著者
高木 和子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.806-817, 2005
被引用文献数
1 1

「機関レポジトリ」のアイデアが現れたのは数年前にすぎないが,その後世界中で多くの機関がレポジトリを設置し始めた。これには,機関レポジトリ用のオープンソースや商用ソフトウエアの開発が大きく寄与している。稼動中の機関レポジトリの成功例としては,マサチューセッツ工科大学DSpace,カリフォルニア大学eScholarship,カリフォルニア工科大学CODA,サウザンプトン大学Sotonなどがある。その他多くの機関レポジトリはコンテンツ数が少なく小規模である。大手出版社がオープンアーカイビングへの制限政策を緩和したことや,政府資金を得た研究成果をレポジトリに登録することを義務付けようとする米国や英国の動き,新しい検索サービスなどは,機関レポジトリ発展への大きなはずみとなるだろう。
著者
小原 満穂
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.881-891, 1992

Vol.33 No9,10,11の「シンクタンク」(1),(2),(3),の続編として,総合研究開発機構が実施したアンケート調査を分析·評価するとともに『シンクタンク年報1990』を用いて,我が国のシンクタンクの現状分析を行い,形態:公益法人,職員:68名,研究者:23名,全収入:約7億円,調査収入:約2億円,主たる研究分野:国土開発·利用および産業·経済,報告書数:25冊,自主研究の割合:15%,報告書の公開割合:12%とする平均的な姿を描いた。さらに研究員50人規模のシンクタンクを設立する場合の条件として,財政面では継続した資金調達が,人材面では優秀な人材の確保が重要であることを指摘した。
著者
桐山 勉
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.286-299, 2009 (Released:2009-08-01)
参考文献数
30
被引用文献数
4 2

最近では高度な特許マップ機能を含む統合システムが出現し始めているが,従来から市販されている特許マップをいかに使い込むかという基本的な考え方と姿勢は極めて重要である。単に聞く読むだけでなく,異業種の実践道場に通って特許マップ作成の三段跳びの実践を習慣的に行い,日常のSDIとWSに結びつけることが必要である。毎年,新たにこの業界に入ってくる新人・転属者に特許マップに関する重要な基礎知識を義務教育的に繰り返し開示することが必要である。切磋琢磨と自己研鑽する土台に気付いてもらうのが良い。
著者
Zhang Yuehong (Helen) Qi Zhiying
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.259-267, 2005
被引用文献数
1

ある国で国際的に優れた評価を受ける科学技術論文が出版されることと,その国の科学技術強国としての地位との間には何らかの関連性があるのだろうか? また,その国の科学出版物の隆盛への関心をどのようにして育て,科学情報の普及をどのようにして強化すべきだろうか? これらの疑問は,政府と科学雑誌編集者の注目を集める必要がある。この疑問に答える一助が,既存のデータの対照から得ることができる。(1)科学出版物の指数関数的成長は世界で過去200年の間,科学と教育の発展と並行してきた。(2)世界の科学技術論文生産は1988年から2001年の間に約40%増加したが,それは主として西ヨーロッパ,日本,新興東アジアの科学技術中心地(韓国,シンガポール,台湾,中国)での成長によって促進されてきた。(3)中国における過去6年間の学術論文生産は,科学技術資本投入と並行して増加した。関連データは,SCI(Science Citation Index)に収録された中国人著者の科学技術論文が1997年から2002年の間に,年平均19%の割合で成長したことを示す。過去6年間(1997年~2002年),中国の科学技術資本投入の対GDP(国内総生産)比は増加しており,平均0.11%の割合で増加した。過去14年間にわたり,中国での科学技術論文生産は約5倍増加したが,科学技術論文生産の世界動向の1人当たり生産規準では,世界平均をはるかに下回ったままである。中国と外国の科学出版物の市場調査と市場需要を通して,また中国のGDPに対する高いR&D投資比率にかんがみて,将来における中国の科学技術定期刊行物への明るい展望を予測し,またその業績を達成するための提言を行う。
著者
新保 史生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.295-310, 2010
被引用文献数
5 1

本稿は,「ライフログ」の定義を試み,その取扱いにあたっての責任の在り方を提言するものである。人間の活動を記録した情報である「ライフログ」は,行動ターゲティング広告など商用目的で利用される機会が増えつつある。しかし,そもそもライフログとはどのような情報を意味するのかについては,漠然としたイメージでしかとらえられていない。また,ライフログを構成する個人識別情報と非個人識別情報の区別も困難である。そこで,両者を区別せずに「ライフログ」の範囲を明確にすることによって,その適正な取扱いにあたっての法的責任の範囲を明確にすることを試みる。技術的・制度的課題,個人情報の取扱いと法的義務,2010年5月に公開された総務省ライフログ研究会による配慮原則,米国の連邦取引委員会や業界団体による行動ターゲティング広告原則など,ライフログの取扱いに関わる検討課題および現在に至るまでの検討状況を概観した上で,過去の私生活の暴露や誤情報の取扱いをめぐる裁判例をもとに,ライフログの取扱いと法的責任について検討する。
著者
野田 弘
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.1062-1072, 1981

昨年9月1日の「防災の日」に,東海地方および関東地方を中心として,2回目の大規模な地震防災訓練が行われた。行政の防災担当機関,報道機関,交通機関,事業所,市民など極めて多くの人達の参加がみられ,一昨年をはるかに上回る規模のものであった。これは,石橋克彦氏(昭和51年)により,「東海地方に,近い将来,大地震が発生しても不思議ではない」という学説が発表されて以来,特に地震防災に関して対策が講じられ始めたものの一環であり,今後もますます大規模かつきめの細かなものになっていくものと考えられる。このような地震対策は,市民,事業所等々の安全を主眼としたものであるが,一方,地震に関する情報と市民の反応との間には,極めて大きなギャップが生じることが懸念される。ここでは,この情報を発する側の真意と市民の受け取り方について,また,この情報を伝達する者の役割について考察する。
著者
遠藤 昌克
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.681-687, 2005
被引用文献数
1

Googleのようなポータルサイトは,インターネット上の情報を検索するうえで欠かせないツールであるが,電子ジャーナルなどの学術情報はその検索対象には含まれておらず,学術情報検索における有用性は低いものと認識されてきた。しかしGoogleは近年,学術出版社や電子ジャーナルアグリゲータなどと提携し,従来まで検索不可能であった学術論文などの情報を,新たに検索対象に取り込む活動を進めている。本稿では,Googleによるデータ収集の仕組みを解説したうえで,その学術情報検索における具体的な事例を紹介し,学術出版業界や学術研究の発展に及ぼされる影響を検証する。
著者
大久保 哲也
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.83-92, 1979

1978年9月,社団法人行政情報システム研究所の「第10回海外行政ADP視察団」の視察先の1つ,The Information Bank社の活動状況について紹介する。同社は元The New York Times社の1部門であったが,1975年10月同新聞社から独立し,その子会社として新たに発足した。同新聞社の1部門時代の状況は,以前本紙にも何回か紹介されている。そこで本稿では同社の現状を中心に,組織,データ・ベース,情報サービスと利用状況,新料金制度と販売政策などを紹介し,同社の変化・発展の足跡をみる。
著者
武藤 晃
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.461, 2001 (Released:2001-10-01)
参考文献数
11

企業は効率優先型の経営によって一時的に回復をみせたが,将来への展望は依然として開けない時代において,IT化の進展に伴い,社会は急速に知識集約型へ移行しつつある。企業は,知識の創造と活用が不可欠であるとの認識から,知的資産への関心がいやおうなしに高まってきた。知的所有権(Intellectual Property=IP)は知的資産の中核を形成するものであり,この知的所有権の価値がプロパテント政策によって一層高まろうとしている。「ポートフォリオ」の語は2つの意味を持っている。古典的な「プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント」(PPM)で代表される分析手法と,資産がどの程度の価値があるかを示す指標,あるいは,単に資産群という意味合いである。知的所有権の価値を表す指標または知的資産の評価という観点におけるIPポートフォリオの研究は,日本ではまだ始まったばかりである。しかし,「プロパテント政策」は,企業の知的資産への急速な関心と合致し,IPポートフォリオは企業経営戦略の重要な柱になってきた。IPポートフォリオの周辺の状況と,IPポートフォリオ・マネージメントの基礎的な活動をみる。