著者
佐藤 洋行
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.9-13, 2010

プロジェクトが失敗する要因の一つとして,問題が本番稼働直前で発覚し,その対応が間に合わず大きな事故になってしまうといったことが多々見受けられる.問題の顕在化が遅れることは,問題解決のための時間が少なくなるだけでなく,プロジェクト全体に大きな影響を与えてしまう可能性が高く,問題を早期に検出することはプロジェクト成功のために非常に重要なことだと考える.「なぜもっと早い段階で問題を検出できなかったのか」,プロジェクト完了時の反省として議論することが多いが,いまだ効果的な対処策を見い出せていないと感じる.通常,プロジェクトメンバとの各種会議で進捗状況や懸案の確認を行っているが,担当者の認識の甘さからPM(またはPL)への報告漏れがあったり,またミスが原因の場合などでは叱責を受けることを恐れて無意識に報告がおろそかになるなど,必ずしもPM(またはPL)に正しく状況が伝わらない,といった現状があると考える.そこで,日頃の進捗確認方法に何かしらの問題があるのではないかと考え,より早期に,かつ適確に問題を顕在化するための手段を検討し,実際に試行を行った上でその手段の有効性について検証する.
著者
木村 景一 中鉢 欣秀
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.15-20, 2004

企業における研究開発はプロジェクト体制で進められることが多く,さまざまなプロジェクトマネジメント手法が試みられている.しかし,研究開発自体が持つ不確実性のため多くの問題点が現出し,その解決のため体系的なプロジェクトマネジメントが求められている.企業の研究開発の特徴として,開発した技術を製品に反映させることが義務付けられているため,多くの場合,研究開発部門において基盤要素技術の開発を進め,その成果を製品開発に移転するという2段階のプロセスを通る.この基盤要素技術の開発において最も重要なプロセスはプロジェクトスタート段階における研究開発テーマの決定である.本稿では,小型電子機器において問題となっている放熱技術開発を例に取り,研究開発テーマの決定プロセスについて述べる.
著者
中津 望 石崎 裕 中村 満明 石川 貞裕 建部 清美
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.37-42, 2006

近年,システム開発に対する要件は,高機能化,期間の短縮化の傾向にある.このような背景において,プロジェクトを成功させるためには,進捗管理の強化が必須である.納期を守るには,早期に問題部位を特定し,早期に対策することが重要となる.問題部位の早期発見には,進捗の管理サイクルを短縮化し,鮮度の高い情報を取得できる必要がある.しかし,従来のように報告に基づく進捗管理では,進捗情報の収集に時間がかかるという問題がある.さらに,報告に基づいた進捗は,実態と乖離する危険性がある.この傾向は,プロジェクトの規模が大きく,開発拠点が分散されている場合,顕著になる.そこで,開発拠点が分散されているプロジェクトを対象に,WBSを採用したプロジェクト支援ツール"プロナビ"を用いた解決策を検討した.本論文では,成果物の実態に基づいて,進捗情報をタイムリーに把握するための施策について述べる.
著者
遠藤 雄一
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.58-63, 2005

ユーザー要件を完全に固めていない段階で, プロジェクトを早く立ち上げ, 開発しながら要件を固めて行き, 短納期で成果をだす開発手法XP(eXtreme Programming)が, 脚光を浴びている.また, この開発手法は, 開発者本位でもあり, 開発者からも非常に良い評価を得ている.ところが, プロジェクトマネジメントの観点からみると, その方法論に疑念を抱かせる面がある.その為, プロジェクト・マネジャーが, XPを採用すると表明した例は非常に少ない.本稿では, XPが, 何故これほどまでに評価されているのか, しかし, 何故, プロジェクト・マネジャーがその採用に躊躇するのかを, プロジェクトマネジメントの観点から明らかにする.その上で, 如何にしたら, プロジェクト・マネジャーが, XPを積極的に採用できるようになるかを論じる.これにより, 今求められている短納期, 高品質の開発が, XPにより可能であることを考察してみる.
著者
宮原 勅治 岸野 孝裕 稲葉 舞香 田邊 央樹 中西 淳 出原 雄太 横田 貴久
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.21-24, 2015-06-15

プロジェクトマネジメントにおいてWork Breakdown Structure(WBS)が極めて重要な役割を果たすことは周知であるが,大学生のようなプロジェクトマネジメントの初学者にとって,WBSを上手く作成することは容易なことではない.そこで,大学生のプロジェクトチームにWBSを作成させるためのトレーニングとして,仮想プロジェクトを用いたWBS作成の教育方法を開発した.すなわち,WBSを作成するツールとしてDiamond Mandala Matrix(DMM)を用いる方法である.このDMMを使って作業分解を行い,WBSを作成する手法は,大学生のようなプロジェクトマネジメントの初学者においても理解しやすく,実際の卒業研究プロジェクトにも使用することができ,学生にとって極めて有用なトレーニング方法となる.本稿では,大学生のプロジェクトチームに対し,DMMを用いて仮想プロジェクト(たこ焼き模擬店プロジェクト)のWBSを作成するトレーニングを行った後,実際の卒業研究プロジェクトにおいても同様にWBSを作成し,プロジェクトを完遂させた事例を報告する.
著者
赤星 和之
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.19-22, 2015

ITプロジェクトが混乱する要因としては,設計の漏れ・設計不十分等によるテスト工程での問題多発に起因するものが多い.業務アプリケーションソフトウェアの開発を伴うプロジェクトでは,要件を全て確定させた上で設計工程へ進む事が望ましいが,現実には困難である事が多い.そのため一部の設計項目を残した状態で後続工程へ進み,スケジュールが輻輳した状態で推進するが,残課題をつぶし込む意志が弱いと製造工程で暫定対処などにより,手戻り工数が膨らむ事でプロジェクトは混乱につながる.そうなる前に設計内容を関係者できちんと検証し確定させる事が重要である.対策として成果物や作業分担を明確に定義し,設計品質を確保する事が効果的である.
著者
町田 欣史 清水 誠介 井ノ口 伸人 朱峰 錦司 須田 千賀子 伊藤 司
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.29-34, 2014-10-15

リスクベースドテストは,テスト対象の機能や属性のリスクを数値化し,その値に応じて合理的にテストを削減する技法である.しかし,リスク分析を失敗すると,テストを減らして品質低下を招く可能性もある.そこで我々は,リスクベースドテストにおけるリスク分析が妥当かどうかを重回帰分析などの統計的な手法で評価する方法を考え,実際のプロジェクトに適用して有効性を確認した.本稿ではその取り組みについてまとめる.
著者
内藤 優介
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.18-23, 2015

最近,ウォーターフォール開発に代わって,アジャイル開発が話題になっている.本論では,弊社富士通エフ・アイ・ピー株式会社(以下FIP)で初めて本格的にアジャイル開発を採用したプロジェクトを題材に,組織内部に対する効果について分析する.アジャイル開発で重要となるのは,コミュニケーション及びリーダーシップの方法であり,開発者全員の参加を促す形のスタイルが最も効果があるという仮説を立て,「スクラム」という方法論を実行した.その結果,「セルフリーダーシップ」「組織学習」「自己組織化」の3つを達成した.「セルフリーダーシップ」とは自らの意志の下で状況に対して正しく判断し,自ら主体的に行動することである.若手社員が成長し,自らの考えのもと発言・行動するようになった.「組織学習」は組織構成員がビジョンを共有しながら,行動と学習を自発的に繰り返すことで,組織全体の能力が高まっていくことである.初めてのアジャイル開発であったが,数々の試行錯誤を通し,アジャイル開発を身に付けていった.「自己組織化」は状況に応じて柔軟に対応すると共に,メンバーのベクトルが一致し,大きな力を発揮することである.小さな成功を通してチームが活性化し,チーム内外の環境変化に柔軟かつ的確に対応した.アジャイル開発を通して,個人およびチームとして大きな成長を得られた.
著者
神保 良弘 由井 亮 由井 亮
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.9-13, 2012-10-15

当社のシステム開発では,設計工程(品質の作り込み工程)と試験工程(品質の検証工程)のそれぞれにて定量的分析手法を用いた品質管理を実施している.定量的分析に用いられる指標値は,プロジェクト計画時の開発規模と過去のプロジェクト実績,プロジェクト特性を用いてカスクマイズし設定している.母数として使用される開発規模は,アプリケーション開発における設計規模(Ks),製造規模(Ks)を想定しているが,システム基盤開発のように設計規模や製造規模をKsだけで評価できない場合においては適切な測定,評価ができていない.特にビジネスパートナーであるベンダヘシステム基盤開発部分を作業委託した場合には,明確な受入基準が存在しないため,発注先ベンダによって品質確保のレベルに偏りが出てしまっている状況である.その結果,サービス開始後のシステムトラブルに発展するケースも散見される.本稿では,システム基盤開発における定量的な品質確保手法の取り組み,及び実際のプロジェクトに適用した際の事例を紹介する.
著者
岡田 久子 高田 将年 河崎 宜史 山形 和明
出版者
プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.8-13, 2013-02-15

発電プラント建設プロジェクトは,大規模かつ多くのステークホルダーが関わる複雑なものであり,この巨大なプロジェクトの「品質,工程,コスト」を確保するため,建設分野へのIT・システム化適用を進めてきた.主眼点は,建設におけるリスク・コスト最小化のための,(1)大規模プロジェクト一貫/調和コントロール,(2)現地の作業効率向上・品質確保の実現である.1990年代よりこの実機適用と機能拡張を継続し効果を上げてきたが,管理側・システム面中心のアプローチでは,さらなる改善・効率化は限界に達している.そこでモノ作りの原点に立ち返り,ユーザ/人間の側に焦点を当てた,人間中心型のモノ作りのあり方を模索しプロジェクトマネジメントに反映させる取り組みを進め,管理視点と現場視点を繋ぐ建設マネジメントシステムとして高度化を図った.
著者
竹ヶ原 郁子
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.35-40, 2008

システム構築プロジェクトでは,QCDの観点での問題が発生する場合がある.原因として,提案活動時における見積もり項目の漏れや曖昧な前提条件,提案活動を行う担当者からの見積もり根拠の曖昧な引継ぎ等が考えられる.リスクマネジメントの一環として,この原因に働きかけリスク顕在化を未然に防止するため見積もりシートを作成し,提案活動での活用を推進することにより確実な統合変更管理の実施を試みた.そして,提案活動時の検討漏れの防止や前提条件の明確化の重要性と,仕様確定までがプロジェクトサイズを決定する重要なフェーズであり,システム構築プロジェクトを成功裏に導くQCD遵守の鍵であることを再認識した.今回の一連の試みから,実際のリスク対応実施時の問題点と対処,リスク顕在化時の対処,効果について報告する.