著者
松田 勗 光安 哲夫 中村 悠一
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1751-1755, 1969
被引用文献数
13

オクテン-1およびオクテン-2と酢酸パラジウムとの反応によって生成する7種の化合物の構造を示して,オクテン-1との反応について酢酸金属塩,溶媒ならびに水添加による生成物組成の変化を調べた。アルカリ金属塩を酢酸パラジウムに対し2当量以上加えると,無添加の場含の主生成物,2-アセトキシオクテン-1に代り,1-アセトキシオクテン-2が著しく増加し,オクタノン- 2 の量は低下した。その他の添加はケトンの量を増加させるが, 組成の著しい変化はなかった。酪酸, プロピオン酸を含め, 酢酸以外の溶媒中で行なうとケトンが主生成物となった。酢酸-水混合溶媒においては,水含量が30mo1%以上になるとケトンの生成が著しく増加した。1-メチルシクロヘキセンから1-メチル-6-アセトキシシクロヘキセンと1-メチル-3-アセトキシシクロヘキセン,1-メチルシクロペンテンから1-メチル-1-アセトキシペンテン,1-メチル-5-アセトキシペンテンおよび1-メチル-3-アセトキシペンテンが,また1,5-ヘキサジエンから2-アセトキシメチレンシクロペンタンが,それぞれ主なる成分として生成した。以上の結果と,オクテン-1から生成する主なるエノル型およびアリル型エステルの酢酸パラジウムによる異性化の結果を合わせて,反応条件の影響とアセトキシル化反応の機構を考察した。
著者
松田 勗 中村 悠一
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1756-1759, 1969
被引用文献数
2

酢酸中において,簡単な不飽和エステル,不飽和ニトリルと酢酸パラジウムとの反応は90~120℃で進み,メチル基をもつ共役化合物はアセトキシル化物とカップリング生成物の混合物を与えることが判った。アクリル酸エチル,ビニル酢酸エチルおよびアクリロニトリルからはアセトキシル化物のみが生成し,それぞれトランス-β-アセトキシアクリル酸エチル,トランス-γ-アセトキシクロトン酸エチル,トランス-β-アセトキシアクリロニトリルが主生成物であった。アリルシアニドからはα-アセトキシアリルシアニドとβ-アセトキシクロトニトリルの混合物がえられた。クロトン酸エチルからβ-アセトキシクロトン酸エチル,トランス-γ-アセトキシクロトン酸エチルと共に,二量体としてシス,トランス-およびシス,シス-2,4-ジメチル-1,3-ジカルボエトキシ-1,3-ブタジエンが確認された。メタクリル酸エチルからもα-(アセトキシメチル)アクリル酸エチルとともに二量体が生成し,1,4-ジメチル-1,4-ジカルボエトキシ-1,3-ブタジエンが融点77.5~80℃の結晶として単離された。
著者
山口 悟郎 柳田 博明 小野 修一郎 副島 繁雄 和田 重孝
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.1499-1501, 1964

コランダム単結晶の水熱育成法は未だ確立されているとはいい難い。本報ではこの方法におけるいくつかの問題点,オートクレーブ内の温度差の問題,育成のための最適温度圧力条件,種子結晶,原料など反応物質の問題,時間と成長率との関連の問題についての実験結果をもとに,本法の特質を考察した。この結果,オートクレーブ内の温度差は外壁測温の場合よりかなり小さく,とくに銀カプセルを用いた場合ほとんど無視できるものとなる。コランダムの溶解速度に対する著者らの数値を用いて,この温度差の実効値について半定量的に議論した。つぎに,最適温度圧力については高温高液充填度ほどよいことがわかった。高温は結晶成長速度を速め,液の高充填度は,温度差の実効値を大にするものと考えられる。種子結晶については,成長に少なくとも2段階あり,種子のカット方向が重要であろうことが示唆される。原料については,コランダム,あるいは水酸化アルミニウムの状態の時間変化の影響は認められなかった。成長機構は成長段階が少なくとも二つあることに特徴がある。現在まで著者らの実験方法で数cmのコランダム単結晶を得ることができるが,鉄イオンの混入による着色を除去するのは困難である。
著者
浅原 照三 山下 健二郎 片山 志富
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.485-489, 1963
被引用文献数
3

最も簡単な脂肪族オキシ酸であるグリコール酸より導びかれるポリグリコリドに関して,その生成原料の検討,反応速度,反応温度の決定などについての研究を行なった。ポリグリコリド生成の原料としては,グリコール酸,モノクロル酢酸およびモノクロル酢酸ナトリウムを用いた。グリコール酸およびモノクロル酢酸ナトリウムは触媒の存否にかかわらず反応するがモノクロル酢酸の反応は触媒が存在しなければ進行しない。グリコール酸の脱水反応は無触媒の場合にも酸化アンチモンの場合にもともに見掛けの3次反応である。酸化アンチモンを加えれば,反応速度は大きくなるが,分解反応も激しくなるので,無触媒のほうが高重合度のポリマーを与える。臭化カリウムを用いたモノクロル酢酸の反応は見掛けの2次反応であった。それぞれの場合の反応速度の解析値が得られた。常圧における最適反応温度は219℃ であるが,ポリグリコリドの融点や溶融粘度を考慮して,225~230℃ が望ましいと考えられる。
著者
沼野 雄志 北川 徹三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1431-1433, 1957-11-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
7

アセチレンの爆発範囲を知ることは,工場の安全上重要な問題である。空気中のアセチレンの爆発限界に関してはすでに多くの報告があるが,酸素中でのアセチレンの爆発限界,および空気-アセチレン混合ガスに他の不活性ガスを加えた3成分系混合ガスの爆発範囲が測定された例は少ない。著者らは,前報の爆発限界測定装置を用いて,これを測定し,常温,常圧の酸素中における爆発下限界2.3%,爆発上限界94.5%,常温常圧の空気中における爆発下限界2.3%,爆発上限界72.3%,空気中で不活性ガスとして窒素を加えた場合の爆発臨界点70.5%,炭酸ガスを加えた場合の爆発臨界点50.0%をえた。
著者
天笠 正孝 鈴木 誉一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.1037-1038, 1971-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1
著者
大橋 実 岡本 恒雄
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.893-902, 1957

パン酵母培養における通気の生理化学的意義を解明することを目的として研究をはじめ, その手段として培養液の酸素濃度および酵母の呼吸能をポーラログラフ法により測定することを企図し,まず測定法ならびに装置につき諸種の基礎的検討を行った。酵母培養液(廃糖蜜液)の酸素還元波は第1段波の部分が共存成分の悪影響が少なく定量の対象とすることができ,波高の評価は空気飽和食塩水溶液0.5mol濃度(6.33mg O<SUB>2</SUB>/<I>l</I> at 30℃)によることが実際的方法と認めた。ワールブルグ検圧法とポーラログラフ法の呼吸測定結果は大体の一致をみ,菌濃度2.5~20g/<I>l</I>の範囲で酸素吸収速度と菌濃度は比例する結果をえた。改良制動回路を有する手動直読式の自作のポーラログラフならびに付属装置は研究室ならびに現場使用に便なことが証明された。
著者
滝本 雅祥 横山 忠夫 沢田 昌 山下 素治
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.793-797, 1963
被引用文献数
6

メラミンの脱アンモニア縮合物であるメラム,メレムを種々の原料から分離確認することが,イオン交換クロマトグラフィーと紫外吸収スペクトルの測定から容易となったので(既報),この方法を用いながらこれらの単離をはかった。メラムはジシアンジアミドの溶融物からアルカリと水を用いて精製再結晶して, またメレムはメラミンの密閉器中における溶融分解物を水から再結晶して得られた。水から再結晶したメラム,メレムは,それぞれ2および1分子の結晶水を含有する。<BR>メラム, メレムの水に対する溶解度は極めて小さく25℃ではそれぞれ約0.05および0.003g/lであった。酸, アルカリにはメラミン, メラム, メレムの順に加水分解され易い。メラムは加水分解されてメラミンとアンメリンを生成し,メレム(シアメルリル環を有する)は, シアメルル酸になるが, さらにその中間過程に生成されるジアミノ- モノヒドロキシ化合物, モノアミノ-ジヒドロキシ化合物を見出した。紫外の吸収を利用してメラム, メレムの解離定数を測定し,<I>K</I>b<SUB>1</SUB>としてそれぞれ7.50×10<SUP>-2</SUP>,1.79×10<SUP>-12</SUP>を得た。また紫外,赤外吸収スペクトルの測定も行なった。
著者
滝本 雅祥 舟川 隆義
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.804-809, 1963
被引用文献数
1

メラミンから脱アンモニア縮合によりメラム, メレム, メロンが, また逆にこれらの化合物から付加アンモニア反応によりメラミンが生成されるが, その条件や機構を知るためこれらの化合物およびそのおのおのとメラミンとの混合物について前報同様示差熱分析と加熱生成物の組成分析を行なった。そして,これらの反応について明らかにすることができたが,特にメラムの脱アンモニア縮合がメレムを経ずに直接にメロンになり易いこと,メラミンにメラム,メレム,メロンを混合するとメラミンの脱アンモニア分解が促進されしかも混合されたものと同じ縮合物が多く生成すること,これらの付加アンモニア反応はメラムが最も容易に行なわれ(約315℃),メレムはシアメルリル環がトリアジン環になる変化をともなうために非常に遅いことなどを知った。
著者
嵯峨 基生 庄野 利之 新良 宏一郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.2225-2228, 1966-11-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
9
被引用文献数
5

シュウ酸アミドラゾンと二塩基酸クロリドの重縮合を検討した。モデル化合物として,シュウ酸アミドラゾンと塩化ベンゾイルの界面あるいは溶液反応でN-ベンゾイル-シュウ酸アミドラゾンを得た。この物質はジクロル酢酸のような強酸中で加熱するとフェニル-1, 3, 4-オキサジアゾール誘導体にすることができる。一方, 減圧下, 300℃ で加熱するとフェニル-1, 2, 4-トリアゾール誘導体に導くことがでぎた。シュウ酸アミドラゾンと種々の二塩基酸クロリドとの界面あるいは溶液中での重縮合で高分子量のポリ-N-アシルアミドラゾンを合成した。これらの方法で得られたポリ-N-アシルアミドラゾンをジクロル酢酸中で加熱すると対応するポリフェニル1, 3, 4-オキサジァゾールとなった。しかしながら, 真空下320℃ で加熱しても脱水環化によりポリフェニル-1,2,4-トリァゾールに誘導するのは困難であった。これらのことから,ポリ-N-アシルアミドラゾンの2次処理では脱アンモニア環化によるポリフェニル-1, 3, 4-オキサジアゾールの生成が脱水環化によるポリフェニル-1, 2, 4-トリアゾールの生成よりもおこりやすいものとおもわれる。
著者
明石 博吉
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1909-1912, 1963
被引用文献数
1

イタコン酸の反応の一つとして,イタコン酸と酢酸ビニルとの反応によって,ビニルエステルを得る可能性を検討するために両者の反応を行なった。さらにポリビニルアルコールと無水イタコン酸との反応によってポリビニルイタコネートを得た。<BR>反応方法はイタコン酸と酢酸ビニルとの反応では,Adelmanのビニル交換反応の方法に従って,イタコン酸を酢酸ビニル中に加え,硫酸水銀(II)を触媒にして常温放置または沸点で熱して行なった。ポリビニルイタコネートは無水イタコン酸とポバールを酢酸中(酢酸ナトリウムを加え)または,ジメチルホルムアミド中でピリジンを触媒として熱して得られた。結果はイタコン酸と酢酸ビニルの反応では酢酸ビニル,アセトアルデヒド,酢酸等の低留分を留去した後,減圧蒸留すると,エチリデンジアセテートに相当する留分と主留分I(bp82~85℃/13mmHg)と後留分II(bp88~95℃/13mmHg)が得られた。Iは元素分析,赤外線分析その他の結果からエチリデンジエステル型の反応生成物(A)であることがわかった。後留分中には無水シトラコン酸およびイタコン酸ジビニルエステルが混在していることがわかったが,沸点近接のため単離できなかった。シトラコン酸の場合も酢酸ビニルとの反応で同様の生成物が得られた。また,ポリピニルイタコネートは熱水に不溶の弾力ある透明なフィルムを作る固体樹脂で一般の溶剤にとけ難い。ナトリウム塩は水溶性で高分子電解質の一種と考えられる。
著者
三原 一幸 高岡 京
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.389-393, 1959

リシノール酸およびそれを酸化して得られる12-ケトオレイン酸のサッカロースモノエステルを合成して,その界面活性剤としての諸性状を明らかにするとともに,既に報告があるサッカロースモノステアレートおよびオレエートと,同一条件下における比較検討を行って,脂肪酸基の構造の差異によるその界面活性能の相違について研究を行った結果,(1)これら4種のエステルの表面張力,界面張力は各濃度においてほぼ同じであり,大きい差異はない。(2)浸透性は1%以下の濃度にあっては12-ケトオレエートが,1%にあってはリシノレートが大で,脂肪酸部に親水基を持つものが良好であり,ステアレート,オレエートと大きい差異を生じた。(3)起泡性は12-ケトオレエート>リシノレート>オレエート>ステアレートの順となり,特にステアレートは小さく,1%濃度においては12-ケトオレエートの約1/10であった。(4)乳化性は植物油6種,鉱物油1種について行った結果W/O型エマルジョンでは,ステアレート,オレエートが,O/W型ではリシノレート,12-ケトオレエートが良好であった。(5)その他溶剤に対する溶解性,ミセル限界濃度,ビルダーの影響等について調べた。