著者
三原 一優 磯部 直彦 大川 秀郎 宮本 純之
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.307-316, 1981-08-20

フェニトロチオン, ダイアジノンおよびメチルパラチオンの中毒量を雌雄ラットに1回もしくはフェニトロチオンの中毒量を連続経口投与したのち, 肝ミトコンドリアの呼吸機能および肝ミクロゾームの薬物代謝酵素活性に及ぼす影響をしらべた.250mg/kgのフェニトロチオン投与によりミトコンドリアの呼吸調節率が投与24時間後にわずかに低下したが, ADP/O比およびATPase活性に対する影響はみられなかった.ミクロゾームのチトクロームP-450含量およびアニリン水酸化, アミノピリンN-脱メチル化両活性は, いずれの有機リン化合物によっても投与1時間から72時間にかけて著しく低下した.しかしながら, このようなミトコンドリアとミクロゾームへの影響はいずれも投与72時間から1週間後には元のレベルにまで回復し, 可逆的であることが判明した.また, フェニトロチオンの5mg/kg, 25mg/kgを12週間連続投与した場合にはミクロゾームの薬物代謝酵素系に対する影響はみられなかった.
著者
天野 昭子 矢野 秀治
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.425-430, 2006-11-20
被引用文献数
4 3

市販のフェニトロチオン測定キット(高感度タイプ)およびイミダクロプリド測定キットを用い,キュウリ測定時のマトリクス効果について調査した.キュウリの実試料では,薬剤の低濃度添加の場合に回収率が150%を超え,実用的でほない結果となった.キュウリ果実を,外果皮を含む果托,中果皮および種子を含む胎座に分け,各抽出物が測定値に与える影響を見たところ,果托の抽出物が吸光度値を大きく抑制していた.これはフェニトロチオンの測定で特に顕著であった.試料の希釈調製液を限外濾過膜で処理したところ,回収率は大きく改善された.
著者
Mafi Shaban Ali VANG Le Van 中田 恵久 大林 延夫 山本 雅信 安藤 哲
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.361-367, 2005-11-20
被引用文献数
2

ミカンハモグリガの処女雌抽出物をGC-EADおよびGC-MSにて分析し, ランダムスクリーニングですでに雄の誘引物質として見出されている(7Z,11Z)-7, 11-hexadecadienal (Z7,Z11-16:Ald)が真の性フェロモン成分であることを確認した.第2成分の探索を目的にZ7,Z11-16:Aldに関連化合物を混合しカンキツ園で誘引試験を行ったところ, 共力効果は認められず, いくつかのモノエン化合物はZ7,Z11-16:Aldの誘引活性を強く阻害することが明らかになった.さらに, 合成フェロモンを用いた交信撹乱技術を確立するため, 以下の2つの実験でZ7, キャップを配置した.誘引される雄蛾の数はコントロールに比べ低下せず, 明瞭な定位阻害効果は認められなかった.一方, Z7,Z11-16:Aldを1本当たり60mg封入したポリエチレンチューブを圃場に配置した実験では, 本種の卵や幼虫の新葉における密度低下を認めるに至らなかったが, モニタリングトラップへの雄の定位が強く阻害される結果を得た.すなわち, 無処理区では7月から9月の間に一晩当たり27〜127頭の雄蛾が誘引されたのに対し, 1ha当たり500本あるいは1300本のチューブを処理した圃場では, 雄蛾はほとんど誘引されなくなった.
著者
斯波 久二雄 角田 紀子 金子 秀雄 中塚 巌 吉武 彬 山田 宏彦 宮本 純之
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.557-569, 1988-11-20
被引用文献数
2

新規ピレスロイド系殺虫剤S-4068SF [Etoc^[○!R], (S)-2-methyl-4-oxo-3-(2-propynyl)cyclopent-2-enyl (1R)-trans/cis-chrysanthemate, (trans/cis=8/2)]の代謝運命を明らかとするため, (4S, 1R)-trans-または(4S, 1R)-cis-S-4068のアルコール側^<14>C標識体を2 mg/kgの割合で, 雌雄ラットに1回経口または皮下投与した.放射能は, 投与後7日間で完全に糞尿中に排泄された.血液および組織中^<14>C濃度は, 経口投与後3時間以内に最大値を示したのち, 生物学的半減期は, 投与後3時間から12時間まで3時間ないし5時間, 12時間から48時間まで7時間ないし35時間で減少した.投与7日後の組織残留量は, 全般的に低値を示した.排泄物中, 20種類の代謝物を同定し, 代謝経路を以下のように推定した.1) 酸側イソブテニルのメチル基およびアルコール側プロピニル基の1位および2位の酸化, 2) エステル結合の開裂, 3) 以上の結果生成した化合物のグルクロン酸または硫酸による抱合.両異性体の代謝運命に, 雌雄および投与経路によらず顕著な差異を認めなかった.
著者
小高 理香 菅野 輝美 片木 敏行 瀧本 善之
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.235-241, 2002-08-20
参考文献数
28
被引用文献数
2

フェニトロチオン及びそのオキソン体のフランスの湖水及び日本の池水-底質系での好気的な代謝試験を行った.系への通気方法がフェニトロチオンの代謝経路に与える影響を見るために, 水層中に穏やかに通気するかまたは水表面上に空気を流す方法で実験を行った.いずれの方法においても代謝経路はほぼ同じであったが水-底質間の放射能分布に若干の違いが認められた.水中通気による嫌気雰囲気の減少から, フェノール体と二酸化炭素の生成量が増加し還元的代謝が減少した.フランスと日本の水-底質系でのフェニトロチオンの代謝に顕著な差異は認められず主にP-O-アリール結合の開裂によるフェノール生成, ニトロ基のアミノ基への還元とそれに続く.アセチル化により分解された.オキソン体の生成(<1%)は主要な分解経路ではなく, 速やかにP-O-アリール結合が開裂しフェノール体に分解された.
著者
日本農薬株式会社開発部登録センター
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.655-657, 1986-11-20

各種毒性試験を実施し, ブプロフェジンの安全性評価を行なった.本剤のラット, マウスにおける急性毒性は弱く, 普通物に相当した.眼および皮膚に対する一次刺激性もきわめて軽度であった.亜急性および慢性毒性試験においては, 高薬量群で体重増加抑制, 中・高薬量群で肝の重量あるいは体重比の増加, 肝細胞肥大が認められた.これらの変化は化合物を代謝分解するための肝機能亢進像と解釈される.また本剤は変異原性を有さず, ラット慢性毒性試験においても本剤によると思われる腫瘍発生は認められなかった.さらに, 催奇形性も認められず, 胎仔や次世代にも悪影響を及ぼすことはないと考えられる.本剤は, 昭和58年12月に, イネ, ムギ類, キュウリ, ナス, トマト, カンキツ, チャの対象害虫に対して登録を取得し, 登録保留基準値は, コメ; 0.3 ppm, ムギ・雑穀; 0.3 ppm, 果実(ナツミカンの外果皮を除く); 0.3 ppm, ナツミカンの外果皮; 2 ppm, ヤサイ; 1 ppm, チャ; 5 ppmと設定された.ブプロフェジンは定められた使用基準を遵守すれば, 安全性が高い薬剤であり, 農業資材の一つとして有用であると考えられる.
著者
高橋 義行 高田 正司 小田中 芳次 井園 佳文 長岡 広行 沼田 京太 藤田 俊一
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.378-382, 2002-11-20
参考文献数
11
被引用文献数
1

宮崎県佐土原町の圃場において, キャベツを定植した灰色低地土の緩斜面圃場(A1 : 1.7°, 5a)で1997年5&acd;7月の梅雨期に地表水の流出が計13回観察された.この圃場にダイアジノン粒剤の定植時処理(a.i. 300 g/10 a), その55日後にTPN (400 mg/l)とジメトエート(430 mg/l)の混用液(239 l/10 a), その8日後にTPN, ダイアジノン(400 mg/l)とジメトエートの混用液(224 l/10 a)を散布した.表流水によって流出したTPNの96%(流出直後)から47%(終了直前)は, 浮遊物質(SS)とともに流出した.一方, ダイアジノンとジメトエートはそれぞれ33&acd;44%および1%とほぼ一定の割合でSSとともに流出した.また, 同年9&acd;10月の台風時期にはA1圃場の傾斜を1.15°に調整した圃場(A2)と黒ボク土の圃場(B, 5 a, 傾斜1.15°)にダイコンを播種して地表水の流出頻度を比較した.その結果, 灰色低地土では4回, 黒ボク土では台風時の降雨によって2回の地表流出が認められた.灰色低地土のA1圃場では平均降雨強度5 mm/hr前後以上で, A2圃場では10 mm/hr以上の降雨によって, また黒ボク土のB圃場では20 mm/hr以上の降雨によって地表水の流出が生じた.さらに, 人工降雨装置を用いた屋内小規模地表流出試験系でも灰色低地土からは黒ボク土よりも容易に表流水が発生した.
著者
片山 正人 加藤 康仁 秦野 利基 羽鳥 真 丸茂 晋吾
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.289-295, 1998-08-20
参考文献数
14
被引用文献数
4

新フルオロインドールオーキシン, 5, 6-ジフルオロインドール-3-酢酸(5, 6-F_2-IAA, 1)をFischerのインドール化法によって合成した.本化合物はアベナ子葉鞘切片に対してインドール-3-酢酸(IAA)より, より強い伸長活性を示した.アベナ子葉鞘切片に対する5, 6-F_2-IAAの至適濃度は5, 6-Cl_2-IAAのそれより, より高かったが, 5, 6-F_2-IAAの伸長の度合いは5, 6-Cl_2-IAAより, より大きかった.また, 5, 6-F_2-IAAはマング・ビーン幼植物に側根形成を誘導し, さらにその側根の成長をも促進した.白菜の下胚軸の成長に対しても合成したモノおよびジフルオロ-IAA類のうち5, 6-F_2-IAAが最も強い阻害活性を示した.5, 6-F_2-IAAのペルオキシダーゼ酸化に対する抵抗性は中程度であった.
著者
石川 莞爾 中村 安夫 鍬塚 昭三
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.127-134, 1977-05-20
被引用文献数
1

室内試験により, 除草剤ベンチオカーブの水溶液および土壌からの揮散について研究した.^<14>C-ベンチオカーブ水溶液に太陽光を照射すると, 水溶液中の放射能は水分の蒸発量に比例して減少した.水溶液中に土壌を添加すると, ベンチオカーブは速やかに土壌層へ吸着移行し, 放射能の揮散は顕著に抑えられた.非湛水土壌の表面に散布したベンチオカーブの揮散は湛水土壌からの消失に比べると, はるかに少なかった.太陽光照射時に水溶液から揮散する放射性物質の半分以上はベンチオカーブ自身であり, 残りは, 生成したP-クロルベンズアルデヒドなどの揮発性の光分解生成物として揮散した.
著者
中神 和人 田中 治一
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.243-247, 1980-05-20

テクロフサラム[N-(2, 3-dichlorophenyl)-3, 4, 5, 6-tetrachlorophthalamic acid]を水田に施用して, イネ白葉枯病に対する防除効果を検討した.テクロフサラムは10アール当たり有効成分400gの土壌処理で, 相当遅効的ではあったが, 高い効果を示した.茎葉散布処理では, 100, あるいは50ppmの濃度で顕著な効果を示した.ことに, 病斑の拡大を長期間抑制した.人工暴風雨処理によって付傷感染をおこしたイネにおいても, テクロフサラムの茎葉散布は高い効果を現わした.
著者
日本サイアナミッド株式会社技術開発部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.360-364, 1997-11-20
被引用文献数
1

イマザピルはアメリンカン・サイアナミッド社が開発した多年生及び一年生雑草を対象とする非農耕地用の非選択性除草剤である.またそのユニークな作用特性により1%液剤は多年生雑草を対象とした抑草剤として開発に成功した.イマザピルは各種毒性試験の結果, きわめて安全性の高い薬剤であることが示された.急性毒性は非常に弱く普通物に相当した.変異原性, 催奇形性は認められず, 顕著な薬理作用も認められなかった.眼に対する刺激性, 皮膚に対する弱い刺激性はみられたが, 皮膚感作性は陰性であった.ラットを用いた亜急性毒性試験では, 高用量群(10, 000 ppm)の雄ラットで一時的に体重増加抑制, 食餌効率の低下がみられたのみで非常に毒性が低かった.以上より, イマザピルは, その使用方法, 使用上の注意事項を厳守すればきわめて安全性の高い薬剤であると考えられる.
著者
富澤 元博 山本 出
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.231-236, 1992-11-20
被引用文献数
8

イエバエおよびミツバチ頭部のニコチン性アセチルコリンレセプター(nAChR)画分のα-ブンガロトキシン(α-BGTX)結合部位への薬物の結合を, ラジオレセプターアッセイにより検討した.塩基性の高いニコチン, ノルニコチン, アナバシン, ジヒドロニコチリンでは親和性が強く, 塩基性の低いミオスミン, ニコチリン, コチニンでは弱かった.ピリジルメチルアミン類の3位異性体で塩基性の高いものの親和性が強かった.ニコチンの光学異性体では, d体よりl体のほうが強かった.以上の結果はこれらニコチノイドの殺虫活性と対応していた.アセチルコリンエステラーゼの強力な阻害剤であるオキサジアゾロン化合物のnAChRへの親和性は認められなかった.ニコチンと同じ構造部分をもつイミダクロプリドは強い親和性を示し, α-BGTXやニコチンと同一部位に相互作用することが示された.
著者
瀬戸 秀春 禿 康雄 銭 昭輝 清水 猛
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.61-67, 1992-02-20
被引用文献数
5

ククルビン酸のすべての立体異性体および種々の類縁体をラセミ体にて立体選択的に合成し, 構造活性相関の解明ならびに農業上実用可能な植物生長調節剤の探索を目的として, これら化合物について水稲の幼苗根およびトウモロコシの草丈の成長に対する阻害活性を調べた.その結果, 水稲の幼苗根の成長阻害活性を高めるククルビン酸類縁体の化学構造要因として, 1) 1位と2位の置換様式がシスであること, さらに, 2) 3位の水酸基, 3) (Z)-2´-petenylあるいはbutyl基に代表される2位のalkenylあるいはalkyl置換基, および, 4) 1位のmethyl acetate置換基が重要であることが解明された.水稲の幼苗根の成長阻害活性において, ククルビン酸類縁体の中で, 相当する3-oxo体である, ジャスモン酸メチルあるいはエピジャスモン酸メチルに勝るものはなかったが, 茎葉処理によるトウモロコシ草丈の成長阻害活性においては, これらの化合物と同等あるいは若干強い活性を示す化合物がいくつか見い出された.これにより, より実用的な茎葉処理においては, 3位がケトンであるより水酸基のほうが, また, 2位の置換基がalkenylよりもalkyl基のほうが活性発現に適していると推測された.
著者
本間 保男 高橋 広治 水野 宏 見里 朝正
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.33-40, 1977-02-20

キュウリうどんこ病菌Sphaerotheca fuligineaを供試し, 本菌の生育過程に及ぼす大豆レシチンの影響を検討した.キュウリ子葉裏面に大豆レシチン2000ppmを処理し, うどんこ病菌分生胞子を接種し, 分生胞子の発芽, 菌糸の伸長, 分生子梗, 分生胞子の形成を経時的に走査電顕により観察した.分生胞子の発芽には著しい抑制はみられなかったが, 無処理区に比し, 発芽管がやや太く, 短くなり, 菌糸の伸長が遅くなる傾向がみられた.もっとも顕著な影響は, 処理区の接種3日目以降の菌糸先端部に現われた.すなわち, 伸長した菌糸の先端部周縁に薄膜が見られ, うなぎ尾状を呈し, 日数の経過とともに膜の部分が拡大することであった.また無処理区に比し, 分生子梗, 分生胞子の形成が遅れ, 数も少なく, とくに分生胞子が分生子鎖から離脱せずに, そのままたれ下がり, 全体的にゼンマイ状を呈するものがみられた.
著者
竹中 秀行 市成 光広 谷本 憲彦 早瀬 善男 新川 求 市場 常男 益子 道生 林 幸之 武田 禮二
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.107-112, 1998-05-20
被引用文献数
9

種々の2-(置換フェノキシメチル)フェニル-2-メトキシイミノアセトアミド誘導体を合成し, フェノキシメチル部の置換基と殺菌活性における構造と活性相関について調べた.その結果, フェノキシメチル部のベンゼン環が無置換の化合物に比較して, ベンゼン環の2位, 3位または4位がメチル基またはハロゲンで置換された化合物の方が活性が高かったが, ベンゼン環の2位に比較的嵩高い置換基が導入された化合物は活性が低下する傾向が見られた.また, モノ-置換体より2, 3-, 2, 4-または2, 5-ジ-置換体の方が活性が高く, とくに2, 4-ジメチル, 2, 4-ジクロル, 2, 5-ジメチルおよび2, 5-ジクロル体の活性が最も高く, スペクトラムも広かった.一方, 2位と6位に同時に置換基が導入された化合物は著しく活性が低下した.メトキシイミノ部の幾何異性体間ではE-体の方がZ-体より活性が高かった.
著者
上路 雅子 金沢 純 岩撫 才次郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.371-377, 1978-11-20
被引用文献数
1

殺虫剤, BPMC (2-sec-Butylphenyl N-Methylcarbamate)の, キュウリおよびコマツナにおける根からの吸収と, 植物体への移行について検討した.微粒剤あるいは粉剤として土壌に施用した場合, 土壌中のBPMCは根から吸収され, 地上部に移行が認められたが, キュウリではおもに根に検出され茎, 葉, 実には少なく, コマツナにおいては根, 茎葉部でのBPMCの分布はほとんど同じで, 吸収, 移行が植物によって異なる結果を得た.さらに, 吸収, 移行は微粒剤を処理したときのほうが粉剤の場合よりも多く, コマツナでは処理後11日から21日後に吸収, 移行は最高となり, その後減少した.また, 処理した土壌が火山灰土壌の場合, 沖積土壌と比かくして, 根への吸収が極端に少なく, 茎, 葉, 実にはBPMCは検出されなかった.処理されたBPMCは土壌中で漸減したが, 粉剤で処理した土壌のほうが, 消失速度が早かった.処理後41日では土壌中の残留は, 両剤型によって大きな差は認められなかった.アセトン抽出後の土壌を0.5N HClで処理することにより抽出される土壌に吸着されたBPMCは, 微粒剤で処理された場合に多く検出された.
著者
堀越 守 豆塚 弘毅 廣岡 卓
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.17-22, 1999-02-20
被引用文献数
5

大腸菌のprotoporphyrinogen oxidase(Protox)遺伝子欠損変異株(SASX38)を用いた遺伝的相補法によって, タバコ葉から葉緑体及びミトコンドリア型Protox cDNAを単離し, 全塩基配列を解明した.得られた塩基配列情報を利用し, 光要求型除草剤pyraflufen-ethyl耐性タバコ細胞ETR-245株及び感受性株から, RT-PCRによって各々2種のProtox cDNAを増幅した.これらProtox cDNAによって生育を相補した大腸菌SASX38株に対するpyraflufenethylの生育阻害度を測定し, 各遺伝子産物のpyraflufenethylに対する感受性を比較した.ミトコンドリア型遺伝子産物には感受性の差は認められなかったが, 葉緑体型遺伝子産物ではETR-245株由来のものは感受性株由来のものに比べ, 4000倍以上の耐性を示した.さらに, これら葉緑体型Protox cDNAの全塩基配列を比較した結果, 1塩基にのみアミノ酸置換を伴う塩基の変異が認められた.したがって, この変異がETR-245株における光要求型除草剤耐性の原因であることが明らかとなった.
著者
日本特殊農薬製造株式会社開発本部技術部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.775-779, 1987-11-20

スルプロホスの安全性評価のための各種毒性試験を実施した.スルプロホスはラットとマウスにおける急性毒性値から劇物に指定された.中毒解毒法としては, 硫酸アトロピンと2-PAMの反復投与が有効であった.ウサギを用いた刺激性試験では, 皮膚に対する刺激性はみられなかったが, 眼粘膜に対しては結膜にのみ軽度の刺激症状がみられた.神経毒性に関して, 解毒剤を前処理したニワトリにLD_<50>量を投与して試験したが, 肉眼的にも組織学的にも遅発性神経毒性作用は認められなかった.ラットとイヌの亜急性毒性試験では, 有機リン剤特有のChE活性の阻害が観察され, 高薬量群では体重増加の抑制と飼料摂取量の低下もみられた.ChE活性以外の血液生化学的検査, 血液学的検査, 剖検および病理組織学的検査においては, 一貫した薬量相関性の変化は認められなかった.ラット, マウス, イヌを用いた慢性毒性試験でも, 抗ChE活性が認められたが, 検体長期摂取による組織変化や催腫瘍性作用は認められなかった.3世代にわたるラット繁殖試験の結果, 30および120ppm投与群においてF_<1a>新生仔の離乳時の体重減少を認めたものの, その後の世代には反映されない一時的変化であり, 薬量相関性を示す繁殖能の変化はなかった.ラットとウサギにおける催奇形性試験では, ChE活性阻害に起因する母動物の一般症状の悪化や体重の減少が認められたものの, 胎仔毒性や催奇形作用は認められなかった.スルプロホスは, 昭和60年2月に野菜類のスリップス防除用の殺虫剤として登録を取得した.登録保留基準値は, ピーマン5ppm, さやいんげん2ppm, きゅうり, なす, かぼちゃ, にがうり1ppm, とうがん0.5ppmと設定された.スルプロホスは定められた使用基準を遵守すれば, 安全性の高い農薬であり, 有用な農業資材の一つであると考えられる.
著者
Fahmy Adel Ramzy SINCHAISRI Neungpanich 宮田 正
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.665-672, 1991-11-20
被引用文献数
4

タイ国産コナガTL系統およびBK系統を用い, クロルフルアズロンで室内淘汰をし, クロルフルアズロンに対する抵抗性発達の程度をしらべた.クロルフルアズロンで14ないし15世代淘汰をしたところ, TL系統およびBK系統は無淘汰系統に比較し, それぞれ318および303の抵抗性比を示した.クロルフルアズロンに対する抵抗性比が200以上になった時点で, 他薬剤との交差抵抗性をしらべた.BK系統でテフルベンズロンが, TL系統でピリプロキシフェンが非常に弱い交差抵抗性を示した以外, 試験した殺虫剤はいずれもクロルフルアズロンに交差抵抗性を示さなかった.
著者
倉橋 良雄 新木 康夫 金原 太郎 PONTZEN Rolf 山口 勇
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.22-28, 1998-02-20
被引用文献数
8

カルプロパミド(ウィン^[○!R])はP. oryzaeやV. dahliaeなどの平面培養やいもち病菌の振とう培養での菌の色素沈着を強く抑制した.そしてそれらの野生株の培養物の抽出によって白色の結晶が単離された.薄層クロマトRf 0.36付近のスポットから得られた白色結晶の化学分析値は既に報告されているシタロンのデータとよく一致した.カルプロパミド10μg/mlを処理したそれらの培養物中には多量のシタロンと少量のバーメロンが蓄積したが, 2-ハイドロキシジュグロンは検出されなかった.P. oryzaeのアルビノ変異株(P_2-alb)の振とう培養にシタロンを加えると速やかに代謝され, その培養は薄い褐色となった.しかしその培養にあらかじめカルプロパミドを加えるとシタロンはあまり代謝されないで培地中に残った.P. oryzaeのアルビノ変異株(P_2-alb)の平面培養の菌叢先端に局所処理したシタロンとバーメロンは黒色色素に変換されたがその着色はカルプロパミドによって阻害された.これらの試験結果はカルプロパミドが菌類メラニン生合成においてシタロン及びバーメロンの脱水反応を阻害することを示唆している.