著者
横谷 明徳 高須 昌子 石川 顕一
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.81-85, 2014 (Released:2019-10-31)
参考文献数
10

放射線は,今や医療現場においては治療や診断など国民の健康生活に不可分な要素である一方,福島における低線量被ばくに対するリスク評価など,放射線に関わる研究者が取組まなくてはならない課題は数多くある。複雑な階層構造を持つ生物システムが放射線ストレスに対してどのように応答するかについては,分子,細胞あるいは個体など様々なレベルでの実験が行われている。一方,これらの実験により得られた知見から法則性を抽出し,放射線応答の一般化したモデルを構築することが求められる。コンピュータの高性能化により,最近ではこれらのモデル研究も新しい領域に入りつつある。放射線の照射により生じるDNA損傷・修復の初期の物理・化学的過程からDNA修復に関する生物学的過程及びアト秒領域におけるDNA-電子相互作用に焦点を当てた理論研究など,シミュレーション研究の最前線を解説する。
著者
田仲 文郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.87-90, 2015 (Released:2020-02-19)

鉄道車両の保守には大勢の係員が関わっており,ヒューマンエラーによるトラブルの防止は現場管理上の重要な課題として様々な対策の工夫がなされてきている。本稿ではヒューマンファクターの観点からこれまでの取り組みを振り返り,ヒューマンエラー対策だけでなくヒューマンファクターを前向きに活用することや,全社的な安全管理,品質管理マネジメントの一環として現場の問題を考えることの必要性について述べる。
著者
山瀬 豊
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.828-832, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
3

高エネルギー電子加速器を用いた電子線滅菌は,滅菌法では比較的新しい方法であるが,近年,医療機器,医薬品容器等の人体に対するリスクの高い医療用品の製造時の滅菌法として一般的な滅菌法となってきた。その背景には,高エネルギーの電子線は,最終梱包のまま短時間に低温で透過処理できることや,従来から主流であったエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌のEOの発がん性の問題関連の規制等,滅菌バリデーション(科学的妥当性の検証)要求,無菌性保証など品質規格要求等も厳しくなったことなどがある。さらに近年は,ガンマ線滅菌の線源高騰,環境,セキュリティ,リスク管理等も重視されEOG滅菌だけでなくガンマ線滅菌からも電子線滅菌に切り替えるケースも増えている。今後は,コンプライアンス順守やCSRの推進等の社会的な取り組みを背景に,環境,労働環境,安全,品質などの対策強化などに伴い,医療機器,医薬品等の電子線滅菌はさらに増加していくことが考えられる。
著者
堀 啓一郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.91-93, 2015 (Released:2020-02-19)

福島第一原子力発電所の溶融した炉心燃料は2020年頃から取り出す計画である。この取り出した燃料デブリの計量管理手法については,廃炉に関する研究開発プロジェクトの一つとして日本原子力研究開発機構と東京電力が中心となり検討を進めている。この現状について報告する。
著者
リカルド オルランディ 廣瀬 健太郎 矢板 毅 山上 浩志 家田 淳一 神戸 振作 石川 法人
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.280-284, 2020 (Released:2020-11-01)
参考文献数
6

東京電力福島第一原子力発電所事故対応では,燃料デブリと闘う未知の領域への挑戦が待っている。安全性の向上や廃棄物問題の解決も必須だ。さらに放射線利用にはイノベーションを誘起する先端技術も求められる。日本原子力研究開発機構の原子力科学研究部門には3つの研究センターがあり,これらの問題に対応するため先端的な研究,基礎基盤研究や応用研究を行っている。
著者
齊藤 正樹
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.87-89, 2016 (Released:2020-02-19)
参考文献数
9

使用済み燃料に含まれるマイナーアクチニドを軽水炉のウラン燃料や高速増殖炉のブランケット燃料に少量添加すると,燃料中に軍事転用困難な238Puの同位体割合を増加させ,高い核拡散抵抗性を有するプルトニウムを生成することが可能である。「もんじゅ」は,余剰プルトニウムを効率的に燃やしながら(Pu Eater),かつ,核拡散抵抗性の高い軍事転用困難なプルトニウムを増殖する(Pu Breeder)核不拡散上極めて重要な技術の実証に向けた国際研究開発拠点として,国内外の英知を結集して再構築し,将来のエネルギー安全保障のみならず,原子力の平和利用と核不拡散の両立の観点からも,人類史上初めての挑戦を,国は高い志を持って,揺るぎなく進めるべきである。
著者
直井 洋介 小田 哲三 富川 裕文
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.536-541, 2016 (Released:2020-02-19)
参考文献数
12

日本は1955年に制定された原子力基本法に従い,原子力の研究開発,原子力エネルギーの利用を平和目的に限って推進してきた。平和目的に限られていることを担保するため,事業者は計量管理を行い,IAEAと保障措置協定を締結する以前は二国間原子力協定(日米,日仏,日加等)に基づき報告を行い,1977年のIAEAとの保障措置協定を締結後は国内法が改定され,それに基づき計量管理及びその報告が行われてきた。1999年には追加議定書を締結して新たな義務を負うIAEAの保障措置活動に対応してきており,これまでわが国の原子力活動についての申告の正確性と完全性がIAEAによって検認されてきている。2004年には,核物質の転用や未申告の活動はないとの「拡大結論」を得て以降,これまで毎年この拡大結論を得てきている。本報告では,JAEAがこれまで取り組んできたIAEAの保障措置に必要な技術開発や人材育成への協力などIAEA保障措置活動への貢献について報告する。
著者
田邊 恵三 村上 健太
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.596-597, 2023 (Released:2023-10-10)
参考文献数
2

国内において新型燃料の導入に向けた動きがある。新型燃料の導入は燃料棒の熱的負荷の緩和等,原子力安全の向上に寄与するが,海外で十分実績のある燃料であっても,国内への展開は遅れている。 原子力安全部会では,新型燃料導入を題材に,新技術を導入する際の課題を整理するため,セミナー形式で「新型燃料の導入に向けた道筋 ―安全評価技術の継続的向上の視点から―」を開催した。新型燃料の導入に付随する新たな安全評価技術の導入や規制プロセス,安全研究,規制機関との対話などさまざまな議論が展開された。新技術の導入には産官学の連携が必要不可欠である。本シリーズでは,原子力事業者,学会,規制の各々の視点から,ハードウェアおよびソフトウェアの新技術導入に係る現状の課題を整理し,改善の方向性を示す。
著者
村上 健太 山本 章夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.606-607, 2023 (Released:2023-10-10)
参考文献数
4

新型燃料の場合,海外で実績があるとしても,メーカ毎の設計の違いが解析結果に与える影響を評価することが必要である。商業機密に留意しながらも,代表的な製品に対する試験結果を外挿するような判断の仕組みを整えることが好ましい。統計的安全評価コードは,個々の要因がパフォーマンスに与える影響を詳細に分析するためのプラットフォームの役割を果たす。その普及には,95/95値に代表される評価基準を関係者の共通理解とする必要がある。核燃料の場合,過渡・事故時の挙動の評価が特に重要である。材料試験炉という基盤インフラが危機的な状況にあるなか,安全機能と物理現象の関係を丁寧に整理し,個々の試験の意義を明確に定義する姿勢が求められる。
著者
河田 東海夫
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.32-35, 2015 (Released:2020-02-19)
参考文献数
7

欧州では自然放射線による国民の年間線量が日本人の倍以上になる国がいくつもある。欧州全体では,年間7mSvを超える住民の総人口は2,000万人を超え,13mSvを超える総人口は約600万人と見積もられる。そうした環境下でも,欧州では高度に文化的な生活が連綿として営まれてきたという事実は,原発事故の避難住民が「1mSvの呪縛」を克服し,どの程度の被ばくなら受忍可能かを考えるうえで,重要な示唆を与える。
著者
芳賀 繁
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.708-712, 2021 (Released:2021-10-10)
参考文献数
8

レジリエンスエンジニアリングに基づく安全マネジメントとして,はじめにレジリエンスの基本的4能力とされる対処,監視,学習,予見を高めるための施策を解説する。次に,安全マネジメントの現状がマニュアル主義に陥り,ヒューマンエラー対策の悪循環を生んでいることを指摘した上で,システムのレジリエンスを高めるためにはセーフティIIを目指す安全マネジメントが必要であることを説明する。その実践例として,「うまくいっていることから学ぶ」取り組み,チームで対処する力を高める取り組み,現場第一線が自律的に動く能力を高める研修などを紹介する。
著者
浜井 富生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.334-339, 2014 (Released:2019-10-31)
参考文献数
1

海外ウラン資源開発株式会社は日本の原子力発電へのウラン燃料の安定供給を目的として,1970年に設立された。1978年に生産を開始したアフリカ・ニジェール共和国のアクータ鉱山,1999年から生産を開始したカナダ・マクリーンレイク鉱山からのウラン精鉱引取分の全量を日本の電力会社に販売して来た。2011年の福島第一原発事故前は,日本で必要なウラン燃料の10〜15%を安定して供給していた。今回,当社のウラン鉱山開発について紹介するとともに,最近の探鉱・開発案件のいくつかについて紹介する。
著者
岩井 敏 熊澤 蕃 仙波 毅 石田 健二 高木 俊治
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.751-755, 2016 (Released:2020-02-19)
参考文献数
10

疫学とは地域や集団を調査し,健康影響原因と考えられる要因と健康影響発生との関連性の強弱を統計的に調査・解析する学問であり,「コホート」とは,疫学調査の対象として一定期間にわたって追跡調査される人の集団のことである。本稿では,低線量および中線量の慢性被ばくであるテチャ川流域住民疫学コホート(TRC)の固形がんと白血病の罹患率と死亡率の疫学調査結果の最新データに基づいて解説し,原爆被ばくコホートおよび高自然放射線地域のコホートデータとの比較についても解説する。
著者
坂東 昌子 真鍋 勇一郎 澤田 哲生
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.252-258, 2015 (Released:2020-02-19)
参考文献数
1
被引用文献数
1

2011年3月11日の福島第一原子力発電所事故。引き続き事故の余波は,福島県浜通りなどから今なお避難を強いられている12万人の皆さんに止まらない。福島に住み続けること選択した多くの人々をも心配させている。事故後4年を経ても「いつまで続くのかも分からない事故の影響」のことが多くの人の心にひっかかっているという状況である。そんななか,それまで放射線被ばくの生体影響というテーマに取り組んだことのなかった物理学者が,“なにかしなければいけない”との思いで学の境界線を気に留めず,乗り込んで来た。学術の越境が知の統合を生み,ここに新たな叡智が生まれようとしている。80年以上続いて来た放射線防護の基本概念が覆される可能性を秘めた研究成果である。
著者
森田 貴己
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.408-412, 2016 (Released:2020-02-19)
参考文献数
10

東京電力福島第一原子力発電所の事故により,大量の放射性物質が海洋に流出した。このため,日本の水産業は甚大な被害を被り,その被害は現在も継続している。事故後しばらくは水産物から比較的高い濃度の放射性セシウムが検出されていたが,2015年度の福島県のモニタリング検査において国の出荷制限基準である100 Bq/kg-wetを超過した海産物は1検体もない。本報告では,福島県海域での水産物汚染の現状を紹介するとともに,その汚染が減少した仕組みや汚染が比較的長期化した一部の魚種についてその理由を解説する。また,報告例の少ない水産物中のストロンチウム-90についても述べる。