著者
井藤 和人 生嶋 隆博 巣山 弘介
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.51-54, 2003
被引用文献数
1

除草剤ザークD51(ダイムロン・ベンスルフロンメチル、ZD)および殺菌剤フジワンモンカット(イソプロチオラン・フルトラニル、MC)粉剤が水田土壌における微生物群集構造に及ぼす影響についてバイオログGNプレートを用いた室内実験により評価した。ZDは常用量の50倍の濃度においてもバイオログプレートの発色にかかわる微生物群集構造を変化させることはなかった。一方、MCは常用量では微生物群集構造に影響を及ぼさなかったが、50倍量では少なくとも4週間にわたりバイオログパターンを明確に変化させた。この時点においてバイオログプレートで測定した炭素源利用活性には影響が認められなかった。MCが微生物群集構造に及ぼす影響の大きさを評価するため、水田土壌の微生物群集構造に大きく影響を及ぼすことがこれまでに明らかにされている土壌の湛水による影響とMC(常用量の10倍の濃度)による影響の大きさとを比較した。MCを添加してから1週間後では土壌の湛水による影響の方が大きかったが、4週間後にはMCによる影響の方が大きかった。このように、農薬の影響による土壌微生物群集構造の変化の大きさと自然環境条件下における土壌微生物群集構造の変化の大きさを比較することにより、農薬が土壌微生物群集構造に及ぼす影響の大きさを評価することができると考えられた。
著者
辻 孝三 堀出 文男 美濃部 正夫 佐々木 正夫 白神 昇 広明 修
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.371-384, 1980-08-20
被引用文献数
1

スミチオンを空気中でDTA測定を行なうと(I)(150∿190℃), (II)(210∿235℃), (III)(270∿285℃)の3本の発熱ピークが観測される.一方窒素中では(II), (III)に相当する2本の発熱ピークが観測されるのみである.これらのピークは次のように同定された.ピーク(I) : 二酸化イオウガス発生を伴うスミオキソンの生成, ピーク(II) : S-メチルスミチオンからのジメチルサルファイドの発生とポリメタホスフェートの生成, ピーク(III) : フェノール環の炭化とジメチルサルファイド, ジメチルジサルファイドおよびエタンガスの発生.また, 193℃までスミチオンを加熱するとS-メチルスミチオンが生成するが, これに対応したDTAピークは観測されなかった.スミチオンと酸素の反応は拡散律速であり試料表面での反応が主である.スミオキソンの生成熱は170∿180 kcal/molである.
著者
アグロ カネショウ株式会社
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.433-438, 2001-11-20

アセキノシルは新規開発されたナフトキノン骨格の殺ダニ剤で, 各生育ステージのダニに対して速やかに活性を発現する.本剤はミトコンドリアの電子伝達系の酵素阻害により殺ダニ活性を示すが, その作用点が他の薬剤とは異なるため, 薬剤抵抗性ダニにも活性を示すことが確認されている.本剤の原体及び15%フロアブル製剤の安全性試験の結果, アセキノシル及び製剤は急性毒性, 並びに眼及び皮膚に対する刺激性が非常に弱く, 皮膚感作性もないことが確認された.また発がん性, 変異原性及び催奇形性は認められず, 繁殖性への影響もなかった.ラットに本剤を大量に経口投与した場合, 血液凝固時間の延長がみられた.アセキノシルの化学構造がビタミンKと似ていることから, アセキノシルを投与されたラット体内では, アセキノシルがビタミンK依存性血液凝固系に介在し, 血液凝固能の低下が誘発されると推測された.これらの変化はイヌには認められなかった.ここに要約した安全性試験結果に基づき, アセキノシルのADIは0.027mg/kg/dayに設定された.残留農薬基準はなす1ppm, きゅうり(含ガーキン)0.5ppm, すいか0.1ppm, メロン類0.1ppm, みかん0.2ppm, なつみかんの果実全体2ppm, レモン1ppm, その他のかんきつ1ppm, りんご1ppm, 日本なし2ppm, 西洋なし2ppm, すもも(含プルーン)1ppm, おうとう2ppm, ぶどう0.5ppmに設定された.本剤は, 農薬の一般的な安全使用上の注意事項を遵守して使用する限り作業者に対する安全性が高く, 有用な農業資材と考えられる.
著者
三井東圧化学株式会社精密化学品事業部農薬事業開発室
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.505-509, 1989-11-20
被引用文献数
2

各種毒性試験を実施し, エトフェンプロックスの安全性を評価した.本剤の急性毒性はきわめて弱く, 眼, 皮膚に対しても刺激性は見られなかった.慢性毒性, 発がん性試験の結果, おもな中毒的変化として高投与群における体重増加の抑制, 肝臓重量の増加, 尿細管の好塩基症および拡張(マウス), または肝臓細胞肥大(ラット)が見られたが, 発がん性は認められなかった.また, 繁殖性に対する影響および催奇形性は認められず, 変異原性もすべて陰性であった.エトフェンプロックスを有効成分とする農薬は, 昭和62年4月13日に農薬登録され, 登録保留基準値を0.1ppm(いも類, 豆類), 0.5ppm(米, 麦, 雑穀, てんさい), 2ppm(果実, ただし, なつみかんの外果皮を除く.野菜)10ppm(なつみかんの外果皮, 茶)と設定された.昭和62年の初上市以来, 有用な殺虫剤として好評を得ている.
著者
丸茂 晋吾
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.143-144, 1989-02-20
著者
高野 仁孝 小栗 幸男 加藤 寿郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.575-582, 1983-11-20

S-3308の抗菌作用機作について, トウモロコシ裸黒穂病菌(Ustilago maydis)を用いて検討した.本菌を液体培地で振とう培養すると小生子の状態で増殖するが, S-3308(2ppm)含有培地で培養すると小生子数および菌体乾重の増加は強く抑制され, 分岐やくびれなどの特有の形態変化が認められた.これらの形態異常は, 本菌にトリアリモールを処理したときのものと酷似していた.ところで本剤は, タンパク質および核酸の生合成にはほとんど影響を与えなかったが, 100ppm処理によって呼吸阻害を引き起こした.しかし本剤の抗菌活性は, 呼吸阻害が認められない低濃度区においても認められたことから, 呼吸阻害作用のみで本剤の抗菌性を説明することは困難と考えられた.一方本剤は, 2ppmで本菌のエルゴステロール生合成を強く阻害した.すなわち, 本剤処理によってエルゴステロールの相対量が低下し, その前駆体で14位にメチル基を有する24-メチレンジヒドロラノステロール, 14α-メチル-&lrtri;^<8, 24(28)>-エルゴスタジェノールおよびオブツシホリオールの蓄積が認められた.また, ^<14>C-アセテートの脂質画分への取込み実験においても, 同様の結果が得られたことから, 本剤の抗菌活性は, エルゴステロール生合成系における14位の脱メチル化反応の阻害に起因するものと考えられた.
著者
片岡 良太 高木 和広 榊原 風太
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.326-332, 2010
被引用文献数
1

好気的にエンドスルファンを分解するMortierella sp.W8とCml-45の2株を有機塩素系殺虫剤が残留している土壌から単離した。接合菌によるエンドスルファンの分解はこれまでに報告がない。本研究で単離した菌株は、25℃で28日間培養することにより、α-エンドスルファンを70%以上、β-エンドスルファンを50%以上分解した。毒性代謝物であるエンドスルファンスルフェートの発生は少量に抑えられ、エンドスルファンジオールの生成が確認された。さらに、エンドスルファンエーテル、エンドスルファンラクトンが代謝物として検出された。エンドスルファンスルフェートを初期基質にした分解試験を行ったところ、スルフェート体は分解できないことが確認された。また、本菌は土壌洗浄法を用いて単離された菌株であり、土壌中で菌糸体として存在していたことが示唆された。そのため、今後、エンドスルファン残留土壌のバイオレメディエーションに有望な菌株であると考えられる。
著者
内田 又左衛門 笠井 勉
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.553-558, 1980-11-20

殺菌剤ジアルキルジチオールアニリデンマロナート類の大阪(河内長野)土壌に対する25℃での吸着定数(K)は, メチル体の2.7からへプチル体の605まで変化した.アルキル鎖が長くなるにつれて, Kの値が増加した.そして, log K値は疎水性パラメータであるlog P(Pは1-オクタノール・水系での分配係数)と非常によく相関するので, これらの化合物の土壌への吸着過程は, 疎水的相互作用といえよう.土壌カラム中でのこれら化合物の移行性もアルキル鎖の変化に伴い, 規則的に増減した.そして, 土壌への吸着定数との間には, 非常に良好な負の相関性がみられ, 吸着性の著しい化合物の移行性は低かった.
著者
橘 邦隆 金子 邦夫
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.297-304, 1986-05-20
被引用文献数
1 3

Bialaphos, L-2-amino-4-[(hydroxy)(methyl) phosphinoyl] butyryl-L-alanyl-L-alanine, is a metabolite of Streptomyces hygroscopicus and the first herbicide produced by fermentation. Bialaphos acted on foliage and was effective against a wide range of weeds including perennials. Bialaphos was slower acting than paraquat, but faster than glyphosate. It controlled the regrowth of weeds longer than paraquat but shorter than glyphosate. Translocation of radioactivity in Rumex obtusifolius treated with ^<14>C-bialaphos was observed autoradiographically. Bialaphos did not affect emergence nor growth of crops through soil. Therefore, bialaphos is expected to be used widely for arable land including nontillage cultivation. Growth inhibition of pollen tube of Camellia japonica was recovered by the addition of glutamine. The result suggested that glutamine synthetase (L-glutamine : ammonia ligase (ADP), EC 6.3.1.2, GS) was inhibited in the pollen. Decrease of GS activity was observed in shoots of Echinochloa utilis OHWI treated with bialaphos. Decrease in glutamine content was observed in plant leaf treated with bialaphos, but it did not appear that the decrease was a main factor for the herbicidal activity. Ammonia content in plant leaf was observed to increase in four hr after the treatment and reached about 30 to 100 times higher than the control in 24 to 48 hr. The accumulation was not momentary, but maintained until the death of the plant. The high correlation between free ammonia content and herbicidal activity indicated that the toxicity of accumulated ammonia is the primary factor of herbicidal activity of bialaphos. The ammonia accumulation is considered to be a particular action of bialaphos in plants. More extensive use of microbial metabolites is expected by the fact that bialaphos was developed as a herbicide.
著者
呉 天基 王 一雄 陳 玉麟
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.195-200, 1991-05-20

室内実験において, 3種類のサトウキビ畑土壌中のイソウロンの分解は一次反応に従い, 各種条件下で半減期は42&acd;203日であった.分解速度と土壌の水分および温度との間に密接な関係がみられた.高圧殺菌土壌中の半減期(148&acd;203日)と非殺菌土壌中の半減期(58&acd;70日)から, 分解には土壌微生物が重要な役割を演じていることを示した.あるモデル圃場条件下で, 砂壌土中の半減期は約90日であった.オートラジオグラフとマススペクトルによって, 1種類の未知代謝物(VIII)のほかに, 6種類の分解生成物がそれぞれ3-(5-tert-butyl-3-isoxazolyl)-1-methylurea (II), 3-[5-(1, 1-dimethyl-2-hydroxyethyl)-3-isoxazolyl]-1, 1-dimethylurea (III), [3-(5-tert-butyl-3-isoxazolyl)] urea (IV), 3-[5-(1, 1-dimethyl-2-hydroxyethyl)]-1-methylurea (V), 3-[5-(1, 1-dimethyl-2-hydroxyethyl)-3-isoxazolyl] urea (VI), および3-amino-5-tert-butylisoxazole (VII)であると同定された.
著者
渡辺 哲郎 五十嵐 弘 松本 邦臣 関 誠夫 間瀬 定明 関沢 泰治
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.291-296, 1977-08-20
被引用文献数
11

新規なタイプのイネいもち病防除剤につき研究したところ有効なプロベナゾール(オリゼメート^[○!R], 3-allyloxy-1, 2-benzisothiazole-1, 1-dioxide)を水銀, 燐, 塩素を含まない物質として見いだした.本物質は400ppm液としてイネに散布することにより予防的効力を発揮する.またイネの根を経由する適用法であるところの土壌処理, 土壌灌注, 薬液への浸根あるいは水面施用のいずれによっても有効であった.とくに興味あることは根を通じての施用法の場合に10アール当たり200g以下というかなり少ない薬量で十分な薬効を発揮することである.このことは本物質がこれらの施用法による利用にきわめて適しているものと考えられた.これに反し母核である1, 2-benzisothiazole-1, 1-dioxideは散布法あるいは灌注法においてプロベナゾールよりはるかに劣り, 誘導体としたことによる有利性が認められた.なお, プロベナゾールの数種作物の生育に対する悪影響は各種施用ルートにより試験されたが, 実用上の薬量ではまったく認められなかった.
著者
武居 三郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.84-85, 2000-02-20
著者
小林 裕子 俣野 修身 後藤 真康
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.p449-453, 1984
被引用文献数
2

酢酸グアザチンguazatine triacetate [1, 1′-iminodi-(octamethylene)diguanidinium triacetate]はアルカリ溶液中において, りんごおよびぶどう中の成分に結合しやすい.そこで, りんごおよびぶどう中のどの成分に結合するかを検討した.その結果, フルクトースがグアザチンに結合する要因物質の一つであることが判明した.また, フルクトースのどの位置がグアザチンとの反応に関与しているかを検討した結果, C_1位およびC_2位における水酸基およびカルボニル基が関与していると推定できた.
著者
坂田 五常 牧野 健二 河村 保夫 猪飼 隆
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.61-67, 1985-02-20
被引用文献数
1

Ethyl 2-[4-(6-chloro-2-quinoxalinyloxy) phenoxy]-propanoate (code No. NCI-96683)は, 現在日産化学工業(株)によって開発中の新しい選択性除草剤である.これまで数種のheterocyclicoxy phenoxy propanoic acid誘導体が選択性除草剤として知られていた.本研究においてヘテロ環としてさまざまなベンゼン縮合ヘテロ環を探索合成した結果, quinoxalinyloxy phenoxy propanoic acid誘導体, とくにNCI-96683がすぐれたイネ科雑草に対する除草活性と広葉作物選択性を示すことを見いだした.これらの誘導体は合成原料として2-chloroquinoxaline誘導体とhydroquinoneおよびα-halogenopropanoic acid誘導体を用いて合成した.NCI-96683は, 大豆, 棉, 甜菜, なたねなどの広葉作物に薬害を示すことなく, イヌビエ, メヒシバ, オヒシバ, エノコログサ, オオクサキビ, カラスムギおよびセイバンモロコシなどに卓効を示した.圃場試験においては, 一年生イネ科雑草に対し0.05-0.15 kg a.i./ha, 多年生イネ科雑草では0.11-0.22 kg a.i./haで十分な除草効果が得られた.
著者
清田 洋正 小池 貴徳 東 栄美 佐藤 靖 折谷 隆之
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.96-99, 2001-02-20
被引用文献数
1

ジャスモン酸メチルは植物の成長抑制に働くアブシジン酸様の植物ホルモン様物質である.その代謝不活性化は, 11位或いは12位の水酸化から始まると推定されている.実際, 単離或いは合成された11-(或いは12-)水酸化体は不活性である.この代謝をブロックし, より高活性なアナログを開発する目的で, 11位のモノフルオロ置換体を設計した.合成(ラセミ体)は, 既に報告した12-OH体の合成経路に準じ, ノルボルネンを出発原料として用いて行った.鍵段階のフッ素化反応にはDASTを用いた.イネ芽生えの第二葉鞘伸長阻害試験では, このアナログはジャスモン酸メチルの約10分の1の活性であった.ハツカダイコン芽生えの根伸長阻害試験でも活性は弱かったが, 低濃度では逆に伸長を促進した.12-OH体も同様の効果を示すことが知られている.これらの結果から, 導入したC-F結合は, 望むC-H結合のミミックではなく, C-OH結合のミミックとして働き, 活性が低下したものと考えた.
著者
岡田 至 奥井 周子 関根 真波 高橋 洋治 福地 俊樹
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.69-73, 1992-02-20
被引用文献数
6

われわれは先にN-(4-tert-ブチルベンジル)-4-クロロ-3-エチル-1-メチルピラゾール-5-カルボキサミド(tebufenpyrad, Code No. MK-239, Pyranica^[○!R])が, 高い殺ダニ活性を有することを報告した.さらに高活性な化合物を目標に, 26種の二環式ピラゾール誘導体(IV)を合成し殺ダニ活性を試験したところ, シクロペンタン環を有する化合物が高活性であることを見いだした.その中で, N-(4-tert-ブチルベンジル)-2, 6-ジメチル-2, 4, 5, 6-テトラヒドロシクロペンタピラゾール-3-カルボキサミド(21)が最も高い活性を示し, テトラニカス属やパノニカス属のダニに対してMK-239に匹敵する活性を示した.
著者
関沢 純 大竹 千代子
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.295-300, 1992-11-20

農薬による人の健康と環境へのリスクを正しく評価することは重要である.問題の所在を知る上で, 農薬の永年にわたる使用量の変化, 現行の規制内容, 国際機関によるリスク評価の現況を知ることは大きな参考となる.著者の開発したデータベースを用いて国内で1975年から1990年(農薬年)において使用量の多かった41農薬について, 使用量の推移, 国際機関によるリスク評価の結果(FAO/WHO合同残留農薬委員会による一日許容摂取量の評価の概要など)と国内の規制状況(残留基準の有無など)を検討し, 今後必要と思われるリスク評価のニーズを指摘した.一例としてはDichloropropene, Chloropicrin, Methyl bromideなどくん蒸剤の使用量が増加しつつあり, 使用者への健康影響および生態系への影響の評価と管理が課題と考えられた.
著者
宮原 佳彦
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:21870365)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.218-223, 2013-08-20 (Released:2014-03-01)
参考文献数
6
著者
協和醗酵工業株式会社バイオケミカル事業本部バイオケミカル営業部農薬学術担当
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.201-205, 1998-05-20
被引用文献数
1

ホルクロルフェニュロンの安全性を評価するため, 各種毒性試験を実施した.急性毒性は原体, 製剤とも低く普通物相当であった.眼一次刺激性試験の結果, 原体に刺激性がみられたが, 洗眼により刺激は消失した.一方, 製剤では副成分中の有機溶媒によるものと考えられる強い刺激性が認められたが, これも洗眼することで大幅に刺激を軽減することができた.皮膚刺激については製剤で軽度の刺激がみられた程度で, 皮膚感作性は原体, 製剤とも陰性であった.亜急性毒性, 慢性毒性及び発がん性試験においてマウスの10, 000ppmの高用量群で, 腎臓毒性の持続による尿細管上皮の再生性増殖性病変が増加した.ラット及びイヌに腎臓障害は認められなかった.ラットによる繁殖試験及びラット, ウサギの催奇形性試験では特に異常はみられなかった.変異原性試験において染色体異常試験の代謝活性化法で0.4mM以上の濃度に染色体異常誘発性が認められたが, 復帰変異, DNA損傷試験及び小核試験ではすべて陰性で変異原性の誘起性はないものと推察された.薬理試験においてホルクロルフェニュロンの大量投与により, 中枢神経系及び消化器等に対して抑制的な作用がみられたが, きわめて大量投与による非特異的作用と考えられ, 通常の使用では本剤による中毒は発現しないと判断された.ホルクロルフェニュロンについては, 平成7年8月29日の残留農薬安全性評価委員会において, ADIが0.093mg/kgと設定された.