著者
奥 忍
出版者
和歌山大学
雑誌
和歌山大学教育学部教育実践研究指導センター紀要 (ISSN:09182683)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.123-127, 1996-08-24

本稿は日本の合唱教育の現状を、西洋音楽の影響という視点からグローバルにとらえようとするものである。日本民謡「斎太郎節」に焦点をあて、伝統的な日本民謡の様式と西洋様式による合唱のかけ声の音響的相異を明らかにするとともに、それらがいかに知覚・認知されるかという2側面から合唱における西洋音楽の影響を論じた。
著者
奥 忍
出版者
日本音楽表現学会
雑誌
音楽表現学 (ISSN:13489038)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.23-32, 2003-11-30 (Released:2020-05-25)
参考文献数
28

本稿は「拍子を分割する単位拍としての間」の研究の一部分をなしている。これまでの研究から,聞き手が感じる拍感には,構音や音高など,さまざまな要因が働いていることが明らかになっている。そこで,今回は「時間長」に焦点を当て,旋律的要素よりもリズム的要素が優位であり,しかも表現法として様式化されている和歌の朗詠を取り上げた。朗詠と律読,朗読との相違点をリズムの視点から検討した上で,百人一首の朗詠の音声分析を通して,各句と単位拍,モーラの時間長配分によるリズム操作を明らかにする。検証された5仮説の中でとりわけ注目されるのは以下の3 点である。・特定の語や句についての強調や,語句境界よりも全体の時間的な流れが優勢であること。・単位拍,モーラは等拍/等時でなく,流動的であること。・様式化された朗詠の中に演者個人の表現様式が存在すること。この実験で明らかになったことばの流動的なリズム操作,モーラの時間長配分は,他の邦楽ジャンルにも共通している可能性がある。
著者
奥 忍 権藤 敦子 HERMANN Gottschewski
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

研究の完成年度として、3度の研究会を開催してこれまで行った研究成果について検討と補足をした上で報告書の形で総括をした。研究の目的を実現するために、本研究では数多くの研究者、学生の協力を得たので、それらを含めて、成果を全185頁の報告書として刊行した。第1部「忘れられたアイデンティティ」:日本音楽をめぐる教育の場の現状を3つの角度から明らかにした。第2部「潜在する音楽的アイデンティティ」:日本音楽・芸能におけるリズムを対象とした実験研究を行い、口上や朗読、伝統音楽にみられるリズムの特質について分析を行う。また、学生の表現の分析によって、その中に伝統芸能のリズム操作と共通する要素が含まれていることを明らかにした。第3部「近代日本の歌における日本語の捉え方」:第1部や第II部で浮上した問題について歴史研究の手法でアプローチした。近代日本における日本語による歌の捉え方、音楽要素に着目した日本語指導などについて扱った。第4部「音楽的アイデンティティの再認識」:言葉と音楽との関係に着眼した授業の開発とその成果の検討。日本音楽の学習に関する客観的で分析的な理論研究の裏付けをもつ実践的な研究が必要とされるため、方法の異なる実践例を検討し、例示した。研究の内容は以下のとおりである。I 忘れられたアイデンティティ1.小学生と中学生に見る日本伝統音楽に対する姿勢2.教員養成関係学部における日本音楽の動向3.現代の若者にとっての日本音楽-大学院生のレポートに見る日本音楽-II 潜在する音楽的アイデンティティ-リズムを中心に-1.香具師の立ち売り口上におけるリズム操作-「がまの油売り」の場合-2.「何は何して何とやら」におけるリズム操作-茂山千之丞による7つの演じ分けを基に-3.日本の伝統芸能のリズム-共通詞を用いた伝統芸能の音声分析-4.朗読と歌唱のリズムの類似度を定める方法についての考察5.音楽教育専攻学生に見る伝統芸能的な語感-歌舞伎風「名乗り」のリズム分析-6.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(1)-行と行間、連間に焦点をあてて-7.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(2)-行間と連間の感受に焦点をあてて-8.金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」の朗読におけるリズム(3)-詩の初見と再読による「間」の取り方-9.詩の朗読から歌うことへ-詞を詠・唱・歌う-III 近代日本の歌における日本語の捉え方-西洋音楽との関わりから-1.「国の子ども」を定義する-近代日本子ども音楽の三つの場面-2.音楽教育と外国語教育の接点-語学教育における歌唱のすすめ-3.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(1)-兼常清佐の言説を中心に-4.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(2)-高野辰之の言説を中心に-5.民謡・わらべうたの特質と西洋音楽(3)-わらべうた教材の分析をとおして-IV 音楽的アイデンティティの再認識-声と言葉による学習の開発-1.言葉のリズム学習としてのヴォイス・プロダクション-「お祭り」の創作学習2.香川の民話・民謡・方言を用いたミュージカルの創作-小学校低学年向け「狼の眉の毛」-3.オノマトペによる音楽創作-ヴォイス・プロダクション『のでのでので』-4.讃美歌から生まれた歌唱教材-「星の世界」に見る歌詞の変遷-5.体験学習「歌舞伎の表現」-内在する伝統的なリズム感に気づく授業
著者
奥 忍
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-9, 1988-03-01

明治以降、西洋音楽が公教育の中に積極的に取り入れられるようになり、日本人の音感覚は次第に西洋化された。本稿は、大正時代に西洋音楽がどのように受容されたか、即ち、移入された西洋音楽はどのように伝統的音感覚の影響を受け、変化したか、について、アメリカ起源の3つの流行歌の音高を測定し、音程・音律を分析することによって明らかにしようと試みたものである。対象となった流行歌は第一節の全ての音の音高が測定され、音程はセントで整理される。結果は調性感の視点から考察される。
著者
奥 忍
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-9, 1988-03-01

明治以降、西洋音楽が公教育の中に積極的に取り入れられるようになり、日本人の音感覚は次第に西洋化された。本稿は、大正時代に西洋音楽がどのように受容されたか、即ち、移入された西洋音楽はどのように伝統的音感覚の影響を受け、変化したか、について、アメリカ起源の3つの流行歌の音高を測定し、音程・音律を分析することによって明らかにしようと試みたものである。対象となった流行歌は第一節の全ての音の音高が測定され、音程はセントで整理される。結果は調性感の視点から考察される。
著者
阿部 祐治 奥 忍
出版者
奈良教育大学教育研究所
雑誌
奈良教育大学教育研究所紀要 (ISSN:13404415)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.29-44, 1992-03-01

現在、どの国やどの地域においても最も大きな影響を与えている異文化の音楽は西洋の音楽である。一方、自民族の音楽に文化的象徴としての役割を担わせようとする動きも起きている。本小論では、西洋の音楽が異文化であるアジア諸国の中からシンガポール、マレーシア、日本、タイ王国をとりあげ、その社会的背景となっている文化、教育と子どもたちの音楽文化に対する意識との関係をアンケート調査に基づいて考察する。
著者
鈴木 慎一朗 奥 忍
出版者
岡山大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
岡山大学教育実践総合センター紀要 (ISSN:13463705)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.57-67, 2005

本稿の目的は、黒澤隆朝・小川一朗編『標準師範学校音楽教科書』(1938)の歌曲を概観することによって、国定師範学校教科書が発行される直後の検定済教科書における歌曲の特徴と傾向を明らかにすることである。『師範音楽 本科用巻一』(1943)との比較を通して、以下の3点が明らかとなった。①『標準師範学校音楽教科書』は、歌曲の他、器楽、鑑賞、音楽理論、音楽基礎の分野を含み、編纂された教科書である。②8割近くの歌曲は、西洋の作品ないしは西洋の民謡であり、それらの歌詞は原曲の翻案か、新しく作られた日本語の詩である。③ミリタリズム志向の歌曲教材には、4/4拍子、 、弱起、長調の行進曲が適用されている。The purpose of this study is to examine the characteristics of songs in "Hyojun Shihan Gako Ongaku Kyokasho (Music Standard Textbook for normal schools)"(1938) authorized by the Ministry of Education normal schools. The following results were obtained by comparing with "Shihan Ongaku"(1943) designated by the goverment: 1) "Hyojun Shihan Gako Ongaku Kyokasho" was a textbook which contains songs materials, instrumental music, listening, music theory, and sight singing. 2) About 80 percent of the song materials were occupied by Western folk songs and songs composed by the European composers. However, lyrics of these songs were adapted from the originals or newly written in Japanese. 3) Regarding military-oriented materials, Western marches with 4/4, doted rhythm, beginning in up-beat, and in major key were adopted.