著者
内藤 正和 Masakazu Naito
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.121-136, 2019-08-01

現在、地方自治体におけるスポーツ施設整備政策をめぐっては賛否両論があり、その課題は、まちづくりに関する合意を形成する対話の場が欠落していることにある。まちづくりと整合性を持つスポーツ施設の整備には、住民との議論における情報提供を目的とした専門家による予備調査、目的に応じた参画や調査を可能とする複数組織による役割分担、多様な調査手法による多様なアクターからの意見集約が重要なポイントとなるのである。
著者
水島 洋平 Yohei Mizushima
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.115-126, 2009-07-25

本稿の目的は、ケア役割が男性にとってどのような意味を持つのかという問題意識の下、ケア役割を通して成人期男性がどのような発達を遂げるのかに焦点を当て、生涯発達の視点から考察することにある。近年、わが国においても、ワーク・ライフ・バランスの推進が喫緊の課題となっている。少子高齢化や産業構造の変化により、性別役割分業型家族が後退し、核家族が増加している。それに伴い、育児や介護の問題も変容している。かつて、育児や介護などのケア役割は、主に女性が担ってきたが、男性もケア役割を担う必要性、さらには、ケアに積極的に関わりたいという男性のニーズがあるなど、実態面や意識面での変化が見られる。本稿では、まず、ケア役割を通した成人期男性の発達の問題にアプローチする際に、生涯発達の視点を持つことの重要性を指摘した。次に、ケア役割と成人期男性の発達との関連性について明らかにするために、ケアの概念を概観し、成人期男性の発達にとってのケア役割の重要性について指摘した。最後に、ケア役割を通した成人期男性の発達を考えるうえで有用と思われるHavighurst、Erikson、Levinsonの発達理論の整理と理論から得られた知見を提示した。
著者
山崎 幹根 Mikine Yamazaki
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.173-184, 2021-02-15

本稿は、公共政策の同化/分化が生じる要因を考察する中で、政府間関係がどのように作用しているのか否かを明らかにすることを目的としている。日英比較の観点から受動喫煙防止政策を対象とした研究から、政策課題設定に関して、サブ・ナショナルな政府という位置を活かし、政策課題を論じる場を移動させ、受動喫煙防止を公衆衛生として問題のフレーミングを見直し、政策転換を図った過程が共通して明らかにされた。一方、政策環境、政策の窓の観点から見れば、制度、ネットワーク形成、問題、政策、政治の3つの流れの有り様の違いが、異なる政策内容を導き出している。
著者
風間 規男 Norio Kazama
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.41-55, 2021-02-15

本稿は、2011年の福島第一原子力発電所事故後に起こった日本の原子力政策における制度構造の変化を扱っている。日本においては、原子力政策のガバナンス・ネットワーク、いわゆる「原子力ムラ」がしだいに政治的な権力を獲得していたが、福島原発事故以後にそのガバナンススタイルの変更を余儀なくされた。原子力ムラの構造変化は、日本の原子力政策に根本的な方向転換をもたらしている。
著者
皆川 萌子 Moeko Minagawa
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.153-162, 2009-07-25

今日、過疎化、高齢化が進む農山村において、地域活性化の一環として都市からの新規移住者を受け入れる取り組みが全国の自治体で見られる。都市住民に対して田舎暮らしの意向調査もなされ、そのニーズがあることも確認されている。都市住民に向けた田舎暮らしに関する情報発信は盛んになされており、地方にとっても、都市にとっても都市住民の田舎暮らしへの関心は高まっているといえる。 京都府も例外ではなく、府内の過疎地への移住希望者を募るなどの取り組みがなされている。京都府では「京の田舎ぐらし・ふるさとセンター」が設置され、ここでは都市からの移住希望者への対応や調査などを担っている。本稿では都市からの移住者受け入れ後の集落について、新規移住者と地元住民がともに集落を形成するといった視点から、集落に対する双方の意識を明らかにすることを目的とする。そのために集落の約半数を新規移住者が占める京都府南丹市美山町T集落を事例にとりあげ、新規移住者と地元住民双方に対して実施したインタビュー調査を概観する。また、集落における行政の役割についても、住民との関係から明らかにする。
著者
野田 遊 Yu Noda
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.171-183, 2020-03-01

本研究は、行動行政学の知見をふまえ、大阪都構想の賛否への情報提供の影響を分析したものである。これまで、都構想の肯定・否定の情報提供は、政党や政治家、学者や評論家から積極的になされ、推進派は肯定的な情報を、反対派は否定的な情報を強調し、賛否を誘導してきた。本研究では、都構想の肯定・否定の情報を実験手法により提供のうえ賛否への影響を分析し、市民の動機づけられた推論の影響が非常に大きい点を抽出した。
著者
武蔵 勝宏 Katsuhiro Musashi
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-170, 2020-03-01

日本の国会は、政府に議事運営権や審議促進手続に関する権限が付与されておらず、凝集性の低い自民党内で造反を回避するためには、事前の調整で政府と与党を一体化する必要性がある。そのため、自民党政権では与党による事前審査が行われ、国会提出の段階から党議拘束がかけられてきた。本稿は、こうした事前審査制に代えて、閣法草案を国会の委員会において予備審査を行う方法を提案し、国会審議の形骸化の解消に取り組むことを提案する。
著者
佐野 淳也 Junya Sano
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.13-30, 2019-03-01

島根県海士町は行財政改革と産業創出により多くのUIJターン者が移り住み、人口減少が横ばいになるなどの成果を上げた。町長や役場職員が「変革の主体」としての行動規範を伝播させるハブとなり、離島から日本を変えるという大きなミッションのもと関係人口とのネットワークを形成した。価値観やビジョンを共有しながら全体で地域イノベーションを可能にするネットワークが形成されており、それを「自己生態系化」という概念を用いて分析を行った。
著者
畑本 裕介 Yusuke Hatamoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-14, 2020-03-01

社会福祉行政研究に関係するミクロ権力論には、社会学権力論と行政学的権力論の二つの流れがある。この論文では、行政学的権力論を切り開いたリプスキーのストリート・レベルの官僚制(SLB)論を大きく取り上げ、社会福祉行政研究におけるその適用可能性について検討している。また、SLBの在り方が現代において変化した要因についても考察している。それは行政への批判的態度の増大、ガバナンス改革、福祉専門職の行政への進出といったものである。
著者
中嶋 崇 ナカジマ タカシ Nakajima Takashi
出版者
同志社大学大学院総合政策科学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review
巻号頁・発行日
vol.3, pp.145-164, 2002-02-28

論説 本稿は、現在の地方分権の流れの中での地方行財政改革のあり方について考察を行うために、望ましい地方独自財源確保策及び効率的・効果的な自治体経営を行うための政策選択を最適に行うための手法についてメニュー形式で述べ、このメニューの組み合わせを実際の自治体の政策に適用し、シミュレーションを試みることを目的としている。本稿においては、地方分権を「国に集中した権限・財源を都道府県や市町村などの地方自治体に委譲し、くらしに身近な地域のことは住民の意向を踏まえて地方自治体が主体的に決められるようにし、自治体としての経営責任を追及していこうとする取り組み」と定義している。1999 年、この地方分権をより一層進展させるために地方分権一括法が施行され、様々な規定が行われたが、この地方分権一括法にも3 つの課題があり、これらの課題解決が歳入面での地方分権を推進させる大きな柱となっていると考えられる。そこで本稿においては、歳入では、単に地方分権一括法が持っている課題に取り組むのではなく、課題解決のために具体的にどういった独自課税を行うかといった課税政策等における政策選択により地方自治体独自による抜本的な地方財源の確保のシナリオの確立が必要であり、他方、歳出では、住民志向・成果志向の観点から政策選択の最適化が地域経済にとって有効な独自の政策を地方自治体が打ち出していくと共に、この政策選択の最適化を合理的に行うための手法である行政評価への民間経営手法の活用により更なる政策選択の高度化を行うことが自治体経営のあるべき姿であるという立場に立ち、大阪府を例として、考察を行っている。