著者
茂出木 敏雄 千葉 誠
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.37, pp.89-96, 2007-05-10

筆者らは、音源に携帯電話を向けるだけで情報が抽出できる音楽電子透かし技術の開発を進めている。そのためには、ヒトの聴感特性が鋭敏な音域を改変せざるを得ず、埋め込みノイズをいかにして抑圧するかが課題であった。これまで、筆者らは2チャンネル・ステレオ再生を応用して、データを埋め込んだL側スピーカで発生するノイズをR側スピーカで相殺する手法を提案してきた。しかし、音源から離れた位置で抽出することが難しいといった運用上の問題を抱えていた。本橋では、R側の雑音抑圧信号をL側に多重化し、更に視聴者に音脈分凝を誘導することにより埋め込みノイズを低減させ、モノラル再生で運用を可能にした改良手法について提案する。
著者
白井諭 大山 芳史 池原 悟 宮崎 正弘 横尾 昭男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告
巻号頁・発行日
vol.98, pp.47-52, 1998
被引用文献数
4

日英機械翻訳における高品質な意味解析を実現するため, 筆者らは日英機械翻訳システムの開発とともに, それに用いる意味辞書の構築を進めてきた。この意味辞書は, 単語や表現構造の意味を体系的に分類した意味属性体系, 単語に関する知識を収録した単語意味辞書, 用言を核とした表現構造を収録した構文意味辞書の3つから構成される。意味属性体系は, 対象の見方や捉え方が, 一般名詞意味属性, 固有名詞意味属性, および, 表現構造に対する用言意味属性として3種類3, 000属性に分類, 体系化されている。単語意味辞書は, 現代日本語の記述文への適用に耐えるよう, 単語の異表記や固有名詞20万語を含む40万語に対し, 文法情報のほかに, 一般名詞意味属性と固有名詞意味属性が付与されている。構文意味辞書は, 現在, 6, 000用言に対する表現構造が日英対訳形式で16, 000パターン収集され, 日本語パターンの格要素の名詞に対し一般名詞意味属性を用いた制約条件が記述され, 日本語パターン全体に対し用言意味属性が付与されている。本稿では, これらの意味辞書の開発経過と, それに基づいて作成した日本語語彙大系の概要について報告する。
著者
角 康之
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.1-6, 2011-05-09

会話中に生ずる言語・非言語情報の構造を理解するために、非言語情報の辞書と文法の構築を目指している。その研究基盤として筆者のグループが構築を進めている、多人数会話のマルチモーダルデータの計測環境IMADE ルームと、それに基づいて会話の構造分析を行うソフトウェア環境iCorpusStudio を紹介する。非言語情報から会話参加の積極性を解釈する試みや、非言語情報発生の時系列パターンマイニングの試みを紹介する。
著者
石川 雅弘
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:21862583)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.6, pp.1-6, 2011-04

ウェブ上にはブログをはじめとして一般ユーザにより生産された大量のテキストデータが蓄積されており,その量は今後も継続的に増加すると考えられる.我々はタイムスタンプ付きテキスト集合のクラスター構造とその経時変化を可視化するための手法を提案してきたが,そこでは文書ベクトルの次元削減と潜在意味処理を行なうために全データを一括して処理する必要があった.そのため,ブログなど大量のテキストが生産される続ける漸増的環境に適用するには問題があった.本稿では,ブログのような漸増的動的環境下でも,潜在意味処理を伴なったクラスタリングと可視化を効率良く行うための、文書ベクトル生成手法を提案し,例として収集したブログ記事集合への適用結果を示す.Nowadays, huge amount of user generated texts is produced and accumulated on the web. They will be continuously increased in the future too. We have proposed a method for visualizing cluster structures of time-stamped texts and their changes over time. However, in the method, the whole dataset had to be processed at a time for dimension reduction of document vectors and incorporating latent semantics of words. Thus, the method have some problem in dynamic incremental environments, such as blogs, to apply. In this paper, a new method for document vector generation which can enable efficient text clustering and visualization in dynamic environments is proposed. As an example, the proposed method is applied to blog articles to demonstrate its effectiveness.
著者
田村 善之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.89, pp.55-61, 2004-09-02

知的財産法は,物理的に1人の者しかなしえない有体物の利用行為に対して排他権を認める所有権と異なり,物理的には誰もがなしうる行為に対して人工的に禁止権を設定する法技術であるから,他者の行動の自由を制約する度合いが強い。ために,インセンティヴ論で積極的に基礎付けることのできる知的財産法による権利を,私人の行動の自由を過度に規制することのないように制限する工夫が設けられているのである。たとえば,業として遂行される実施に限り特許権が及ぶとされていたり(特許68条),私的複製には著作権が及ばないとされていること(→第2編第6章III2 1)(2))など。この場合,どの限度まで権利者の利益を優先し,どの程度,私人の自由を確保するのかといった問題を検討する際には,インセンティヴの付与と私人の自由という2つの価値のバランスを衡量しなければならず,さらに,その際にはある人が創作したものである以上,私人の自由がある程度拘束されることになっても仕方がないという考慮も働くであろう。その結果,たとえば,著作権によって複製行為はある程度拘束されるが,読書は完全に自由となる(→第2編第6章III1 4)(2)a))などの落ち着き先が見つけられることになる。本報告では;こうした観点からインターネット時代の著作権制度の将来像を考察することにしたい。
著者
小澤 英昭 勝田 亮 宮本 勝 米田 理
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.33, pp.19-24, 2001-03-23
被引用文献数
1

インターネットにより、従来の大規模なマスメディアによる情報発信から、地域や個人、小規模コミュニティから世界に向けての情報発信が容易になったと言われている.インターネットを用いて世界に情報を発信するだけでなく、大規模に地域の情報を地域に住む住民に向けて発信するローカルポータルと呼ばれるサービスが始まってきている。ローカルポータルは、地方新聞やフリーペーパーといった、地域住民向けの情報誌をインターネット上で提供しようとするものである.インターネットが特徴とするグローバルな情報発信ではなく、限られた地域の人を対象とする情報発信である.本稿では、このローカルポータルを、情報を提供するエリアの大きさで分類し、ローカルポータルサービスの概念を述べる。更にローカルポータルの中で、都市周辺に住み、生活するタイプのサービスについて詳細に解説する。
著者
中野 潔
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.13, pp.9-16, 2000-01-29

ネットワーク上のデジタルコンテンツを巡って、種々の動きが出ている。業界が融合され、合従連衡が急なため、従来、各業界に存在した役割分担の図式が入り乱れている。さて、安心してデジタルコンテンツのビジネスを実行するには、コンテンツが違法にコピーされないことが必要である。そこで、ネットワーク上のデジタルコンテンツを巡って、コンテンツを同定するための仕組みが、いくつか提唱されている。また、業界の枠組みが定まらない中で、ビジネスの関係者が利益の分配を含めて、種々の試みをなすためには、仲介業務法による仲介事業者の制限が問題になる可能性がある。2000年には、法律の改正を含め、幾多の動きが出てくるであろう。
著者
美馬 正司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.24, pp.17-24, 2001-03-09

地域情報化の推進においてインターネットは不可欠な存在になっているが、インターネットを活用した情報化に取り組むいくつかの地域では、インターネットが持つネットワークの外部性を内部化するアプローチを試みている。具体的には、地方公共団体が住民におけるインターネット利用コストを補助することで、地域における利用者数を急速増加させ、これによりインターネットそのものの価値を高めるという手法である。本稿では、この手法を外部性アプローチとし、その経済的な効果の分析に焦点を当てている。
著者
山口 武彦 赤羽 歩 村山 淳 寺西 望 佐藤 誠
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.95, pp.33-37, 2005-09-30

計算機の処理性能の向上に伴い, 視覚, 聴覚情報に加え, 力触覚情報によるインタラクティブ手法が様々に研究されている.また, Webアプリケーションなどのマルチメディアコンテンツの作成が大衆化する中, より簡単に触覚を提示できるような開発環境が求められている.しかし, 現状の開発環境では, 視覚提示部と触覚提示部とで別々の開発環境が必要となる.本稿では, 現在ブラウザに標準プラグイン化されているMacromedia Flashを用いて, ハプティックインタラクションを実現するシステムを提案する.このシステムは, 力触覚呈示部に触覚アクチュエータ(富士通コンポーネント(FCL)製)を用い, 既存のFlashプラットフォームから直接, 力触覚呈示が出来るようにActionScriptを実装した.これにより, Flashユーザは気軽に触覚提示のできるアプリケーションの開発ができるという利点がある.また, いくつかのFlashムービーに触覚を実装した際の効果の評価を行った.
著者
佐藤 和文
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.24, pp.57-64, 2001-03-09

「シニア世代」という、年齢で区分される社会的集団は、いわゆる「デジタルデバイド(デジタル格差)」の発生領域として位置付けられなければならない。デジタル技術やネットワーク技術の発達を背景に、日本の情報化はますます多様かつ急激な展開をみせ、その質的な変容も、著しい。特徴的なのは、日本の情報化が、急速に進む「高齢化」と同時進行している点である。デジタルデバイドの問題は、インターネット先進国である米国において、主に低所得層や障害者が抱える社会問題として論じられてきたが、「情報化」と「高齢化」が同時進行する日本社会においては、シニア世代IT(情報技術)のかかわりがとりわけ重要である。デジタルデバイドは高齢化対策の視点でも、適切かつ有効な対応が求められる。にもかかわらず、例えば政府が推進しようとしている「IT講習」は、1人の講師が20人に教える枠組みで、組み立てられている。シニア世代特有の身体的・社会的条件を考えれば、1人の講師が20人に教えるような一般的形態の講習は、効果がない。「IT講習」は「シニア世代はITと無縁であっていい」と宣言しているかのごときであり、シニア世代を「社会的に用済みの存在」としてきた日本の伝統的な高齢者観と通ずるものがある。「高齢化」と「情報化」が同時進行しているという意味で、日本の「デジタルデバイド」は、世界的にみても、固有の意味を持ち、その対応策は、日本固有の状況を十分見極めながら導きだされる必要がある。そのためにはコスト重視の企業的アプローチではなく、ボランタリーなエネルギーによって支えられる「NPO的な可能性」を生かす視点が重要である。