著者
布施谷 節子 柴田 優子 SETSUKO FUSEYA YUKO SHIBATA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.67-79, 2010-03

The impression of the subjects dressed in leggings under skirts was investigated to search the best length of leggings for different physical types. This study contained two methods. One was the questionnaire of leggings to 249 female students and another was the sensory effective evaluation to 49 female students in autumn 2008. The subjects who participated in the wearing test were five different physical types. The knee-length skirt and the miniskirt were used for each subject. The length grades of leggings were five for knee-length skirt and four for miniskirt. Nine photographs of each subjecst 'back were taken for the evaluation. Forty nine students selected the most suitable length of leggings which was the best balanced, which appeared to have slim lower body or long legs. Main results were as follows;1)Female students were dressed in leggings frequently in spring or autumn. The aim to put on leggings was to be wearing short pants or miniskirts, for cold weather, and to slenderize their legs.2)The factor analysis made it clear that the effects of being wearing leggings were good balanced between skirt and leggings and making their legs look long.3)The difference of suitable length for each physical type was significant statistically in every item.4)Generally speaking, the shorter-length leggings kept better balance in the shorter-length skirt and the longest-length leggings made their legs look long.5)It was important for female students to consider own physical type and make reference to general suitable length and select own leggings with self-confidence.
著者
市村 美帆 新井 洋輔
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.61, pp.165-174, 2020-03-31

本研究の目的は、大学生が双子コーデ現象をどのように捉えているのか、双子コーデの経験有無による違いについて検討することである。大学生161名を対象に質問紙調査を行った。その結果、大学生は、テレビやSNSおよびインターネットで双子コーデの情報に触れたり、友だちが双子コーデをしていたり、実際に街中で双子コーデをしている人たちをみたことがあるといったように、様々な形で現象に触れていた。双子コーデは主として女性同士で行われる現象であるが、男性もしくは異性同士でも行われるものでもあることや、関係の深い2人によって双子コーデが行われると捉えられていた。また、大学生は双子コーデを、楽しく、テンションがあがることと考え、双子コーデというファッションにかわいいやほほえましいといった評価をしており、好意的に捉えていた。双子コーデをする理由については、「自分の楽しさ志向」「友だちとの関係志向」「流行・社会志向」の3つのまとまりに整理された。双子コーデの未経験者で今後経験したくない者は双子コーデをする理由を「友だちとの関係志向」で捉え、双子コーデの経験者や今後経験してみたい者は双子コーデをする理由を「自分の楽しさ志向」と考えていた。
著者
木村 知世 鈴木 春佳 今井 悠瑚 海老名 理紗子 玉利 舞花 中澤 聡美 横森 千佳 田中 あゆみ
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.175-184, 2020-03-31

服飾造形学科では産学官連携の一環として、2019年7 月15日に和洋九段女子中学校高等学校講堂で開催されたコンサート「瞳みのるOne Dayひとりタイガース」の衣装製作を行った。この取り組みは、1967年に発売されたザ・タイガース3枚目のシングル「モナリザの微笑」の衣装を完全に再現し、現在に蘇らせるというものである。当時実際に着用された衣装は現存不明なため、写真などの資料から素材やパターンを推測し製作を行った。これらの活動を通して、専門分野の知識や技術の活用と連携、スケジュール管理や人材育成の経験を積むことができ、大きな教育効果を期待できることが確認できた。 本稿ではザ・タイガースのメンバー瞳みのる氏を中心としたOne Day special bandメンバーのフィッティングの様子を含め、素材の検討、パターン作成、トワル組み、本縫い、ベルトの製作、仕上げ完成までの様子を報告する。
著者
布施谷 節子 SETSUKO FUSEYA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.51-60, 2011-03

The consciousness of glasses and the sensory eff ective evaluation of wearing glasses were investigated in October 2008. The objects who answered the questionnaire were 243 female students and the objects who joined the sensory effective evaluation were fifty female students. Two impressively different subjects were selected for this evaluation. The eight glasses that had various shapes of rims were used in this study. One photograph of each subject’s face without glasses and the eight photographs of the face wearing eight glasses were taken. Eighteen Photographs were totally evaluated by fi fty students. Four items for evaluation with fi ve stages were senseless-neat, young-adult, severe-gentle and forbiddingfamiliar. Main results were as follows;1) Many female students wore glasses at homes and wore contact lenses outdoors. Many persons wearing glasses made them feel serious.2) The factor analysis and the cluster analysis revealed that the impression of wearing glasses was infl uenced by round or rectangle and farther by the height of rectangle.3) The oblong and slender glasses were evaluated neat. Those shapes are in fashion.4) The glasses with strong individual characters removed each subject’s character and the impression of wearers became similar.
著者
山下 景秋
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.123-135, 2020-03-31

Japan must win not only price competition but quality competition in both agricultural products and industrial products. But usual economics has not taken a problem of quality into careful consideration. This paper deals a problem of quality with quality cost, cost which makes quality and number of sale as result of quality. I think that number of sale is a function of price and quality cost, and a set of quality cost and number of sale under constant price expresses quality level. I think that profit of enterprise and farmhouse is a function of price and quality cost, I examine condition of profit maximization in each of three cases. This paper shows adjustment process to profit maximization in each case, and examins which strategy and what case had better be adopted in these three cases.
著者
杉浦 功一
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.69-80, 2020-03-31

本稿では、広義の民主化支援の動向と変化の要因を、国際政治の構造変化と絡ませながら検証する。民主化支援活動は、西側諸国優位の中、1980年代終盤から90年代にかけて民主化の「第三の波」とともに発達した。しかし、2003年のイラク戦争以降、民主化支援はバックラッシュにさらされた。このバックラッシュは、欧米の「衰退」と中国など新興国の「台頭」という国際社会の権力構造の変化で拍車がかかった。2011年の「アラブの春」により、多くの政権は民主化支援への警戒をさらに強めた。NGOへの統制強化など、民主化支援に対処する政権側の戦略は巧妙かつ大胆になっていく。この民主化支援へのバックラッシュに対し、西側諸国やEUなど国際機構は、活動の工夫や国際的な連携で対処しようとしてきた。しかし、西側諸国の国際的優位が失われていく中で、安全保障や経済的利益に対する民主化支援の優先順位は低下し、対象国の政権が望まない政治的分野を避けるなど民主化支援の「非政治化」が進んでいる。
著者
河内山 有佐
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
no.57, pp.149-156, 2017-03-31

本学では、国際語としての英語のコミュニケーション能力育成を目指し、教育振興支援助成の補助を得て、2014年度と2015年度に渡り、e-learning教材によるTOEIC及びTOEFL関連教材の充実化を図った。新たなe-learning教材の使用を含めた英語の授業効果を測定する為、外部テストを利用した団体受験を実施して、英語学習の成果としての習熟度の伸びを測定した。本研究では、2014年度及び2015年度に実施した英語の事前・事後テストの結果を分析し、英語授業における成果を考察した。
著者
釜屋 洋子 段ノ上 秀雄
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.60, pp.143-152, 2019-03-31

A大学看護学部看護学科では、入学後の学習に対する不安を少しでも軽減できればと考え、推薦入試、AO入試、一般入試(A日程)による入学予定者に対し、入学前の課題として、"看護学生プレトレーニング"(メヂカルフレンド社)に取り組むことを勧めた。"看護学生プレトレーニング"は、「計算と数字」、「看護に生かす理科」、「言葉と文章」の3 つで構成された入学予定者用のテキストである。簡単な演算から濃度や速度の計算、理科では咳嗽(せき)や喀痰(たん)などの簡単な専門用語を使ったり、物理が看護に応用されることなどを理解し看護師の目線で学習できる。また、敬語や言葉遣い、文章を書くときのルールなど基礎知識として必要な項目が充実しており、看護を学習していくうえで効果を体感できる教材であると思われた。 平成30年度の入学者のうち90名が取り組み、学習後は解説書を使って自己採点し復習をした。入学後にアンケートを行った結果、ほとんどの学生が、課題の量、内容、テキスト代が"ちょうどよい"と答えていた。また、学習効果についてもほとんどの学生が"役立つと思う"と答えており、今回の学習により看護学科入学前の基礎知識を補う効果はあったのではないかと推察できた。今回の調査では、対象者の背景については詳細な調査をおこなっていないため、今後は対象者の学習履歴や推薦入試、AO入試と一般入学者との比較、入学予定者全体を視野に入れた入学前学習課題についても検討していきたい。
著者
布施谷 節子 柴田 優子 SETSUKO FUSEYA YUKO SHIBATA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.52, pp.141-151, 2012-03

ハイヒールの歩容の特徴を、裸足歩行との比較において明らかにすることを目的に、ハイヒール歩行に関する質問紙調査と2台のビデオカメラの撮影による歩行の三次元動作実験を行った。質問紙調査の対象者は本学女子学生176人、歩行動作実験の被験者は本学女子学生および女性職員45人で、調査及び実験は2008年7 月~ 9 月に行った。主な結果は以下のとおりである。 質問紙調査から、女子大学生は「膝を曲げて歩かない」、「背筋を伸ばす」、「真っ直ぐに歩く」などが美しい歩容だと意識していた。また、安全性や足の障害も問題視していた。 ハイヒール歩行では離床と同時に膝を上げ、足部を外に蹴り出すことなく、ほぼそのまま着地するということがわかった。ハイヒール歩行では裸足歩行のようないわゆるあおり歩行ができていないといえる。ハイヒール歩行の一歩は歩幅が狭く所要時間がやや長い傾向であった。ハイヒール歩行は裸足歩行より膝を高く上げているものの、踵を後に蹴り上げずに、靴を床面とほぼ平行に置きに行くような歩行をしていることがわかった。膝の動きを経時変化でみると、ハイヒール歩行では最高点に達するまでに膝を早く高く上げ、最高点以降は早く接地しており、接地による片足の支持時間が長いといえる。また、膝の軌跡のパターンは、ハイヒール歩行は裸足歩行に比べて画一的な傾向であった。各マークを結んでできる空間角度でみると、裸足歩行とハイヒール歩行の違いは腰と膝の曲がり具合に表れるということがわかった。
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.60, pp.210-199, 2019-03-31

荷兮編『冬の日』(貞享二年刊か)は貞享元年冬の旅中に芭蕉が名古屋の連衆と巻いた五歌仙を収め、俳諧史上画期的な連句集として知られる。しかし、これが突如として生まれたものかどうかを言うためには、同書以前の作品と比較する必要があろう。そこで、本稿ではその作業の一つとして、芭蕉が名古屋に入る前、大垣で嗒山・木因・如行と四人で巻いた「師の桜」歌仙(『元禄風韵』所収)を取り上げ、それぞれの付合を、①〔見込〕、②〔趣向〕、③〔句作〕の三段階による分析方法を使って読み解いていく。そして、表現面での難点が多く、付合や一巻の展開にも問題は指摘できるものの、疎句化を意識した付け方が進行しつつあることも認められ、たしかに『冬の日』につながる歌仙であることを明らかにする。
著者
柳澤 幸江 小谷 哲司 淡嶋 恭子 杉山 洋
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.58, pp.119-128, 2018-03-31

本研究は、プチプチ食感を主軸にした咀嚼誘発性食品(楽しく・自然と咀嚼を増やすことができる食品)の開発を大きな目的とし、咀嚼回数増加効果が期待できるプチプチ食感の咀嚼回数に与える影響について検討した。加えてオノマトペとしてプチプチというテクスチャー表現の好感度を調査した。プチプチ食感を有する海ブドウを用いて、コントロールのところてんに海ぶどうを添加した結果、添加量の増加に伴って咀嚼回数が有意に増加した。また、プチプチ食感を有する海ブドウを添加(1.5~4.5g)した試料は、予め潰すことでプチプチ食感を削除した海ブドウ試料より、全ての添加量で咀嚼回数が有意(p<0.001)に増加した。これらの咀嚼回数増加の効果は、男・女で差が無く、また咀嚼習慣性の影響も小さいことが示された。加えて、プチプチというテクスチャー表現は好感度レベルが高く、5点満点で平均スコア4.01であった。
著者
布施谷 節子 柴田 優子 SETSUKO FUSEYA YUKO SHIBATA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.141-151, 2012-03

ハイヒールの歩容の特徴を、裸足歩行との比較において明らかにすることを目的に、ハイヒール歩行に関する質問紙調査と2台のビデオカメラの撮影による歩行の三次元動作実験を行った。質問紙調査の対象者は本学女子学生176人、歩行動作実験の被験者は本学女子学生および女性職員45人で、調査及び実験は2008年7 月~ 9 月に行った。主な結果は以下のとおりである。 質問紙調査から、女子大学生は「膝を曲げて歩かない」、「背筋を伸ばす」、「真っ直ぐに歩く」などが美しい歩容だと意識していた。また、安全性や足の障害も問題視していた。 ハイヒール歩行では離床と同時に膝を上げ、足部を外に蹴り出すことなく、ほぼそのまま着地するということがわかった。ハイヒール歩行では裸足歩行のようないわゆるあおり歩行ができていないといえる。ハイヒール歩行の一歩は歩幅が狭く所要時間がやや長い傾向であった。ハイヒール歩行は裸足歩行より膝を高く上げているものの、踵を後に蹴り上げずに、靴を床面とほぼ平行に置きに行くような歩行をしていることがわかった。膝の動きを経時変化でみると、ハイヒール歩行では最高点に達するまでに膝を早く高く上げ、最高点以降は早く接地しており、接地による片足の支持時間が長いといえる。また、膝の軌跡のパターンは、ハイヒール歩行は裸足歩行に比べて画一的な傾向であった。各マークを結んでできる空間角度でみると、裸足歩行とハイヒール歩行の違いは腰と膝の曲がり具合に表れるということがわかった。
著者
星野 文子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.15-25, 2017-03-31

This paper aims to introduce articles written by Yone Noguchi in the Japan Weekly Mail between January 1913 and June 1914. These articles, which were recently identified by researchers, will be used to analyze his sense of himself as a poet, or his poet-self. Yone Noguchi was the first Japanese poet who published English poetry books in United States of America at the end of the19th century, and in England at the beginning of the 20th century. After spending nearly 11 years abroad, he came back to Japan in 1904 as a well-known poet, and continued writing actively for various magazines and newspapers, as well as publishing books in both English and Japanese languages. At the time, he was one of the only Japanese capable of doing so. It recently came to light that the Japan Weekly Mail carried many of Noguchi’s articles before, during, and after his second visit to England, on the invitation of the Poet Laureate Robert Bridges. The topics Noguchi covers in these articles range from English and American literature, to Ukiyoe, Kabuki, Noh-play, Japanese art, his poetry, and his impressions and experiences in England. Drawing on these articles, this paper will shed light on how his visit to England reassured his poet-self.
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.210-199, 2018-03-31

珍碩編『ひさご』(元禄三年刊)は「俳諧七部集(芭蕉七部集)」の四番目に位置し、奥羽・北陸行脚を終えた芭蕉の新境地を示す連句集として知られている。中でも巻頭の「木のもとに」歌仙は、『猿蓑』所収の諸歌仙とともに、連句史上の傑作として名高く、貞門・談林の古風を完全に打破した新風の一巻とされている。本稿では、この一巻を対象に、それぞれの付合を、①〔見込〕、②〔趣向〕、③〔句作〕の三段階による分析方法を使って読み解いていく。そして、その付合の多くが、前句がもつ気分・雰囲気に合わせた匂付であることはたしかにもせよ、その「匂」を句姿にも示したものが多いことを指摘し、芭蕉晩年の付合とはその点が異なることを明らかにする。
著者
髙梨 一彦
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.97-105, 2017-03-31

パラメトリックな多変量の統計解析において用いられている(重)回帰分析や分散分析法等は、基本的な解析方法であると同時にコンピュータの利用が必須である。これらの方法は、従来、それぞれ別個の手法と考えられて教育上もそのように扱われてきている。しかしながら近年は理論的な枠組みも統一的かつ一般的になってきて、これらの方法をより一般性の高いものから考察しようという動きがある。それがGLM(General Linear Model;一般線型モデル)である。本研究では、GLMの理論的な枠組みを外国文献ならびに邦文文献によって、統計学上の理論をまとめ、統計パッケージソフトによる分析手順の違いを示した。
著者
池田 幸恭
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.65-74, 2017-03-31

日本では「すまない」などの負債感を含んだ複合的感情として感謝をとらえる傾向があるという文化的特徴に着目し、心理学や言語学の複数領域での研究成果に基づいて、感謝に伴って生じるすまなさ感情を経験することの心理的意味を明らかにすることを本研究の目的とした。そのため、「すまない」の語義、日本語の感謝表現における「すまない」、感謝と負債感の関係に関連する文献を概観した。それらの論考を踏まえて、以下の3つの試論を提起した。第1に、感謝は自分が周りから恩恵を受けていることを認識することによって、肯定的感情と否定的感情の両方として経験される可能性がある。そこでは、未分化で肯定的感情と複合したすまなさ感情を経験する場合、経験された否定的感情を解消するために他者へ返報する義務があることを強調して負債感を分化する場合があると考えられた。第2に、感謝に伴うすまなさ感情は、相手の負担、意図、与えられた恩恵の価値という状況の評価に加えて、相手との社会的関係の影響を受ける。さらに、感謝に伴うすまなさ感情は、他者との関係の形成や維持につながると考えられる。第3に、感謝に伴うすまなさ感情は、自己洞察を深めるが、同時に自己否定的な心理状態に留まるという危険性もある。今後の研究の展望として、対人関係以外の抽象的な対象への感謝に伴うすまなさ感情について検討すること、感謝の経験と表明の相違を検討すること、本研究で提起した試論について文化的背景を視野に入れた実証的研究をとおして確かめていくことの必要性について論じた。
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.174-163, 2017-03-31

俳諧史上の傑作の一つとして知られる『此ほとり一夜四歌仙』の中から、巻頭の「薄見つ」歌仙を取り上げ、各付合の分析を通して、蕪村連句の特色を探る。それぞれの付合は、①〔見込〕、②〔趣向〕、③〔句作〕の三段階による分析方法を使って読み解いていく。その結果として言えるのは、古典趣味や中国趣味など、題材の偏りが多分に見られること、前句をよく検討してから趣向を立てるのではなく、前句の詞や表現から喚起されたこと(それは自分たちの嗜好にかなう方向で多く選ばれる)をもとに付句を考えていくこと、の二点である。すなわち、芭蕉流の付合手法とは異なる面が多く、蕪村一流の美的世界が構築されているのであり、今後は、そのことを前提に蕪村連句と取り組むことが肝要と言える。
著者
大神 優子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.75-85, 2017-03-31

本研究の目的は、保育実習生の学習段階をはかる簡便な指標を作成するための基礎資料を得ることである。制限時間内にできるだけ多くの単語をあげる語想起課題の手法を用いて、保育環境課題(保育室・園庭)及び統制課題(動物・音韻カテゴリ(か))の計4課題を実施した。大神(2016)で実習前・見学実習後の2時点を比較した保育学生42人を責任実習後まで追跡し、3時点を縦断的に比較した。その結果、特に保育室課題で、実習後の反応数が増加していた。見学実習後と責任実習後では量的には差がなかったが、生成された語を「玩具」「生活用品」等のカテゴリに分けて分類したところ、各実習での特徴が明らかとなった。これらの生成カテゴリの違いは、実習段階の違いを反映したものと解釈された。さらに、実習生だけではなく、保育者までを対象として保育環境知識をはかる場合の課題及び分析手法の改善点について論じた。