著者
徳原 靖浩
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の中心課題は、西暦11世紀のペルシア詩人であり、イスラーム・シーア派の一派イスマーイール派に傾倒した思想家として知られるナーセル・ホスロウ(1072年以降没)の思想の全体像を明らかにすると共に、イランの思想史に位置づけることである。採用二年目である本年度は、(1)前年度学会で発表した、ナーセル・ホスロウの解釈学教義を端的に著したテクスト『宗教の顔』に関する研究を進め、また、(2)前年度に引き続き、新たに公刊された研究書、本邦で入手が困難な一次・二次資料文献、写本情報の収集のためイランに渡航した。(1)前年度はナーセル・ホスロウに先行するイスマーイール派思想家のテクストとの比較作業を行なった。特に、本研究で主に扱うテクスト、『宗教の顔Wajh-i Din』における記述には、基本的な教義的方向性に関する記述で先行する文献や、後のイスマーイール派の文献、また同時代の神秘主義文献にも程度の差こそあれ類似した表現が見られることが分かった。この点を間テクスト性の観点からどう扱うかについても考察を進めた。また、前年度の研究からの継続としては、『宗教の顔』に見られるザーヒル(外面)・バーティン(内面)の概念に二重の基準があるのではないかという考えを更に掘り下げ、この点に関して新たな知見を盛り込んだ論文を準備中である。(2)イランにおける資料収集:今年度はイラン国民議会(マジュレス)図書館および国民マレク図書館にて、刊本に使用されていないナーセル・ホスロウ著作の写本調査を行なった。
著者
岡 真理 宮下 遼 山本 薫 石川 清子 藤元 優子 福田 義昭 鵜戸 聡 田浪 亜央江 中村 菜穂 前田 君江 鈴木 珠里 石井 啓一郎 徳原 靖浩 細田 和江 磯部 加代子 岡崎 弘樹 鈴木 克己 栗原 俊秀 竹田 敏之
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

アラビア語、ペルシア語、トルコ語、ヘブライ語など中東の諸言語で、中東地域で生産される作品のみならず、中東に歴史的出自を持つ者によって、欧米など地理的中東世界を超えた地域で、英語、仏語、独語、伊語などの西洋の諸言語で生み出される作品をも対象に、文学や映画などさまざまなテクストに現れた「ワタン(祖国)」表象の超域的な分析を通して、「ワタン」を軸に、近現代中東世界の社会的・歴史的ありようとそのダイナミズムの一端と、国民国家や言語文化の境界を越えた共通性および各国・各地域の固有性を明らかにすると同時に、近現代中東の人々の経験を、人間にとって祖国とは何かという普遍的問いに対する一つの応答として提示した。
著者
徳原 靖浩
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.8-13, 2016-01-01 (Released:2016-04-01)

東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室は,「イスラーム地域研究」ネットワークの拠点の一つとして,現地語資料の収集や整理に関わる課題に取り組んできた。本稿では,まずイスラーム地域の現地語資料の特徴と,日本における蔵書の概要について述べ,次に,アラビア文字資料の整理をコンピュータで行う際の問題点について,NACSIS-CATのアラビア文字対応の経緯とともに解説する。次に,現地語資料を効率的に収集・整理・利用する際の問題点と,それに対する東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室の取り組みについて紹介する。最後に,今後の展望について,日本の現状に合わせたネットワーク型の協力の利点に触れつつ述べる。