著者
浅利 美鈴 丸川 純 酒井 伸一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.412-425, 2011 (Released:2016-12-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

日本における使用済み小形電池の回収方法とその実態を把握し,回収・リサイクル検討に向けた基礎的知見を得ることを目的に,小形電池の回収率を推定した後,使用済み小形電池に関する自治体収集分類等に関する調査,消費者アンケート,小型家電製品からの小形電池取り外し実態調査を行った。その結果,日本における小形電池の回収率は26%と推定され,特に二次電池等は低く,欧州各国と比較しても,向上の余地があると考えられた。また,自治体における収集分類等は,自治体および電池間で統一されておらず,必要な情報発信も不十分と考えられた。小型家電製品からの小型電池取り外し実態に関する調査からは,特に二次電池を利用する小型家電製品について,ほとんど電池が取り外されずに捨てられていることが明らかとなった。これらの背景としては,アンケート調査より消費者の情報・認知不足や負担感が示唆され,検討を要する点が抽出された。
著者
木村 照夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.140-147, 2010 (Released:2014-10-07)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

循環型社会形成の重要性からリサイクルを義務づける数多くの法律が施行されている中で,繊維製品に関してはいまだ法律が施行されていない。現在,回収された衣類廃棄物の大半は中古衣料,反毛およびウエスとしてリサイクルされているが,衣類に関するリサイクル率は20%程度に留まっている。リサイクル率が低い大きな理由は繊維製品の多様性によるリサイクルの難しさにある。本稿では繊維製品の中でもわれわれに一番身近な衣類を対象に,リサイクルの現状と課題を整理している。さらに,筆者らの衣類廃棄物を用いた木材代替材料ならびに天然繊維複合材料としてのリサイクルの試みを紹介している。また,環境負荷の小さなリサイクルを推進する上でLCA解析が重要であること,ならびにリサイクル推進には技術開発のみでなく国民の意識改革が必要であることを述べ,教育用に作成された漫画本の反響についても言及している。
著者
村上 進亮
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.237-244, 2009 (Released:2013-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

本稿では,マテリアルフローアカウンティングの中でも,その基礎情報を与えるものとして重要な位置にある,使用済み製品フローの捕捉について,携帯電話などを事例に検討を行った。より具体的には,携帯電話で良く話題に上る退蔵されているストックも含めた推計手法の整理を行った。それと同時に,家電リサイクル法対象品目を事例に,国際資源循環等のいわゆる見えないフローの捕捉に関しても議論を行った。また,携帯電話のデータについて,そこに含有される金属について資源性の観点からその価値を検討することで,こうした機器に含まれる貴金属類のリサイクルの重要性を再認識しつつ,その価値が消費者の考える価値と乖離している可能性を示唆した。
著者
岡部 徹 野瀬 勝弘
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.403-411, 2011 (Released:2016-12-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

金属鉱物資源,特にレアメタル鉱物は,何万年,何億年とかけて,きわめて特殊な自然現象により,偶然にも地表近くに濃縮された,地球がもたらした奇跡 (Miracle of the Earth) の産物である。地球科学的に特異かつ希少な現象によって生成したレアメタル鉱石の本質的な価値 (Value of Nature) はきわめて高い。しかし,現在の社会システムでは,レアメタルの本質的な価値についてはほとんど評価されることなく,鉱山開発や採掘・製錬に伴う経済的なコストのみが評価されている。一方,経済性を追求するあまり採掘に伴う環境破壊コストや製錬時の環境汚染コストは発生しても計上されない場合もある。また,製品の素材として利用した後は,リサイクルのコストがかかるため,循環利用せずに廃棄されるレアメタルが多い。本稿では,Value of Natureという概念を導入して,レアメタル資源の物質フローに関する中長期展望について述べる。
著者
小島 道一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.140-147, 2011 (Released:2015-02-21)
参考文献数
8

バーゼル条約の発効した1992年から19年,先進国から発展途上国への有害廃棄物の輸出を禁止するBan改正案の採択から16年が経とうとしている。この間,有害廃棄物の輸出入をとりまく状況は大きく変化してきた。資源価格の高騰から,廃棄物を資源として利用する意味の重要性が高まっている。また,一部の途上国で有害廃棄物の処理・リサイクル施設の整備が進み,先進国と途上国を二分して,規制の枠組みを考える意味が失われてきている。適正処理・リサイクル施設の状況,不適正なリサイクル業者の存在などを考慮に入れながら,廃棄物を資源として有効利用していくため,バーゼル条約を中心とする越境移動の規制についての見直しを行う必要が出てきている。実際に越境移動の規制見直しを行うためには,締約国会議等で上記のような問題意識を各国からの参加者が共有できるかが重要であると思われる。
著者
劉 庭秀
出版者
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-95, 2010
被引用文献数
1

近年,世界各国では拡大生産者責任を原則にリサイクル制度を整備している。たとえば,日本は,2005年に自動車リサイクル法を施行し,韓国でも2009年から生産者責任を強く求める自動車リサイクル制度を導入した。特に韓国では逆有償現象が起これば,自動車メーカーが使用済み自動車の無償回収を行うこととなっており,エアバッグ,フロンガス,ASR (Automobile Shredder Residue) がリサイクル対象である日本に比べて,非常に厳しいシステムである。しかしながら,インフラ整備の遅れと既存のリサイクル現場における情報管理の困難により,スムーズに動き出しているとはいえない。<br>広い意味で,日本と韓国の自動車リサイクル制度は,アジア諸国に様々な影響を与えた。たとえば,中国は,2010年に日本と韓国の制度を参考し,独自の自動車リサイクル制度を構築する予定である。既存の「自動車部品回復に関する技術的政策」は,自動車メーカー,解体業者,再資源化業者の活動を促すことが難しく,円滑に運用されていない状況である。また,中国と日本の間には,環境意識,自動車設計,廃棄物の減量,中古部品,再製造およびリサイクル技術のレベルに大きな差がある。さらに,地域間の様々な格差を埋めるためには,これらを考慮した政策づくりとインセンティブを与えることによって,使用済み自動車の再資源化を誘導し,促していくことが重要である。使用済み自動車の問題はアジアの差し迫った問題であり,アジアだけではなく,グローバルな視点で,パートナーシップと協力体制を構築していく必要がある。
著者
三浦 貴弘
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.11-17, 2010 (Released:2014-06-24)
参考文献数
5

近年の世界のエネルギー需要の急増等を背景に,今後は従来どおりの量・質の化石燃料を確保していくことが困難となることが懸念されている。また,低炭素社会の実現に向け,エネルギーの供給や使用段階における対応も重要となっていることから,バイオマスエネルギー等の非化石エネルギー源の利用を促進することが必要となっている。本稿では,バイオマスを含む新エネルギー導入の意義をはじめ,バイオマスエネルギーの利用状況と取り組みの現状について,エネルギー政策を所管する視点から紹介する。