続いて来た放射線防護の基本概念が覆される可能性を秘めた研究成果である。
著者
澤田 哲生
出版者
日本メルロ=ポンティ・サークル
雑誌
メルロ=ポンティ研究 (ISSN:18845479)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.85-97, 2015-09-27 (Released:2015-09-26)
参考文献数
16

À la célébration du vingtième anniversaire de Japan Merleau-Ponty Circle, la tâche s’impose de réfléchir à nouveau sur l’ouverture et le développement de la dernière pensée du philosophe, car au cours de ce quart de siècle se trouvent mis à jour la plupart de ses manuscrits et notes eux-mêmes susceptibles de reprendre la lecture de son Le visible et l’invisible.Notre discussion consiste, dans cet horizon, en deux points : en premier lieu, ce phénoménologue, à sa dernière pensée, tente de considérer les phénomènes, les choses et les vécus au niveau des « éléments » au cours desquels chacune expérience perceptive « s’empiète » l’une sur l’autre en prenant forme bien subtile de « lambeaux » ou de « haillons » ; en deuxième lieu, sans se contenter de décrire une telle réciprocité du phénomène en tant qu’éléments, ce phénoménologue n’y maque pas de réfléchir sur l’aspect paradoxal (le « fantôme », l’« illusion » de centre ou l’« imminence » selon sa terminologie) de la vie humaine. Ces deux aspects nous permettront de réfléchir sur ce qu’il voulait réaliser dans sa dernière pensée sans limiter trop hâtivement la discussion à la « chair » ou au « chiasme ».
著者
佐治 悦郎 佐田 務 田中 治邦 福田 龍 堀内 知英 澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.141-151, 2021

<p> 核燃料サイクルの基幹施設となる日本原燃の再処理工場とMOX燃料工場が昨年,相次いで操業に必要な安全審査に合格した。政府は長期的なエネルギー確保をめざす戦略の中で,当面はプルサーマルを推進していくとしている。とはいえ高速増殖炉の開発の見通しが不透明な中で,いわゆるプルトニウムバランスや安全性への懸念の声も聞かれる。専門家にこの問題をめぐる現況と,今後の課題や展望について論じてもらった。</p>
著者
早野 龍五 澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.566-572, 2017 (Released:2020-02-19)

事実の解明は科学者の発した素朴なツイートから始まった。あっという間に多数の協力者が協力を申し出てボランティアとクラウドファンディングの輪が広まり,それを学術論文4本で世に問うた。陰膳調査,BABYSCAN,D-シャトルが明らかにしたこととは何か。