著者
中嶋 貞雄
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.699-705, 1996-10-05
著者
冨田 誠
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.927-933, 1991-11-05
被引用文献数
7

乱れた媒質中において電子波が持つ量子的コヒーレンスは, 電子のアンダーソン局在やコンダクタンス揺らぎを引き起こす. 最近, この電子の振舞に厳密に対応のつく現象が光の領域で明らかにされつつある. 光のアンダーソン局在を実現させる可能性が追求されるとともに, スペックルとして知られている光の揺らぎと電子系でのコンダクタンス揺らぎとの間の高い類似性も認識される様になってきた. 超短時間パルスの発生など光独自の実験手法を生かしたアプローチは, 電子を初めとするランダム系での波動の輸送現象の解明にむけて新しい展開を促すかもしれない.
著者
前田 健吾
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.94-97, 2010-02-05
参考文献数
14

AdS/CFT対応は,高速金原子核同土の衝突実験の結果を理論的に説明するなど,強結合領域のゲージ理論の理解に威力を発揮する.近年は,強相関効果が重要となる高温超伝導体などの強相関電子系の理解を目指して,AdS/CFT対応が物性理論の分野にも応用されつつある.最近になって,超伝導体の重力モデルがAdS/CFT対応を用いて構築されたので,それを紹介するとともに,このモデルの問題点などを議論する.
著者
中村 勝弘 馬 駿
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.233-242, 2001-04-05
参考文献数
24

ケルヴィン卿の歴史的講演に初登場した古典ビリアードから,ナノテクノロジーにより出現した量子ビリアードの最前線までを簡単にレヴューする.考察の主な対象は,ビリアード壁との衝突を繰り返す電子のカオス運動である.ニュートンカ学に従う粒子と異なり,電子は干渉,回折などの量子効果を示す.その結果現れてくるカオスの量子論的兆候を量子カオスと呼ぶ.ここでは,電子のドブロイ波長がビリアードの特徴的長さ(サブミクロンスケール)より十分小さい場合,つまり,半古典領域の電子の量子カオスを取り上げる.本稿では非線形動力学,統計力学との関係で将来性のある問題(軌道分岐,周期倍加現象,アーノルド拡散とそれらの半古典理論)をわかりやすく解説する.最後に,量子カオスの将来(未来?)に言及する.
著者
石原 明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.863-866, 1995-11-05
参考文献数
20
著者
川合 葉子 鉄尾 実与資 岡本 正志 永平 幸雄
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.122-125, 2000-02-05

大学や研究機関の移転や改築に伴って,古い物理学実験機器が数多く出てきて廃棄処分になることも少なくない.そういう機器の中に,近代日本の物理学史,物理教育史の貴重な資料が含まれていることを最初に明らかにしたのが,京都大学に保存されている第三高等学校由来の物理学実験機器の調査・研究である.この機器群は数が多いだけでなく,当時の輸入教科書もよく残されており,購入台帳や事務関係の文書も揃っているので,機器の史料的価値の研究を可能にしている.以下に具体例を挙げながら,その内容を紹介する.
著者
太田 信義
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.616-623, 2005-08-05

標準的な宇宙模型によれば, ビッグバン後の宇宙初期にはインフレーションと呼ばれる大きな宇宙膨張の時期があったと考えられている.この振舞は一般相対論と素粒子の理論を用いて説明されるべきものと考えられるが, 超弦理論あるいはその現代版であるM理論ではそのような振舞は許されないという禁止定理がある.本稿では, インフレーションの概略をまとめた後, この禁止定理はどのようなものかを説明し, それを乗り越えて最近進展したインフレーション宇宙の現状について解説したい.
著者
南 不二雄 井上 久遠
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.455-462, 1995-06-05

入射光の2倍のエネルギーが物質の励起エネルギーに共鳴(2光子共鳴)した際に,最低次の非線形光学過程である光第2高調波発生(SHG)現象は顕著な増大効果を示す.特に,非共鳴なSHGが発生しない偏光配置(禁制配置)では,SHGの共鳴増大効果がより顕著に観測できる.ここでは,半導体中でのSHG共鳴効果を偏光禁制配置で調べた例を解説し,この現象が半導体を調べる新しい,優れた分光方法を与えてくれることを示す.
著者
丸 信人
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.545-548, 2010-07-05

小林・益川両氏によって素粒子の標準模型における「CP対称性の破れ」の機構が提案され実験でも検証されたが,現在の物質・反物質の非対称性を十分に説明できない.本稿では,高次元理論に基づいた新しいCP対称性の破れの機構について最近の研究成果を解説する.
著者
坂口 英継
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.733-736, 2005-09-05
被引用文献数
1

心室細動と呼ばれる不整脈は心臓突然死の主因になっており, その発生メカニズムの解明, および細動を除去する有効な除細動法の開発が急務となっている.この高頻度で不規則な振動は, 心室内を旋回するスパイラル波動が複雑に分裂して生じると考えられている.非線形物理学の立場からスパイラル波動の不安定化のメカニズムおよびスパイラルカオスを除去する方法を考察する.
著者
大出 義仁
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.892-898, 1996-12-05

気体の圧力の下限は零であるが, 液体ではその圧力は負となりうる. 液体分子が分子間力の及ぶ距離で運動しており, 分子間相互作用ポテンシャルに引力部分があるからである. 負圧下の液体は熱力学的には準安定で容易に気相を核生成するため, その'引っ張り強さ'以外の物性はこれまで殆ど測定されていない. そこで, 熱力学的な負圧発生法であるBerthelot法を使って高負圧発生技術の可能性を調べた. 容器壁との界面でおきる気相の核生成確率を低下させるよう, 予め脱ガスしておいた金属容器に抜気した液体を密封し, 多数回温度サイクルを施すことにより, 水および有機物について-20MPaを発生させた. 気相の核生成理論から予測されるそれぞれの引っ張り強さの約1/7および1/2を越す負圧である. 容器表面の微細な孔状欠陥に保持されていたガスが負圧により液中に抜き出されるとき気相の核生成が起きるが, これらの表面欠陥への容器材内部からの不純物ガス供給率がこのレベルの負圧を制限していることが解ってきた. さらに高負圧が液体に発生維持できれば, これまで見逃されてきた極端環境となりうる.