著者
安里 芳人 筒井 大輔 杉田 康 上野 隼平 橋本 倫季 天羽 惠佑 上田 一志 中崎 正太郎 狭間 研至
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
pp.2019.0029, (Released:2020-03-24)
参考文献数
9

2018 年度調剤報酬改定では,ポリファーマシー対策における薬剤師業務の評価を目的に服用薬剤調整支援料(以下,本支援料)が新設された.今回,当薬局にて本支援料を算定した123 名を対象に患者背景,減薬理由,薬効別内訳や薬剤師の経験年数などを解析するとともに,推定削減額と本支援料の関連を検証した.1 人当たりの薬剤数は,9.0 剤から6.0 剤に減少していた.うち,薬剤師の提案による減薬が274 剤(87.3%)を占めており,中止となった薬剤には消化器用剤と解熱鎮痛消炎剤の併用が多かった.服用薬剤数は80 歳から84 歳以下の10.7 剤がピークであったが,年齢と減薬数には大きな差はみられなかった.190 剤(69.3%)が漫然投与の改善であった.123 名で算定した本支援料は,延べ133 回166,250円であった.一方,本算定要件となる28 日間で薬剤費は461,680 円の削減となった.また,薬剤師の経験年数と本算定には関係性は認められなかった.薬剤師による服用後のフォローと薬学的見地からのアセスメント,医師へのフィードバックを基本サイクルとして,患者個々において薬剤師が医師や他の医療従事者と連携する環境を整えることは,服用薬剤数を減少させ,ポリファーマシーの改善に寄与するとともに,医療費の適正化にも貢献すると思われた.
著者
狭間 研至
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.29-36, 2019 (Released:2019-02-09)
参考文献数
1

2013 年に厚生労働省から示された「地域包括ケアシステム」という概念は超高齢社会となった我が国で、安心して過ごせる社会を作るためには不可欠だ。ただ、この枠組みの中で薬剤師は何をするのかということには議論がある。地域包括ケアにおいては医療の「ことがら」のほとんどは薬物治療が占める。高齢化に伴い複雑化する薬物治療支援のニーズが飛躍的に拡大するなかで、薬物治療の個別最適化が極めて重要であることを考えれば薬局・薬剤師が果たす役割は、入院、外来、在宅など全ての場面で重要になるはずだ。しかし、処方箋調剤業務を機械的にこなす「モノ」と「情報」の専門家としての従来の薬剤師であれば、機械化の進展、ICTの普及によりその重要性は相対的に低下する。一方、薬剤師が、薬を患者さんに渡すまでの仕事から、薬を服用した後の患者さんをフォローすることで前回処方の妥当性を薬学的に評価し、次回の処方内容の適正化につなげるという医師との協働した薬物治療を行う仕事にシフトすることで状況は一変する。このことは、薬を渡すまでとは対物業務、飲んだあとまでフォローするというのは対人業務であることを考えれば、「患者のための薬局ビジョン」に示された、「対物から対人へ」という方向性にも一致する。今後、多くの薬局・薬剤師が地域包括ケアシステムで活躍するようになるには、薬剤師の患者をアセスメントするための知識・技能・態度、薬剤師の患者を診るための時間・気力・体力とともに、調剤報酬の抜本的な改革が必要であると思われる。
著者
長谷川 フジ子 狭間 研至 池田 俊也
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.80-87, 2014-12-10 (Released:2015-09-04)
参考文献数
14
被引用文献数
3

A number of pharmaceutical colleges have adopted a training program for the vital signs in their 6 year-education curriculum. However, few hospitals or pharmacies carry out vital signs monitoring or physical assessment at present, and graduate pharmacists cannot utilize the techniques that they are skilled in fully. In this study, in order to clarify the situation for implementing vital sign monitoring by pharmacist and what is necessary for pharmacy education, we carried out a web survey for two months, from October 4th to December 3rd, 2012, targeting 1026 pharmacists who attended the vital signs training program hosted by The Japanese Association of Home Care Pharmacies. The Survey item were; (1) basic information of a respondent; (2) situation of homecare conducted by pharmacists; (3) seminar attendance status; (4) vital signs monitoring status after the seminar; (5) hope for future pharmacy education. From the result of the survey, it became clear that over 40% of pharmacists had a chance to perform vital sign monitoring, leading to proper use of medicines. In total, 183 responses to the questions concerning future pharmacy education were obtained from 135 pharmacists and were classified into 11 categories. A request for “a purpose and the significance” was the most common. In the education of pharmacy schools, it is thought that having lectures from on-site pharmacists with an abundance of experience in cases will be effective.
著者
藤永 智也 狭間 研至 岸 雄一
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
pp.2021.5003, (Released:2021-02-10)
参考文献数
13

要旨:国が推進している地域包括ケアシステムを実現するには,病院と地域の医療機関の連携が欠かせない.なぜなら、入院時や退院時に薬物療法の情報が「ない」「誤っている」「古い」場合は,患者に有害事象が起こる可能性がある.そのため,「安心安全な薬物療法」を患者に提供するには,病院-薬局間のシームレスな薬薬連携が必要である.思温病院で実践している薬薬連携の手段には,「退院時共同指導」「薬局薬剤師向けの薬剤管理サマリー」の2つがある.退院時共同指導と薬剤管理サマリーを実施した中で,「中心静脈栄養管理」「経腸栄養管理」「褥瘡管理」「血糖管理」「服薬管理」の5つは,医療資源が充実している病院と医療資源が限られている施設や自宅との違いがあるため,情報共有が重要となる.特に,「アドヒアランスが遵守できる服薬管理」などの対物業務と,「医薬品の適正使用」などの対人業務の2つの情報は,患者のQOLの維持・向上に欠かせないため,患者の入退院後も薬剤師が薬を渡した後にフォローし続けることが重要である.
著者
狭間 研至
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.132, no.1, pp.17-20, 2012-01-01 (Released:2012-01-01)
参考文献数
3
被引用文献数
3 2 1

In Japan, the proportion of elderly people had reached up to 23% in 2009. The number of elderly people in long-term nursing homes or nursing facilities will increase in the next decade. By 2025, the majority of the elderly people would have developed cancer, stroke, cardio-vascular diseases, and dementia. Almost all of them would be treated with prescribed drugs. They would also have dysphagia and have difficulties in remembering their medications in the long term. Therefore, for the benefit of such a community, the work force, especially in the field of drug distribution, will need to be increased to prevent the incidence of patients who forget to take their medications. Further, the educational curriculum for pharmaceutical students has been changed to a new version, and some Japanese pharmacy shops have been switching over to “Pharmacy 3.0,” which is the next generation model. In this pharmacy, the pharmacists will play an additional new role; they will not only dispense drugs but also support home recuperation leveraging some vital signs and physical assessments. In my opinion, this novel scheme of medical service developed with pharmacists playing this new role may be a boon to the patient/elderly community in Japan who are facing the collapse of healthcare systems. In conclusion, Collaborative Drug Therapy Management (CDTM) in the practice of the pharmacists is essential for increasing the efficiency of the Japanese healthcare systems.
著者
狭間 研至 明石 章則 前畠 慶人 松田 良信 山下 博美
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.323-327, 2001-08-20

症例は71歳男性.肺線維症の経過観察中, 腺癌が発見された.術前検査にて坑Scl-70抗体が陽性であり, 全身性強皮症が疑われた.術前呼吸機能検査で, VC1,430ml(44.0%), FEV_<1.0>1,420ml(100.0%)と拘束性換気障害を呈していた.臨床病期はT_1N_0M_0 stage IAで, 低肺機能症例であったため, 胸腔鏡下左肺下葉切除術を施行し, 術後経過は良好であった.病理組織検査では, S^8の原発巣と, S^6のブラ壁から発生した扁平上皮癌が認められた.病理学的検索および遺伝子診断より, 本症例を重複癌と診断した.突発性肺線維症は肺癌の危険因子であるが, 膠原病に合併した二次性の線維化肺にも肺癌は発生しやすいとされている.このような症例の手術に際しては, 低肺機能のため術式の選択に苦慮する事が多い.根治性および低侵襲性の両立のため, 胸腔鏡下肺葉切除術の適応を積極的に検討すべきであると考えられた.