著者
杉本 大一郎 佐藤 文隆 中野 武宣
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.433-436, 1983-06-05
被引用文献数
1
著者
田中 肇 栗田 玲
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.461-465, 2005-06-05
被引用文献数
1

液体は, 乱雑かつ一様な粒子配列をもつ, 気体以外では唯一の物質の熱力学安定相であると考えられてきた.最近この常識に反し, 単一原子または分子種からなる物質に, 2つ以上の液体状態が存在することを示唆する実験結果が報告されている.このような液体状態間の1次相転移は液体・液体相転移と呼ばれる.ここでは, この興味深い現象についての最新情報を紹介するとともに, ガラス転移現象, 水の熱力学異常など液体における他の未解明現象との関係についても議論する.
著者
小山 信也
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.436-443, 2004-07-05

数論,ゼータ関数論と量子カオス,ランダム行列理論の関わりについて概説する.前半部では量子カオスが数論的であるという意味,そして数論におけるスペクトルの重要性とその研究の方法について概説する.後半部では量子カオスの主要テーマである量子エルゴード性を解説し,それらが数論的多様体に関して解かれてきた歴史を振り返るとともに,最近の結果を報告する.また,ランダム行列理論と数論の関わりを,その端緒から振り返り,末節では最近の結果について述べる.
著者
三輪 哲二
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.798-802, 1981-11-05

2次元イジング模型の2点相関函数は, サイン・ゴルドン(sine-Gordon)方程式の特殊解となる. この特殊解はパンルヴェ超越函数と呼ばれる新種の特殊函数である. パンルヴェ超越函数とは何か. 本稿は, クライン・ゴルドン(Klein-Gordon)方程式の分岐した解を, 場の量子論を使って構成するという点から, これを解説したい.
著者
今井 功
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.i-ii, 1969-06-05
著者
森田 浩介
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.698-707, 2005-09-05
被引用文献数
2

我々は, 独立行政法人理化学研究所の重イオン線形加速器からの^<70>Znビームを^<209>Bi標的に照射し, ビーム核と標的核との完全融合反応によって合成される, 原子番号113, 原子質量数278の原子核^<278>113の崩壊を観測することに成功しました.ビームやその他実験にとってバックグラウンドとなる粒子から分離された目的の核は, 半導体検出器に打ち込まれ, そこで4回の連続したα崩壊をした後, 自発核分裂を起こして崩壊しました.4回目のα崩壊の崩壊エネルギーと崩壊時間, それに引き続いて起こった自発核分裂の現象と崩壊時間は, 既知の崩壊連鎖である^<266>Bh(原子番号107)→^<262>Db(原子番号105)のものと矛盾がなく, これらの崩壊に先立って起こった3回の連続したα崩壊は^<278>113→^<274>Rg(原子番号111)→^<270>Mt(原子番号109)→という, これまでに報告されていない新同位体の崩壊であると結論づけました.観測された原子数はわずか1ですが, 保守的な言い方をすれば, 今回合成された^<278>113は, 実験的に原子番号と質量数を決定されたものとしては, 原子番号, 原子質量数ともに最大のものであり, 新元素の発見の可能性があると考えています.
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.773-774, 2002-10-05
著者
細谷 治夫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, 1996-04-05
被引用文献数
2
著者
今井 功
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.787-794, 1996-11-05
被引用文献数
2
著者
山崎 正勝
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.584-590, 2001-08-05
参考文献数
19

日本は第二次世界大戦期に核兵器を開発しようとした国の一つだったが,その正確な実態は,これまでほとんど知られてこなかった.計画に参加した物理学者たちの研究資料を分析することで,最近,彼らが行った研究の内容が次第に明らかになりつつある.ここでは,特に理化学研究所の人々が構想していた「ウラニウム爆弾」が,原子炉暴走型の爆弾構造であったことが示されている.
著者
小澤 正直
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.349-353, 2009-05-05

伏見先生は,"studies on the Foundation of Quantum Mechanics.I"(1937年)と題された論文において,現在,オーソモジュラー法則と呼ばれている,量子論理で普遍的に成立する基本的論理法則を発見された.これは,1960年代になって,当初,フォン・ノイマンによって基本的論理法則として提唱され,研究が進められたモジュラー法則に取って代わり,現在に至るまで量子論理研究の中心課題とされている.本稿では,バーコフとフォン・ノイマンが発見した量子論理の意義,モジュラー法則からオーソモジュラー法則への転換の背景,及び,この分野の発展と現状を概説する.
著者
綿引 芳之
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.251-255, 2010-04-05

最近提案された因果力学的単体分割を紹介する.これは従来の力学的単体分割を改良した新しい量子重力理論で,従来の力学的単体分割で曖昧に扱われていた因果性の問題を真面目に受け止め,過去と未来の定義可能な時空,つまり,因果性を持つ時空だけを扱った点に大きな特徴がある.特に,宇宙の分離と融合を認めた2次元時空の因果力学的単体分割は,弦の場の理論や行列模型によって表現することができ,それゆえ,数学的解析が可能な理論となる.
著者
竹内 外史
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, 1996-03-05
著者
宮原 ひろ子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.340-346, 2015-05-05

2008年12月,太陽活動が約200年ぶりとも言われた太陽活動の低下を見せた.通常11年の周期で増減する太陽活動のリズムが乱れ,太陽表面での磁場活動や太陽総放射量が観測史上最低のレベルに達した.2009年1月に開始した第24太陽活動周期は2013年に極大を迎えたが,太陽表面の磁場活動の指標となる太陽黒点の数は,2001年の極大期の半分程度に低下した.太陽活動は今後どうなるのだろうか.17世紀の半ばから70年間にわたって発生した太陽活動の異常低下(マウンダー極小期)は再来するのだろうか.人工衛星による太陽観測と,樹木や氷床コアなどを使った長期的な太陽活動変動の復元の両面から研究が進められている.また,もしマウンダー極小期が再来するとすれば地球環境にどのような影響が出るのかも,社会にとって重要な問題である.こちらについては,気象観測と古気候学的な手法による研究から検証が進められている.太陽活動が地球に影響する経路はいくつか考えられる.日射量変動の影響,太陽紫外線の成層圏への影響,太陽宇宙線の中間圏への影響,そして銀河宇宙線の影響である.銀河宇宙線が気候に影響するプロセスは未解明な点が多いが,大気成分のイオン化を通じて雲活動に作用していると考えられている.1997年に銀河宇宙線と低層雲の被覆率に相関が見られるという驚くべき発表がなされて以来,その相関の検証や,チャンバー実験による物理プロセスの研究が進められている.地球に飛来する銀河宇宙線のフラックスは,宇宙線をシールドする太陽圏磁場や地磁気の強度などによって決まる.太陽圏とは,太陽表面から吹き出すプラズマと磁場の風(太陽風)が到達する領域のことである.太陽風は,太陽から約80天文単位(AU)のところで星間物質との相互作用により亜音速に減速し,最終的には太陽から120AUあたりにまで達していると考えられている.また,太陽圏の周辺の宇宙環境が変わっても,地球に飛来する宇宙線量は変化する.銀河宇宙線量の変動は本当に気候変動に影響するのだろうか.それについて1つの手がかりを与えているのは上述のマウンダー極小期である.太陽黒点が70年間にわたって消失している間,太陽圏環境が変化し,宇宙線フラックスが特異なパターンで変動していたことが明らかになったのである.その頃,地球は小氷期と呼ばれる寒冷化を経験しているが,実はその間,地球の気候は特徴的なパターンで変動を続けた.最近の研究で,その変動パターンが宇宙線の変動によって説明可能であることが示された.太陽圏を満たす磁場の大規模構造の変動によって宇宙線の変動パターンが決まり,そしてそれが気候変動を駆動する一要因になっている可能性が高いことが示されたのである.そのほか,地球史上のイベントと宇宙環境の変動に,強い相関関係があることも明らかになりつつある.地磁気強度と気候にも相関関係が見つかっている.宇宙線が雲活動に影響するプロセスは研究途上であるが,宇宙線は地球の変動に重大な役割を果たしている可能性が高い.地球は,大気,海洋,生物圏などのサブシステムから成る多圏複合システムで,それ自身複雑な内部振動を持つが,その気候システムを,太陽圏システムというさらに大きなくくりでとらえ直す必要性があることを示唆している.さらに言えば,太陽圏周辺の磁場環境あるいは放射線環境を含めた銀河系システムというさらに大きな視点での議論が必要であることも意味している.地球,太陽,太陽圏,宇宙線の物理を有機的に結び付け,地球史上の様々な未解明の変動を宇宙という視点でとらえ直すことで,その原因を究明することを目指しているのが「宇宙気候学」である.