著者
原口 強 岡村 眞 露口 耕治
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.51-61, 1995-04-10
参考文献数
4
被引用文献数
3 2

1995年1月17日発生した兵庫県南部地震は、神戸市を中心に死者5千人を超える大災害を引き起こした。この地震に伴う地震断層(写真-1〜9)が、淡路島北淡町の既知の野島断層^1)^2)沿いの地表部において確認された。筆者らは、19日に現地調査、翌20日に地震断層沿いの空中写真撮影(S=1:4、000)を実施した。その後空中写真判読と図化、さらにこの結果をもとに追加の現地調査を行った。本報告は、野島地震断層の記載と断層沿いの被災状況、特に変位に伴う構造物の被災の一部について速報として報告するものである。なお、断層沿いに斜面崩壊や地すべりが発生しているが、本報告では触れない。本報告では、今回生じた地震断層を既往文献^1)^2)に示されている野島断層と区別して、「野島地震断層」と称することにする。
著者
今泉 眞之 奥山 武彦 備前 信之
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.268-282, 1995-10-10
参考文献数
24
被引用文献数
1

The Tertiary mudstone landslide slope around Ohoike pond in Itakura Town, Niigata Prefecture is complicated geologic structure characterized by the prevalence of faults and small landslides. The strata of slope may be divided into fresh mudstone, weakly weathered mudstone, moderately weathered mudstone, strongly weathered mudstone and colluvial deposit, strongly weatherd mudstone and moderately weathered mudstone. The underground temperature survey reveals three groundwater vein-streams; the West groundwater vein-stream, the Center groundwater vein-stream and the East groundwater vein-stream. The gamma-ray spectrometry reveals the NNE direction fault system and NE direction faults system. The NNE direction fault system consist of the West fault, the Central fault and the East fault. The points of radon concentration anomalie of soil-gas coincide with back-scar, side-scar and cracks of foot part of small landslide configurations. From the relationships of the distribution of groundwater vein-streams, fault and fissure zone of combination of the back-scar and side-scar of small landslides, it may be inferred as follows; (1) The West groundwater vein-stream runs of through the passage of crack caused by the West fault. (2) The Center and the East groundwater vein-streams run off through the passages of fissure zones.
著者
白石 貴司 筒井 健 中川 英朗 江崎 哲郎
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.23-33, 2008-04-10
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究では,台湾大甲渓支流の小雪渓流域(22.0km^2)を対象に,2004年7,8月のミンドリ,アイリ台風に伴う豪雨により発生した土石流に伴う土砂移動の分析を試みた.高分解能衛星画像のステレオ解析から作成した5mメッシュのDEMと2次元衛星画像解析により,土砂移動の範囲を抽出して,これを斜面崩壊地と河道に区分し,それぞれの分布の変遷,土砂移動量,地形的特徴を分析した.その結果,小雪渓流域では,集集地震時に発生した斜面崩壊により,崩壊土砂が斜面下部や河道に堆積し,ミンドリ,アイリ台風時の豪雨で,集集地震時の堆積土砂が,斜面や河道を流下して土石流となり,大規模な土砂移動に至ったことがわかった.このときの斜面崩壊地の生産土砂量は9,814千m^3,堆積土砂量は2,898千m^3,河道の洗掘土砂量は1,353千m^3,堆積土砂量は2,387千m^3であり,小雪渓流域から大甲渓本流への流出土砂量は,5,882千m^3であった.本研究で提案した土砂移動の分析手法は,広域砂防計画のための新たな有効手段の一っになり得ると考えられる.
著者
木村 進一 鹿園 直建 野原 昌人 岩井 修平
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.281-294, 1999-12-10
被引用文献数
9 5

酸化的環境下における堆積岩中の微量・希土類元素の挙動を知ることを目的とし, 中新統女川層の頁岩, 珪質頁岩の化学的風化に伴う鉱物学的, 地球化学的変動について検討を行った.新鮮岩石の黄鉄鉱は風化岩石において消失し, 水酸化鉄が生成される.全岩中のP, Mn, Co, Ni, Cu, Mo, Pb, U, REEs含有量は, 新鮮岩石と風化岩石とで著しい組成の相違が認められる.風化岩石におけるP, V, Mo, Cr, Pb, U, REEsの減少率はFe_2O_3~*付加率が多い試料ほど少なくなる傾向が認められ, このことは風化により溶脱された微量・希土類元素は水酸化鉄に吸着され, 再び岩石に濃集することを示すのだろう.ただし, 頁岩と珪質頁岩とでは, 水酸化鉄による溶脱元素の吸着率に相違が認められる.頁岩風化岩石の水酸化鉄の元素吸着率は珪質頁岩におけるものより全般的に少ない.頁岩と珪質頁岩の鉱物組成を基に考察すると, 黄鉄鉱に富む頁岩においては, 珪質頁岩より低いpH条件で風化が進行したため, 溶存化学種と水酸化鉄の電荷的性質が変化し, それほど元素は有効に水酸化鉄に吸着されなかったと推察される.
著者
林 愛明 井宮 裕 宇田 進一 三沢 隆治
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.41-46, 1995-04-10
被引用文献数
2 1

1995年1月17目午前5時46分に発生した兵庫県南都地震により、死者、行方不明者5、000人を超え、倒壊した家屋10万戸以上という、1923年の関東大震災以来の大惨事となった。17日早朝のテレビでの放送によるこの地震による被害の程度については、スピーカーが落ちて怪我をした程度とか、家屋が揺れて瓦が落ちている程度というものであった。しかし、我々は、この時点で震源が20kmと浅いことと、マグニチュードが7.2(1月17日気象庁発表)と大きいことから、震源地である淡路島もしくは六甲山麓の活断層が活動したに違いないと確信し、すぐに淡路島などの調査を行った。そして、主に地表地震断層およびこれに関連する構造物の被害調査を実施した。調査に際して、北淡町役場発行の1万分の1地形図を用いて、楠本断層、志筑断層および野島断層(図-1)沿いに追跡した。その結果、淡路島北東部の楠本断層、北西走向の志筑断層沿いには地表地震断層は確認されなかったが、北西部の野島断層沿いには多くの地点で地表地震断層が確認できた。しかし、富島より南西部には、上記野島断層延長線沿いには今回の地震に伴う断層変位を確認することができなかったが、海岸近くで地表地震断層を追跡でき、この結果を断層位置分布図として作成した(図-1)。
著者
遠座 昭 飯沼 清 吉田 智治
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.81-87, 1995-04-10

1月17日に発生した兵庫県南部地震は、阪神間の平野部に大きな被害をもたらしたが、被害は周辺の台地、丘陵地にも生じた。筆者らは地震発生の翌日(平成7年1月18日)から平成7年1月25日にかけて、比較的被害の小さかった芦屋市〜宝塚市にかけての六甲山地東南縁の丘陵地において、地震被害の調査を行った。調査範囲には、既往の文献^1)により活断層とされている甲陽断層が北東-南西方向に走り、また台地、丘陵地を開析する谷が発達することから、地形・地盤条件と地震による被害の関連を検討できる資料が得られるものと考えられる。調査地域の全般的な予察踏査を行った後、芦屋から武庫川にかけての地域に甲陽断層に直交する14のルートを選定し(図-1、p.84)、縮尺1:2,500の地形図を用い現地踏査を行い、顕著な地盤変状、家屋ほかの構造物の破壊状況および道路面に見られる顕著なクラックの分布や形状等について調査した。ここでは、上記調査結果のうち、主に地形や地盤条件に大きく影響されて生じたと考えられる地盤の変状について報告する。なお、調査は(株)建設技術研究所大阪支社、東京支社および福岡支社の地質部員によって行われた。
著者
菅原 捷
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, 1997-02-10
著者
亀尾 佳宏 杉村 淑人 竹内 一郎 武田 伸二
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.243-248, 2003-10-10
被引用文献数
3 1

現地発生材(掘削残土や河床堆積物)のコンクリート骨材への有効利用を検討するため,昭和33年に建設された砂防ダム堆砂部でハイブリッドボーリングエ法(気泡式ボーリング,以下「HB工法」という)によるサンプリングを行った.調査対象は,過去40年間に堆積した腐植物や粘土,砂,礫などの変化の著しい河床堆積物よりなる.HB工法は,高濃度気泡の安定供給と気泡送圧力の微調整により,地下水位以深での良好なコア採取が可能であり,HB工法によって原位置での堆積状況を示すほとんど乱れのないコアが採取できた.また,これにより堆積層ごとの代表的な区間で,有効な室内土質試験が行え,土木材料への転用の可否が明らかとなった.従来,河床堆積物の分布状況を把握する調査では,トレンチや普通工法によるボーリングが実施されてきた.しかし,調査対象の河床堆積物が厚さ20m以上である場合,トレンチでは深部まで調査を実施することが困難である.また,普通工法によるボーリングでは,コアが乱され精度の高い試料を採取することが困難である.これに対して,HB工法は河床堆積物の分布が厚い場合も,良好なコア採取ができる.河床堆積物の有効利用を検討するうえで,HB工法は有効な調査手段であることが明らかとなった.
著者
中川 正男 中山 義雄 安江 勝夫 上野 将司
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.199-211, 1971-12-01

昭和46年7月18日,兵庫県西南部を襲った集中豪雨により相生市周辺で山地崩壊が相ついで発生した.相生市周辺の地質は後期中生代に噴出した流紋岩質溶結凝灰岩より構成される.一般に播磨地方の流紋岩質溶結凝灰岩地域は特異な山容をなし比較的安定した地貌を呈しており,崩壊等の災害は予測できそうもない地域である.この報文は相生市周辺の勾配 30° 以上のいわゆる急傾斜地の崩壊と法面崩壊の現場を観察し,地質状況や崩壊の形態を3つのタイプに分類してその数例を写真でしめしたものである.
著者
和田 卓也 井上 誠 横田 修一郎 岩松 暉
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.349-358, 1995-12-10
被引用文献数
10 1

Downward infiltration of rainwater within the Quaternary pyroclastic plateau have been studied by using continuous and automatical survey of electric prospecting and chemical analysis of seepage water from the foot of the plateau. Reduction of apparent resistivity and its downward extension are recognized within the plateau just after the heavy rain. This means the existence of downward infiltration of rainwater. However, the style of infiltration is various, and it seems to be strongly influenced by rainfall condition and surface humus soils. Downward velocity of the infiltration is estimated to be 60 meters/12 hours, and this value is too rapid compared with the well-known value of 1〜3 mm/day. Probably, two types of downward infiltration may co-exist because of cooling joints or pipe structures within the pyroclastic flow deposits. On the other hand, chemical analysis of seepage water shows that the concentration of ions may change depending on that of rainfall. This may support the result mentioned above of the rapid velocity.
著者
加藤 弘徳 千木良 雅弘
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.140-150, 2009-08-10
被引用文献数
1 3

四国中部において東西方向の中央構造線南側に平行する法皇(ほうおう)山脈には山体重力変形が生じている.変形は同構造線に沿う約20kmの区間にわたって断続的に発生しており,そのうち複数の区間では山上凹地の発達が認められる.中央構造線側の山脈北側斜面には脆弱な泥質片岩が流れ盤構造をなして分布し,中央構造線の南側の相対的な隆起運動に伴い,この流れ盤斜面が重力作用により不安定化し,斜面が全体的に北に移動するように変形している.一方で,一般に高角断層とされてきた中央構造線は山体変形箇所の下方で特徴的に南緩傾斜となっている.これは,山体変形に起因する荷重が作用した状態で南側隆起の断層運動が生じ深部の高角断層が地表付近で緩傾斜化して出現し,衝上断層となっているためと推定される.このように,山体重力変形と中央構造線の断層運動およびそれに伴う山体の隆起は相互に関係している.山上凹地の内部に分布するかつての湖沼堆積物の構造および年代測定結果から,山体変形は今から5万年以上前にはすでに発生し,山上には湖沼が形成されたが,今から4.5万〜2.4万年前の間に湖沼は決壊し,現在の地形が形成されたことが明らかになった.
著者
渡辺 邦夫
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-45, 1982-03-30
被引用文献数
3 1

Proper idealization of geologic succession at the depth of Neogene sedimentary basin is indespensable to solve many problems in the field of Engineering Geology such as land subsidence, groundwater flow and stress distribution around deep excavation. A new procedure to idealize the succession by means of Markov matrix and its entropy of stratigraphic columns obtained from bore hole logs is given. As an application of this procedure, Markov matrix and its entropy are calculated from many stratigraphic columns obtained from two core boring logs and non core boring logs of over 300 in the east plain area of Saitama prefecture, Japan, with following results. (1) Markov matrix and its entropy represent well the regularity in the stratigraphic columns. (2) Some regional differences of the regularity are found in the area, and these differences seem to be caused by the regional variation of sedimentary environments. (3) Geologic succession in this area can be simply idealized as the alternation of some thick layers of coarse sediments and those of fine sediments. It has been clear that the procedure is quite useful to idealize the geologic succession under Neogene sedimentary basin.
著者
吉川 恵也
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.45-55, 1975-06-30

新関門トンネルは,昭和45年着工し,昭和49年完成した延長18.7km(内,海底区間0.9km)の本州と九州を隔てる関門海峡下を貫く鉄道トンネルである.本論文では,このトンネルの海底区間に焦点を絞り,路線選定の階段より,施工法の策定の段階に至るまでにおこなった地質調査と,その成果の工事への適用,および関門海峡早鞆瀬戸から大瀬戸に至るまでの海底の地質の大略について述べたものである.
著者
林田 精郎
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.150-156, 1971-09-01
被引用文献数
1

岩石の強度はそれを構成する鉱物や岩片の粒径と密接な関係があり,最大粒径を Griffith のいう割れ目の長さに対応させることにより岩石の強度論に Griffith の破壊理論を導入することの正当性を立証することができる.また,岩石の強度とヤング率との間に一定の関係があることが理論的にも実験的にも知られたこと,および静ヤング率と動ヤング率とにはその傾向において大きな違いがないことから弾性波速度と強度との間に一定の関係がある,それは,岩相と地質時代を考慮して両者を比較することによつて明らかになった.