著者
竹内 洋文
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.362-363, 1990-04-01
著者
村上 怜子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1041, 2023 (Released:2023-11-01)
参考文献数
4

現代社会において,砂糖の摂りすぎによる肥満および,それに伴う様々な疾患は大きな問題となっている.そのため,ゼロもしくは低カロリーの人工甘味料は,砂糖の摂取量を減らし,減量や血糖値をコントロールするために,広く使われている.様々な人工甘味料の短期の安全性は評価されているが,長期的に大量に摂取した場合の影響の評価は不十分であり,近年,長期の大量摂取が循環器系の病態に影響する可能性が指摘されている.人工甘味料の1つであるエリスリトール(C4H10O4)は,果物など自然界にも含まれる物質で,砂糖の60~70%の甘みを持ち,生体内でほとんど代謝されない「ゼロカロリー」の糖アルコールである.エリスリトールは,食べ物や飲み物において広く使用されてきた.本論文4)では,食生活の聞き取り調査等ではなく,血液中に含まれるエリスリトールの濃度を質量分析計(mass spectrometry: MS)によって実際に測定し,心疾患リスクとの相関関係を検証している.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Janzi S. et al., Front. Nutr., 7, 603653(2020).2) Debras C. et al., BMI, 378, e071204(2022).3) Vyas A. et al., J. Gen. Intern. Med., 30, 462–468(2015).4) Witkowski M. et al., Nat. Med., 29, 710–718(2023).
著者
竹内 孝輔 国本 亮
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.106-110, 2024 (Released:2024-02-01)
参考文献数
21

医薬品研究開発には多額の費用と10年以上の期間を要する。創薬研究の成功確率向上および効率化を図るため、データおよびAI利活用の取り組みが注目されている。第一三共創薬化学研究所では、データサイエンス専門チームを作り創薬化学にデータサイエンスを融合させるとともに、2つの研究領域のシナジーを生むための循環型の人材育成策を実施した。本施策によって20%の研究業務効率化を達成し、さらに生産性向上に向けた前向きな変化を確認することができた。
著者
小池 敦資
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1134, 2020 (Released:2020-12-01)
参考文献数
4

飲食物中へのスクロースや異性化糖の使用により,フルクトースの摂取はここ数十年で顕著に増加している.フルクトースの過剰な摂取は肥満や非アルコール性脂肪肝疾患,糖尿病などの発症と強く相関している.フルクトースの摂取は,肝臓における脂質生合成を誘発し,アセチルCoAから脂肪酸の合成を促進する.さらにフルクトースは,腸内細菌によって短鎖脂肪酸に代謝される.しかし,食餌中のフルクトースから肝臓のアセチルCoAや脂質生合成に至る経路や短鎖脂肪酸の脂質生合成への影響については未解明な点が多い.ATPクエン酸リアーゼ(ACLY)はクエン酸からアセチルCoAに変換する酵素であり,糖代謝と脂肪酸生合成を結ぶ重要な酵素として知られている.本稿では,肝臓特異的にACLYをノックアウトしたマウス(LAKOマウス)を用いて,同位体標識したフルクトース(13Cフルクトース)による追跡実験を行うことによって,肝臓でのフルクトースからの脂質生合成に腸内細菌が関与することを明らかにした報告を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Jegatheesan P., De Bandt J. -P., Nutrients, 9, 230(2017).2) Jang C. et al., Cell Metab., 27, 351-361.e3(2018).3) Zhao S. et al., Nature, 579, 586-591(2020).4) Zagelbaum N. K. et al., Caldiol. Rev., 27, 49-56(2019).
著者
平山 文俊
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.525_3, 2021 (Released:2021-06-01)

結晶多形を有する化合物が溶液から晶析する時,熱力学的安定性の低い準安定形が先に晶析し,その後安定形が出現する現象をオストワルドの段階則(Ostwald’s step rule,Ostwald’s rule of stages)といい,Whilhelm Ostwald(1909年ノーベル化学賞受賞)により提唱された理論である.結晶化の第1段階である1次核発生速度は,溶液の過飽和度と結晶核の界面エネルギーに依存するが,核発生では後者の影響が大きくなるため,高過飽和度では界面エネルギーが小さい準安定形の晶析が優勢となる.なお,オストワルド・ライプニング(Ostwald ripening)は,同一多形でも結晶の大きさに不均一性がある場合,小さい結晶が溶解し,大きい結晶が成長する現象をいう.
著者
今町 憲貴
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.843-845, 2020 (Released:2020-09-01)
参考文献数
22

最近の基礎研究により脊髄レベルでの痒みの機序やその制御についての知見が明らかとなってきた。また、オピオイドによる痒みの機序の一部がガストリン放出ペプチド受容体を介することにより生じることも解明されてきた。臨床においてオピオイドよる痒みは頻度の高い副作用であるが、現状では予防や治療に関するガイドラインがない状態である。本稿では、オピオイドによる痒みの機序、及びさまざまな薬物による鎮痒効果に関する臨床研究について概説する。
著者
安田 昭仁
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.75, 2018 (Released:2018-01-01)
参考文献数
3

医薬品には錠剤やカプセル剤,注射剤といった様々な剤形が存在する.その中でも錠剤は,取り扱い性,服用性,携帯性に優れ,最も市場に出ている剤形である.しかし,一般に錠剤は嚥下能力の劣る小児や高齢者には服用が困難とされる.錠剤は7〜8 mmが飲みやすいといわれているが,7 mmの錠剤でも半数以上の小児(米国の6〜11歳,患児を含む)は服用できないというデータもある.また,錠剤を服用できない,あるいは服用できるか分からない場合,医療現場ではしばしば錠剤を粉砕して投与される.しかし,錠剤粉砕後の有効性の同等性や安定性は保証されていない.近年では,小児用製剤に関する取組が活発化し,「嚥下困難な患者にも飲みやすい製剤」や「年齢による用量調節のしやすい製剤」が強く求められるようになった.そうした背景の中,嚥下困難な患者でも飲みやすい剤形として,直径1〜4 mm程度の小さな錠剤であるミニタブレットが注目されている.近年では,幼児を含む小児にとってはグルコースシロップと比較してもミニタブレットの方が受け入れられやすいという報告もある.一方,ミニタブレットには製造上の課題が存在する.1錠当たりの質量が小さいため,従来の錠剤よりも製剤工程の影響を受けやすい.例えば,質量が2 mg変動した場合,200 mgの錠剤では全質量の1%程度の影響になるが,15 mgのミニタブレットにおいては10%以上に相当する.そのため,ミニタブレットでは質量の変動が製剤中の有効成分の含量に与える影響が通常の錠剤よりも大きい.また,ミニタブレットは打錠機の臼への顆粒充填量も少ないため,顆粒中における有効成分の偏析(偏りが生じ,不均一な状態)は含量均一性に大きく影響する.そのような背景のもと,本稿ではミニタブレット製造の実現可能性について,詳細に検討を行った研究を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Meltzer E. O. et al., Clin. Pediatr., 45, 725-723(2006).2) Kilingmann V. et al., J. Pediatrics, 163, 1728-1732(2013).3) Mitra B. et al., Int. J. Pharm., 525, 149-159(2017).
著者
松井 和浩 飯村 康夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.543-547, 2014 (Released:2016-07-02)
参考文献数
3
被引用文献数
3

1967年に始まった市販後医薬品の副作用報告制度に基づく報告件数は増加の傾向にあり,ここ数年は企業報告の国内事例だけで年間3万件を超えている.諸外国規制当局では1998年から2000年代前半にかけて,副作用報告症例のデータベースから機械的かつ網羅的に未知の副作用候補を見つけ出すこと,すなわちシグナル検出のためのデータマイニング手法が開発・実践されていた.我が国においても,安全性監視の充実策の1つとして,予測・予防型の安全対策の必要性が高まる中,医薬品医療機器総合機構(PMDA)の第一期中期計画の中でデータマイニング手法の安全対策業務への導入検討および支援システムを開発し,2009年4月より活用している. 本稿では,データマイニング手法によるシグナル検出の概要およびPMDAにおける安全対策措置への活用事例を紹介する.
著者
中里 有希
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.207-211, 2022 (Released:2022-03-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

小児医薬品の開発は、年齢、体重、発達段階等による薬物動態、有効性及び安全性への影響、開発費用に対する採算性の低さ等の問題を抱えてきた。小児医薬品の開発を推進するために、日本を含め世界中で様々な取組みが行われている。本稿では、主に米国及び欧州の取組みについて、更には各国間での協働についても触れながら、小児医薬品の開発がどのように推し進められてきたか紹介する。
著者
向 祐志
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1118, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
4

狭い治療濃度域を有する薬物や体内動態の個人差が大きい薬物では,therapeutic drug monitoring(TDM)が患者間の体内動態の違いを補正するために有用である.我が国におけるTDMは,特定薬剤治療管理料の算定対象薬物について実施されることが多く,一部の免疫抑制薬を除いて,血漿あるいは血清が薬物濃度測定用の検体として用いられている.近年,欧米を中心にdried blood spot(DBS)を検体とした薬物血中濃度測定法が盛んに報告されている.DBSによる検体採取には,1検体あたりの採取量が1滴の血液で済み,患者宅での採取が可能なため,医療コストを低減できる等の様々な利点がある.Linderらは抗てんかん薬のうち,カルバマゼピン(CBZ),ラモトリギン(LTG)およびバルプロ酸(VPA)では,DBS中濃度を血漿中濃度の代替指標として用いることができる可能性を示したので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Evans C. et al., AAPS. J., 17, 292-300(2015).2) Martial L. C. et al., PLoS. One., 11, e0167433(2016).3) Li W., Tse F. L., Biomed Chromatogr., 24, 49-65(2010).4) Linder C. et al., Clin. Biochem., 50, 418-424(2017).
著者
F. W. FOONG
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.900-902, 2014 (Released:2016-09-17)
参考文献数
2
被引用文献数
1

まず最初に,討論をはじめとする意思疎通のための科学英語をよりよく理解する上で非常に有用なヒントおよび基本的事項を紹介する.基本的には,科学英語における文法は一般英語と同様であるが,多種多様な各分野特有の用語を理解し,発音なども含めて習得する必要がある.また,一般英語では見慣れない特殊な用語や用法もある.例えば,apoptosisのようにギリシア語に由来するものは通常の辞書には載っていないし,意味は分かっても発音できないことがある.また,一般英語ではexpressionという言葉の複数形はないが,核酸・遺伝子関係の研究論文ではしばしば複数形expressionsが使われる.さらには,“Diabetes-induced neuropathy patients(n=40) who satisfied the test criteria were enrolled for the study.”の文中のdiabetes-induced,neuropathyおよびenrolledという語や用法は学術的な文章ではよく見られるが,一般にはあまり使われない.一般英語では,“cardiovascular disease patients”のようなnoun+nounの表現は正しくない用法とみなされている(特に,ヨーロッパにおいて).さらに一般英語では許しがたいnoun+noun+nounのような複合名詞が,科学論文にはしばしば使われる.“Rat brain extracts”や“three-dimension expression”などはその例である.また,“After centrifugation at 1,500×G for 3 min at 4℃, the yellowish supernatant was decanted into a test tube and stored at -30℃ until use”におけるcentrifugation,supernatantおよび略語“1,500×G”やminなどは,学術論文・報告書などに見られる独特の用語や表現である.
著者
安田 好文
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.362, 2017 (Released:2017-04-01)
参考文献数
3

寄生虫や花粉などに曝露されると,T細胞はTh2細胞に分化して抗原特異的にIL-5,IL-13などのTh2サイトカインを産生し,好酸球集積,杯細胞過形成,気道抵抗上昇を惹起して外来抗原を排除する.しかしその反応が過剰になると,喘息やアトピー性皮膚炎などの2型炎症の原因となる.また一方で,IL-13はマクロファージ(Mφ)を免疫抑制性のMφに分化させ.抗炎症性のIL-10やTGFβの産生を介して免疫抑制や組織修復を誘導する.このMφはさらにアルギナーゼ1(Arg1)を発現し.アルギニンの枯渇や一酸化窒素の産生抑制によっても抗炎症作用を示す.Arg1は尿素代謝に必須の酵素であり主に肝臓に発現するが,このように免疫系でも重要な役割を持つ. また上皮細胞の傷害によりIL-33などが産生されると,グループ2自然リンパ球(group 2 innate lymphoid cells:ILC2)は抗原非特異的にTh2サイトカインを大量に産生する.その特徴から.ILC2はTh2細胞とは別の2型炎症の鍵となる細胞として注目されている. 最近,ILC2がArg1を発現することが報告されたが,その意義は不明であった.本稿では,ILC2に発現するArg1の役割を明らかにしたMonticelliらの論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Munder M., Br. J. Pharmacol., 158, 638-651(2009).2) Waker J. et al., Nat. Rev. Immunol., 13, 75-87(2013).3) Monticelli L. A. et al., Nat. Immunol., 17, 656-665(2016).