著者
久米川 正好
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.400-407, 2012-09-01 (Released:2012-09-01)
被引用文献数
1

アナログ時代のフィルムは,劣化,散逸し,死蔵されている。われわれはアナログ時代の貴重な科学映画作品を収集し,高度な技術でデジタル復元し,保管している。この映像をWebで国内外に広く提供することにより,記録映画界の発展に寄与するとともに,日本の文化,科学,産業の継承と発展に貢献しようと,2007年4月1日「NPO法人科学映像館を支える会」を設立した。その活動の意義,5年間の収集,保管と提供に関する実績を紹介する。またその間に生起されたさまざまな課題,特に作品の劣化と資料の散逸および著作権処理問題などを明らかにした。今後,映像遺産を守り,どう生かすべきかについても触れた。
著者
大谷 卓史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.335-338, 2017-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
11

インターネットという情報の巨大な伝送装置を得,おびただしい量の情報に囲まれることになった現代。実体をもつものの価値や実在するもの同士の交流のありようにも,これまで世界が経験したことのない変化が訪れている。本連載では哲学,デジタル・デバイド,サイバーフィジカルなどの諸観点からこのテーマをとらえることを試みたい。「情報」の本質を再定義し,情報を送ることや受けることの意味,情報を伝える「言葉」の役割や受け手としてのリテラシーについて再考する。第3回は,伝承の匿名空間とでも呼ぶべきインターネット上に流布される「虚偽情報」にだまされないための方法はあるのか,を考える。
著者
藤田 節子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.564-575, 2007 (Released:2007-01-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

筆者は2005年本誌で科学技術分野の投稿規定の分析調査結果を発表した。今回は人文・社会科学分野167学会の学会誌172誌の投稿規定を収集して,論文の長さなど18の記載項目の内容を詳しく調べ,昨年の科学技術分野の調査結果と比較し,人文・社会科学分野の学会誌の実態や特徴を分析した。また,1997年に寺村由比子が行った投稿規定による分野別特徴の調査結果とも比較し,最近の電子化に伴う変化を探った。本稿では,投稿規定の概要と投稿者の資格など11の記載項目の分析結果を報告する。他の7項目と本調査の考察は次稿で報告する。
著者
橋本 勝美
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.87-96, 2012 (Released:2012-05-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

この20年のWeb基盤技術の進歩により,研究者は研究に必要な文献情報を容易に得ることができるようになった。同時に,研究成果発表のプレッシャーを背負う研究者による科学研究の不正が顕在化している。研究成果を公表する学術ジャーナルでは,重複出版や剽窃・盗用を未然に防ぐ対応が求められ,剽窃検知ツールCrossCheckの利用が広まってきている。日本疫学会はJ-STAGE利用学会として,CrossCheck導入の検討ワークショップに参加した。CrossCheck導入の際に必要となる検討事項やCrossCheck利用の結果と対応案について日本疫学会誌Journal of Epidemiologyの事例を報告する。また,CrossCheckの利用によって明らかになった自己剽窃などの課題についても紹介する。
著者
越村 俊一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.822-828, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
4

最先端のシミュレーション・センシング・ICTを統合し,津波発生直後のきめ細かな津波情報や,迅速な被害情報の推計・把握と配信を通じて被災地を支援し,災害に対するレジリエンス(回復力)の向上とわが国の国土強靱化に資する,世界最先端のG空間防災モデルを確立した。スーパーコンピューターの活用により,沿岸部10mメッシュ分解能でのリアルタイム津波浸水予測(浸水する範囲と深さの予測)を可能とし,その予測とG空間情報の活用による建物被害予測を,地震発生から20分以内を目安に完了させ,実証自治体での災害対応の基盤情報に組み込んだ他,準天頂衛星からのメッセージ送信や災害に強いワイヤレスネットワークを活用し,住民等の利用者に対して確実に情報を配信するシステムを構築した。東北地方の津波被災地,南海トラフ巨大地震による被害が想定される自治体において本システムの実証実験を行い,システムの活用性を高めることができた。
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.b1-b14, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)

「この本! おすすめします」は、毎月一人の執筆者がテーマを決めてお薦めの本を紹介する連載である。この連載は、選書を通じて選者をも紹介する意図で企画した。11年半(2006年10月~2018年3月)続いたこの連載の中で紹介された全360冊をリスト(PDF)にした。
著者
佐藤 翔 上田 真緒 木原 絢 成宮 詩織 林 さやか 森田 眞実
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.908-918, 2016

2002~2013年に日本の学協会誌に掲載された論文120万9,674本を対象に,どの程度オンラインで入手できるのかを調査した。調査にあたっては1)CiNii Articlesを用いた調査,2)J-STAGE・メディカルオンラインへの収録状況調査,3)サーチエンジンを用いたサンプリング調査,という3つの方法を採用した。結果から,日本の学協会誌掲載論文のうち,7割以上は何らかの形でオンラインで入手可能であると見積もられた。特に英語論文や自然科学分野の論文は,オンラインで入手可能なものが多い。一方で,人文学分野ではオンラインで入手できる論文が43.7%,社会科学分野でも51.5%にとどまっていた。
著者
バゼル 山本登紀子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.356-365, 2005

2004年10月30日,米国ハワイ州オアフ島にあるマノア渓谷に観測史上最悪の集中豪雨が襲った。流木や瓦礫(がれき)でふさがれたマノア川の橋が流れをせき止め,鉄砲水がハワイ大学マノア校キャンパスを直撃し,40施設が多大な被害を被った。中でも太平洋地域最大の研究図書館であるハミルトン図書館の受けた被害は20億円以上という大惨事となった。図書館機能を担う中枢部が全壊し,1世紀近くの年月をかけ収集し,保存してきた政府刊行物,地図,航空写真は泥水の中に埋没した。本稿はハミルトン図書館が体験したこの大災害の記録である。災害の実態,対応,復旧の実体験を関係者のインタビュー,災害記録等を基に紹介する。
著者
村下 公一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.728-736, 2016-01-01 (Released:2016-01-01)

弘前大学は,政府COI(センター・オブ・イノベーション)拠点の一角を担っている。日本が超高齢社会を迎え,医療費増大が社会的問題となる中,「寿命革命」を旗印に,「リスクコンサーン型医療」へと転換して健康長寿社会の実現に取り組んでいる。弘前大学COI拠点の最大の特徴は,地域住民との厚い信頼関係に基づき,10年以上に及ぶコホート研究(岩木健康増進プロジェクト)によって集積された膨大な超多項目健康ビッグデータ(約600項目)の存在である。現在,この健康ビッグデータを基盤に,GEヘルスケア・ジャパンをコアに,イオンや花王,ライオンなど30以上に及ぶ強力な産学官連携チームによって,認知症などの疾患予兆発見と予防法開発にチャレンジしている。また,本ビッグデータは住民の健診情報が基盤となることから,個人情報保護法改正やマイナンバー導入を見据えた慎重な対応を進めている。
著者
イーグリング ロバート 福田 佳子 浦上 裕光 ウィルソン エマ
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.475-483, 2014-10-01 (Released:2014-10-01)

本稿では,オープンアクセス(OA)の基本的なコンセプト,背景,主なOAのモデルとその特徴の概要,OAに関してRoyal Society of Chemistry(英国王立化学会,RSC)が果たすべき役割について取り上げる。研究助成機関の役割や方針が学術出版に大きな影響を与えている環境ではあるが,出版業界ではOA化が進んでいることもあり,化学分野においても,この環境の変化が顕著に反映されている。化学分野ではOAはまだ受け入れられているとは言えない状況だが,このようなOA移行期にRSCがどのように学術出版の発展や出版オプションを多数提供し,著者や図書館関係者といったOA出版関係者を支援しているのかについて述べる。