著者
永井 由佳里 田浦 俊春 佐野 宏太郎 保井 亜弓
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.506-524, 2010 (Released:2011-03-08)
参考文献数
46
被引用文献数
6 2

In the creative design process, it is difficult to observe the creative process from an inner perspective when people are deeply engaged in their work. The reason behind this is that the people who are absorbed in the work are assumed to have entered the flow state. Moreover, an external observation of the design process fails to grasp the designers' thoughts since they are stimulated by intrinsic motivation and formed owing to inner dynamics.The aim of the study described in this paper is to propose a method to observe the internal thoughts elicited during the creative design process by extending Reflections and Poietiques. This method comprises three stages: (1) the creative design process, (2) the formulation of two reports on the designer's work by the designer and a third person (art researcher), and (3) the formulation of another report by the designer after examining both the reports created in the second stage. The process of self-formation is expected to begin in the third stage. The observation is determined to be established, on condition that the self-formation is confirmed during this observation process.We applied this method to a space-designing project. The three reports were analyzed, both quantitatively and qualitatively, and a number of observations that were not included in the previous two reports were identified in the third report. Following these analyses, we could confirm that the process of self-formation was initiated in the third stage and the observation was complete.
著者
田浦 俊春 永井 由佳里
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.66-82, 2010 (Released:2010-10-22)
参考文献数
48
被引用文献数
8

Thus far, cognitive studies on concept have not focused on its creative features. The process of concept generation is still an open issue. In order to clarify the concept generation process, we discuss design from the perspective of creativity. First, we consider previous studies on design and segregate design into three categories: drawing, problem solving, and pursuit of the ideal. Next, we discuss each category from three perspectives: time direction, driving force, and creativity as a rational novelty. Following this, we define the generation process of a design image as a model of concept generation related to metaphors, abductions, and operations of abstract concepts. Finally, we redefine design -- that is the process of composing a desirable figure toward the future -- and address that creativity in design is a criterion for the desirable figure on the basis of the knowledge gained from our studies.
著者
大谷 周平 由田 徹 谷口 俊平 前川 正実 永井 由佳里
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.244-245, 2018 (Released:2018-06-21)

近年日本では個人がデジタル工作機械を用いて自分の作りたいものを作る「パーソナルファブリケーション」と呼ばれる文化が広がっており,その環境のサポートとしてFabLabやFab施設と呼ばれる場所,コミュニティの形成が盛んである.その反面,FabLab,Fab施設を運営している複数のオーナに話を伺ったところ,継続して利用する顧客が少なく,規模縮小している施設が多く存在することが判明した.本研究ではデザイン創造性の観点から未来のFab施設のデザインを考えるため,現状の課題を整理し解決の糸口を探ることが目的である.
著者
森下 奈美 永井 由佳里 森田 純哉 ゲオルギエフ ゲオルギ V.
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.56, 2012 (Released:2012-06-11)

本研究では触感を通じてガラスから抱く印象を探ることを目的とし,より詳細にガラスから抱く印象を探るため2つの実験を行った.実験1はガラスの表面加工,見た目による印象の変化を探るものである.ここでは,被験者に5種類のガラスサンプルに触らせ,抱いた印象や想像したことを発話してもらった.収集した発話を元に発話内容の分類,潜在イメージを抽出しサンプルごとに比較した.実験2ではタッチパネルを使用し,同一素材上での触り方や操作感による印象の変化を分析した.利き手(利き手・非利き手),触り方(指先・3本指・母指球・関節・親指)を変えて課題に取り組ませ,タスク前後に印象評価を行った.タスクの成績とアンケートの結果を総合し,被験者の抱いた印象を探った.結果,実験1からは,表面加工により幅広い印象を与え,曲線・曲面の加工により硬いガラスからも柔らかさを感じさせる可能性があることが確認された.実験2から,同一素材でも状況によって印象が変わることが確認された.今後,サンプルにより細かな加工を施したり,タスクを変更させて,触覚的な印象を詳細に分析することで,触り心地に影響を与える要因の解明につながると考えられる.
著者
田浦 俊春 永井 由佳里
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.389-402, 2010-09-01

This article discusses the methods of design theoretics and related research issues. First, the authors historically review the terminologies of “design” and “creativity” in the field of design research. Then, the authors redefine design as a process for composing a desirable figure toward the future on the basis of their classification of design — drawing, problem solving, and pursuit of the ideal. Next, they elucidate upon the key issues of design, namely inside-outside issue, time, and abstraction, and introduce three potential research methodologies of design-that is, internal observation, computational simulation, and theoretical modeling. Further, the authors demonstrate an example of a desirable design of motion by assuming that an emotional and creative motion is expected to extend beyond the images produced by human imagination and resonate with the feelings residing deep within us. Finally, the authors claim to form an important view of design in the future society, which doesn't focus on the notion of efficiency.
著者
永井 由佳里 野口 尚孝
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.27-36, 2003-05-31
被引用文献数
1

本研究に先行しておこなった,多くの被験者を用い,ローイングに焦点を当てたデザイン過程についての実験結果をもとに,本研究では,より深くデザイン思考過程を探る目的でデザイン行為をリアルタイムで追跡観察する実験をおこなった.4人の被験者に,「きれいなテープディスペンサーのデザイン」という課題を課し,それぞれ約20分間にわたるデザイン行為の過程を詳細に観察記録した.実験の結果,デザイン課題の主部あるいは述部と探索空間の関係や思考モードとの関係,プレドローイング行為などが抽出され,思考過程を把握するうえでの重要な手がかりとなりうることが分かった. 続報においては,それらの実験記録の解析から,各被験者がどのような思考経路でデザイン創造をおこない,どのような種類の探索をおこなっているのかについて追体験的に考察し,各被験者の比較をおこない共通部分を抽出し,デザインにおける創造的思考過程を思考経路という観点からモデル化することを試みた.
著者
谷口 明展 香川 大輔 浦邉 啓太 賀嶋 直隆 永井 由佳 西村 由美
出版者
一般社団法人 日本在宅薬学会
雑誌
在宅薬学 (ISSN:2188658X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.57-61, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
12

超高齢化社会となり,認知症高齢者数も増加している.認知症患者の服薬管理は困難を要することがあり,MMSE のスコアによっては適切な服薬支援でないと服薬できないことも多くあるためMMSE を活用した薬剤師による在宅服薬支援によって服用率が改善した3 症例を報告する.症例1 では,MMSE 26点でありお薬カレンダーによる自己管理と,ヘルパーによる声掛けによる在宅服薬支援の結果,服用率が7%向上した.症例2 では,MMSE 21 点でありお薬カレンダーと家族による電話による服薬刺激,薬剤師とヘルパーによる配薬と声掛けという服薬支援により服用率が4.8%向上した.症例3 では,MMSE 23 点であり,ヘルパー協力のもとお薬カレンダー利用により服用率が2.3%向上した,薬剤師により在宅の認知症患者への服薬支援最適化のためMMSE を活用することは服用率改善に効果が期待できると考えられる.
著者
有賀 三夏 下郡 啓夫 國藤 進 永井 由佳里
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.170-183, 2021 (Released:2021-04-15)

本研究は、芸術思考の創造プロセスの具現化に着目したワークショップのプロトタイプの設計とその効果測定に関するものである。この芸術思考ワークショップの効果を測定するためにガードナーの多重知能と、情動知能や創造性に基づく探究力を評価指標としてその有効性を調査した。その結果、芸術思考ワークショップは多重知能や探究力の向上に寄与することがわかった。芸術思考ワークショップは、被験者の多重知能8つのモジュールのすべての項目で向上が認められ、特に、対人的知能、論理・数学的知能、空間的知能の変化が大きかった。芸術思考ワークショップは、探究力の4つの主因子のすべての項目で向上が認められた。特に、状況対応力、創造力の変化が顕著であった。
著者
近藤 健次 永井 由佳里
出版者
日本創造学会
雑誌
日本創造学会論文誌 (ISSN:13492454)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.42-63, 2018 (Released:2018-04-01)

mini-cとは創造性の最も初期の段階であり,経験・活動・事象に対して個人的に意味のある新しい解釈をすることと定義されている. mini-cの育成は日常行動を変容させることであると考えられ,本稿では行動変容モデルの一つであるトランスセオレティカルモデルに着目し,その構成要素の1つである変容プロセスが変容ステージによってどのように変化するかを調査するために,先行研究に基づき測定尺度を作成し,質問票による調査を行った.調査の結果,変容プロセスには「肯定的認知と挫折回避」,「コミットメントと準備」,「他者の奨励と支援の使用」の3つの因子が見出され,また,変容ステージとこれらの因子との関係及び各変容ステージにおけるこれらの因子の関係が明らかになった.結果を踏まえ, mini-cに関する変容プロセスの特徴及び mini-cを育成するためのグループワークの留意点について考察する.
著者
橋本 山河 永井 由佳里
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.173-174, 2016-03-10

TwitterなどのSocial Networking Service(SNS)へ投稿した内容に誹謗中傷が集まる炎上に対し、機械学習を行い将来の炎上を防ぐシステムが提案されている.提案されているシステムではSNSへの投稿文を対象に機械学習が行われている.Twitterへ投稿できるコンテンツは文章だけではなく画像も投稿することができ、画像付きの投稿が炎上する事例もある.画像の監視を、システムによって行うことは困難と言われている。当研究では、炎上を防ぐシステムに、画像を用いるために炎上画像の分類と検証を行った.
著者
勝谷 祐太 永井 由佳里 森田 純哉
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.59, 2012 (Released:2012-06-11)

本研究は,音楽の調性が人間のドローイングプロセスにどのような影響を与えるかを調査したものである.本研究では,明るい印象・暗い印象の二種類の自作音楽刺激を用いて積極的・非積極的の二種類の聴取条件でドローイング実験を行なった.積極的音楽聴取条件の実験では,音楽刺激を二種類聴取させ,それぞれの音楽から思い浮かぶ風景を描画させた.結果,明るい印象の音楽刺激を聴取しながらドローイングを行なった場合,音圧とストローク速度が相関を示すことが確かめられた.非積極的音楽聴取条件では,予めドローイングテーマを与え,音楽刺激は外音遮断の目的として用いると教示することで音楽から意識を遠ざけた.ドローイングテーマは,予め音楽刺激の印象評価を行なった際に曲からの想起語句を書き出させており,その中から頻出していた単語を用いて作成した.明るい音楽刺激のドローイングテーマは「春の朝のカフェ」,暗い音楽刺激のドローイングテーマは「雨の降る夜の湖」である.実験の結果,積極的音楽聴取条件と同様に,明るい印象の音楽刺激を聴取しながら行なった場合,音圧とストローク速度が相関を示すことが確かめられた.
著者
田浦 俊春 永井 由佳里
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.389-402, 2010 (Released:2011-03-08)
参考文献数
40
被引用文献数
3

This article discusses the methods of design theoretics and related research issues. First, the authors historically review the terminologies of “design” and “creativity” in the field of design research. Then, the authors redefine design as a process for composing a desirable figure toward the future on the basis of their classification of design -- drawing, problem solving, and pursuit of the ideal. Next, they elucidate upon the key issues of design, namely inside-outside issue, time, and abstraction, and introduce three potential research methodologies of design-that is, internal observation, computational simulation, and theoretical modeling. Further, the authors demonstrate an example of a desirable design of motion by assuming that an emotional and creative motion is expected to extend beyond the images produced by human imagination and resonate with the feelings residing deep within us. Finally, the authors claim to form an important view of design in the future society, which doesn't focus on the notion of efficiency.
著者
永井 由佳里 野口 尚孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.185-194, 2001-11-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
5
被引用文献数
6

デザインの創造的な思考過程を言葉から形への変換過程と考えた場合, デザイン目標として与えられたキーワードによってどのように思考モードが異なるかを知るため, 約80人の被験者に実験をおこなった.まず形への変換の難易度が異なる二種類の言葉からそれらに相応しい花瓶の形を考えさせる課題を課した.その結果, 形に結びつきにくい言葉の場合はキーワードから連想できる具体的な事実や対象を描くことから花瓶の形を考える傾向があることがわかった.次に「悲しい気持ちにさせる」というキーワードに相応しい椅子の形を考えさせた.その結果, 形に結びつきにくい言葉の場合, ドローイングの過程でキーワードから思い浮かべられる人間の姿勢やものの状態などを媒介にして, 言葉の意味を形に近いレベルにまで構造化し, 椅子の形に結びつけていることがわかった.以上から, デザイン思考過程における思考の抽象度をデザイン目標から形としてのデザインの創出までの距離として考えれば, この距離が長いほど思考の努力が必要であり, その過程でのドローイングの役割も大きいことが推測できた.
著者
永井 由佳里 野口 尚孝
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.185-194, 2001-11-30
被引用文献数
11

デザインの創造的な思考過程を言葉から形への変換過程と考えた場合, デザイン目標として与えられたキーワードによってどのように思考モードが異なるかを知るため, 約80人の被験者に実験をおこなった.まず形への変換の難易度が異なる二種類の言葉からそれらに相応しい花瓶の形を考えさせる課題を課した.その結果, 形に結びつきにくい言葉の場合はキーワードから連想できる具体的な事実や対象を描くことから花瓶の形を考える傾向があることがわかった.次に「悲しい気持ちにさせる」というキーワードに相応しい椅子の形を考えさせた.その結果, 形に結びつきにくい言葉の場合, ドローイングの過程でキーワードから思い浮かべられる人間の姿勢やものの状態などを媒介にして, 言葉の意味を形に近いレベルにまで構造化し, 椅子の形に結びつけていることがわかった.以上から, デザイン思考過程における思考の抽象度をデザイン目標から形としてのデザインの創出までの距離として考えれば, この距離が長いほど思考の努力が必要であり, その過程でのドローイングの役割も大きいことが推測できた.
著者
永井 由佳里 ゲオルギエフ ゲオルギ 田浦 俊春 森田 純哉
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第54回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.A03, 2007 (Released:2007-06-09)

グラフィックデザインでは,作品からどのような意味を想起させられるかが重要である。本発表では、グラフィックデザインの事例として,ロゴに焦点を当てた研究を示す。我々の研究では,良いロゴから想起される意味は,よく構造化されているという仮説を設定する。そして,ロゴの持つ意味構造と好ましさとの関連を検討した調査結果を示し,調査の結果からロゴに意味構造を付与するデザイン支援の方法論を論じる。我々は調査参加者にロゴを提示しそれぞれが想起した意味をできるだけ多く記入させる調査を行った。その後,それぞれのロゴの好ましさを5段階で評定した。得られたロゴの意味の相互の関連を,概念辞書を用いて測定した。その結果,ロゴから想起される意味間の関係が集束している場合,良いものと判断されていた。結果に基づき,意味の構造化に焦点を当てたグラフィックデザインの支援方法を提案する。視覚的な形状と言語によるラベルを対応づけるデータベースを用い,ロゴを言語化する。そして,概念辞書を用い,より上位の意味構造を抽出する。抽出された意味構造は,ユーザに提示される。そのことで,意味のない形状,誤解を与える形状,などの生成を防ぐことができると考える。