著者
川名 好裕
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.37-52, 1999

香港返還1年後に香港の主要マスコミ関係機関を訪問し, 聞き取り調査を実施した。この聞き取り調査実施の主目的は, 返還後の香港マスコミ界の言論・報道の自由の行方を調査すること, 香港マスコミ界の特徴を明らかにすることであった。本報告では, 香港のマスコミ公的機関, 新聞社業界, 放送業界について報告し, 言論・報道の自由が返還1年後の時点において, おおよそ守られていること, および, 新聞業界における紙面づくりの工夫などの新しい動向と, 中国本土市場を見込んだ衛星放送業界の新しい展開等を報告する。
著者
細井 香 内海崎 貴子 野尻 裕子 栗原 泰子
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.121-132, 2007-03-15
被引用文献数
1

【目的】現在, 子どもの遊びは縮小・喪失している。1970年代に比べ, 遊び空間や遊び場, 子ども同士で遊ぶ体験などが減少し, 遊びの種類も, ひとり遊びや室内での遊びに変化していることが明らかとされている。遊ぶ体験や遊び場を確保することが難しい現代において, 幼稚園や保育所で遊びを提供する保育者の役割は重要である。本研究では, 保育者養成課程学生が, 幼児期にどのような遊びを体験してきたのか, 特に保育の場に限定し調査を実施した。今回の調査から, 個々の遊びの経験差について把握することで, 今後の実習指導における基礎的資料を得ることを目的とする。【方法】保育者養成課程の1〜4年生の学生187名(男性61名, 女性126名)を対象に, 性別, 通っていた保育機関(幼稚園, 保育園別), 幼児期の居住地(都道府県), 記憶している遊びについて, アンケート調査を実施した。【結果および考察】遊びの種類は, 屋外で24種類, 室内で!5種類あげられた。遊びの数の一人当たり平均は, 屋外で男性4.3種類, 女性4.6種類であった。また室内では, 男性1.8種類, 女性3.5種類と, 若干性差がみられた。全体的には女性の方が多くの遊びを記憶している。屋外の遊びでは, 男性で砂遊びやボール遊び, かくれんぼの回答が多く, 女性では鬼ごっこ, 伝承遊び, 泥遊び, 草花遊びなどが多くあげられ, また固定遊具での遊びが男性よりも多かった。室内遊びに関しては女性の回答が非常に多かった。
著者
湯浅 弘
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.133-145, 2003-03-15

『風土』において利辻哲郎は人間存在の時間性と空間性, 歴史性と風土性を機軸とする人間存在論を提示した。その人間存在論は, ハイデガーの『存在と時間』の批判的摂取を前提としたもので, 現象学的解釈学の系譜に属す人間存在論と見ることができる。そうした思想史的な系譜からも窺えるように, 『風土』での和辻の基本的なスタンスは, デカルトに端を発する主客二元論に抗して人間の生の具体的現実に定位しその構造を明らかにしようとした点に求められる。和辻は, 自らのヨーロッパ留学体験をもとに風土の三類型を提示しつつ, 人間の生の必須の構造契機として人間存在の歴史性・風土性を明らかにしようとしたのである。その試みは, 言わば, 空間(時間を含んで)を生きる人間の生と人間によって生きられる空間(時間を含んで)との密接不離の関係を探査する試みであったと見ることができる。本論文は, 風土論としての先駆的な業績である『風土』を和辻の倫理学体系の成立と絡めながら, 『風土』の諸問題について若干考察しようとするものである。
著者
翠川 文子
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.152-132, 2004

大枝流芳の通行の略伝の内容の検証と諸資料による大枝流芳研究の手がかりを紹介する。大枝流芳の本名は岩田信安、本姓は大江、大枝流芳は版本の筆名。号は漱芳ほか、多く隠逸趣味を反映している。流芳は難波でも由緒ある家格の富家の出身。多病のため世事から離れ京都に享保年中まで隠棲し貝合から始まりさまざまな雅遊の故実について漢籍・古典を渉猟し筆録し考察を加えていた。大坂に本拠を移したのは享保15、16年。香道への関心を強めたのはその頃か。享保17年御家流の口伝を受けていた大口含翠に香道伝授を願って弟子入り。含翠の香道三流に通じた解釈と幅広い知見と多くの伝書の提供を受けた流芳は、含翠とともに伝統的な公家の雅びの世界としての香道御家流を新たに作り上げた。流芳の編著について『国書総目録』に加筆訂正を行った一覧を記す。流芳の没年については新資料と推定を紹介する。
著者
坂口 武洋 佐藤 仁美 坂口 早苗
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.55-80, 2007-03-15

日本の初期の伝染病に対する政策は,主として,1897年に制定された「伝染病予防法」にしたがってなされてきた。しかしながら,これらの法律では,活発な国際交流,航空機の発展にともなう大規模な移動のできる時代になって,感染症予防のニーズに答えきれなくなってきた。1970年以来30以上の新興感染症(エボラ出血熱,重症急性呼吸器症候群等)が世界中で発生している。また,既に克服したと思われていた感染症(結核,マラリア等)が再興感染症として再度ヒトを脅かすなど,感染症を取り巻く状況は激変している。さらに,医学・薬学・人文科学の進歩発展により,健康に関する国民の公衆衛生学,人権尊重,公正管理,政策の透明性等への要求も大きくなっている。そこで,感染症に対する施策が見直され,「性病予防法」,「後天性免疫不全症候群(AIDS)予防法」の感染症個別法が廃止統合され,1998年「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)が制定された。しかし,ここ数年の間に,感染症の変化や脅威に対応する必要性は一段と増し,感染症に対する施策をより促進するための改正がなされつつある。
著者
石井 龍一
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.33-48, 2006-03-15

国際的な安全保障の枠組として,国連本体(安保理,総会)と地域主義の双方を考える必要があるが,これを国連憲章レジームと名づけることができる。この様なレジームに対する各国の国内世論上のイメージ,信頼度には差異がみられ,これが各国の政策面にも影響を与えている。同時に,戦後秩序の一部変更としての意味をもつ安保理常任理事国の再構成についての日本の国内世論上の支持は,強いナショナリズムと強いインターナショナリズムの複合を背景としている点で,他に見られない特色を持っている。しかし,アメリカ等は政策上その安全保障の枠組として,上記のレジームに依拠していることを背景として,安保理常任理事国の再構成をこのレジームから切り離して推進するインセンティブを特に有していない。従って,このレジームそのものを対象とした安全保障の再構築,特に中国等との東アジア地域での政治・外交的な調整が伴う場合にのみ,右の意味のインセンティブが現実化し得る。以上を,各国の世論調査等の動向を勘案しつつ,若干論じた。
著者
蓮見 元子 北原 靖子
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.71-84, 2008

心理学実験の学習案として,これまで「知能(発達)検査」(北原,2004), 「行動観察」(北原,2007)を報告したが,本稿では,学部3年次生に特殊実験演習の授業の一環として実施された「実験法」について紹介する。実験は,関連する2つの推理課題からなり,対象を特定できない相手のメッセージから子どもはどの程度推理できるのか,推理した理由をどのように説明するのか,さらに対象が特定できるヒントが加えられた時,それらを活用して正答に結びつけることができるか,幼児の推理能力,説明能力の特徴を明らかにする目的で行われた。同一の実験を大学生にも行った。その結果,幼児(3・4歳児)は与えられたヒントを使ってある程度対象を推理することができたが,推理した理由を客観的・合理的に説明することは困難であった。自己の要求や好みに中心化しか説明が多く,ヒント条件をあげての説明はほとんどみられなかった。さらに対象が特定できるヒントを加えて,選択用絵カードの8項目の中から正解だと思うものを選択させたところ,幼児が最も活用したのは視覚的に呈示された「大きさ」,および「丸い」という形に関するヒントであった。幼児にとって「丸い」というヒントは絵を見ればわかるものであったが,視覚的に呈示された「大きさ」は,絵に描かれた対象を実物に参照して判断する必要があった。「クリスマスプレゼント」というヒントは,さらに文化的慣習の知識を必要とした。選択用絵カードを使用したこともヒントの活用に何らかの影響を与えたであろうと考察された。最後に幼稚園を訪問して行われた「実験法」について,学部3年生に行う意義などが検討された。
著者
梅澤 嘉一郎
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.85-123, 2002

わが国の少子超高齢化が急速に進む中で, その実情を紹介する講義の際に, VTR等をまじえて理解を深めるとともに最近の共学大学生並びに女子大学学生につき少子超高齢化社会観について, 特に今回は, 少子化に焦点をあてアンケート方式で実施し, 共学大学生と女子大学生, あるいは共学大学における女子大学生と女子大学生との間にどのような相違があるかについて検討をおこなった。検討をおこなった結果, 少子化の進展にたいしては, 共学大学, 女子大学ともに共通して深刻に受け止めている。少子化に関わる, 原因, 影響及び対策について, 共学大学と女子大学, 共学大学女子大生と女子大学生とにおいて, その見方についての差が明らかにされた。すなわち, 原因では, 共学大学が子どもの養育費・教育費に重点をおいているのに対して女子大学生は, 女性の職場進出を養育費・教育費より重要視している。影響については, 共学大学は社会の活力低下や税負担への影響を重視しているのに対して子どもへの影響を重視している。また対策については, 共学大学が子育て環境の整備を一番に挙げているのに対して, 女子大生は子育てと仕事の両立を一番にとり挙げている。この調査結果から, アンケート項目を, 個人選択事項(意識, 生活スタイル)と経済的・社会的環境整備事項とに分類し, 考察した結果, 女子大学生と共学大学女子大生との間で顕著な差が認められた。すなわち, 女子大生は, より個人選択事項を重視し, 例えば, 少子化の原因についても「女性の職場進出」や「高学歴化」を重視している。これに対し, 共学女子学生は, 「女性の職場進出」や「高学歴化」よりも経済的・社会的環境整備事項とに分類される「養育費・教育費の負担」を重視している。以上, 共学大学では, 子育ての社会的環境面の充実面からの解決を重視しているのに対し女子大学生は, 個々人の自由に委ねられる意識や生活スタイルの選択をより重視する立場が顕著にみられ, 両者に重点の差が認められた。本調査から, 少子化問題は, 女性の多様化した価値観に呼応した対応の重要性も明らかとなった。
著者
小林 由利子
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.1-11, 2005-03-15
被引用文献数
1

This paper analyzes the MA in Drama and Theatre Education at University of Warwick in England. The objective of this paper is to clarify the characteristics of Neelands' drama sessions. He is the director of this program and a leader in Drama Education in the UK and the world. This study found: (1) Neelands uses the drama technique of "Teacher in Role" to create dramatic situation effectively. (2) He structures the drama session to invite participants to go into the dramatic scene without their noticing it. (3) He brings out their insight.