著者
北本 朝展
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.293-304, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)
参考文献数
8

「デジタル台風」とは,台風に関するあらゆる情報を整理し,誰でもアクセス可能なデータプラットフォームの構築を目標とするプロジェクトである。気象データや社会データなどさまざまな大規模データを統合するだけでなく,データの意味を類似性やランキングといった相対値の文脈で解釈する機能など,「デジタル台風」にしか存在しないユニークなデータや機能が人気を集めている。本稿はこのデータプラットフォームを2つの観点から考察する。第1に,公開から約13年間の約1億6,300万ページビューのアクセス解析に基づき,時間変動する情報価値や情報流通におけるソーシャルメディアの価値などを考察する。第2に,デジタル台風が直面するさまざまな持続可能性の問題を,パスファインダーによるキュレーションや,市民科学とオープンサイエンスのかかわりといった観点から論じるとともに,持続可能なデータプラットフォームに向けて目指すべき方向を展望する。
著者
江間 有沙 秋谷 直矩 大澤 博隆 服部 宏充 大家 慎也 市瀬 龍太郎 神崎 宣次 久木田 水生 西條 玲奈 大谷 卓史 宮野 公樹 八代 嘉美
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.322-330, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)
参考文献数
10

人工知能技術の「責任ある研究とイノベーション(Responsible Research and Innovation: RRI)」のためには多様なステークホルダー間による対話・協働が不可欠である。本研究では,情報学系研究者のほか情報学の倫理的・法的・社会的問題を考える人文・社会科学研究者,政策系の専門家やSFなど創作/編集活動関係者,メディア,一般市民など多様なステークホルダーにアンケート調査を行った。10年後の運転,育児,介護,人生選択,健康管理,創作活動,防災,軍事の8分野では,全体として運転・防災・軍事分野など「知的な機械・システム」の導入に社会的合意が必要とされる分野の機械化には積極的な意見が多い。一方,ライフイベントにおける意思決定や健康管理など個人選択に委ねられる分野は「人間が主体で機械を活用する」傾向にあった。回答者の専門や価値観,経験によって意見は多様であり,個別の技術導入場面において機械と人間の関係をいかに創造的に組み替えていくかの議論が重要である。
著者
平本 健二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.799-808, 2015
被引用文献数
1

日本において情報交換の基盤になるのが,文字情報交換の仕組みである。文字情報基盤は,個人の氏名を正確かつ使いやすく実装する仕組みとして政府が整備してきており,フォントや画数などの文字情報等を,誰でも無料で利用できるように提供している。ツールへの実装,自治体への導入も進み始めており,多くの自治体では,従来もっていた外字の同定作業も実施している。国際標準への対応を進めるとともに,単に文字数を増やすのではなく,JISを活用した日常での簡易な活用方法を提案する等,今後の日本の社会の基盤となる仕組みといえる。本稿では,現在の取り組みとその将来展望について解説を行う。
著者
治部 眞里 長部 喜幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.32-42, 2016-04-01 (Released:2016-04-01)
参考文献数
6

2015(平成27)年12月18日に第14回総合科学技術・イノベーション会議にて,「第5期科学技術基本計画」答申案が了承され,その後,2016年1月22日に閣議決定された。科学技術基本計画は,科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画であり,科学技術政策の方向性を定め,予算配分などにも直接影響する重要な意味をもつ。第5期科学技術基本計画においては,主要指標・目標値の設定がその特徴の1つである。本稿では,科学技術基本計画における主要指標について,筆者の一考察を紹介し,併せて,同計画の確度をより向上させるための新たなシステム開発の可能性について述べる。
著者
丸山 高弘
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.554-563, 2011 (Released:2011-01-01)
参考文献数
3

「図書館はICTに疎い」と言われたことをバネとし,ICTに明るく強いライブラリアンを全国の図書館に広げたい。閉塞感の中にある日本の図書館をヤバくする集団として未来に向けて打ち上げられた団体Code4Lib JAPANの設立コンセプト,ビジョン,ミッションそしてアクションを述べるとともに,これからの図書館員に求められるICT素養について言及した。
著者
黒沢 努 水田 寿雄 小賀坂 康志
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.286-292, 2015-07-01 (Released:2015-07-01)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

JSTは前身のJRDC創設以来,50年以上にわたり基礎研究や産業化を通じてイノベーション創出を目指す戦略的研究ファンディング(資金提供)を実施してきた。その結果,数々のノーベル賞受賞者を輩出し,我が国の科学技術の発展に貢献してきた。すでに日本は超高齢社会と人口減少の時代に突入し,科学技術関係予算は大きく伸びる可能性は少なく,限られた科学技術関係予算でグローバル競争を勝ち抜かなくてはならない。JST-FMDBは,将来にわたって必要性の高まるイノベーション戦略策定等を情報面から支援する情報分析基盤を提供するものであり,JSTが研究開発資金を提供した2万件以上のファンディング情報の蓄積と日本最大の研究資金助成事業である科研費の情報を横断的に検索・分析できる仕組みとなっている。本稿では,JST-FMDBの構築プロセスと将来に向けたファンディングにおける情報の役割について述べる。
著者
山谷 知行
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.21-27, 2013-04-01 (Released:2013-04-01)

日本植物生理学会は,1959年(昭和34年)に208名の発起人で設立され,同年に英文誌であるPlant and Cell Physiology(PCP)の第1巻第1号が発行された。本学会は,1954年に設立準備が進められた国際植物生理学連合に対応できる日本の学会として,また理学・農学・薬学など,異分野で植物生理学研究に携わる研究者交流の場を提供することを目的とした。以後,50年以上経た現在では,個人会員数は約2,400名,2011年のインパクトファクターは4.702と,国際的にも認知度が高い植物科学分野の学術雑誌となっている。本学会の現在の目的は設立当初と変わっておらず,会員の研究発表と交流を活性化することと,PCPを刊行し植物生理学分野の学術的成果を世界に発信することである。
著者
渡邊 健 小谷 允志 伊藤 真理子 小根山 美鈴 白川 栄美 山田 敏史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.315-322, 2014-08-01 (Released:2014-08-01)
参考文献数
3

ISO 30300は記録のマネジメントシステム(MSR)の国際標準である。われわれは小規模な勉強会を通じてISO 30300の理解と分析を試みた。すでに記録管理の国際標準として浸透しているISO 15489を参照しながら,両者の違い―実務レベルから戦略レベルへ―が具体的にどのように盛り込まれているのかを検証した。ISO 30300ではMSRの原理原則とともに,ますます複雑化する記録管理を効果的・効率的に実践するために,トップマネジメントが率先してMSRを実行することの重要性が述べられている。日本のビジネス界では,いまだに体系的な記録管理に対する理解が深まらない状況にあり,ISO 30300の公式な邦訳版も存在しない。われわれの勉強会では結果的にISO 30300の全文邦訳も完了することができた。今後JIS化を含め,ISO 30300シリーズの普及にかかわりをもっていきたい。
著者
菊池 誠
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.874-881, 2013-03-01 (Released:2013-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

科学基礎論学会はわが国の指導的な科学者や哲学者によって1954年に設立された数学や心理学,工学を含む広い意味での科学の基礎や哲学について論じる学会であり,1954年から和文誌を,1956年から欧文誌を刊行している。本稿ではまず科学基礎論学会の欧文誌刊行の現状を例に,わが国において人文社会系の研究分野で欧文誌を刊行することの意義と難しさについて論じる。次に,学術誌の標準的な評価基準となっている被引用数と採択率を改善するための方法を紹介し,このような数値的指標によって学術誌を評価することの問題点について論じる。最後に,学術誌と学会の役割の多様性と,それらの協力の重要性について論じる。
著者
林 隆之 山下 泰弘
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.665-679, 2011 (Released:2011-03-01)
参考文献数
7
被引用文献数
2

大学評価の制度化,組織単位の競争的資金の増加,大学の機能別分化など,大学が組織として研究活動の自己分析を行い,戦略を形成していくことが求められる状況が増している。本稿では,まず国立大学評価の方法を概観し,大学における研究活動の自己分析にどのような能力が必要となっているかを説明する。その上で,ビブリオメトリクス手法を用いて,国立大学の法人化以降の日本の大学の状況を生産性や集中度の状況から分析する。さらに,研究分野の多様性を実現している構造や学内での研究重点化の状況を事例的に分析することを通じて,各大学で求められる自己分析の視点を検討する。