著者
北村 邦夫
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.1223-1229, 1984

奥多野地域(群馬県多野郡万場町,中里村,上野村,昭和55年国勢調査による人口7,778人)は人口減少率(55/50年)が9.2%であり,県下でも過疎化の著しい地域である.また人口の老齢化(65歳以上の人口比17.2%),労働条件をはじめとする経済的,社会的悪条件は,「過疎化」を更に進展させつつあり,絶対的な医療不足の申で過疎地域住民の健康破綻は予想以上に深刻である.本研究は,このような過疎地における住民の分娩場所をさぐる目的で行われ,20年聞の出生票2,384件と妊産婦死亡と乳児死亡例の死亡票が分析検討され以下の結果,考察を得た.1)施設内外分娩の逆転は,わが国より8年程遅れ昭和42年に起った.最近では99%近くが施設内分娩を行っている.それに伴って住居地から分娩場所までの距離が増加した.2)施設内分娩は昭和44年頃までは診療所が,それ以降は病院が多い.施設の選択にあたっては受け入れ体制が整えば近隣を選ぶ可能性が高い.3)経産回数が多い程,母の年齢が高い程,施設内分娩の割合が減ずる傾向が認められる.4)過疎地域における妊産婦死亡や乳児死亡の頻度は高いが,施設内分娩の増加に伴う医学的管理の向上はこれらの減少に大きく貢献したと思われる.
著者
齋藤 良治 橋本 哲司
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.N83-N86, 1997-04-01
著者
大浜 紘三
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1687-1695, 1978-12-01
被引用文献数
1

ヒト胎生初期における染色体異常の頻度および発生に関する各種要因,ならびに性比を検討するため,妊娠12週以前の人工流産児の染色体を検索し以下の結果を得た. 1. 1,224例の培養を行ない1,087例の染色体分析が可能で,その中53例(4.9%)に染色体異常が認められた.染色体異常は,モノソミーX5例(45,X,t(3q+; 6q-)の1例を含む),トリソミー39例,複合異数体4例,3倍体2例,4倍体2例,モザイク1例で,トリソミーの内訳はトリソミー16が8例,トリソミー22が7例,トリソミー21が6例,トリソミー18が3例,トリソミー2, 5, 14各2例,トリソミー4, 7, 10, 11, X, 15, 17, C, D各1例であり,モザイクの1例は46/47, +22であつた. 2. 染色体異常の発生要因検討により,高年婦人よりの例に染色体異常特に配偶子形成時の染色体不分離に起因するトリソミー,複合異数体の頻度が高いことが認められたが,父親年令との関連については否定的であつた.また妊娠歴,月経状況,結婚状況および妊娠前後の薬物服用の分析では,特に染色体異常発生の要因となるものは認めず,原爆被曝についても明確な結論は出し得なかつた.ただ妊娠中に極く少量ではあるが不正性器出血を認めた10例のうち4例に染色体異常が見い出された. 3. モノソミーX,3倍体を除く1,079例の性比は102.1(男545例,女534例)で,既にこの時点で僅かながら男優位になつていることが認められたが,8週0日以前の例では逆に女児がやや多く(男324,女331,性比97.9),また妊娠順位の検討では初回妊娠例に女児が多かつた(男62,女69,性比89.9).更に染色体異常例だけについて見た場合も女児が多い(男20,女25)結果であつたが有意差は認められなかつた.(χ^2=0.69, p<0.1)
著者
膳所 美光
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.107-120, 1951

1. In the sera of four guinea pigs out of seventeen immunized against rhesus blood, a conspicuous amount of Rh antibodv was detected. In three of the guinea pigs' the anti-rhesus agglutinin remained unabsorbed and showed apparent difference of agglutination with either Rh-positive or Rh-negative red cells. 2. To obtain anti-Rh sera, 2 cc immunizing injection of a 10% suspension of washed rhesus blood cells was given at one time. It was found to be sufficient. 3. The distribution of Rh sera system blood type in Fukuoka district is as follows: Rh-positive ・・・98.34%, Rh-negative・・・1.66% 4. In a mother's serum among five cases of icferus neonatorum gravis, various irregular antibodies were detected, namely univalent as well as bivalent Rh antibody, immune isoagglutinin of unidentified blood type and univalent anti-A and anti-B agglutinin. These antibodies agglutinated the blood cells of a spouse or sick children, either by agglutiantion or conglutination test at 37℃. 5. Erythroblastosis is caused by homo-immunization arising from the blood type incompatibility (especially Rh incompatibility) between mother and child, resulting in the transmission of the immune isoagglutinin in maternal serum into fetal one through the placental circulation. 6. Erythroblastosis may be caused not only by Rh incompatibility, but also by ABO incompatibility between mother and child.
著者
井澤 秀明 西澤 隆司 五十嵐 正雄
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.201-206, 1981

群馬県内の15の病医院を対象として昭和48年から52年までのRh_0(D)-型妊婦の抗Rh_0(D)抗体の産生率と児の予後とを追跡調査した.1.調査対象となつた15の病医院での5年間の出生児総数は55, 038名で, 県内全出生児数の36.4%に当る. この聞に来院したRh_0(D)一型妊婦は435名で, 血清中に抗Rh_0(D)抗体が検出されたのは20名(4.6%)であるが, 輸血歴のある3名を除くと17名(3.9%)であつた.2.輸血歴のたい17名の中で初回の妊娠時から検査Lていて抗体産生の時期を明らかにし得た者は6名で, 初回の妊娠3名(15%), 2回目の妊娠2名, 3回目の妊娠1名に, 妊娠中に初めて抗Rh_0(D)抗体の産生を認めた.3.妊娠経過中の抗体価を比較的頻回に検査した者の抗体価の変動を追跡し得た症例では, 妊娠20週以後に上昇し始め, 特に妊娠30週乃至40週の間に急激な上昇をみた症例が多く, 抗体価の上昇が妊娠前半に急激に上昇した症例はなかつた.又, 初妊婦よりも経妊婦又は経産婦の方が抗体偲の著明な上昇を認めた症例が目立つていた.更に輸血歴の既往が有つても妊娠経過中全く抗体価の変動をみない症例もあつた.4.妊娠中抗体の産生が認められなかつた児は総て無治療で退院しているが, 母血清中の抗体価が256倍未.満の児9例のうち3名は光線療法を受け, 6例は無治療であつた. 抗体価が256倍以上に上昇した11例では交換輸血を受けたのは9例で, 無治療例, 光線療法例各1例であつた.早産で死亡した1例を除くと総ての成熟児は後遺症たく生存している.今回の調査対象となつた症例のうちには, 高ビリルビン血症による胎内死亡や核黄痩による死亡を繰り返している例はなかつた.
著者
水田 正能
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.965-971, 1987
被引用文献数
1

産婦を無作為に封筒法により、仰臥位分娩群と座位分娩群にわけ、両群間で胎児心拍数図の定量的分析、Apgarスコア、臍帯動脈血ガス分析値カテコールアミン値、出生5分後の新生児心拍数などを比較検討して、胎児環境への母体体位の影響について検討した。対象は妊娠36~41週の産婦148例で、仰臥位分娩群81例(初産婦35例、経産婦46例)、座位分娩群は67例(初産婦25例、経産婦42例)であった。胎児心拍数と陣痛は分娩監視装置で、外測法により得た信号を自動診断補助装置に入力し解析した。臍帯動脈血ガス分析には全自動Radiometer ABL-2を使用した。臍帯動脈血カテコールアミン値は無作為に25例を選び、高速液体クロマトグラフィーによるTHI法を用いて計測した。その結果は次のとおりであった。 1) 分娩時間に差はなかったが、吸引分娩は座位分娩群に低率であった。低Apgarスコアの新生児仮死は、仰臥位初産婦で3例(8.7%)をみ、座位初産婦群では1例もなかった。 2) 臍帯動脈血ガス分析値は初産婦では差はなかった。経産婦では仰臥位分娩群が有意に好結果であった。臍帯動脈血カテコールアミン値は座位分娩群に低い傾向がみられた。出生5分後の新生児心拍数は、仰臥位分娩群に180以上の頻脈が多くみられた。 3) 分娩前2時間の胎児仮死指数最高点3点以上は、仰臥位初産婦群が4例(11.4%)、仰臥位経産婦が3例(6.5%)に対し、座位初産婦群は1例もなく、経産婦群も1例(2.4%)であった。胎児心拍数スコアは分娩各経過時間で、座位分娩群に低い傾向をみた。胎児心拍数基線、心拍数細変動はいずれも座位分娩群に良い傾向がみられた。総合的に座位分娩に良い胎児の環境としての傾向がみられたが、各所見の優位な統計学的有意差はみられなかった。
著者
瓦林,達比古
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, 1995-06-01

妊婦のパーソナリティタイプとつわり症状の重症度との関係を解析することを本研究の目的とした. パーソナリティ分析には妊娠初期および中期にキャッテル・パーソナリティテスト (西園修正版)を用い, つわりは悪心や嘔吐の持続期間と程度により強い群 (35人), 弱い群 (41人), 無い群 (19人)の3群に分別した. パーソナリティタイプは循環気質である Aから分裂気質である Eまで5型に分類したが, つわりの程度との間には有意な相関はみられなかった. しかしながら, その中の構成因子である対人態度, 特に社交性および支配性に有意差が認められた. すなわち, 社交的な態度を好む傾向があるにもかかわらず, 人からの反対に対抗的になり, 願望通りことが運ばないと自信を失いやすく, 心から真に人に気持ちを預けて欲求不満を癒すことができにくい妊婦は, 内心の葛藤を身体言語として表現した強いつわり症状を呈することが判明した. したがって, そのような妊婦に対しては, つわりの症状を妊娠に伴う当然の身体症状でしかもつわりの出やすい体質であるというような説明をするのではなく, このようなパーソナリティの不統合性に対するカウンセリングの必要性も示唆された.
著者
福井 敬介 吉本 勲 黒田 勇二 北川 博之 伊藤 昌春
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.73-76, 1999
参考文献数
3

We reported a case of successful pregnancy after laparoscopic tubal anastomosis for reversal of sterilization. The operating procedure consisted of 3 main steps. Firstly, adhesiolysis surrounding the fallopian tube was performed. Secondly, normal mucosa of the tube was identified due to discharge of Methylene Blue, and the occluded portion was removed with scissors. Finally, end to end anastomosis of the mucosa was performed by 4 stitch suturing with 5-0 vicryl, placed at the 6, 9, 12 and 3 O'clock sites. The patient became pregnant 6 months after the laparoscopic operation, but was diagnosed with a left tubal pregnancy.
著者
斎藤 克 庄田 隆 谷 昭博 吉原 一 天野 完 島田 信宏 西島 正博
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.474-478, 1999
参考文献数
16
被引用文献数
2

The purpose of this study was to compare the efficacy of metreurynter with laminaria tents as a pre-induction priming method for unripe cervix. Fifty-six nulliparous women with a Bishop score of ≦ 4 were enrolled and received either metod in the evening before elective induction. All cases were singleton and vertex pressentation. The cervical ripening effect was more prominent in the metreurynter group. And also the incidence of induction of delivery time of > 12h and the Cesarean section rate were significantly lower in the metreurynter group than in the laminaria group.