著者
遠藤 典子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.172-176, 2016

<p> 日本の原子力損害賠償制度を2つの視点から検討する。第1回では,東京電力福島第一原子力発電所事故の損害賠償に際して,原子力損害の賠償に関する法律(以下,原賠法)を補うべく,政府が原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下,支援機構法)を制定した政策目的と政策形成過程について述べた。第2回となる本論では,小売全面自由化や発送電分離といった電力システム改革をはじめとするエネルギー政策との整合性に注目し,国内原子力発電所の過酷事故を想定した普遍的かつ恒久的制度として検討を行う。それはまさしく,支援機構法の附則6条にある,国と原子力事業者との負担のあり方についての再検討である。</p>
著者
遠藤 典子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.792-796, 2015

<p> 日本の原子力損害賠償制度を検討するに際し,2つの視点を設けた。第一に,東京電力福島第一原子力発電所事故における緊急レジームとして,第二に,電力システム改革の進展と整合性のある,国内原子力発電所の過酷事故を想定した普遍的かつ恒久的制度としての検討である。第1回では,上記,第一の視点について述べる。政府は,公的資金援助による損害賠償制度の再構築に迫られると同時に,福島第一発電所事故が引き起こした複合的な社会・経済問題の解決に追われた。そして,従来の原賠法を二層化するかたちで原子力損害賠償支援機構法を制定,諸問題に対する解決策としたことを示す。</p>
著者
遠藤 典子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.172-176, 2016 (Released:2020-02-19)
参考文献数
5

日本の原子力損害賠償制度を2つの視点から検討する。第1回では,東京電力福島第一原子力発電所事故の損害賠償に際して,原子力損害の賠償に関する法律(以下,原賠法)を補うべく,政府が原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下,支援機構法)を制定した政策目的と政策形成過程について述べた。第2回となる本論では,小売全面自由化や発送電分離といった電力システム改革をはじめとするエネルギー政策との整合性に注目し,国内原子力発電所の過酷事故を想定した普遍的かつ恒久的制度として検討を行う。それはまさしく,支援機構法の附則6条にある,国と原子力事業者との負担のあり方についての再検討である。
著者
尾本 彰
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.396-401, 2009-05-01
参考文献数
10

<p> 現在,原子力発電は30ヵ国が行っているが,これに加え新たに60を超える開発途上国が,ほぼ共通する理由(エネルギー消費の増大に対処するにあたってエネルギーセキュリティ,化石燃料価格への関心,環境問題を考慮)から,原子力発電導入を考え,IAEAにそのためのインフラ整備支援を求めてきている。</p><p> 本稿は,(1) はじめにこの原子力発電利用拡大の動きを概観し,(2) 拡大と新規導入のための課題,これに対処するIAEAの支援活動を,IAEAの果たすべき役割に関しての考え,ガイダンス図書策定の動きと主要図書の発しているメッセージ,具体的な支援活動としての技術協力プロジェクトの概要を述べ,(3) これらの活動で浮かび上がってきている,共通する課題とそれに対する国際社会およびIAEAの対処について考えるところを述べる。最後に,(4) 日本の原子力関係者への期待を記述する。</p>
著者
編集委員会
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.656-659, 2007-10-30

<p> 日本原子力学会は9月28日,北九州で開いた「秋の大会」で,「中越沖地震・柏崎刈羽原子力発電所の安全に関する報告会」と題する特別セッションを開いた。約400人が傍聴した会合では,東京電力の武藤栄執行役員が「地震の発生後も『止める』,『冷やす』,『閉じ込める』という原子炉の重要な安全機能は維持された」と指摘。東京大学の班目春樹氏は「想定を大きく上回る地震動を受けたが,専門家としての相場観からすると,実際の設計には,想定した地震の数十倍の余裕があると推定される。そのために原子炉の安全機能は維持された」と述べた。また会場からは,情報提供のあり方や人材育成などについての質問があった。本稿では,このセッションのもようを紹介する。</p>
著者
大橋 弘忠
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.732-736, 2010-11-01

<p> 我が国では近年,いくつかの原子力発電所で設計想定を超える大きな地震動がもたらされたが,地震による被害は軽微なものであり,原子力発電所の安全は確保された。それにもかかわらず,国民の間では設計想定を少しでも超える地震動が発生すると原子力発電所の多くの設備が損傷するのではないかという懸念が拡がり,地震に対する原子力発電所の安全性を改めて見える形にしていくことが求められている。これを受けて,日本原子力学会原子力発電所地震安全特別専門委員会では,安全分科会において,地震に対する安全確保の基準,考え方,評価の方法など多方面からの再検討を行い,地震安全の論理を取りまとめたのでその概要を紹介する。</p>
著者
佐田 務
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.358-360, 2008-06-01

<p> 日本原子力学会は3月27日に大阪大学で開いた春の年会で,「新潟県中越沖地震柏崎刈羽原子力発電所 地震報告会」と題する特別セッションを開いた。約250人が傍聴した会合では,産業技術総合研究所の杉山雄一氏が「今回の地震は,発電所の沖合から発電所のある南東方向に傾き下がる断層がひき起こしたと推定される」と指摘。また東京電力の吉田昌郎氏は「地震による原子炉建屋への影響評価を解析した結果は,全号機ともせん断ひび割れ発生の目安値を下回っており,それはおおむね弾性範囲内にとどまっていることを確認した」と述べた。さらに会場参加者との質疑では,堆積層による影響や今回の地震に伴う規制強化への懸念などについて質問があった。本稿では,このセッションのもようを紹介する。</p>
著者
岩城 智香子
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 = Journal of the Atomic Energy Society of Japan (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.483-484, 2010-08-01

<p> 男女共同参画委員会では,「2010年春の年会」の企画セッションにて,話題の女性おふたり,内閣府男女共同参画局長の岡島敦子氏,内閣府原子力委員会委員の秋庭悦子氏をお招きし,講演会を開催した。岡島氏は,日本および科学技術分野において女性の進出が遅れている現状を統計的資料を基に示され,男女共同参画が進まないことが及ぼす社会的影響について説明された。また秋庭氏は,原子力特有の課題,女性の進出が進まない要因にふれ,今後,女性に期待されることについて述べられた。講演後,会場から多くの意見が出され,活発な議論がなされた。</p>
著者
田中 知
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.152-160, 2013 (Released:2019-10-31)

本稿は,平成24年7月24日に開催された日本学術会議シンポジウム「巨大災害から生命と国土を護る―24学会からの発信」の第6回「原発事故からエネルギー政策をどう立て直すか」における講演をもとに書き下ろした。講演から半年以上経過しているが,現在においても有用な議論の材料となりえる内容であると思う。 まず,我が国のエネルギー政策が掲げていた基本的視点および原子力エネルギーの位置付けについて述べる。次に,事故によって顕在化された原子力エネルギー利用のリスクを5つの視点から提示し,原子力災害リスクを低減するためになすべきことについて提言する。最後に,講演当時におけるエネルギー政策の方向性について確認し,原子力エネルギーを利用する本来的な意味についてまとめる。 原子力発電所の事故におけるリスクをどのように低減することができるか,エネルギーの安定供給性に係るリスクをどのように考えればよいのか,など,多角的な視点からエネルギーを考える一助となれば幸いである。