著者
高瀬 巌 小山 寛史 藤下 章男
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.473-480, 1982-11-20

mesulfenfosの樹幹注入またはdisulfotonの土壌混和の単木処理によるマツノザイセンチュウの防除効果と施用方法や時期別による樹体内の吸収・移行および分布との関係を検討して, つぎの結果を得た.(1) mesulfenfosを樹幹注入またはdisulfotonを土壌混和処理すると, 薬剤は松の樹体内に吸収移行して優れた枯損防止効果を示した.マツノザイセンチュウの防除効果と薬剤の吸収量との間には相関性が認められた.(2) mesulfenfosを樹幹注入すると, 注入点から上方1mでは, 注入部位にのみ薬剤は検出されたが, 高さ5∿7mでは樹体内に均等に分布していた.そして, 木部の中心部より薬剤はおもに検出されたことから, 樹幹に直接注入すれば, 蒸散流に乗って上昇, 移動する垂直移行分布が認められた.(3) 11月から3月に薬剤を樹幹注入または土壌処理したとき, 6月の分析時に土壌処理でやや吸収量の差はあったが, 9∿12月の樹体内の吸収量は変わらず, いずれの処理時期でも効果が認められた.マツノザイセンチュウの活動期間に薬剤を松に保持させて優れた防除効果を発揮させるには, 樹幹注入は5月まで, 土壌処理は3月までに処理すればよい.(4) 土壌処理したdisulfotonは比較的幹基部に多いものの, 上方の幹部や枝部にも吸収移行しており, 垂直分布が認められた.おもに木部(外側)に多いが, 篩部からも検出されたことから, 松の根系から吸収され, 蒸散流はおもに木部の辺材と篩部であることが示唆された.(5) 樹体内から検出された化合物は樹幹注入ではmesulfenfos自身であったが, 土壌処理では酸化体のdisulfoton sulfoneとsulfoxideが主であった.土壌処理したdisulfotonは土壌内で酸化されて, 酸化生成物が根から吸収移行した.
著者
内田 又左衛門 小川 邦彦 杉本 達芳 相澤 宏保
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.537-544, 1983-11-20

水面施用した[aniline環-^<14>C]flutolanilはイネによく吸収され, 27日後に葉身中の放射能は最高濃度(93.7 ppm ^<14>C-flutolanil相当)に達した.その後, 緩やかに減少し, 81日後では83.0 ppm相当となった.玄米中への移行はわずか(0.5ppm相当)であった.イネにおける代謝は比較的速く, 9日目以降の葉身中放射能は大半が抽出性あるいは結合性の代謝物に帰属できた.イネからは, 4′-hydroxy-3′-isopropoxy-2-(trifluoromethyl)benzanilide (2), 3′-(hydroxymethyl) ethoxy-2-(trifluoromethyl)benzanilide(3), 3′-hydroxy-2-(trifluoromethyl)-benzanilide(4), 4′-hydroxy-3′-methoxy-2-(trifluoromethyl)benzanilide(6), 3′-methoxy-2-(trifluoromethyl)-benzanilide (7)および2, 3, 4, 6の抱合体が得られた.キュウリの葉面に塗布した^<14>C-flutolanilは13日後でも70%以上が表面から回収された.しかし, わずかながらイネと同じ代謝物が検出できた.
著者
山本 出 藪田 五郎 冨澤 元博 斉藤 隆行 宮本 徹 利部 伸三
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.33-40, 1995-02-20
被引用文献数
14

[^3H]α-ブンガロトキシン, [^3H]ニコチンをプローブとしニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の認識部位へのニコチノイド, ネオニコチノイド, 関連化合物の結合性をみた結果, 昆虫nAChRでは3-ピリジルメチルアミノ部分をもつこと, 脊椎動物nAChRではイオン化度の高いことが必要であった.[^3H]フェンサイクリジンを用いTorpedoのnAChRのイオンチャンネル開口への効果をみた結果, アゴニスト作用を呈するのに3-ピリジルメチルアミノ部分があるほうがよいが, イオン化度の高いことが必要であった.ニコチノイドのアミノ窒素原子とネオニコチノイドの構造上対応する窒素原子の^<15>N NMRを測定したところ, 後者は前者に比べはるかに低磁場にあり, 窒素原子上の非共有電子対が電子吸引性基により非局在化, すなわち部分正荷電を帯びていることを示し, これが昆虫のnAChRとの相互作用には十分だが, 脊椎動物のそれとは不十分であるといえる.これによってニコチンは温血動物への毒性が高く, 殺虫活性が限られているのに対し, イミダクロプリドはその反対の特性を示すことが説明できる.
著者
宮門 正和
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.483-492, 1986-08-20
被引用文献数
3

For several years, our research group at Sumitomo has been conducting an extensive search for new biologically active natural products. Some of the isolated natural products could be looked upon as prototype models for synthetic research to develop new agrochemicals. In this paper, the followings are described as examples of our research : (i) The extract of black pepper fruits (Piper nigrum L.) exhibited strong insecticidal activity against several pests. A new amide, N-isobutyl-11-(3, 4-methylenedioxyphenyl)-2E, 4E, 10E-2, 4, 10-undeca-trienamide (pipercide), as well as two structurally related amides, were isolated as insecticidal principles. From the results of synthetic studies, N-isobutyl-12-(3-trifluoromethylphenoxy)-2E, 4E-2, 4-dodecadienamide was found to have especially potent activity. This amide, as well as the amides from pepper plants, exhibited notable paralyzing effects and lethal activity against pyrethroid-resistant houseflies. Electro-physiological studies using the central nerve cord of the American cockroach demonstrated that these amides are neurotoxic compounds. (ii) The chloroform extract of the stems and leaves of May apple (Podophyllum peltatum L.) showed fungicidal activity against rice blast. Three new 2-pyrones (podoblastin A, B and C) were isolated as fungicidal components and their structures were determined by synthesis. Fungicidal activities against rice blast were greatly improved by structural modifications, and 3-(2-oxodecanyl)-4-hydroxy-6-n-propyl-5, 6-dihydropyran-2-one was selected as the most potent compound. The preventive effect of this compound against rice blast was most successful, however the curative and systemic effects require further improvement. (iii) A biphenyl(3, 5-dimethoxy-4-hydroxybiphenyl, aucuparin), as well as a new dibenzofuran (2, 4-dimethoxy-3-hydroxydibenzofuran, eriobofuran), were isolated as phytoalexins from fungi-infected loquat trees (Eriobotrya japonica L.). The structure of eriobofuran was determined by synthesis. Eriobofuran exhibited fungicidal activity against Pestalotia funerea (phytopathogenic fungi to loquat), however it did not show any activity against several fungi which are non-pathogenic to loquat. The biological significance of the self-induction of the phytoalexins in the loquat tree was considered in relation to plant resistance against fungal attack.
著者
小林 裕子 俣野 修身 後藤 真康
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.81-84, 1986-02-20
被引用文献数
4

Ethylenebisdithiocarbamates (EBDCs)を施用後の農作物中に残留するethylenethiourea (ETU)の分析法を確立する目的で, たまねぎ, トマト, すいかおよびレタス中のETUの残留分析法について検討した.たまねぎ, トマト, すいかおよびレタス中のETUを含水メタノールで抽出し, 溶媒を留去する.濃縮液を水酸化アンモニウム溶液あるいは水酸化ナトリウム溶液でpH8に調整し, Extrelut^[○!R]カラムで精製したのち, 紫外部吸収検出器付高速液体クロマトグラフィーで定量した.検出限界は, 0.01ppmであり, 回収率は, 76&acd;90%であった.この方法はExtrelut^[○!R]カラムに供する試料をフッ化カリウム等で前処理するNitzの方法より簡潔性, 迅速性等の点で優れている.
著者
小野田 恭久 今村 昌子
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.101-105, 1980-02-20
被引用文献数
2

茶浸出液中の残留農薬分析操作に, 塩基性酢酸鉛による除タンニン操作を加え, 各農薬の抽出法を検討し, 以下のような結果を得た.1) 茶浸出液と抽出溶媒間のエマルジョンの生成が抑制され, 分離が良好となり, 脱水操作も短時間に行なうことができ, 告示法にくらべ高回収率を得ることができた.また, このとき大部分の色素類も同時に除去され, ガスクロマトグラム上の夾雑ピークの数も減少するなど, 茶浸出液中の残留農薬分析において, 塩基性酢酸鉛による除タンニン操作はきわめて有効な手段であった.2) メソミルの抽出溶媒は酢酸エチルがよく, 告示法の操作を省略できた.3) 告示法では, DMTP, イソキサチオン, PAP, ホサロン, TPNで抽出精製法がすべて異なっているが, 本試験の結果, 同一溶媒による同時抽出が可能となり, 操作の省略や抽出溶媒の種類を少なくすることができるなど, 分析試料の調整法が簡便となった.