著者
侯 漢清 劉 華梅 〓 嘉樹 梁 桂熟
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.260-273, 2011-09-01

本稿ではまず,60年来の,わが国の図書分類法の編制,改訂状況と特徴についてまとめた。次いで,出版年代,詞表の規模,語彙の性能,分野の分布,語彙の表示,改訂の状況等の面から,ここ30年来の主題詞表研究と編制について統計分析を行った。統計分析を通じてわが国の主題詞表の発展状況,レベルと存在している問題点などについて明らかにした。最後に,4つの時期に分けてわが国の情報検索言語(索引言語)の相互運用性の進展を,主なプロジェクト及びその特徴を含め,成功したプロジェクトについて分析し,総括して情報検索言語の相互運用性においてより実り多い成功経験と参考とすべき方法などを提供した。
著者
大島 真理
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.224-235, 2004

戦後日本の占領軍支配下において作られたCIE図書館に,多くのアメリカ人女性図書館長を見出すことができる。CIE図書館の利用者の書いた資料から,実際的なCIE図書館の姿を分析すると同時に彼女らの業績を調査した。さらに来日の背景の分析,日本の図書館界に及ぼした影響などについて考察する。
著者
長坂 和茂
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.304-316, 2017

日本図書館協会の総裁徳川頼倫は,1923年から特別預金5万円の利子として年3000円を協会に対して支払い,財政的に支援している。その利子を当時の協会財政と照らし合わせ,利子の影響力の大きさと,使途について調査した。 年3000円とは当時の日本図書館協会の会費収入に匹敵する重要な収入源であり,図書館雑誌の月刊化や図書館週間の宣伝などに使われていることが判明した。 特別預金利子が大正期の日本図書館協会の財政にとって,大きな役割を果たしていることが明らかとなり,華族による社会貢献の一端を見ることができる。
著者
薬師院 はるみ
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-12, 2004-05-01
被引用文献数
2

本論は,専門職に関する基礎的研究を,司書という文脈において再検討し,司書職制度実現の阻害要因を探る試みである。司書は,専門職ではなく,準専門職であるといわれてきた。だが,準専門職の特徴,中でも,専門職化を阻むとされる要因は,司書に対しては,必ずしも該当しない。司書の専門職化を阻んでいるのは,図書館という組織に所属することでもなければ,図書館が官僚的に組織されていることでもない。問題は,図書館が自律的な官僚的組織として形成されておらず,全体機構に組み込まれた下部組織としてのみ存立している点にある。
著者
辻 慶太 芳鐘 冬樹 松本 直樹 影浦 峡
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.166-179, 2008-09-01

司書資格は取得者にどのような仕事をもたらしたか,満足をもたらしたのか,を明らかにする為,司書資格を取得(して/しないで)図書館に勤務(したことがない/している)者,及び資格取得を目指して(いる/いない)大学生,の6グループにインターネット調査を行った。回答者は1,829人で,資格を取得し図書館員にならなかった者には非正規職員が多く,現状に満足しておらず,年収は一般人より低いことが示された。資格を持つ図書館員には専門的業務に従事する者が多く,年収は低いが非常に満足していることも示された。
著者
上原 樹代
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.2-15, 2013-05-01

21世紀の教育改革は,生涯学習の入り口としての学校教育を見直す傾向にある。その結果,学校図書館は,学校のなかの図書館としての機能と担当者の専門性が改めて問われることになった。東京都荒川区は,2009年度より公立小中学校全校に常駐の学校司書を置き,モデル校が文部科学省,区教育委員会の支援を受けながら先進的学校図書館のあり方を模索してきた。区内中学校図書館モデル校での3年間の実践を塩見昇の理論に基づいて考察する。
著者
王 世偉 櫻井 待子
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.24-35, 2011-05-01

資源共有,有料サービス,平等な公開,本館分館制,広報の拡大などをキーワードに,中国建国以来60年間の図書館サービスの発展について振り返る。
著者
後藤 敏行
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.256-267, 2012-11

本稿は,長尾真・前国立国会図書館長の「長尾構想」を検討する。長尾構想を推進する際,予算の制約上,できる範囲で資料の一部を対象にしていくやり方と,民間企業と連携してより多くの資料を対象にするやり方の2つがあると予測する。また,パブリックドメインと推定される資料,非市販または権利者不明と判断される資料を電子化して図書館内での閲覧,利用者への有償貸出に供する場合はオプトアウトを,市販中の資料を国立国会図書館のデータベースから出版社が販売するという仕組みについてはオプトインの規定を設けるべきと提言する。
著者
吉田 右子 川崎 良孝
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.2-15, 2009-05-01

本稿は建築史研究者で文化景観学,子どもの空間,図書館建築などに関心を持つアビゲイル・ヴァンスリックの図書館史研究を研究史的に取り上げたものである。本稿では代表作『すべての人に無料の図書館』を含めて,ヴァンスリックの研究の特徴を2つの側面から明らかにした。従来の図書館建築史研究やカーネギー図書館の研究史の中での斬新さと特徴,および図書館というスペースに注目しての女性や利用者からの視点による図書館の捉え返し。そうした特徴を指摘しつつ,いっそう盛んになってきている「場としての図書館」への歴史的研究の貢献の可能性と,この視点の重要性を指摘した。