著者
横溝 賢 鮎川 恵理 岩村 満
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1_26-1_31, 2016-02-01 (Released:2016-04-19)
参考文献数
5

奥入瀬自然観光資源研究会は、青森県奥入瀬渓流のコケを観光資源化するべく活動している団体である。本研究では、同団体のNPO法人化に伴う組織デザインから法人のビジュアルアイデンティデザインまで展開したプロセスについて概説する。全体のデザインプロセスは、組織デザインにおいてワークショップを戦略的に活用し、①導入②知る活動③創る活動④まとめの4段階で組織化を行った。①導入と②知る活動では、メンバー間のビジョン統合作業を行い、③創る活動と④まとめでメンバー個々人の専門性を活かした枠組み─事業コンセプトを整理した。組織のビジュアルアイデンティティは、この事業コンセプトからデザインキーワードを抽出し、ロゴのデザイン展開を行った。ワークショップではメンバー自身が合意形成のプロセスを組み立てるようファシリテートした。これにより、組織の連帯性だけでなく自律性を形成することができた。また、メンバーとの事業コンセプトづくりによってビジュアルアイデンティティのコンセプトに関しても相互理解が深まり、ロゴデザインのコンセンサスまで円滑に進めることができた。
著者
柴崎 幸次 小山 奈緒子 太田 晶 陸 雅然
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.28-33, 2010

「清須市あいでんてぃてぃ」は、平成20年度、愛知県立芸術大学柴崎幸次研究室が清須市より受託した研究事業の略称である。平成17年〜21年に4つの町が合併して誕生した清須市の地域特性と魅力を再評価するための調査研究と、そこから見つけ出された清須を象徴する作品により構成されている。元々、別の町民であった清須市民が、合併による新しい市を知ることや街としての一体感を共有するために、調査によって見出された清須の個性を、1)風景と人のイラストレーション、2)現況写真を含む聞き取り調査によるブログサイト、3)美濃路の旧町名を表現したフラッグのグラフィックデザイン等の作品にまとめ表現した。
著者
植村 朋弘
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1_62-1_67, 2019-03-31 (Released:2019-03-19)
参考文献数
4

幼児教育の現場において、プロジェクトによる学びが注目されている。プロジェクトの学びとは、子ども達のアート表現や実験による探究活動を通して、保育者が子ども達との対話や子ども同士の対話を観察し、省察をもとに学びの本質を見出し活動をデザインしていくことである。その活動は、子ども達が主体となって持続的・創造的な学びとして展開していく。そこでは「ドキュメンテーション」が活動の質を高める重要な役割を担っている。本報告では、学びの活動をデザインするためのドキュメンテーションツールとして「EasySnap」及び「EasySnapArchiver」の研究開発をおこなった。これらのツールは、iPhone及びMac上を実装するソフトウェアである。保育現場に赴き保育者へのインタビューや現状の記録方法の調査を行い、ドキュメンテーションの役割を捉えた。デザイン開発をもとにプロジェクトによる創造的学びの活動とドキュメンテーションの意味と仕組みを捉えた。
著者
原 寛道 又吉 和真 浦上 貴一 今泉 博子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1_92-1_95, 2019-03-31 (Released:2019-03-19)

近年、安全基準に合致しない遊具が撤去され、利用者の要求に合わずに寂れていく都市公園が多い。私たちは、子どもを中心に、柔軟な公園利用を可能にする「移動式遊具」のデザイン開発が必要だと考えた。移動式遊具とは、従来の基礎などで地面に固定された遊具とは異なり、大人が解錠すれば、子どもが自由にパーツを移動して主体的に遊べるもので、遊びの創造性を発揮できる遊具である。 私たちは、遊具パーツを入れ子構造にして、コンパクトに収納可能にするとともに、収納と展開が遊びの一環として行うことで、子どもたちが自主的に片付ができることを考えた。そして、公園に多様な子どもたちが来ることを考慮し、動的遊びと静的遊びが共存して楽しめる遊具の試作検証を繰り返し、理想的に子どもたちが遊ぶ様子を確認した。 また、試作遊具を公園に1年以上設置し、住民団体が主体的に活用したり、放課後児童が利用できるような取組を実践し、都市公園での運用可能性についても検討した。
著者
柴崎 幸次 伊藤 美穂 日比野 洋二
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.14-17, 2009

言万葉の絵樹(ことのよろずはのえじゅ)は、平成20年4月に竣工した学校法人奈良学園登美ヶ丘キャンパス新築事業において、学園の教育方針と精神的象徴として計画されたサイエンスホールの一連の壁画計画である。特注和紙に、様々な生き物や人影が隠れた大樹の絵図をプリントし、その葉の部分に"科学者が残した言葉"をフォログラムシートとシルバー色のシルクスクリーン印刷により施し、人の発見や感動、自らの失敗等の経験の言葉が絵図の中に構成されている。素材、表現、コンテンツ等のすべてが、その壁画の精神性を象徴するデザインとなっている。
著者
柘植 喜治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.32-35, 1998-03-30

サンストリートは、従来の画一的な店舗構成により計画されたハコ型商業施設とは一線を画す商業施設である。買い物に来る人だけでなく、あらゆる世代の人々が集い、くつろぎ、日常生活を楽しめるよう人々の活動に焦点を当てた次世代の商店街づくりを目指した。敷地は、セイコー電子工業(株)(現セイコーインスツルメンツ)の発祥の地である亀戸本社工場跡地で、JR総武線亀戸駅前、国道14号線(京葉道路)に立地する。こうした好立地に駅ビルでもロードサイドショップでもないこれまでの再開発とは異なる時間消費型の集客施設を計画した。錦糸町とともに東京都の副都心として位置づけられる亀戸地区では、これまで超高層ビルによる複合都市開発などさまざまな構想が検討されてきたが、経済状況の急激な変化の中で具体化が見合わされていた。このような状況下で再開発事業を推進するにあたり、15年の暫定利用と低密度利用という事業計画が検討された。こうした経緯を踏まえ新たな集客施設として企画構想に当たり、かつて街の人々の活動の中心であった商店街の価値を問い直した。その活動を支える様々な要因が複雑に絡みあう状態の総体を環境として捉え、プロジェクトの初期の段階で施設開発における環境とその構成要素を様々な角度から検討した。その成果を環境計画基本構想として策定し、プロデューサーやデザイナー、事業主に提言した。(図1)その後の施設計画においてこの基本構想は北山創造研究所のプロデュースのもと、建築をK計画事務所、テナントリーシングをストリーム、運営管理のCDI他多くのチームにより実施計画に移された。建築計画やサイン計画、ショップデザインなどのデザイン業務だけでなく、業態開発、運用計画にもこの提言は反映され多くの成果が得られた。(図2)
著者
深谷 崇史 鈴木 聡 飯野 滋 藤本 直明 譜久原 尚樹
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_98-1_101, 2015

本作品は、「月」の超高精細な3次元CG(以後、3DCGと記す)の鑑賞システムである。鑑賞者は月球儀を改造した月型コントローラーを手にとり、見たい場所を自分の方へ向けることで月の3DCGを連動させ、目の前の大型ディスプレイに表示することができる。この実物を手がかりとしたユーザーインターフェイスと、4KリアルタイムCGを組み合わせ、超高精細な月の3DCGを鑑賞する作品「月面旅行」を、2013年11月に「NHK文化祭2013」で展示した。また、2014年6月7日から8月31日にかけて、東京都現代美術館で開催された「ミッション[宇宙×芸術]展」でハイビジョン版の「月面旅行」の展示を行った。
著者
蛭田 直 吉川 義盛
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1_14-1_19, 2017-03-31 (Released:2017-07-08)

本作品は、正三角形のユニットによる平面充填において、リアルタイムに全体を確認したり、並び替えしたりしながらパターンデザインができる初級者、中級者に向けたウェブアプリケーションである(図1)。パターンデザインは、布製品や壁紙、グラフィックの背景など、日常の様々な場面で使用されるとても身近なデザインである。しかし、制作の行程おいて全体の様子や角度を変えた際の組みあわせを幾通りも想像しながらユニットのデザインをすることは経験があっても難しい。本作品は、リアルタイムにパターンデザインの全体を確認したり、並び替えをしたりしながらユニットのデザインを可能にすることで、これまでに多くの時間を費やしていた複製や並び替えの行程を解決した。本作品は、初級者にパターンデザインの魅力と作り方を、中級者はより高度なパターンデザインの学習や制作を追求できる環境を提供する。
著者
石崎 友紀 札幌市環境事業公社 札幌市環境事業公社
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.2-5, 2004

本作品は使用済みアルミ缶を材料として製作されたリサイクル啓蒙のためのノベルティグッズである。一個は500mlのアルミ缶、約8本から作られている。使用済みアルミ缶を溶かして作った未精錬リサイクルアルミは不純物を多く含むため一般的な工業製品の材料として使用するには再精錬が必要である。本作品の特徴は未精錬リサイクルアルミの特性に合わせた形状をデザインして、再精錬せずに簡便な複数生産を実現した事と、再リサイクルを前提として、解体と素材別の分別が容易な構造にした事である。製作は札幌市環境事業公社の資源化センター・アルミ工房で行い地域循環型のモノ作りを実践した。完成後リサイクル啓蒙の解説パネルと共に市民に供覧した。
著者
篠崎 正樹 吉田 紗栄子 沼田 恭子 佐藤 公信 清水 忠男
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.2-5, 2005

本製品は、特別養護老人ホームにおける洗面台の使用状況と、そこに入居している高齢者の身体的・心理的特徴、生活環境の調査によって、特別養護老人ホームにおける望ましい「洗面台」のあり方を探り、ユニット・ケア方式を取り入れた愛知県半田市の特別養護老人ホーム「第二瑞光の里」内に設置する洗面台を設計した。それらの成果に基づき、一般の施設でも利用可能な非対称型洗面台の製品化を行った。
著者
工藤 芳彰 藤原 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1_46-1_51, 2018-03-31 (Released:2018-04-30)
参考文献数
8

東京都八王子市に伝わる昔話「とんとんむかし」を題材とするボードゲーム型総合学習ツール『とんとんならべ』は、将来のソーシャルデザインの基盤づくりの視点から、小学校中・高学年の「教科以外の学習の時間」の一つである「総合的な学習の時間」に着目し、児童の学習に対する主体性と協同性の向上を支援するために、授業内検証を踏まえて開発したものである。縦横21㎝、高さ5センチほどのかぶせ箱式のパッケージに、読み聞かせ用の「物語シート」、4つ折りの「ゲームボード」、得点となる「お宝チップ」、それを囲み取るための「手札」、高学年児童向けの「オリジナルゲーム制作キット」が含まれる。ゲームプレイには読み聞かせをとおした物語の理解が必要で、中学年児童は物語を拠り所として地域の歴史や文化を学ぶ。高学年児童は「調べ学習」等の成果をオリジナルゲームに変換する作業をとおして、知識の定着と共有を促すとともに、創造性を育む。
著者
安 浩子 稲舩 仁哉 川嶋 一広 矢田 由紀 佐野 文子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1_62-1_67, 2018-03-31 (Released:2018-04-30)
参考文献数
2

新しいメディアやデバイスなどの最新技術と、様々な人のアクセスのしやすさや使いやすさに配慮した「最新のアクセシビリティ」への取り組み事例として、NEC公式サイトのデザインとその検討方法を紹介する。企業のウェブサイトは、生活インフラとなる重要な情報発信を担っており、迅速で確実な情報提供を行うことが求められている。一方、企業が「最新のアクセシビリティ」に対応したデザインを維持する難しさは年々増し、継続的に適切な対応が出来ている企業は少ない。本事例では「最新のアクセシビリティ」に対応する「ウェブサイトのデザイン」と、その状態を維持するための「社員の誰もが対応できるデザインのしくみ」、「持続的に対応するための組織と体制づくり」を整理し解説する。
著者
松崎 元 赤坂 拓郎 福田 将三
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.19, no.19, pp.6-9, 2014-03-31

近年、ロールタイプのふせん紙や色とりどりのマスキングテープなど、紙製の弱粘着テープが用途を広げており、編集作業の校閲や事務作業の注意書き・メモ書きのほか、紙面の装飾やクリエイティブワークなど、今後も更に需要が期待できる。しかし、こうしたロールテープは、粘着性と伸縮の度合いが異なることから、従来の卓上テープカッターでは切りにくく、はさみや小型のハンドカッターを用い、両手を使わなければカットできなかった。本作品は、卓上で巻芯内径25mmのロールテープが左右2種類セットでき、片手で切れるディスペンサーである。開発過程では、デザインプロセスにおける各段階で、3Dプリンタを効果的に活用し、機能性や操作性だけでなく、ディテールの造形、プロポーションなど、ディスペンサーの有効性を確認することができた。
著者
小野寺 強 久米 寿明
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.24-27, 1997-01-31

過去20年間経験したこともない販売状況となっているアルバ「スプーン」のヒットの裏に隠された、開発プロセスをここに紹介する。まずは人ありきから端を発したコア・ターゲットの選定からキー・イメージ、インターフェイス・デザイン、スタイリング、プロト各段階におけるグルインによるデザイン評価と方向修正。商品のおかれかた(VMD)から価格、コレクションのありかた、セールス・プロモーションの仕掛けかたまでにもおよぶ、パネラーとの意見交換。こうしたターゲットとの疑似体験ともいえる一貫したグルイン方式による商品開発プロセスは、従来のメーカー主導型開発や販売サイドの延長線上的商品開発、はたまたデザイナーの主観的提案といった枠を超え、供給者と需要者のコラボレーションにより予想外のREALITYを内在するものとなった。彼らの発する言葉の奥底に潜む眠った記憶、これを解読し推測しビジュアルなものにしてあげる行為、またデザイナー自身の感性にも蘇ってきた記憶、こうしたプロセスが生んだ直感ともいえる相互のリアル・パーセプション。これがアルバ「スプーン」のオリジンといえる。

1 0 0 0 OA 東北六魂祭

著者
梅田 悟司 浜島 達也 坂本 陽児 坂本 弥光
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1_130-1_133, 2015-03-25 (Released:2015-05-22)
参考文献数
2

東日本大震災が発生した2011年3月11日以降、東北地方への観光客は激減した。当時、全国的に起こっていた自粛ムードは、東北の経済を深く傷つける結果となることは自明であった。 そこで我々は、東北各県の夏の風物詩である「祭り」を再デザインし、東北復興の第一歩を、東北自ら踏み出す様子を全国発信することを発案。東北6大祭り(青森ねぶた祭、秋田竿灯まつり、山形花笠まつり、盛岡さんさ踊り、仙台七夕まつり、福島わらじまつり)を一つにまとめた新しい夏祭り「東北六魂祭」を実施した。 震災後わずか4ヶ月である2011年7月に仙台市で行なわれたこの祭りは、東北に、一丸となって乗り越えるモメンタムを生み、観光客を東北に呼び戻すことに成功した。2012年は盛岡市、2013年は福島市、2014年は山形市で開催し、計111万人を集客。各県の行う夏祭りへの集客にも貢献している。
著者
大場 吉美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.12, no.12, pp.66-71, 2007-03-30

本作品は、金沢駅周辺整備事業の一環であり、その最後を飾る施設である金沢駅東広場の竣工を祝う式典のディスプレイデザインである。金沢には、文化都市を自負している市民の高い美意識があり、加えて多様な時代への共感を求めることと、祝祭の演出表現までがデザインに求められた。短期間の制作条件と高さ29m×巾80m×奥行き60mの大型空間のディスプレイデザインは、いかなる素材と手法が最適な解かが課題であった。それらの与件から、透明感や開放感のある明るく軽やかで楽しい演出が創造でき、安全性と耐久性も求められる素材としてファイバー系素材を採用した。建築構造体がアルミトラス構造の空間環境から、吊りと張りの方式が適していると結論しデザインした。そのデザインの具現化の状況と設置後の印象や結果を記述する。