著者
黒川 信重
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.696-699, 1998-09-05

数学における基本的で重要な関数はRiemannゼータ関数である. Riemann予想はRiemannゼータ関数の本質的零点の実部がすべて1/2であるという, 1859年に提出された予想であり, 現代数学の最大の難問と言われている. Riemann予想を解こうとするさまざまな試みから, ゼータ関数論をはじめとする数学のたくさんの分野が成長してきた. 懸案だったFermat予想が最近350年ぶりに解かれたのもゼータ関数論の一応用である. 物理学とRiemannゼータ関数との関連は, 場の量子論, 超弦理論, Casimir効果, カオスなど多様な面から深く考察されてきた. 長年にわたる研究の結果, Riemann予想解決の鍵は量子空間にありそうなことがわかりつつある. これは現状の概観である.
著者
武藤 一雄
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.589-599, 1998-08-05

ニュートリノの放出を伴わない二重ベータ崩壊は, ニュートリノの基本的性質を解明し, 電弱相互作用の標準模型の枠を超えた新しい物理への道を開く有望な過程として期待されている. ここでは二重ベータ崩壊の二つのモードとその意義, 遷移機構, 崩壊寿命とニュートリノの質量に対する制限の現状について, また, 原子核構造の視点から原子核のスピン・アイソスピン相関と関連した話題について解説する.

1 0 0 0 多忙と科学

著者
川村 肇
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.10, no.7, pp.249-250, 1955-07-05
著者
徳島 高 原田 慈久 辛 埴
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.852-857, 2008-11-05

液体,溶液中の溶質や溶媒,水分を含んだ生体由来試料の価電子状態は,その化学反応や構造を考える上で極めて重要であるにもかかわらず,実験的な研究がほとんど進んでいない.ここで紹介する放射光励起による軟X線発光分光法は,価電子状態を元素選択的に観測することができる手法であり,その長い検出長を活かすことで,液体,溶液試料などにも適用可能である.本解説では,大型放射光施設SPring-8の軟X線ビームラインBL17SUで展開されている液体や溶液の電子状態の軟X線発光分光法を用いた研究について,実験装置と最近の研究例を紹介する.
著者
関本 謙
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.791-796, 2008-10-05

ミクロの力学とマクロの熱力学の中間にはさまざまな時空尺度の現象がある.それらは決定的には扱えないゆらぎを伴っており力学的な側面と熱力学的な側面をあわせもつ.端的には熱がランダムな運動としてみえる.熱力学的な側面に関しては線形応答理論・搖動散逸定理がゆらぎの統計性を平均的応答に関連づけたが,力学的な立場で個々のゆらぎ過程を系のエネルギー収支に関連づける枠組がゆらぎのエネルギー論である.本解説ではその出発点となる考えを説明した後で,それから導かれるゆらぐ世界特有の現象-熱力学構造,熱の移送,準静的な操作の限界,熱の局所性と移動など-について述べる.最後に今後の展望を述べる.
著者
内田 豊
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.35, no.6, pp.491-499, 1980-06-05

日食の時などに真珠色に太陽をとり巻いて輝くコロナが, 百万度という日常の感覚では想像も出来ない高温の稀薄な太陽外層大気である事は今では広く知られている. 最近のスペースからのX線等による観測は, このコロナ, およびその中で起る太陽面爆発についても多くの新しい知見をもたらした. これらは従来定説となっていたコロナ加熱や太陽面爆発の理論では説明のつかない多くの新しい点を示して, 太陽物理学に衝撃を与えた. また, 太陽以外の星についても高温のコロナが存在する事がX線観測で続々と確認され始めたが, これらのコロナを持つ事が判った星も, 従来の理論の枠組の中ではコロナを持つ筈のない種類の星であり, 太陽コロナおよびその中の爆発現象から手掛りを得て説明され始めたかに見えていた天体でのプラズマ加熱(コロナに見られる定常加熱および爆発現象に伴う急激な加熱)についての従来の考えは大きく考え直すことが要求されるに至った. 以下ではこのあたりの事情と, 新しい観測事実によって指し示された今後の方向について述べてみたい.
著者
西成 活裕
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.12-19, 2009-01-05

渋滞するのは車だけではない.人も蟻も渋滞するし,インターネットでは通信の渋滞がある.そして我々の体内ではタンパク質の輸送の渋滞が重大な疾患を引き起こす.こうした様々な分野での渋滞を横断的に研究しようというのが渋滞学で,数理科学を基盤とした新しい社会科学ともいえる.そこでは人間や生物など,意思やルールで自律的に動く粒子の非平衡多体系を考え,その集団現象として渋滞を取り扱う.また理学的な研究だけでなく,工学的な応用から実用化までも視野に入れている.しかしこのような理工学融合研究を遂行していくためには様々な課題もある.
著者
河野 公俊
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.860-863, 1991-10-05
著者
大島 隆義
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.667-668, 1996-09-05
著者
大野 公男
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.911-912, 1993-11-05
著者
岡本 拓司
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.419-420, 2002-06-05
被引用文献数
2
著者
村田 佳樹 西岡 辰磨
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.17-21, 2010-01-05

最近Kerr/CFT対応と呼ばれるゼロ温度4次元回転ブラックホールと共形場理論の間の双対性が提唱された.この対応を用いることで我々の宇宙に存在すると思われる回転ブラックホールのエントロピーが共形場理論の微視的状態数として理解できる.本稿ではこのKerr/CFT対応を解説した後,より一般のゼロ温度ブラックホールに対しても同様に対応する共形場理論が存在するという最近の発展を紹介する.