著者
児玉 晴男
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.416-424, 2012-09-05 (Released:2012-09-01)
参考文献数
12

わが国の教育コンテンツのネット公表は,オープンコースウェア(OCW)やiTunes Uの仕組みの中で行われている。その仕組みは,クリエイティブ・コモンズ・ライセンスやフェアユースなど著作権(copyright)の保護と制限の考え方,すなわち,米国の社会制度の面からの理解・解釈による。米国と日本の社会制度の違いから,教育コンテンツのネット公表を進める上では,わが国の社会制度の視点からの法的・倫理的な権利処理が明らかにされなければならない。本稿は,放送大学教材の公表にあたって実際に行われている法的・倫理的な対応を踏まえて,わが国における教育コンテンツのネット公表に伴って必要となる著作権と関連権からの権利処理について論説する。
著者
日高 真子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.183-191, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
11

国内学会発行の学術論文誌において,著者以外の利用者への著作権や利用に関する情報の公開・周知は十分ではなかった。そこで,電子ジャーナル論文や論文の補助資料の取り扱いについて,ジャーナルの利用規約とコンテンツ利用の現状に関する文献調査とヒアリング調査を行った。学会の状況,学術コンテンツの利用状況および利用者の実情の3点に着目し,調査結果を踏まえ作成した利用規約ガイドライン(案)を紹介,提案する。
著者
時実 象一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.9, pp.534-542, 2009 (Released:2009-12-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Internet ArchiveはBrewster Kahleによって1996年に設立された非営利団体で,過去のインターネットWebサイトを保存しているWayback Machineで知られているほか,動画,音楽,音声の電子アーカイブを公開し,またGoogleと同様書籍の電子化を行っている。Wayback Machineは1996年からの5,000万サイトに対応する1,500億ページのデータを保存・公開している。書籍の電子化はScribeと呼ばれる独自開発の撮影機を用い,ボストン公共図書館などと協力して1日1,000冊のペースで電子化している。電子化したデータを用いて子供たちに本を配るBookmobileという活動も行っている。Kahle氏はGoogle Book Searchの和解に批判的な意見を述べているほか,孤児著作物の利用促進やOne Laptop Per Child(OLPC)運動への協力も行っている。
著者
バゼル 山本登紀子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.356-365, 2005 (Released:2005-09-01)

2004年10月30日,米国ハワイ州オアフ島にあるマノア渓谷に観測史上最悪の集中豪雨が襲った。流木や瓦礫(がれき)でふさがれたマノア川の橋が流れをせき止め,鉄砲水がハワイ大学マノア校キャンパスを直撃し,40施設が多大な被害を被った。中でも太平洋地域最大の研究図書館であるハミルトン図書館の受けた被害は20億円以上という大惨事となった。図書館機能を担う中枢部が全壊し,1世紀近くの年月をかけ収集し,保存してきた政府刊行物,地図,航空写真は泥水の中に埋没した。本稿はハミルトン図書館が体験したこの大災害の記録である。災害の実態,対応,復旧の実体験を関係者のインタビュー,災害記録等を基に紹介する。
著者
浜田 雅美 佐久間 せつ子 三沢 一成
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.642-652, 2008 (Released:2008-12-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

「医中誌Web」は,国内で発行される医学およびその関連分野の定期刊行物2,500誌以上に掲載される文献情報を収録するデータベースであり,2000年よりサービスが開始された。収録文献数は,年間30万件以上で,現在650万件を超えている。各文献には,専門の索引者が「医学用語シソーラス」に基づき,主題にふさわしいディスクリプタ(見出し語)を付与している。「医学用語シソーラス」は,「医中誌Web」の索引および検索のツールであり,米国医学図書館が作成するMedical Subject Headings (MeSH) に準拠して作成されている。1983年発行の第1版から何度かの改訂をへて,MeSH2005年版に準拠した第6版が,2007年1月に発行された。第6版には,25,317語のディスクリプタが収録され,それに関連づけられた30万語以上の同義語が,用語管理システム内に登録されている。これにより,索引の際の的確なディスクリプタの選択が容易になっている。さらに,「医中誌Web」において,シソーラスを意識せず的確な検索結果を得るための,ディスクリプタへの自動マッピング機能に活用されている。本稿では,「医学用語シソーラス」に基づく索引ルールや,医中誌データベース作成システムのうちの,索引支援システムについて紹介した。
著者
小林 龍生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.147-156, 2012 (Released:2012-06-01)
被引用文献数
1 1

本稿では,日本における国際符号化文字集合を含む文字符号標準の変遷を,国語施策との関わりを軸に概観すると共に,人名の表記に用いる漢字の特殊性と情報通信機器に実装する際の問題点について述べる。
著者
河野 崇
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.461-470, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)
参考文献数
19

シリコン神経ネットワークは,神経細胞に対応するシリコンニューロン回路,シナプスに対応するシリコンシナプス回路を組み合わせることによって作られた電子回路版神経ネットワークである。脳神経系の電気生理学的活動をリアルタイムあるいはそれ以上の速度で模倣することにより,超低消費電力や少ないデータからの学習など脳神経系のもつ優れた特性を受け継ぐことができると期待されている。しかし,神経ネットワークにおける情報処理の原理が完全に解明されておらず,脳神経系に匹敵するシステムの実現のために,シリコン神経ネットワークの研究者も「構築による解析」の立場からこの問題に寄与することが求められている。このため,現代のシリコン神経ネットワークにおいてはモデルの設計方法がより重要であり,いくつかのアプローチが存在するが,それらについて簡単に解説する。
著者
岡本 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.753-763, 2009 (Released:2009-01-01)
参考文献数
18

創刊10年を迎えたメールマガジンACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)のビジョンやミッション,これまで果たしてきた役割を振り返る。同時に過去10年の学術ウェブの動向を個人によるブログ活用と機関リポジトリ等の組織の取り組みを中心に総括する。以上を踏まえて,今後の学術ウェブのあるべき姿を論じる。特に研究者や実務家,プロフェッショナルやアマチュアが相互に与え,与えられる双方的な関係を築けるような学術ウェブの必要性を説く。そして,その実現のためには学術ウェブ向けに設計された新しいプラットフォームが必要であることを主張し,ARGの役割を述べる。
著者
宮廻 正明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.845-854, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
3
被引用文献数
2

人類の共通財産である文化財は,保存と公開のバランスや紛争による破壊,流出の問題に直面している。文化財は唯一無二の存在であり,その真正性は本来,複製が不可能であるが,東京藝術大学ではアナログ技術とデジタル技術を混在させることで,オリジナルの質感,形状,素材,色彩,文化的背景までをも再現する「クローン文化財」の技術を開発し,特許権を取得した。本稿ではクローン文化財の開発目的と意義,今後の展望について,(1)日本文化の特質,(2)芸術のDNA,(3)クローン文化財の制作手法と展示例,(4)平和外交への活用,という4点から述べる。
著者
木村 宏 佐藤 優子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.555-563, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
15

生物の遺伝情報はゲノムDNAに刻まれている。ゲノムDNAからいかにして必要な情報を必要に応じて取り出すことができるのか,という問題を解明できれば,生命現象の理解に大きく近づくことができる。遺伝子の発現制御には,DNAに直接結合する転写因子が必須であるが,ヒストンの翻訳後修飾を介したエピジェネティクス制御や細胞核内でのゲノム高次構造なども重要な役割を果たすことがわかってきた。そこで,最近,細胞核を包括的かつ時空間的に理解する「ヌクレオーム(Nucleome)」研究が注目を集めている。ヌクレオーム研究という視点に立ち,顕微鏡解析,ゲノム解析,情報・数理解析を融合させることで,ゲノムの発現制御機構を理解できると考えられている。ヌクレオーム研究は米国ですでに予算措置されている他,ヨーロッパでの動きや国際コンソーシアム発足に向けた活動も進んでいる。わが国でもヌクレオーム研究を推進することが生命科学の発展に重要であると考えられる。
著者
岩見 紫乃
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.694-700, 2015-12-01 (Released:2015-12-01)
参考文献数
15

科学技術戦略を策定するにあたり,近年では,データを分析して客観的なエビデンスに基づき判断しようという潮流があり評価手法の研究が進められている。本分析では,分析対象に,2007-2014年の各年の被引用数上位1%の論文を収集し,論文の引用ネットワークを分析して,萌芽研究領域を特定して投資対象を判断する指標を提案する。研究領域に含まれる平均出版年から萌芽研究領域を特定した結果,日本の論文が含まれる領域は5領域が検出された。それらの領域における日本の研究の質・量・最新性を判断し,その後,取るべき戦略ごとに研究領域を区分した。
著者
神里 達博
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.875-886, 2016-03-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
18

本稿は,近年急速な発展を遂げる情報技術が,社会の中で適切に発展していくための条件について,科学技術の社会史や生命科学の倫理問題の経緯を踏まえつつ,考察するものである。具体的には,科学技術観の歴史を簡単に確認したうえで,1970年頃に広がった「科学技術に対する懐疑」の思想について議論する。また,生命科学,とりわけ分子生物学において,倫理的な問題意識が登場した背景について検討する。さらに,このような動きの延長線上にあるものとして,「ヒトゲノム計画」に伴って提唱された「ELSI」という研究プログラムについて確認する。そのうえで,情報技術におけるELSIの現状と可能性を,EUと日本の事例を参照しつつ,考察する。
著者
秋元 浩
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.377-386, 2011 (Released:2011-10-01)
参考文献数
8

京都大学・山中伸弥教授の新型万能細胞(iPS細胞)の研究に見られるように,日本の大学・研究機関の研究レベルは世界でもトップクラスであり,今後もこのような発明・研究を生み出す素地は十分に整っているといえる。しかし,日本はライフサイエンス分野(医薬,医療分野等)を含めた先端分野の研究では善戦しつつも,知財の活用による産業化という面ではいまだ欧米の後塵を拝しているのが現状である。このような状況を打破して日本の企業が国際競争に打ち勝つためには,わが国の英知を結集した効率的な産学官連携により,大学等から生み出された研究情報に基づく知財を積極的に活用してグローバルな事業展開を図っていくことが重要であり,そのために新しいチャレンジングな試みとして知的財産戦略ネットワーク(IPSN)/ライフサイエンス知財ファンド(LSIP)が設立された。
著者
大熊 健司
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.607-617, 1990 (Released:2012-03-23)

科学技術庁の地域研究情報ネットワークは, パソコン通信のシステムで, 現在, 筑波と四つのモデル地域で実験的に運用されている。このネットワークの目的は, 時間, 空間の壁をこえて, 面識のある無しにかかわらず研究者・技術者間コミュニケーションを緊密なものとし, これによって研究開発から企業化までの研究開発の高度化を地域において図ることに貢献することである。昭和63年度にモデル地域に指定された, 石川・富山両県では, 各々, 本研究情報ネットワークの運用を始めて一年を経過。このため, それぞれのネットワークの運用内容を詳しく紹介するとともに, その利用状況と今後の課題にふれる。