著者
宮本 セツ 宮本 雄一
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.79-84, 1971-12

1. モザイク斑紋を呈していたベラドンナから分離されたウイルス(glutinosa necrosis virus; GNV)(仮称)(宮本ら, 1965)は, 寄主範囲, 物理的性質, ウイルス粒子などからCMVに近いウイルスと推定された。このGNVをN. glutinosaに接種した場合, 植物の老若および環境温度にはほとんど関係なく, 常に接種葉に局部えそ斑(LL)を生じたのち頂端えそ(TN)となり, さらに全身えそ(SN)となって植物は枯死する。このようにLL⟶TN⟶SNと進行する現象の詳細と機構を知るために, N. glutinosaの葉位, 葉数, 部位などを変えてGNVを接種し, 頂葉部におけるえそ斑の発現様相, ウイルスの接種葉からの移行の時期とTN出現との関係, さらに頂葉部からのGNV回収可能時期とその濃度などについて1968年に行なった実験の結果をのべた。2. GNVをN. glutinosaに接種した場合, 接種葉のLLが水浸状に拡大, 褐変・癒合する時期(一般に接種後5∿7日)にTNが出現し始めた。このTNの発現は, 接種葉がより下位の場合, 接種葉数あるいは接種部分がより少い場合には多少遅れたが, 一般に時間の経過と共に頂葉部全体に拡大した。しかしこのTN発現の様相には常に1つの規則性が認められた。すなわちTN発現初期には, 接種後最初に出た+1葉あるいは+2葉および第2葉にTNが出現するが, 接種時に最も若く未展開であった第1葉へのえそ斑の出現は前記の葉より必らず遅く, 一般に頂葉部全体にえそ斑が拡大する時期まで遅延した。3. N. glutinosaの先端部を切除した個体にGNVを接種した結果, まず接種葉側の上下のわき芽にえそ斑が出て枯死させたのち, 反対側のわき芽にえそ斑が現われるのが常であった。4. GNV接種葉におけるLLの形態は, 葉位が上位の場合ほど輪郭が鮮明で, 下位になるほど不明瞭となりウイルス局所化の不完全さを示した。なおLLの出現数は, 上位葉より下位葉になるに従って増加する傾向が認められ, さらに下位葉では上位葉におけるより出現日が遅れた。5. N. glutinosaの第7葉にGNVを接種し, 接種66時間後にLLが出現し始める条件下においては, 接種72時間後には接種葉からGNVはその葉柄にすでに移行しており, その移行したウイルスのみによってTNをひき起こし, さらにSNとなって植物を枯死させることが, 接種葉切断実験で明らかとなった。すなわちTNの出現および拡大は, 接種後の初期の1時期に到達したウイルスのみで十分であり, それらが頂葉部で増殖・拡大するものと考えられる。6. N. glutinosaの第7葉にGNVを接種し, えそ斑発現の前段階の状態にある接種4日後の+1葉, および頂葉部に広くえそ斑が拡大した7日後における+1葉からGNVを回収した結果, 接種4日後には非常に低濃度で, また7日後にはかなり高濃度でこの+1葉中にウイルスが存在することが確かめられた。7. 以上の結果から次のことが結論される。1) GNVがN. glutinosaにおいてLL⟶TN⟶SNをひき起こす機構は, TMVがN. rusticaにおいて示す現象と同じタイプに属する。2) 接種時に未展開であった第1葉はTNになりにくい。3) LL形成初期にウイルスは既に葉柄に移行しており, そのウイルス量のみでTNおよびSNをひき起こすことができる。4) TNの最初に現われる葉と接種葉との葉序的関係は無視できないが, すべての場合にそれを関連づけることは困難である。
著者
東 順三 長沢 藤延
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.325-330, 1975

含有粘土の種類を異にする土壤における粒団生成の実態を明らかにする目的で, 前報のハロイサイト系人工土壤における粒団の造成実験に引続き, 本報ではモンモリロナイト系人工土壤(ベントナイト粘土・海砂・ガラス玉混合物)に腐植, アルミニウム, 鉄および土壤改良剤(アロン・ソイラック)を施用し, 前報と同様に, 湿潤と湿乾交代の二通りの条件下で1・3・6か月間インキュベートして粒団の造成実験を行った。1. モンモリロナイト系人工土壤においては無施用区にも少量の粒団が生じたから, 膨潤性で高い和水性と電荷を持つ粘土では極性の高い水で加湿されると粒子が相互に引き合ってゲル状に集合し, その一部が比較的強固に連結して耐水性になることがわかった。2. アルミニウム単用区は湿潤条件でインキュベートすると高い粒団生成効果を発揮した。しかし湿乾交代条件でインキュベートすると粒径の大きな粒団が形成されなかったから, アルミニウム単独による土粒連結は耐久性の低いことがわかった。3. 腐植単用区ではほとんど粒団生成が認められなかった。しかし腐植とアルミニウムとを併用すると, 両成分が複合して土粒間の連結に関与し, しかもこの粒団は耐久性が高く, 湿乾交代条件下においても注目すべき高い粒団生成効果を発揮した。4. 土壤改良剤のアロンとソイラックの粒団生成効果は中位程度であった。5. 鉄単用区では肉眼的にも特異な泥塊状の集合体を形成し, その粒団化度は中位で, アルミニウムのように高い粒団生成機能を持たないことがわかった。
著者
山本 博昭 山本 昇
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.467-475, 1985-01-31

本報では, 国内果樹園の地理条件, 栽植密度にできるだけ合致しうる小型で自走式の果実振動収穫機と捕果専用機を設計・試作し, それらの基本的な作動特性を明らかにした。1) 試作したリム・シェーカは, クローラ型走行部, スライダ・クランク機構を利用した振動発生部, 枝をつかむブームとクランプ部, クランプを任意の位置へ移行させる位置決め機構部及びエンジンと動力伝達部から構成され, 走行部以外はすべて油圧駆動とした。したがって, 振動数, 振幅も適宜変更することができ, 枝をにぎるきよう握力も調節が可能である。2) 本機は定格8馬力のエンジンを塔載したが, クランプシリンダ等のアクチュエータ作動に約3馬力の動力が消費され, 枝を加振するのに使用可能な限界動力は5馬力程度となる。また振動する枝の正味仕事量を求め, 油圧駆動系加振部の動力伝達効率を計算すると, その値は40%以下となった。したがって, ゆすられる枝の振動負荷が約2馬力を越すとエンジンの動力不足が生じ, 本試作機の加振可能な限界振動数は, 設定振幅20mmで約17Hz, 28mmで15Hz, 43mmで14Hzとなった。より高い加振振動数, 振幅を確保するためには, さらに高馬力のエンジンを塔載する必要がある。3) 試作したキャッチングフレームは, クローラ型走行台車の上に装着された円形捕果面を有し, 油圧揺動モータの作動により瞬時の開閉が可能となる。捕果面は, 中心から円周方向に18°の登り匂配を持ち, その面積は約7m^2と12.5m^2の2通りに変えることができる。4) 捕果面上の各点に加速度計を埋設した木球を落下させ, 衝突時の最大衝撃加速度, 反発率等を測定した。落下高さ1.2mの場合を例にとると, 捕果面上での最大加速度は10∿40gの範囲に分布し, 全般には捕果面を支持するアーム上に近づくほどその値は大きくなるが, 直接地面に落下させた値(硬い地表面で150g, 柔かい地表面で約100g)に対比すると高い緩衝効果が認められた。
著者
水野 進 寺井 弘文
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.235-240, 1979

現在, 果実の鮮度保持剤(エチレン吸収剤)として市販されている, GP, NGP, AP-1,V-2について, そのエチレン吸収能力を検討した結果, 普通の包装状態(湿大気状態)では, NGPおよびAP-1のみが, エチレン吸収剤としての効力をあらわし, AP-1が, エチレン吸収能力(吸収速度と許容量)で最もすぐれていた。また, エチレン吸収剤を, ポリエチレン密封と併用することにより, 袋内がCA状態にあると共に, 袋内エチレン除去が可能であり, 単なるポリエチレン密封よりも, 果肉軟化の抑制, 内容成分の保持, すなわち, 鮮度保持に効果が期待出来るのは明らかである。
著者
王子 善清 高 祖明 脇内 成昭 岡本 三郎 河本 正彦
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.291-296, 1984
被引用文献数
3

まず〔実験1〕として, 培養液中の亜硝酸塩(0∿10mM)が8種類の野菜の生育及び亜硝酸含量に及ぼす影響を調べた。次に〔実験2〕として, 青物市場より購入した野菜といわゆる"有機農業"により生産された野菜を供試して, それぞれの可食部の硝酸塩と亜硝酸塩の含量及び貯蔵中におけるころらの消長を比較調査した。〔実験1〕 : 亜硝酸塩の供給は一般に野菜の生育を低下させた。しかしキュウリとキャベツでは影響がなかった。亜硝酸毒性感受性はホウレンソウ>サラダナ>シュンギク>ダイコン>ニンジン>ハクサイの順であった。硝酸塩で生育させられた野菜には, 亜硝酸が検出されなかったが, 亜硝酸塩を与えられたものでは最高15ppm(生重当り)程度の亜硝酸態窒素が認められた。〔実験2〕 : 市場野菜及び有機農業野菜のいずれにおいても, 硝酸態窒素含量は種類によって著しい違いが認められた。葉菜類には特に多量蓄積した(300∿600ppm)。亜硝酸はすべての試料について検出されなかった。7℃暗所に貯蔵した場合, 硝酸態窒素含量に有意な変化が認められなかったし, また貯蔵中に亜硝酸態窒素が出現することもなかった。一般に市場野菜の硝酸態窒素含量が高かったが, ゴボウとダイコンでは有機農業野菜の方が高かった。以上より, 次のことが結論される。1) 亜硝酸塩が存在する培地中に生育した野菜には有害な亜硝酸が含まれている可能性が高いので, 食用に供する場合には, 特に注意が必要である。2) いわゆる"有機農業"により生産された野菜中にも相当な量の硝酸塩が含まれているので, 低硝酸塩野菜の生産のためには, 硝酸化成作用の抑制が必要である。
著者
永吉 照人
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.313-319, 1981-01-30

アクリルアミドゲル等電点電気泳動法を用い, 六倍種コムギTriticum aestivum cv. Chinese Springの各種異数性系統(nullisomics, nulli-tetrasomics, ditelosomics, penta-nullisomics)のアミラーゼアイソザイムを分離し, これらの示すザイモグラムの比較を試みた。この結果Chinese Springコムギdisomicsの発芽種子胚乳に存在するα-, β-および第三グループのアミラーゼアイソザイム22種のうち14種について, その発現に関与している染色体腕が明らかとなった。すなわち, α-アミラーゼに関してはα-3,α-5,α-6および, α-7の各アイソザイムはそれぞれ5B染色体長腕, 6D染色体β腕, 6A染色体β腕, および4A染色体β腕が関与していた。β-アミラーゼに関してはβ-1およびβ-3アイソザイムは, それぞれ4A染色体のβ腕および7D染色体の長腕が関与し, β-5,β-7およびβ-9の3種のアイソザイムは3D染色体の長腕が関与していた。第3グループアミラーゼに関しては, III-1およびIII-3アイソザイムは7A染色体の長腕が, III-2アイソザイムは7D染色体の長腕が関与していた。またIII-4およびIII-5の両アイソザイムは7B染色体の長腕が関与していた。
著者
岡山 高秀 今井 利憲 伊藤 和彦
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.157-161, 1986

食肉の鮮度を保持させる目的で, 牛肉ロース部を(1) 70%エチルアルコール(Et. al.), (2) 3% L-アスコルビン酸(AsA)を含む70% Et. al., (3) 0.08% DL-α-トコフェロール(Toc)を含む70% Et. al.及び(4) 3% AsAと0.08% Tocを含む70% Et. al.の各溶液に20秒間浸漬した後, 10秒間付着溶液を滴下させた。なお, 無処理試料を対照とした。各試料は400ml容プラスチック容器内に静置し, 4℃の暗所に保存した。3,6,9及び13日後に各試料のMetMb生成量, TBA number, pH値, 揮発性塩基態窒素(VBN)量, 生菌数及び残存AsA量を測定した。その結果, MetMb生成量は(1)試料と対照は7日目に20%に達したが, (2)と(4)試料は保存期間中15%以下を維持した。TBA numberも(1)試料と対照は保存中直線的に上昇した。一方, AsAを含む(2)と(4)試料は保存期間中ほとんどTBAnumberは増加しなかった。VBN量は対照を除くすべての試料は保存期間中比較的低い値を示した。生菌数(Log/g)について対照は9日目に6.7に達したが, 他の試料は13日後も6.4∿6.8の範囲であった。(2)と(4)試料中の総及び還元型AsA量は保存期間中減少傾向を示したが, 13日後においても還元型AsAのわずかな存在が認められた。以上の検討からAsAを含むEt. al.への浸漬処理は生肉の保存性をかなり延長させることが示唆された。
著者
岡山 高秀
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.333-337, 1984

小売用牛肉のガス充填包装に最も適したガス組成を見いだす目的で, 牛肉もも部を(1) 20%CO_2+40%O_2+40%N_2,(2) 20%CO_2+80%N_2,(3) 80%CO_2+20%O_2さらに(4)真空及び(5)空気(対照)環境下に4℃で13日間保存を行い, ガス組成, MetMb生成量, TBA値及びpHの変化を測定した。その結果, 各ガス充填試料は保存13日後も食用に適したが, 対照は9日目, 真空包装試料は13日後には明確な腐敗現象を示した。ガス組成(1)と(2)は保存期間中各ガス組成の変化は±2%以内に保持された。しかし, ガス組成(3)には6.6%N_2の混入が認められた。MetMb生成量はガス組成(1)試料は保存期間中低く13日後においても約20%であった。ガス組成(2)は保存9日目までMetMbは直線的に増加し約75%となったが, 13日後には40%以下へと減少した。ガス組成(3)試料は3日目までほとんどMetMbは生成せず, その後増加し13日後には約60%に達した。TBA値は対照及びO_2を含む試料(1)と(3)で比較的高く, 真空及びガス組成(2)試料において低い値が得られた。pHはすべての試料とも保存3日目には低下し, その後対照と真空包装試料は上昇したが, ガス組成(1)の13日後を除いて各ガス組成下の試料は保存期間中低いpHを維持した。以上の結果から, 牛肉のガス充填包装に関して6日以内の保存には真空包装で十分であり, 13日間以上の保存の場合は20%CO_2+80%N_2が有効であることが示唆された。
著者
前川 進
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.199-204, 1975
被引用文献数
1

紫外線や光の強さがカーネーションの生育や花色の発現にどのように影響するかを知るために, 'ショッキング・ピンク・シム'及び'イルミネーター'を用いて紫外線吸収フィルムや黒寒冷しや被覆下で実験を行った。1. 被覆フィルムの紫外線透過の良否によって, アントシアン生成量はほとんど影響されなかった。2. 黒寒冷しや被覆による低照度のもとで, 葉, 花弁及で花冠はいずれも小さくなり, 特に, 茎が細くなるのが目立った。3. アントシアン生成量はしゃ光しない高照度下のものに比べ, 低照度のもとで少なかった。その程度は, イルミネーターの場合に著しかった。4. 花弁の表色はアントシアン生成量と関係が深く, 低照度下で退色が認められた。また, 高照度下での花弁は低照度のものよりやや黄色味が強かった。5. 葉ならびに花弁中の直接還元糖, 非還元糖及び粗殿粉含量は低照度のもとでいずれも少なかった。なお, 還元糖は葉より花弁中に多量に含まれた。
著者
松井 範義 上山 泰 水野 進
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.p341-347, 1981-01

牧草を, 天日で能率的な乾燥をするため, ビニールハウス内で切断処理別, 草量差別の乾燥試験を行った。同じ条件で露地乾燥を併行し両者を比較検討した。1. ビニールハウス内乾燥は露地乾燥に比し, 乾燥速度が速く, 初夏には貯蔵に耐え得る乾草を得ることが出来た。平均乾減率は試験全期を通じて露地乾燥より, ハウス内乾燥の方が高く能率的である。2. 乾燥速度促進のための処理としては, 牧草を出来るだけ短かく切断, 又はフレール型のモアーで打砕処理すると効用が高い。他方, 面積当りの草量は少ない程乾燥速度が速くなる。3. ビニールハウス内の温度は, 日中外気温に比し10℃以上高く乾燥に効果的である。しかし夜間の気温は低いため効果は皆無である。
著者
速水 敦子 三十尾 修司 松林 元一
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.43-53, 1984

本研究では, andigenaバレイショ(2n=48)とその近縁2倍種S. rybinii (2n=24)を用い, 生長点培養における幼植物の分化効率に影響をもつと考えられる若干の要因を検討し, あわせてその培養によって得られた植物のウイルス無毒化率を調べた。その結果を要約すると次の如くである。1) 成体植物, 自然萌芽及び冷蔵萌芽の生長点組織における幼植物分化頻度は, それぞれ13.7%, 30.0%及び78.3%であった。2) 2層の葉原基をもつ約0.5mmの生長点組織の方が, 1層の葉原基をもつ約0.3mmのものより, 約17%高い幼植物分化頻度を示した。3) 生長物質無添加, BA10ppm, IAA1ppm及びBA10ppm+IAA1ppm+GA_310ppm各添加区における幼植物分化頻度は, andigenaとS. rybiniiの場合を平均して, それぞれ25.4%, 14.2%, 47.6%及び36.3%であった。また, 茎葉と根の両方を分化し, その後の生育も良好な個体の頻度は, 上記4実験区で, それぞれ1.3%, 0%, 8.0%及び26.5%であった。したがって, 分化後の幼植物の生育を考慮に入れると, BA及びIAAのほかにGA_3の添加が必要と考えられる。4) S. rybiniiは重度の罹病株であったにもかかわらず, その幼植物分化頻度は37.5%で, 軽度の罹病株であったandigenaの22.4%より高い値を示した。5) 生長点由来植物のウイルス無毒化率は, 0.5mmの生長点を用いた場合が90.9%, 0.3mmのそれを用いた場合が, 100%であった。しかし, 幼植物の分化頻度を考慮に入れてウイルス無毒化植物の育成率を算定すると, 前者が39.5%, 後者が26.1%となる。なお, この無毒化率と他の要因すなわち供試植物の生育段階及び生長物質の培地添加量比との間には明らかな関係は認められなかった。