- 著者
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李 勝鉉
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.3, pp.665-686, 2006-12-30 (Released:2017-07-14)
本論は、柳宗悦の著書『南無阿弥陀仏』(一九五五年)を通して宗教と美との関わりを柳がどのように理解したかについて考察するものである。『南無阿弥陀仏』では、彼が青年時代から展開してきた宗教哲学の構想や独自の「民芸」運動の原点を、浄土思想によって総合的に集約しようという試みがなされている。本論はこの集約の過程を検討し、彼が宗教認識を確立させていく際、どのようにして美というものを取り入れる論理を導くことができたのかについて論じる。まず『無量寿経』の本願思想を取り上げることによって、信と美が根本的に関わる所を示そうとした柳の着眼を明らかにする。そして次に、柳が宗教と美に共通した本願思想の根本であるとしている名号論の意味を探る。最後に、柳が『南無阿弥陀仏』を論じる際、現実における信と実の具体的な事例として示した「妙好人」と民芸品との関わりを問うことによって、目に見えるものを媒介して宗教認識を高めようとした柳の宗教論の解明を試みる。