著者
Koishi Takiko
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.351-358, 1983-03-01

胎芽,胎児の放射線感受性は母体に比し高度で,出生前の被曝は異常個体発生の原因となり得ることは,よく知られている.しかし発生の根源へさかのぼって,受精前の生殖細胞への放射線の影響は,まだ明確にされていない.そこで今回は,特に未知である排卵前の時期別X線照射による未受精卵の放射線感受性を成熟雌チャイニーズ・ハムスターを用い究明した.採卵はすべて発情期に行ない,採卵よりみて5周期前より12時間前の間を4時期に細分し,X-ray 200Rを照射し,卵子第2成熟分裂時の染色体分析をホルモン剤などによる排卵誘発の影響なしに行ない,非照射群である対照群と比較した.照射より採卵までの時間が短くなる程,放射線感受性は増加した.予定排卵の5時間前(第1成熟分裂中期)に照射した群での染色体異常卵子出現頻度は42.1%と高率であった.採卵より2-4日前照射群,1周期前照射群共に対照群に比し,有意に高い異常卵子出現をみたが,5周期前照射群では有意差がなかった.更にX線照射による数的異常,構造異常の頻度についても検討したところ,異常卵子出現頻度は,数的異常より構造異常において,時期による差が著しく認められた.以上の結果より,排卵期及びより以前の時期においても,放射線被曝による危険性があることを示した.
著者
飯田 和質 平井 敏雄 富永 敏朗 津田 利雄 松田 春悦 山田 良 土田 寿 竹内 桂一 大月 恭範 大森 正弘
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.2171-2177, 1986-12-01
被引用文献数
1

概要 福井県の車集検は昭和47年より開始され、昭和49年に福井県健康管理協会が発足して全県下を一本化して実施して現在に至つている。昭和49年から昭和58年までの10年間の成績について若干の知見を得たので報告する。 福井県ぱ人口約81万人て30歳の対象婦人は昭和58年て249、392人である。受診率は昭和49年の39%から58年の62%と増加しているがまた低い。要精検率ぱ0 77〜2 02%てあり、精検受診率は86 3%〜97 7%で比較的良好な成績である。痛検出率ぱ0 08%〜03%であり、上庄内痛の検出率ぱあまり変らないが浸潤痛ぱ年毎に低下している。異型上皮は年毎に増加し、49年の0 11%に対し57年は0 35%であつた。異型上皮、上庄内痛、浸潤痛の比は49年〜53年の前半は13 17 10であり、54年〜58年の5年間ぱ61 25 10となつている。上皮内痛およひ浸潤癌発見まての受診回数てぱ子宮頭癌Ib期以上でぱ全員が初回受診時に発見されている。頭痛Ia期てぱ31人中3人が2回目て、28人ぱ初回に発見され、上庄内痛146人中126人か初回、14人が2回目、6人が3回目以上であつだ。細胞診成績てぱclass ? の72例でぱ異型上皮87%、上皮内癌56 9%、浸潤痛12 1%てfalse posltlveは22 2%てあり、class ?の51例でぱ異型上皮19%、上皮内癌45 1%、浸潤痛47 1%でfalse posltlve ぱ58%にみられた。福井県のCAIを診療検診と車検診の合計で計算し、昭和57年ぱCAI 152、 58年ぱCAI 148、 59年ぱCAI 177であつた。福井県子宮癌検診も今後は日母方式の施設検診を加えて検診者の増加をはがり子宮癌死亡0を目さして努力している。
著者
小畑 孝四郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.890-902, 2003-08-01
被引用文献数
11

卵巣がんにおける病理組織学的な検討で,卵巣子宮内服症の合併頻度が卵巣明細胞腺癌や卵巣類内膜腺癌で高率であることから,卵巣子宮内膜症がこれらの癌の発生母地となっている可能性が注目されている.そこで,卵巣子宮内膜症と卵巣癌との関連性を明らかにし,さらに,卵巣子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術の適応を含めた卵巣子宮内膜症の治療戦略について検討した.まず,卵巣子宮内膜症の診断基準を新たに設定し,病理組織学的に検討した結果,卵巣癌における卵巣子宮内膜症の合併ならびに卵巣子宮内膜症から癌への移行像が類内股腺癌や明細胞腺癌に多く,卵巣子宮内膜症はこれらの癌の発生母地となりうることが示唆された.次に,卵巣癌および卵巣子宮内膜症におけるPTEN遺伝子の遺伝子解析ならびにPTEN proteinの免疫組織学的検討から,卵巣子宮内膜症が発生母地であると考えられる卵巣類内膜腺癌や卵巣明細胞腺癌のうち,類内股腺癌の発生にPTEN遺伝子の異常が深く関わっていることが示唆された.また,類内膜腺癌および明細胞腺癌に合併する卵巣子宮内膜症の性格の違いとその発生の由来を調べる目的で,エストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプタ-,Ber-EP4,Calretininを免疫染色し,その発現状態を検討した.その結果,卵巣類内膜腺癌や卵巣明細胞腺癌に合併する子宮内膜症は共に卵巣表層上皮由来で,中皮の性格を強く持つ卵巣子宮内股症から明細胞腺癌が,また,ミューラー管型上皮に分化した卵巣子宮内股症から類内股腺癌が発生している可能性が示唆された.さらに,臨床データーの解析から,これら卵巣癌の発生母地となりうる卵巣チョコレート嚢胞の摘出を考慮する基準は,40歳以上または嚢胞の長径が4cm以上の症例であり,卵巣チョコレート嚢胞に対する腹腔鏡下手術はCT,MRIで充実部分が認められず,かつ,多量の腹水がない長径10cm以下の症例に行われるのが望ましく,超音波カラートップラー法にて嚢胞内に血流が認められる症例は卵巣癌に準じた対応が必要であることがわかった.
著者
佐久本 哲男
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.4-12, 1964-01-01

指尖容積脈波の臨床的応用はかなり古いが, 脈波計の使用時, 生体に接続する部分の装置の当て方によつてはその都度脈波の波形が異るものがかなり多くこのことが脈彼の臨床上の信頼性を欠いていた. 最近では性能のよいセシウム, カドミウムなどが現われ光電管プレティスモグラフは描写が正確であり容積脈波を測定するのに最上のものであることがわかり, 光電管を使用しこれにより末梢血管中に流入する血液量の変動状態を知ることが出来る, 産婦人科領域においても諸家は妊婦殊に妊娠中毒症にこれを応用して末梢血管拘縮のあることを認め, 更に症状発生を予測しうること, 後遺症予後判定からfollow upに役立つこと, 薬剤の効果判定などについて述べているが, 妊娠中毒症は全身の各臓器, 各組織の血管変化が主体であり, それに伴う複雑な病態像は果して単なる指尖容積脈波のみで全貌を掴めるか否かが問題である. 脈彼の成績が妊娠中毒症の臨床像と一致するという成績よりもさらに深く追求してその得られた所見が妊娠中毒症の種々な病態像のうちとくにどれと近似性をもつかを解明することに興味がある. この意味から種々の検査方法を行つてこれを追求した. 妊娠中毒症94例, 正常妊婦39例, 健康婦人32例, 子宮癌患者26例, 合計191例について検査を行つた. 指尖容積脈波を検査する装置として光電管MCP-71を用い波形の高忠実性を計り、従来の装置の最も欠点であつた指尖固定部に改良を加え, 波形を完全に安定させることに成功した. 脈波の判定基準を検討した結果Anacrotic wave, Plateau, 下向脚時間×100/波長時間が40以上のいずれかを示すものが不良であることを確定した. 妊娠中毒症では純粋型よりは混合型, 後遺症に脈被不良のものが多い事実を認めた. 妊娠中毒症の重軽度と脈波所見とは有意の関係がなく, 蛋白尿, 浮腫のみの所見から検討しても脈波所見と有意関係がないことと一致するものと考えられる. しかしながら高血圧のみをとりあげて検討すると脈波所見と有意関係にある. 妊娠中毒症患者の腎生検と脈波とは有意の関係が認められた. 又脳波, 眼底所見とも有意関係にあることが知れた. これらは高血圧と深い関係にあるためと考えられ, 一方年令の上昇するにつれて脈波所児の不良なものは著明に増加する. 妊娠中毒症の予後として後遺症を残すか否かを妊娠中に予知することについては確定的な結果は得られなかつた. 以上から脈波は妊娠中毒症そのものの病態像全部を表示するものでなく, 主として現存する高血圧の状態を知るのに参考となるであろう.
著者
太田 博孝 福島 峰子 真木 正博
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.525-529, 1989-05-01
被引用文献数
4

排卵障害に有効な漢方薬における卵巣直接作用のうち, とくにアロマターゼへの影響をラット卵胞を用いて検討した。卵胞はPMSG処理未熟雌ラットから分離した。また卵胞のアロマターゼ活性を阻害する目的で4-hydroxy-4-androstene-3, 17-dione (4-OHA ; 10^<-5>M) を用いた。各卵胞は培養液中で種への濃度 (10〜500μg) の当帰芍薬散, 桂枝茯苓丸, 温経湯, あるいはその生薬成分を加え, 24時間器官培養した。培養液中に4-OHA (10^<-5>M) を添加すると培養液中estradiol (E_2) 分泌量は対照群の38% (p<0.05) まで低下した。同時に上記漢方薬を添加すると, 100, 500μgの量でいずれもE_2分泌を有意に増加させた。このE_2分泌刺激作用がこれら漢方薬の構成生薬のいずれの作用によるかを知るため, シャクヤク, センキュウ, トウキ, ボタンビ, ケイヒにつき検討した。その結果シャクヤクのみがE_2分泌刺激作用を示した。シャクヤクはこれら3種の薬剤に共通に含まれる唯一の生薬であることを考えるときわめて典味深い。
著者
平出 公仁
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.1265-1274, 1966-11-01

妊娠時における十二指腸からの鉄吸収についてその特異性を知るために, 放射性鉄を用い十二指腸拡置法によつて, 正常, 貧血, 鉄負荷時の鉄吸収, アミノ酸, 有機酸同時注入による影響, 胆汁中への鉄排泄と鉄の腸肝循環の可能性, progesterone, estrogenの鉄の吸収に及ぼす影響について観察した. 1)胃腸管ではすべての部位において鉄は吸収されるが, その中で十二脂腸では最もよく吸収が行われ, 回腸, 胃と続き, 結腸では僅少であつた. 2)妊娠時の鉄吸収は非妊時より亢進し, 臓器内鉄移行も増加している. 3)貧血妊娠時では正常妊娠時に比し鉄吸収が著しく迅速かつ大量である. 鉄負荷妊娠時は正常妊娠時に比し鉄吸収は抑制される. 母体臓器, 胎仔, 胎盤への鉄移行も正常時に比し貧血時は増加し鉄負荷時は抑制されている. 4)十二指腸内に微量鉄投与を行ないその鉄吸収を電子顕微鏡的に観察すると, 貧血妊娠時では正常, 鉄負荷時に比し十二指腸粘膜細胞のinterdigitation (指状篏合)が強く認められ, その吸収容積を拡大させ形態学上, 鉄吸収を容易にする状態にあること, 及び細胞内のlysosomeの存在は細胞内物質代謝の旺盛なることが考えられる. 5)十二指腸内に, ある種のアミノ酸, 有機酸が存在すると鉄吸収は亢進する. 6)生理的にも胆汁中に鉄が排泄され, ステロイドホルモンにおける腸肝循環と同様に, 鉄においてもこれが成立する可能性がある. 7)十二指腸における鉄吸収はestrogenによつて著しく影響される.
著者
武内 享介 乾 昌樹 森 敏之
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.1443-1449, 1992-11-01
被引用文献数
2

妊娠時のマグネシウム投与のカルシウム代謝に与える影響につき, 切迫早産症例において血清, 尿中ミネラルおよびカルシウム代謝調節ホルモンの動態に着目して検討し, 以下の結果を得た. (1)血清Mg濃度は硫酸マグネシウム投与0.5時間後で著明に増加(1.91±0.06mg/dl→4.6±0.71mg/dl, p<0.01), 以後徐々に低下し2時間後からは3.65〜3.88mg/dlの間を推移した. 尿中Mg排泄量(Mg/Cr ratio)は前値(0.05±0.01)に比べ1時間後には3.18±0.8と明らかに増加した後(p<0.01), 緩徐に低下し最終的には1.97〜2.35の範囲内を推移した. (2)蛋白補正血清Ca濃度は投与前は9.04±0.47mg/dlであったが, 血清Mg濃度の増加に伴つて低下, 投与0.5時間後には8.3±0.27mg/dlとなつた(p<0.01). その後はほぼ一定であったが, 30時間後より徐々に上昇し60時間後には8.52±0.31mg/dlにまで回復した. 尿中Ca排泄量(Ca/Cr ratio)は投与前値(0.06±0.03)に比べ投与0.5時間で1.85±0.16と有意に増加した(p<0.01)が, その後徐々に低下し0.58〜0.92の範囲内を推移した. (3)血清PTH濃度(前値181±76.9pg/ml)は投与1時間後に118±42.2pg/mlへと軽度低下したが, 6時間後には294±121pg/mlへと上昇した(p<0.05). (4)血清1α, 25-(OH)_2 vitamin D_3濃度(前値89.3±44.2pg/ml)は投与24時間後には126±38.7pg/mlと有意に増加した(p<0.05). (5)血清CT濃度には経過中有意な変動を認めなかつた. 以上の知見より, 切迫早産におけるリトドリン治療下では, 硫酸マグネシウム投与は尿中Mg排泄量と尿中Ca排泄量の増加を惹起し, 血清Ca濃度の低下を招来する. その結果, PTH分泌の増加とそれに引き続く1α, 25-(OH)_2 vitamin D_3の産生促進が生じ, 血清Ca濃度は正常化に向かう可能性が示唆された. なお, CTの関与は少ないものと思われた.
著者
宮本 耕佑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.471-477, 1965-06-01

習慣性または切迫流早産に対するVitamin Eの治療効果については, 若干の報告があり, おおくはその有効なことをみとめているが, いまだそのさいの作用機序については明確にされていない. そこでその一端をうかがう目的で, Vitamin Eが生体子宮運動にどのような影響をおよぼすかということを, ウサギについてバルーン法によって実験をおこない, つぎのごとき知見をえた. 1) 非妊成熟ウサギの子宮収縮運動は Vitamin E の投与によって抑制される. とくに投与量の増加や投与日数の延長に比例して, 抑制効果も増強する. 2) Vitamin E により抑制された子宮運動は, Estrogen (Estradiol)の併用によりまもなく回復にむかい, ついには著明な昂進をしめしてくる. すなわち Vitamin E の抑制作用は Estrogen の子宮運動昂進作用を抑制するほど強力なものではない. 3) おなじくはじめから Vitamin E と Estrogen を併用投与すると, Vitamin E の抑制効果はきわめてよわく, 投与期間の延長とともに Estrogen の効果のみが顕著にあらわれてくる. 4) Vitamin E と progesterone の併用投与では, Progesterone 単独投与あるいは Vitamin E 単独投与の場合ととくにかわった所見はなく, 波形上からのみでは両者に相剰作用があるかどうかはあきらかにしえなかった. 5) 下垂体後葉ホルモンに対しては, Vitamin E による子宮運動の抑制度にほぼ平行して感受性が低下し, progesterone の場合と類似の経過をとる. しかし Vitamin E に Estrogen を併用したときは, その投与期間に比例して, 感受性が昂進してくる. 以上のごとく Vitamin E ぱ生体子宮の運動を抑制するもので, あたかも Progesterone 様の作用があることを確認した.
著者
酒井 潔 水元 修治 田中 昭一 荒木 重雄
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.63-68, 1969-01-01

従来,卵巣の内分泌能をみるのに,尿中に排泄される性ホルモンを定量する方法が広く行われてきた.しかし,より直接的に卵巣の内分泌能をみるには,血中のホルモン動態をしらべるのがよい,我々は,^3H-estradiolを人間に静注し.その血中よりの経時的減少から.Taitのtwo-compartment modelに従つてestra-diolのmetaboloc clearance rateを測定した.対象は月経整順な成熟婦人6名であり,いずれも黄体期と考えられた.^3H-estradiol(20.3μCi/μg)ethanol溶液10μCiを生理食塩水で稀釈し,対象に静注した.その後経時的に採決し,血漿10mlをとつて放射能測定の材料とした.これをetherで抽出し,非結合型^3H-estradiolのみをcolumn cgromatographyで分離し.liquid scintillation spectrophotometerにより放射能を測定した.^3H-estradiolの血中濃度を時間の経過に従つて片対数グラフ上にとると.注射直後より約30分までの急激な減少とそれ以後の比較的なだらかな減少との2相性の直線をなすことがわかつた.従つて.これに対してTaitのtwo-compartment modelを適用してestradiolmetabolic clearance rateや生体poolの大きさなどの計算を行つた.その結果,estradiolのmetabolic clearance rateは697-1065l/日,平均856l/日であり,inner poolの大きさは17.9-35.7l,平均25.2l,またinner pool outer poolをあわせた生体内poolの大きさは41.8-69.0l,平均56.5lという値が得られた
著者
森 和郷 小森 昭人 平沢 峻 倉増 敏男 横山 幸生 川瀬 哲彦 尾関 良隆 橋本 正淑
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.13, pp.1231-1236, 1963-11-01

昭和35年6月1日より昭和36年9月19日迄の約1年2ヵ月の間に, 札幌医科大学産婦人科外来に於て腟鏡診を中心として行った子宮頚癌の早期診断の結果について報告した. 対象患者は外来診察に於いて既に子宮口糜爛を有する者及び癌の精密検査を希望するもの2000例である. 検査方法は腟鏡診及び細胞診を行い, 腟鏡診にて必要を認めたものに照準切除診を行った. 腟鏡診に使用した機械はMollerの双眼コルポスコープである. 加工腟鏡診として錯酸診, 沃度診及びアドレナリン診を附加した, 判定規準は大凡Hinselmannの分類に従ったが, 一部改変した. 細胞診はPapanicolaouの原法に従い且判定規準も同氏のものを用いた. 組織診はHaematoxylin 染色, 必要に応じてVan Gieson染色を行い, 判定はMullerの分類に従った. 1) 検診患者の年令的分布は, 腟鏡診異常所見群のピークは36〜40才に, 癌性潰瘍群のピークは46〜50才であった. この両者の年代的差異は異常所見からの悪性化の年次的関係を暗示させるものと思われる. 2) 受診患者の自覚症状は不正出血38.5%で第1位, 順次帯下25.9%, 接触出血12.5%, 無症状14.3%, 腰痛5.9%, 月経異常2.8%となり, 接触出血を含めた性器出血が大半を占める. 又無症状のものから6.8%に腟鏡診的異常所見が発見された. 3) 腟鏡診所見の頻度については, 良性所見は全体の84.7%に見られ(転位帯25.9%, 変換帯38.5%, ポリープ5.1%, 腟炎6.0%, 真性糜爛9.1%), 異常所見は全体の15.2%に見られた. (白斑1.9%, 基底2.0%, 分野1.5%, 異型変換帯1.1%, 異型血管5.0%, 癌性潰瘍3.4%). 4) 肉眼的癌又は癌を疑わしめた140例中, 腟鏡診では119例に癌と診断したが, 組織診では117例に侵入癌があった. 即ち肉眼的に23例, 腟鏡診では2例の誤診があった. 5) 腟鏡診と細胞診との比較に於て, 腟鏡診のみで癌と診断したもの94.8%, 細胞診のみで癌と診断したもの97.4%であった. 両者を併用すると100%近い診断率が得られた. 6) 腟鏡診と組織診との関係を腟鏡診的癌母地と見做される所見について観察すると次の如くであった. 即ち白斑50例中侵入癌2例, 異型上皮4例, 基底66例中癌6例, 上皮内癌4例, 異型上皮5例, 分野50例中侵入癌2例, 上皮内癌3例, 異型上皮8例, 異型変換帯63例中上皮内癌2例, 異型上皮3例, 異型血管89例中侵入癌37例, 上皮内癌2例, 異型上皮5例を夫々組織学的に確診した. 又変換帯979例中30例0不穏上皮異型上皮11例が見られたことは注目に値する. 7) 腟鏡診に於ける血管像は特に観察した1433例中異型血管301例(21.0%)が見られた. これらを組織診にて検するに侵入癌78例, 上皮内癌6例が見出され, 悪性率27.9%であった. 以上の観点により, 腟鏡診は子宮頚癌の早期診断への補助診として, 細胞診及び組織診との併用が望ましいと思われる.
著者
上野 隆
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.27-48, 1954-01-01

本論文の要旨は昭和27年4月1日第4回日本産科婦人科學會總會に於て發表した.更に其の1部は昭和25年5月21日春季名古屋醫學會第59回總會,昭和25年10月22日秋季名古屋醫學會第60回總會,昭和26年2月25日第7回東海産科婦人科學會,昭和26年11月3日第9回東海近畿連合産科婦人科學會に於て夫々分割發表した.
著者
黒牧 謙一 竹田 省 関 博之 木下 勝之 人見 祐子 前田 平生
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1213-1220, 1994-11-01
被引用文献数
10

産科における輸血の必要性と他家血輸血の危険性を考慮すると自己血輸血法の確立は不可欠である. 今回産科症例に対して自己血輸血を行い, 採血及び輸血による妊婦の血液性状の変化につき検討し, 妊婦の自己血輸血の臨床効果とともにその有用性と問題点につき検討した. 分娩時に出血が多量になる可能性の高い, 前2回帝切例, 前置胎盤や稀な血液型の妊婦, 34例を対象とした. 採血1週間前より鉄剤の投与を行い, 自己血採血は1週間ごとに300mlずつ3回行うことを基本とした. 分娩後は出血量に応じて自己血輸血を行った. 採血後エリスロポエチン値は上昇し, 同時に網状赤血球数は増加し, 脱血後急速に赤血球を増産していることが判明した. ヘモグロビン(Hb)値は900mlの採血で平均0.6g/dlの低下であった. ヘマトクリット(Ht)値, 総血漿蛋白(TP)値もHb値とほぼ同様の動きを示した. またその他の血液検査には大きな変動を認めず, 母児に対しても採血による影響は認められなかった. 分娩時の出血が多量であっても, 自己血の返血を行うことにより同種血輸血は必要なく, 正常産褥経過症例とほぼ同様の血液所見を示した. 輸血後は倦怠感やふらつきなども軽減し, 乳汁分泌も良好であった. 産科領域においても妊婦の自己血輸血のための採血及び輸血の安全性と有用性が確認された.
著者
小林 浩
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.828-834, 1988-07-01

2型糖鎖抗原に属するSialyl SSEA-1抗原を用いて婦人科疾患, 特に卵巣癌に対する腫瘍マーカーとしての有用性について検討するとともに, CA125との関連についても検討した. 子宮筋腫, 子宮内膜症, 良性卵巣腫瘍患者の平均値±標準偏差および陽性率は, 28.5±12.2U/ml(16.1%), 33.2±13.5U/ml (31.3%)および30.0±30.3U/ml (11.6%)であり, 子宮内膜症患者に比較的高い陽性率を認めた. 卵巣癌患者の臨床進行期別にその平均値±標準偏差および陽性率を求めると, I期は28.9±15.3U/ml(20.1%), II期は45.3±30.7U/ml(43.8%), III期は182.3±643.3U/ml(50.0%)およびIV期は63.2±70.4U/ml (72.2%)とその陽性率は臨床進行期が進むにつれて上昇した. また, 治療経過に伴うSialyl SSEA-1の変動は予後とよく相関した. CA125とのコンビネーションアッセイでは, Sialyl SSEA-1陽性でCA125陰性例は1例しか存在しなかつた. しかし, CA125と異なり, Sialyl SSEA-1は妊娠による影響が少ないため, 卵巣腫瘍合併妊娠における有用性はCA125より優れていた. 一方, 各種疾患腹水中や体液中のSialyl SSEA-1濃度を測定した結果, CA125と同様にチョコレート嚢胞内容液, 羊水中および卵巣癌患者腹水中に極めて高濃度の抗原が存在した. さらに, 子宮内膜症患者の腹水中濃度も比較的高値を示すため, これが血中濃度に反映している可能性が示唆された. 以上より, Sialyl SSEA-1抗原はCA125と同様, 子宮内膜症で比較的高値を示す傾向を認めたが, その陽性率はCA125より低率であつた. また, 卵巣癌の血清学的診断における有用性に関しては, 卵巣癌全体では47.2%に陽性を認め, 臨床的には予後をよく反映したが, 早期癌における陽性率が低く, 早期発見には不適当であつた. さらにCA125とのオーバーラップを認めたため, コンビネーションアッセイによる陽性率の上昇は期待できなかつた.