著者
北川 徹三 小林 義隆 遠藤 瞭 楠木 英吾
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1263-1267, 1966-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
16
被引用文献数
1

アンモニアの爆発危険性について研究を行なった。すなわち,エネルギー源として火花放電を用い,アンモニア-酸素-窒素系,アンモニア-空気-窒素系,アンモニア-酸素-ジクロルジフルオルメタン系,アンモニア-空気-ジクロルジフルオルメタン系の爆発範囲および,アンモエア-空気系について最小着火エネルギーを測定した。その結果は,常温,常圧下のアンモニア-酸素-窒素系における爆発臨界点の組成はアンモニア18.4,酸素13.4,窒素68.2vol%であり,アンモニア-酸素-ジクロルジフルオルメタン系においてはアンモニア30.0,酸素22.5,ジクロルジフルオルメタン47.5%であった。ジクロルジフルオルメタンを添加した場合には爆発に際し,ハロゲン化アンモニウムの生成が観察された。また,アンモニア-空気系の常温,常圧下における最小着火エネルギーを測定した結果は,アンモニア濃度19.5%に存在し,その値は170mJ で, 一般の炭化水素ガスなどに比較し, 非常に大きい結果を得た。
著者
中沢 允伸 吉田 兼紀 小門 宏 井上 英一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.137-142, 1971-02-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
7
被引用文献数
3

ホトクロミズムを示すスピロピランは, 溶液中あるいは高分子フィルム中で光発消色をくり返すに従い, その発色種の飽和濃度値が次第に減少してくる (疲労) ことを見出した。疲労は発消色をくり返さずとも, 紫外光を連続的に照射し続けても生じたが, この両者の疲労現象は必ずしも同一のものではない。ここではこの疲労現象を取り上げ, これに及ぼす種々の影響因子ならびにその原因を検討した。温度効果, スペクトル変化, その他の実験結果から, 疲労には少くとも2種類の過程が存在することがわかった。一つはスピロピランの無色種が関与しているもの, 他の一つは発色種が関与しているものであり, 前者の過程が支配的であった。また溶液中での測定結果から, スピロピランの分子間距離が小さいほど疲労は促進され, したがって疲労はスピロピラン分子間の相互作用により生じるものと考えられる。また高分子中での疲労はフィルム中に残存する残留溶媒によっても大きく影響され, その他マトリックスの種類, スピロピラン濃度などにも影響された。また溶液中では溶存酸素を除去すると疲労は促進された。
著者
久保 輝一郎 加藤 誠軌 白崎 信一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.1767-1771, 1962-11-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
13
被引用文献数
3

α,β,γ-FeOOHの空気中での熱分解過程を高温X線回折,示差熱分析,熱天秤,電子顕微鏡などによって追跡した結果,三者とも約50~240℃で吸着水が離脱するが,続いておこる1分子の結晶水(2FeOOH=Fe2O3・H2O)の離脱とα-Fe2O3への結晶化過程では,三者でその生起温度範囲と結晶化学的挙動に著しい違いが誌められた。なお,γ-FeOOHの脱水によってはX線的には直接α-Fe2O3に変化し,γ-Fe2O3の生成は認められなかった。高温X線回折図形から計算した粉末の格子面間隔変位は,脱水過程では脱水自体による格子面間隔の縮小あるいは膨張により,また結晶化・焼結過程では格子の熱膨張だけによると考えられ,後者は出発物質のオキシ水和鉄の種類によってその値に多少の差が認められ粉末の構造敏感な性質の一つと考えられる。この際,Tammann,Mansuriらの考えた絶対温度での自己拡散の顕著になる温度と融点との比を0.5(無機化合物の場合)にとると格子の熱膨張および自己拡散の顕著になり始める温度はほぼ一致する。
著者
鈴木 茂 番匠 吉衛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.706-711, 1969-03-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
22

キナルジンまたはクロルキナルジンとハロゲン化無水フタル酸(クロルー,ブロムー,ヨウ素置換)との縮合によりキノフタロン系の黄色有機顔料の合成を行なった。顔料の性質を検討後,ハロゲン原子と顔料の性質の間につぎのような関係が見い出された。1)フタロイル基のハロゲン原子は顔料の耐光性を著しく向上させる(最高8級),一方,,キノリル基のベンゼン環のハロゲン原子はむしろ低下させた。2)得られた顔料は高度にハロゲンで置換されていても,ある種の高沸点溶媒にはわずかに溶解した。3)一般にスルホン化されたレーキ類は鮮黄色で光,溶媒に対し良い堅ロウ性をもった。特に,Mn-,Caレーキはすぐれた性質を有した。しかしこれらのレーキ類はカセイソーダ溶液中で変色する欠点をもっていた。
著者
根来 一夫 八木 三郎 工楽 英司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.1189-1192, 1961-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
5

一般に一定温度において尿素付加物を生成するには,必要な最小限度の炭素鎖の長さがあり,その最小限の炭素数は尿素に付加する反応体の化学的構造と物理的な形状によるものと考えられている。パラフィン系炭化水素の場合には,常温では炭素数6個のヘキサン以上のものが尿素と付加物を生成することが明らかにされているが,ケトン類の場合には,最小の炭素数のアセトンから尿素と付加物を生成するといわれている。しかも, アセトンはメタノールと同じように賦活剤とされているが,アセトン自体も尿素に付加してくるといわれているので,アセトンがどのような挙動をするのか検討を加えた。著者らは固体尿素あるいは尿素飽和水溶液とアセトンとの反応について検討し,尿素1molに対してアセトン5molが存在するときに,アセトン-尿素付加物の収量が最大を示すことを見出した。さらに,Fischer合成油を尿素処理する際に, アセトンが存在すると, アセトン- パラフィン- 尿素付加物を生成し, かつパラフィンの付加は直鎖状パラフィンだけにとどまらず,多量のイソパラフィンが付加してくることを認めた。
著者
南雲 正 村越 昌彦
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.757-759, 1963-06-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
3
被引用文献数
1

アルミニウム鉱物または鉄(III),アルミニウムの多量を含有するガリウム濃縮物を塩酸で分解し,得られる溶液を少量のTBPで溶剤抽出してガリウムを濃縮する場合,ガリウムの抽出性は溶液の組成と密接に関連する。この問題を解明する目的で,模型溶液につき基本的な平衡図の作成を行なった。その結果,溶液の組成,特に塩化物の塩素イオン濃度,遊離塩酸濃度を適当にえらべば,ガリウムは能率よく高濃度濃縮できることがわかった。この方法は鉄(III)の多量を含有するガリウム濃縮物の塩酸分解液に適用する場合,有利な方法であると思われる。

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出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.427A-444A, 1926-12-05 (Released:2011-09-02)
著者
角田 康五郎 松本 幸隆
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1555-1559, 1959-10-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

クメンを直接空気酸化してα-クミルヒドロ過酸化物を製造する際に,ある種の塩基性物質,すなわちアルカリ土類金属酸化物,過酸化物,弱酸のアルカリ金属塩等を加えると酸化が有利に実施出来る。本報では二,三の観点からこれらの塩基性物質(以後酸化添加剤と呼ぶ)の酸化における接触作用を検討した。クメンを空気酸化する時に,酸化の進行につれてα-クミルヒドロ過酸化物以外の酸化に有害な副生物が生成して来るが,上述の酸化添加剤は同一のα-クミルヒドロ過酸化物濃度に対して副生物量を減少させる。これは酸化添加剤が酸特に安息香酸を除去し,α-クミルアルコール,α-メチルスチレンの関与する分解反応を抑制する作用のあるところから,α-クミルヒドロ過酸化物の安定性を高めているためと考えられる。また酸化添加剤は見掛けの酸化速度を向上させるが,これは物理的な作用によるものである。酸化添加剤としては本報では,おもに過酸化バリウムについて検討し,その他の二,三のものとは酸化の物質収支より比較を行なった。
著者
天笠 正孝 斎藤 善郎 鈴木 誉一 内田 武士 古川 保
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.1841-1849, 1970
被引用文献数
1

シクロヘキセンを出発原料とし,硝酸酸化によりアジピン酸を製造することを目的とし,反応条件を研究した。1)シクロヘキサノールの硝酸酸化:この反応において硝酸消費量はシクロヘキサノール1molにつき2.2~3molであり,アジピン酸収率が高くなる反応条件下においては硝酸消費量が少なくなることがわかった。2)シクロヘキセンの硫酸水和-硝酸酸化2段法によるアジピン酸の製造:硫酸水和反応で副生する黒色物質はシクロヘキセン中の微量過酸化物を除くことにより解決された。シクロヘキセンと硫酸の反応で上層に分かれてくる有機層を分離し,これよりシクロヘキセンを留去したものを硝酸酸化して92%の収率でアジピン酸を得た。3)シクロヘキセンの硝酸酸化によるアジピン酸の製造:過塩素酸添加濃度,反応温度,触媒濃度の変化に対し,それぞれアジピン酸収率72%,グルタル酸19%,コハク酸6%,油状物5wt%であった。
著者
山崎 康男 増田 昭夫 清水 節夫
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1323-1326, 1969

硫酸存在下でのトルエンとアセトアルデヒド(Baeyer反応,以後B反応と略す)またはアセチレン(Reichert-Nieuwland反応,以後R-N反応と略す)の反応における生成物は,1-(o-トリル)-1-(p-トリル)エタン(OPD)および1,1-ジ(p-トリル)エタン(PPD)であるが,これらの生成比は両反応においてまったく逆になっている。すなわちB反応ではOPD:22%,PPD:78%であるのに対し,R-N反応ではOPD:73%,PPD:27%(反応温度はいずれも15℃)。そこで,この相違がいかなる反応段階にあるかを明らかにするために,反応の中間生成物がB反応ではメチルトリルカルビノール(MTC)類,またR-N反応ではビニルトルエン(VT)類であると考え,各段階にわけて,生成物の異性体組成を測定した。その結果,両反応におけるOPDとPPDの生成比の逆転はB反応ではMTC類,そしてR-N反応ではVT類が生成される段階にあることがわかった。これはR-N反応において,触媒として用いられる硫酸水銀が配向性に対して特異な影響を与えているために生じたものと考えられる。
著者
神谷 信行 大河 原信
出版者
工業化学雑誌
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.2639-2644, 1969

メチレンブルーを主とするチアジン系色素と種々の還元剤を組合せた系を用いたアクリルアミドの光重合を行ない,重合開始能と光電池特性との関連性を調べた。還元剤として加えた第三アミンのうちでトリエタノールアミン,テトラメチルエチレンジアミンは重合開始能は大きいがトリメチルアミンは非常に小さい。ジメチルアミンのような第ニアミンも有効でモノメチルアミンのような第一アミンは効力が劣る。第三アミンの場合,Nに隣接したメチレン構造の存在が活性に寄与するものと思われる。ジメチルアミンの場合はアクリルアミドに付加して3級アミンを生成し, このアミンが有効に働いていたと推定される。メチレンブルー-還元剤系の光還元のしやすさと重合速度の大小とは必ずしも一定の関係はなく,還元剤の種類によって重合速度が著しく影響されることなどから光反応で生ずる色素ラジカルと還元剤ラジカルのうち,還元剤ラジカルが重合に大きく寄与しているものと思われる。このさいメチレンブルーラジカルは不均斉化反応などでロイコ体を生じ,これを電池のアノードに導入することにより光重合と光電池の組合せが可能であることが示された。
著者
福井 謙一 稲本 善昭 高瀬 新次 北野 尚男
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.531-534, 1959-04-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1

活性メチレン化合物あるいはアニリン,核置換アニリンとハロゲン化アルキルとがフッ化カリウムを縮合剤として反応し,それぞれC-アルキル化物およびN-アルキル化物が得られることを見いだした。この新アルキル化反応はフッ化カリウムの脱ハロゲン化水素性能にもとづくものであって反応の溶媒としては1,2-ジオールたとえばエチレングリコールがすぐれた効果を有しており,反応温度は100~200℃ である。この方法はアニリンおよび核置換アニリンのモノアルキル(>C3)置換体あるいはジメチル化物の合成法としては従来の方法にくらべすぐれた結果を与える。
著者
新 祐治
出版者
日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.2491-2495, 1965

低圧法ポリエチレンとアイソタクチックポリプロピレンとの混合物について,主としてポリエチレンの融点以上におけるポリプロピレンの結晶化速度をデイラトメトリーによって観測した。重合体混合物中のポリエチレンの比率が増すと共に,ポリプロピレン結晶化の誘導時間は増大し,結晶化速度は低下する。結晶化のハーフタイムの逆数で表わした結晶化速度の相対比は組成(PP/PE)100/0,80/20,60/40および40/60において,それぞれおよそ100,70,65および50となった。しかし,Avramiの係数は130℃ 以上ではいずれの場合もほぼ同じであり,結晶化の機構はポリエチレンが存在するかどうかによらず変化しないと考えられる。また,結晶化終了後のポリプロピレンの結晶化度は組成によらずほぼ同一であった。これらの結果から,ポリエチレンとポリプロピレンとは溶融状態ではある程度相溶性があるが,結晶化の過程で完全な相分離をおこすものと考えられる。
著者
長谷川 俊勝 平野 徹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.923-925, 1969-04-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
6
被引用文献数
1

NaHSO3水溶液中にDASを懸濁させると,両者の付加反応は進行するが,付加化合物の組成はDAS1molに対してNaHSO3は1molであった。このような付加物のうち,イオウ含有率6.25%の試料で240mμにおける紫外吸収極大は消失した。この吸収極大がDASのアルデヒド基に関係しているかどうかについて,n-ブチルアルデヒド,フルフラール,ベンズアルデヒド各水溶液にNaHSO3水溶液を添加し,その吸収極大の変化を追求した。その結果,それはアルデヒド基による吸収と考えられるが,RおよびK吸収帯への帰属については今後検討しなければならない。
著者
梅沢 純夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.675-679, 1964-05-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
77