著者
辻 慶太
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.210-227, 2015-11-01

図書館の利用を増加させるラーニング・コモンズ(LC)像を調査分析した。具体的には,小山(2012)に示されている24のLCをサンプルとし,『日本の図書館:統計と名簿』に記されている入館者数,貸出数,参考受付総件数を利用量として取り上げ,これらを増加させるLCの要素を分析した。結果,プリンタ,コピー機,ノートPCがあり,学生一人当たりコンピュータ設置台数が多く,さらにTA・SAによる支援があって,1階に設置されているLCは,他のLCに比べて,入館者数や参考受付総件数を増加させる可能性があることが示された。
著者
田井 郁久雄
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.286-300, 2008-01-01

公立図書館における「選書ツアー」についての論争は数年に渡って続き,現在もなお論議の対象となっている。しかし,肝心の詳しい実態は報告されず,図書館現場にどのような影響があったのか,どう役立ったのかという,実証的な分析や報告はなされていないし,実施自体も広がっていない。本稿では実態を置き去りにして論議ばかりが過熱してきた「選書ツアー」をもう一度実務として実証的に検証することにより,実際の選書について,そして「選書論議」のあり方について考えてみる。
著者
辻 慶太 党 春菜 原 淳之
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.348-363, 2011-01-01
被引用文献数
1

本研究では都道府県立及び市区立公共図書館のデジタル/対面式のレファレンスサービスとQ&Aサイトに60個の同じ質問を行い,正答率を比較した。結果,デジタルレファレンスサービス(DRS)の正答率は全般にQ&Aサイトより高いこと,DRS未実施館の対面式の正答率はQ&Aサイトと変わらないが,実施館のそれはQ&Aサイトより高いことが示された。DRSを行うほどレファレンスサービスに熱心に取り組めば,図書館の正答率はQ&Aサイトを超えられる可能性がある。今後のレファレンスサービスのあり方を検討する上で考慮すべき結果と思われる。
著者
田井 郁久雄
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.56-75, 2001-07-01

岡山市の中心地域に位置する地区図書館である岡山市立幸町図書館では,2000年4月から,火曜日〜金曜日の開館時間を2時間延長した。本稿では,1999年度と2000年度の利用統計を比較して,開館時間延長のサービス効果を検証した。開館時間は長ければよいというものではない。延長に見合うだけの一定の効果がなければ成功したとはいえない。幸町図書館の場合はどうだったか,期待したほどの効果がなかったとすれば何が問題なのか,サービスの向上のための方策として開館時間の延長の優先度をどう考えるべきか等の問題について考察した。
著者
河井 弘志
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.2-15, 2014-05-01 (Released:2017-05-24)

ヨーロッパ18世紀に,多くの人が図書館めぐりの旅行をした。その一人学生ウッフェンバッハもドイツ,オランダ,イギリスの図書館探訪旅行をし,歴史ある図書館で貴重マヌスクリプトを実見した。大学図書館は未整備で,むしろ教授の個人図書館のほうがよかった。記録した多数の書誌データによって,旅行記は貴重図書の総合目録の役割を果たした。粗野な書誌記述は目録規則の模索段階ともいえる。鎖つき本の書見台は,書架システムのリアルな歴史である。図書館員の多くは書物や蔵書管理の基礎知識をもたず,彼の厳しい批判にさらされた。
著者
高梨 章
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.2-18, 2012-05-01

昭和初年期は視聴覚メディアが大衆化した時代である。映画・レコード・ラジオ・紙芝居等々。今回はその中から「映画」を取り上げ,映画上映・映画鑑賞という視点から昭和戦前・戦時期の図書館を検証した。主な対象図書館は,鎌田共済会図書館,葵文庫,東京市立図書館,県立鳥取図書館である。「映画」を取り上げることによって,図書館がどの層を対象としてサービスを行なっていたのか,力を注いだのかが見えやすくなる。その地域性や,図書館の方針等を踏まえて,意外にバラエティに富んだ図書館の諸活動を見ていく。
著者
高梨 章
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.206-220, 2010-09-01 (Released:2017-05-24)
被引用文献数
1

戦前においては,国民の8割以上が小学校卒業であった。では,その彼らのリテラシーとは,一体どの程度であったのか。また,リテラシーの相違は,図書館の利用者層とどのように連関したのか。種々のリテラシー調査を見れば,小学校卒業者のリテラシーの低かったことが判明する。一方,出版物も,当時のまじめな本はやたらと難しかった。いわば,大衆はフリガナのある本や雑誌を読むべく運命づけられていたのである。そうした状況の中で,図書館は大衆に,どのように対応したのか。その種々相を追ってみた。
著者
毛利 るみこ 大庭 一郎
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.400-418, 2017-03-01 (Released:2017-06-26)

本稿は,今後の公立図書館長の養成に資するため,館長に求められる能力・知識・技術について全国の公立図書館長を対象に行った質問紙調査の結果に基づいて考察した。本調査によって,館長の業務内容等の実態が明らかになるとともに,職務を遂行する上で,特に「判断・決定能力」等の10項目に対する必要性が高く,知識・技術としては「地域社会に関する知識」等の4項目に対する必要性が高いこと等が明らかとなった。結果を踏まえ,各能力の必要性の違いや館長に求められる図書館に関する専門的能力,知識・技術等について考察した。
著者
永嶺 重敏
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.200-210, 1999-11-01

婦女新聞社や東京日日新聞社をはじめとする新聞社や出版社は,明治から大正にかけて一連の図書館活動を展開するが,この活動はあるユニークな特徴を有していた。それは,通常みられるような直接来館者への閲覧サービスではなく,郵便による非来館者へのサービスを指向していた点である。具体的なサービス活動としては,(1) 郵便による貸出,(2)読書会事業,(3)巡回文庫の3形態が実施されていた。その展開過程をたどり , さらに,サービス対象となった地方読者の視点から,その持つ意味を考察した。
著者
高梨 章
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.206-220, 2010-09-01

戦前においては,国民の8割以上が小学校卒業であった。では,その彼らのリテラシーとは,一体どの程度であったのか。また,リテラシーの相違は,図書館の利用者層とどのように連関したのか。種々のリテラシー調査を見れば,小学校卒業者のリテラシーの低かったことが判明する。一方,出版物も,当時のまじめな本はやたらと難しかった。いわば,大衆はフリガナのある本や雑誌を読むべく運命づけられていたのである。そうした状況の中で,図書館は大衆に,どのように対応したのか。その種々相を追ってみた。
著者
佐藤 翔
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.216-233, 2022-11-01 (Released:2022-11-30)

公共図書館における日毎の貸出冊数予測モデルについて,既往研究と異なる特徴を持つ図書館での知見獲得を目的に,柏市立図書館本館を対象に分析をおこなった。さらに資料の分類や利用者の年齢とモデルの関係についても分析した。分析の結果,本館全体としては曜日の影響に既往研究と異なる傾向が認められること,降雨による貸出冊数減少効果は江東区等の都心部と同等であることがわかった。分類については小説等のフィクションについて精度の高い予測が困難であること,年齢については高齢者は曜日の影響が小さくなること等がわかった。
著者
森井 理恵
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.235-250, 2017-11-01 (Released:2017-12-22)

【背景】看護基礎教育機関は,どのような能力を備えた看護師を育成すべきか,その育成に図書館員はどう関わるべきか,利用者教育の面から検討した。 【方法】効果的な利用者教育の要件を,国内外の事例から7つ挙げた。その要件について,授業の一環として,文献検索を担当する図書館員への半構造化インタビュー調査を実施した。 【結果】図書館員たちが重視していた要件は,「タイミング・動機」,「正規の授業」,「教育の期間」,「協働」の4つであった。 【考察】看護図書館における利用者教育試案を提示する。
著者
小林 卓
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.356-370, 2012-01-01

日本の公立図書館における「図書館利用に障害のある人々」へのサービスについて,1970-90年代を中心に1)読書権,2)アウトリーチ,3)図書館の自由をひろげる,4)図書館の側の障害,5)図書館利用に障害のある人々,のキーフレーズと,6)障害者サービスの「障害」とは,に着目し,それらの概観,整理を行った。最後に,筆者のベースである多文化サービスの視点から,近年の「障害学」を反映し,「図書館利用に障害のある人々(マイノリティ)」をそれぞれ「文化集団」ととらえる必要性を提起した。