- 著者
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矢島 伸男
- 出版者
- 日本笑い学会
- 雑誌
- 笑い学研究
- 巻号頁・発行日
- no.20, pp.83-95, 2013-08-31
本稿は、学校教育における笑いの導入に確かな正当性を持たせ、かつ、導入に関しての注意点を明らかにする思いから、笑いが持つ同義性を中心に考察した.笑いがもつあらゆる両義性のうち、学校教育から疎まれる性質を持つものは、【協調⇔対立】、【創造⇔破壊】、【更生⇔堕落】の3つであると考えられる。望ましくない笑いが持つ【対立】【破壊】【堕落】の属性に陥る危険性を冒してもなお、望ましい笑いが持つ【協調】【創造】【更生】の属性の教育的可能性は捨てきれない。笑いの可能性を支持する教育者にとっては、笑いの同義性について深く理解をしてもらった上で、「笑いは決して万能ではない」との自覚を持ってもらいたい。ともあれ、「教育者の温かい人間的な善意]があればこそ、学校教育にとって笑いは望ましいものであり続ける。笑いを安易に用いることなく、適切な用法を持って子どもと接することが、教育者にとって大切なのではないだろうか。