著者
吉田 薫
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1-14, 2013-08-25

何樹齢は清末の漢門で康有為,梁啓超らの変法運動にかかわっていた。本論では,何樹齢が岸上質軒や上野清に送った『大算盤』などの著述や上野清宛の書簡など,新資料を読み解きながら,これまでほとんど知られていなかった何樹齢の活動について検討する。何樹齢は,同門の陳栄衰と共に中国の改革に向けた活動をしていた。実学や算学の重要性を説き,慈善団体「善堂」を提唱し,初等教育に携わった。さらに算学と仏教思想を結び付けて新たな思想を提示しようと試みていた。何樹齢は自らの「宇宙」,「大同」世界の構築を試み,康有為,梁啓超とは異なった変法思想と活動を追究していた。
著者
古谷 真帆
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.41-50, 2007-04

急速な経済発展を遂げる隣国中国の知的財産権侵害の実情は日本でも頻繁に報道されている。この様に知的財産保護に関し問題視される中国が,現在国家知的財産戦略制定作業を進めている。本稿は,近く発表されるであろう国家知的財産戦略の内容を既に制定されている地方知的財産戦略の内容等から予測し,中国が有効な知的財産の取扱いをどの様に捉えているかについて考え,知的財産権問題で中国が置かれている立場を探ろうと試みるものである。
著者
隋 藝
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.1-21, 2015-11-25

1948年11月から1950年10月にかけて,遼寧省における反共産党勢力の取り締まりなどの大衆工作は,従来の階級闘争の形では展開せず,中国共産党の公安部門がリードし,反対勢力を排除したのちに民衆に対する宣伝を行う構造となった。こうした従来の共産革命と離れた大衆工作は,闘争による社会の混乱を避けたが,革命原理に基づいた大衆運動からのエネルギーの獲得や,古い社会関係の打破と新たな階級関係の再編も容易にはできなくなり,民衆に対する中共のイデオロギー操作も一層難しくなった。本稿では,遼寧省の瀋陽市を中心に大衆工作を検討して,中共による平時建設のための都市社会の再編と革命原理の矛盾を浮き彫りにする。
著者
浜口 允子
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.1-18, 2015-09-25

本稿は,日中戦争期に,華北政権がいかなる地方統治を行ったか,それは基層社会にどのような影響をもたらしたかを主たる課題として問うなかで,とくに物流と交易の仕組みに着目し,河北省で1941年から始められた交易場制度について考察したものである。そしてそれが,旧来の包税制度を廃止し,取引税を直接徴収するための措置と関わるものであったことを明らかにした。それは,政権による財政基盤の強化策が物流の場に及んだものであり,その過程では統治の末端を担う新たな人材をも生みだしたのであった。この変化はその後の社会にも影響を与えたと考えられる。
著者
郭 陽
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.1-13, 2014-09-25

『華夷変態』は,17世紀半ばから18世紀初頭にかけて長崎より江戸幕府に進呈された唐船風説書などを収載する海外情報集である。1906(明治39)年,反満革命思想の影響を受けた留日中国人士が,同書から明末清初における反清勢力の活動に関する史料を選録し,漢文本の『華夷変態』を東京で印行した。従来の研究では,この漢文本の書誌的な情報の言及に止まり,その出版経緯や内容構成について具体的に考察したものはなかった。そこで本稿では,江戸・明治期の日本における『華夷変態』の流布と影響を概観し,清末の留日中国学生の反満革命宣伝の一環としての,漢文本『華夷変態』の成立及びその歴史意義について検討する。
著者
梅村 卓
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.1-15, 2013-04-25

本稿は,1983年末に中国で展開されたブルジョア精神汚染批判キャンペーンを,特にメディアを中心に考察したものである。胡喬木と胡績偉との間に「党性」「人民性」をめぐる論争が交わされ,メディアが「党の口舌」として世論をコントロールするのか,「人民の口舌」として世論による監督機能を果たすのかが争われた。この時期は中国共産党内においても保守派,改革派の間でメディア政策が揺れ動いていた。現在までのメディア統制を視野に入れた場合,この運動は党がメディア統制を構築する重要な過程となったと言える。そして「党性」「人民性」の問題は,メディアの監督者が誰であるべきかという点で,今日の中国においてもなお検討されるべき課題となっている。
著者
山田 勅之
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1-13, 2007-10-25

明代の麗江ナシ族・木氏土司は隣接のチベット人居住地域や永寧府を侵奪していたにもかかわらず,明朝から忠臣と記録され,従来の研究もそういった記録を根拠に,明朝と木氏土司の関係を支配・被支配の関係と規定している。しかし,明朝はチベットとの争いが絶えず,そこから木氏土司と明朝はチベット勢力征討という点で利害の一致を見ていた。さらに,木氏土司による朝貢や占領したチベットからの税の納入,資金供与は単なる土司の義務としては過剰な行為であり,永寧府の侵奪を含む自己の勢力拡張を明朝から黙認させる自主の動きであったと捉えるべきである。そして,両者は時代が進むにつれて,相互依存の関係が成立していったといえる。
著者
斎藤 秋男
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
no.250, pp.39-40, 1968-12-25
著者
渡辺 長雄
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
no.463, pp.1-6, 1986-09-25
著者
長谷川 怜
出版者
一般社団法人中国研究所
雑誌
中国研究月報 (ISSN:09104348)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.1-17, 2014-07-25

本稿では,日露戦後の満洲経営の展開について,1906年に満洲の奉天で開催された奉天商品展覧会を事例として検討する。奉天商品展覧会は,満洲における日本商品の販売拡大を目指す商業会議所が推進し,現地において様々な商品の陳列・販売が行われた。当時,日本は満洲の経済的開放を国際社会に公約していたが,日露戦争で得た権益の拡大と共に商業分野で独占的利益を得ようとしたため,英米等から猜疑を招いていた。そうした中,商品展覧会計画は,満洲における自由な経済活動を日本の政策主体が奨励する事につながると内外で判断され,計画段階では陸軍や外務省の支援が行われた。以上のように,初期の満洲経営が官・民の利害の一致により展開されていたことを明らかにする。