著者
青田 泰明
出版者
日本教育社会学会
雑誌
日本教育社会学会大会発表要旨集録
巻号頁・発行日
no.56, pp.156-157, 2004-09-11

本稿では、近年の不登校研究の潮流において周縁へと追いやられた「怠学」「無気力」という不登校形態に再び目を向け、それを文化的再生産の視点から考察していく。「学校要因」への偏重傾向が強まる中、今一度「家庭要因」の再検討を試みることが、本研究における主たる目的の一つである。その際、具体的な分析対象となるのは、2004年度7月から継続的に実施している、不登校経験と生育環境に関する聞き取り調査に基づく12名の「語り」である。12名はいわゆる「中間層」の家庭に育った若者であるが、そこでは、定位家族の文化資本、特に母方文化(母親ハビトゥス)が、父親の「子育てに対する非協力的態度」という現実を背景に持ちつつ、子どもの不登校の選択に大きく関わっており、また正規学歴ルートヘの復帰の有無にも強い影響を及ぼしていた。膨張した中間階層内に隠蔽された文化資本の変異(またそれによる格差)と不登校現象との強い関連が、そこには存在していると筆者は考えている。