著者
水田 正弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.183-186, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)

「ビッグデータ」は,魅力的なワードであり,情報技術,特にインターネットや記憶装置の異常なまでの発展に伴い,大きな期待と注目を浴びてきた。しかし,実際にビッグデータを活用しようとすると,統計学をはじめとするデータ解析の技術がキーポイントになることが認識されてきた。すなわち,本質的なことは,「ビッグ」なデータを扱うことではなく,「データ」を活用することである。これらの活用のためには,データを扱うための考え方を整理する必要がある。本稿では,データに関係する状況,推測統計と記述統計,その発展形を含めて取り扱う。それらにより,データを活用して,実社会に役立てる方法を議論する。
著者
池田 貴儀
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.219-223, 2005-05-01 (Released:2017-05-25)
被引用文献数
2

会議録は, 研究者が最新の研究動向を知るための情報源であり, 図書館が収集すべき重要な資料にもかかわらず入手が困難とされている。その会議録について, 日本原子力研究所図書館では, 現在, 約1万9千件を収集し研究者に提供している。本稿では, 主として, 学協会からの会議情報の入手, 国際原子力情報システム(INIS)データベースの利用, 研究者からの情報入手といった会議録の収集手法を紹介した。また, 日本原子力研究所が研究報告書として刊行する会議録JAERI-Confのシリーズについても触れている。
著者
徳原 靖浩
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.8-13, 2016-01-01 (Released:2016-04-01)

東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室は,「イスラーム地域研究」ネットワークの拠点の一つとして,現地語資料の収集や整理に関わる課題に取り組んできた。本稿では,まずイスラーム地域の現地語資料の特徴と,日本における蔵書の概要について述べ,次に,アラビア文字資料の整理をコンピュータで行う際の問題点について,NACSIS-CATのアラビア文字対応の経緯とともに解説する。次に,現地語資料を効率的に収集・整理・利用する際の問題点と,それに対する東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室の取り組みについて紹介する。最後に,今後の展望について,日本の現状に合わせたネットワーク型の協力の利点に触れつつ述べる。
著者
三輪 宗弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.415-421, 2012-10-01 (Released:2017-04-18)
参考文献数
11

本稿では米国国立公文書館を利用する一人として,資料特に真珠湾攻撃直後に押収された日本商社資料の閲覧を通して,企業の日々の活動の資料が徹底的に分析され,日本の空襲ターゲット選定や日本に関する様々な情報収集にまで利用された実態を知ることができた筆者の経験を記述した。これらのことから,米国国立公文書館を利用すると,資料を収集して,分析して活用し,さらにそれを今日まで記録として残し,公開しているという点で,米国の資料管理の素晴らしさを実感できる。日米の資料公開の違いを痛感するのが軍事関係情報の公開の在り方である。シビリアンコントロールの観点からも情報公開の大切さを学ばなければならない。海外文書館での資料や情報の公開のあり方を学び,優れた制度を取り入れ,根付くように微力を尽くしたい。
著者
染谷 雅幸 石川 優佳 内記 香子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.156-161, 2001-03-01 (Released:2017-05-25)

東京大学法学部附属外国法文献センターで手に入れることができる, 海外の法令および判例資料の基本的な探し方について解説する。紙面の都合上, 本稿では, アメリカ, イギリス, フランスおよびドイツの4カ国に限った上で, それぞれの国の具体的な法令集・判例集を紹介している。国により, また年代により, 多様な形態の資料が存するため, それぞれの特徴や利用方法を理解することが, 法令および判例に関する情報を正確かつ速やかに把握するための第一歩である。難解とされている海外資料の検索を, 少しなりとも分かり易く伝えることが本稿の目的である。
著者
山口 直比古
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.141-147, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)

PubMedには2021年末現在3,300万件以上の医学文献が収録されており,その多くは英語で書かれたものである。PubMedで医学文献を検索するとは,ほぼ英語論文を探すことになる。MeSHという索引・検索キーワードのシソーラスが用意されているが,同義語や関連語から適切なMeSHへマッピングするためのメタシソーラスなども用意されており,利用者(End User)は,思い浮かんだフリータームで検索しても,適切な結果が得られるBest Matchというシステムが用意されている。また,一般市民の利用も多く,MedlinePlusという一般市民向けの情報調査サイトも提供されており,誰でもが利用できる医学文献検索システムの提供が目指されている。
著者
中山 和弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.122-127, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)

ヘルスリテラシーとは,健康や医療の情報を「入手」「理解」「評価」「活用」して適切な意思決定ができる力である。世界中でヘルスリテラシーの測定が行われ,その差が健康格差を生んでいるとして,人権問題としての取り組みの必要性が叫ばれている。日本においてもヘルスリテラシーに困難のある人は多く,入手や理解まではできたとしても,判断したり意思決定するのが難しい状況がみられた。このため,情報の信頼性を評価する方法のみならず,意思決定において選択肢の十分さを確認し,各選択肢に必ずある長所と短所を知り,それらのうちどれが大事かの価値観を明確にして選ぶプロセスを学ぶ必要がある。
著者
野村 紀匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.121, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)

2020年,新型コロナウイルスの感染が拡がり始めた頃,メディアやソーシャルネットワークで様々な情報が飛び交い,デマや間違った情報が大規模に拡散する「インフォデミック」という状況が起こりました。また過去には,ヘルスケア情報キュレーションメディアが不正確な医療情報記事を大量に公開していたことが発覚し,ついにはサービスを終了する事案もありました。インターネットは様々な医療情報にあふれており,各自がリテラシーを向上させ,適切な意思決定をする必要があります。本特集は「ヘルスリテラシーと医療情報」と題し,関連トピックについて幅広く取り上げています。まず,中山和弘氏に,ヘルスリテラシーと日本での状況,情報評価と意思決定のスキルについて解説いただきつつ,意思決定ガイドについて案内いただきました。続いて佐藤正惠氏に,メディアリテラシーのあり方について,医療・健康に関する報道についての質向上を目指すメディアドクター研究会の活動紹介を交えながら解説いただきました。さらに,医療・医薬品情報を調べる際の情報源についての記事が続きます。黒沢俊典氏には,国内医学論文を網羅するデータベース,医中誌Webを提供する立場から,その概要や沿革,最近の機能拡張等について詳説いただきました。山口直比古氏には,英語医学論文を検索する際に用いるデータベース,PubMedについて,近年の機能拡張やコンテンツ拡張について説明いただき,また市民へ医療情報を提供するMedlinePlusを紹介いただきました。小河邦雄氏には,ヘルスリテラシーの観点から医薬品調査に使用する情報資源の特徴について,医療情報を専門としないインフォプロ向けに解説いただきました。本特集が,インフォプロの皆様のヘルスリテラシー,メディアリテラシー向上に寄与し,医療・医薬品情報を利活用する際の参考になれば幸いです。(会誌編集担当委員:野村紀匡(主査),海老澤直美,炭山宜也,水野澄子)
著者
合庭 惇
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.281-286, 1995-06-01

ディジタル技術の進化は,マスメディアの世界においても激しい変革の波として押し寄せてきている。メディアにおけるコンテントの生成過程がディジタル化されただけではなく,コンテントそのものがディジタル化によって変化しつつあるのだ。パッケージ系からネットワーク系へとまさに変容しつつある電子出版の現在と未来を検証しながら,文化庁やNIIにおける著作権への取組み,そして近代的規定から逸脱しつつある著作権の新しい概念について考察する。
著者
相川 進
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.302-306, 2009
参考文献数
10

日本で1970年代半ばから始まったオンライン情報検索(JOIS,DIALOGなど)は,端末機,通信機器,回線利用料金,オンライン検索システムの機能とその利用料金,搭載されているデータベースとその蓄積量のいずれも,利用者から見れば,ハイコストかつローパフォーマンスであった。しかし,サーチャーに夢と期待を与えてくれた。80年代に進化を見せ,その後のハードウエア,ソフトウエア,インターネットなどの進化と低価格化により,30年後の現在,ローコストかつハイパフォーマンスな収穫(検索結果)を得られるようになった。オンライン情報検索は,利用者にさらなる夢と期待をもたせてくれる。
著者
下畑 さより
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.331-334, 2005-08-01 (Released:2017-05-25)

日本に商用の機械翻訳システムが登場してから15年以上経ち, 今日では様々な形態の機械翻訳システムおよび翻訳支援ツールが利用可能になっている。機械翻訳システムによる翻訳については, いぜんとして否定的な意見もあるが, その特性を十分に理解して使用すれば, 非常に有用なツールである。本稿では, ビジネスシーンを対象に, 機械翻訳の有効な活用方法を紹介する。業務における翻訳は, 翻訳者のレベルも, 翻訳の目的も, 翻訳に求められる条件(スピード, コスト, 翻訳品質)も様々である。それぞれの状況に応じてどのようなシステムが最適か, どのような利用方法が有効かについて考察する。また, 急速に需要の高まっている英語以外の言語を対象とする機械翻訳の現状についても言及する。
著者
野村 紀匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.111, 2020

<p>今月号の特集は,「科学のなかの女性たち」と題してお届けします。</p><p>1975年,国連は毎年3月8日を国際女性デー(International Women's Day)と定め,様々な分野におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントを促進する日と位置づけました。今年も世界各国で,国際女性デーを記念する様々なイベントが開催されます。</p><p>ここで日本の女性研究者が置かれている現状を統計から見てみましょう。2019年科学技術研究調査結果によれば,日本における女性研究者数は15万5000人で過去最多,研究者全体に占める割合も16.6%と過去最高を示しました<sup>1)</sup>。一方,OECDの集計によれば,女性研究者率が46.4%に達するアイスランドや,43.7%のポルトガルのような国々,さらにドイツ(27.9%)や韓国(20.1%)と比べても日本の女性研究者率は低い水準に留まっています<sup>2)</sup>。</p><p>本特集は,このような状況にある日本の女性研究者を支援する施策や活動について紹介しつつ,今後の活躍を応援することを企図しています。はじめに宮浦千里氏(東京農工大学)に,主に自然科学分野における女性研究者支援施策についてご説明いただきました。窪川かおる氏(帝京大学)には,海洋分野で活躍する女性とそのネットワークについてご紹介いただきました。蓑田裕美氏(株式会社資生堂)には「資生堂 女性研究者サイエンスグラント」についてご詳説いただき,また同社における男女共同参画を支える取り組みについてご共有いただきました。北村紗衣氏(武蔵大学)にはWikipediaにおけるジェンダー平等について,課題も含めてご解説いただきました。森未知氏・星野咲希氏(国立女性教育会館)には,女性研究者支援をテーマに据えた「図書紙面展示」を企画いただきました。</p><p>本特集が,女性研究者の置かれる状況やこれからの女性研究者支援について,さらには女性活躍・登用促進について考える契機となれば幸いです。</p><p>(会誌編集担当委員:野村紀匡(主査),寺島久美子,當舎夕希子,光森奈美子)</p><p>参考文献</p><p>1)"図2-2 女性研究者数(実数)及び女性の割合の推移".2019年科学技術研究調査(要約).総務省統計局,2019,p.4.https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/youyaku/pdf/2019youyak.pdf, (参照2020-01-27).</p><p>2)"Women researchers as a percentage of total researchers (headcount)". Main Science and Technology Indicators (Dataset), OECD.Stat. https://stats.oecd.org/Index.aspx?DataSetCode=MSTI_PUB#, (accessed 2020-01-27).</p>
著者
中川 紗央里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.81, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)

今日,デジタル化の進展や,コロナ禍における図書館の休館等の影響を受け,インターネット上で流通する著作物としてのコンテンツのニーズはますます高まっており,それらデジタル情報資源の作成や活用をより円滑に行えるよう,法整備や制度設計が進められています。本特集では,「デジタル時代の著作権」と題し,デジタル情報資源の作成・提供・活用における権利を巡る諸課題について,最近の動向を幅広く取り上げています。まず,福林靖博氏(国立国会図書館)に,図書館関係の権利制限規定(法第31条)のうち特に個人送信(法第31条第3項)について,令和3年著作権法改正の内容について解説するともに,国立国会図書館における個人送信サービスの検討状況について紹介いただきました。続いて,徳原直子氏(国立国会図書館)に,柔軟な権利制限規定(法第30条の4,第47条の4,第47条の5等関係)について解説した上で,デジタル化資料(画像)のOCRテキスト化,テキスト化データを用いた所在検索サービス,データセットの提供等,データの活用事例を紹介いただきました。次に少し視点を変えて,出井甫氏(骨董通り法律事務所)には,昨今注目されている一般ユーザによって作成されたコンテンツ(User Generated Content,UGC)について,著作権法との関係と,創作及び利用にともなう課題,政府における利活用促進のための取組みに焦点を当てて解説いただきました。最後に,水野祐氏(シティライツ法律事務所)には,著作物の利活用を促進するための取組みとして,著作権に関する意思表示・権利状態表記ツールについて,クリエイティブ・コモンズ,Rights Statements等を例に挙げて解説いただきました。本特集が,デジタル情報資源を発信・提供する側,利用する側の両面で,インフォプロの皆様の御参考になれば幸いです。(会誌編集担当委員:中川紗央里(主査),青野正太,安達修介,炭山宜也)