著者
江口 恭三 岡 克
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.45-50, 1966

栽培品種ヒックス・ブロードリーフから葉数の4~5枚多い低度多葉型個体を選抜し,育成固定をはかったが,固定系統が得られなかったので,その遺伝的原因を研究し,つぎのことを明らかにした。1)低度多葉型個体の自殖次代または通常品種との交雑次代において,普通型個体と多葉型個体とがそれぞれ1:2または1:1の割合に単性遺伝の分離を示した。2)多葉型個体は普通品種より高度の短日性を示す劣性遺伝子をもつヘテロ型であり,劣性ホモ個体は出現しなかった。3)劣性ホモ個体は接合体致死作用により不稔種子と在り枯死しているものと考えられた。4)接合体致死作用は劣性の短日性遺伝子がホモの場合にのみ認められ,両者はきわめて密接な関連をもっていた。
著者
高品 善 今西 茂 江頭 宏昌
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-37, 1997-03-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1

トマトの野生種 'peruvianum-complex'に属する Lycopersicon peruvianum の5系統, L. peruvianum var. humifusum の2系統,L. chilenseの2系統を花粉親とし,栽培種2品種を種子親とするF1雑種およびF1を花粉親とするB1F1戻し交雑種を胚珠選抜法によって育成した。F1およびB1F1の獲得効率は果実あたり発芽数(GOF)により評価した。F1および1994年と1995年のB1F1についてGOFの栽培品種間の相関係数を求め,さらに,それらを組み合わせた相関係数を求めたところ,正の有意な値となった(r=0,750**,d.f.=11)。年次問においても組み合わせた相関係数は有意な正の高い値となった(r=0,907^*,d.f.=3)。F1とB1F1間の相関係数は,2栽培品種とも正であるが有意ではなく,組み合わせた相関係数も有意にはならなかった(r=0,433,d.f.=3)。しかし,供試した系統の中で1系統がF1とB1F1間で全く異なるGOFを示したので,この系統を除くと,F1とB1F1の間に正の有意な相関係数が得られた(強力大型東光:r=O.754*, d.f.=5;Early Pink:r=O.924*,d.f.=3)。相関係数に関するこれらの結果は,栽培種に対する野生種の交雑不親和性に関して野生種系統間で差があり,さらにB1F1の獲得において野生種の各系統の交雑不親和性がF1の場合と同じように現れることを示している。供試した系統の交雑不親和性を3グループに分けるとおおよそ次のようになった。最も高いグループに L. peruvianum var. humifusumの2系統が入っており,中間のグループの全てはL. peruvianumであった。最も交雑不親和性の低いグループはL. chilenseの2系統であった。一方,F1とB1F1の回帰直線は,Y(B1Fl)=O.1082X (F1)+ 0.3364:強力大型東光, Y=O.1054X + O.0366:Early Pinkとなった。この結果から,予想に反してB1F1の獲得効率がF1よりも小さいことが推察された。
著者
武田 和義
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.75-88, 1989-03-01
被引用文献数
1

くびれ米を発生し易いL-45×アキミノリのF_2集団を青森から沖縄に至る14の地域で栽培したところ,くびれ米歩合の集団平均値は1.5〜58.3%の変異を示し,各地域における豊熟初期の温度と密接な負の相関々係にあった.このF_2集団と後代のF_9系統群を平均20℃の制御環境下で登熟させたところ,穎(Cl)と子房(Tl)の長さのアンバランス(Tl/Cl)とくびれ米歩合の相関は密接であり,子房の本来の長さが穎に比べて長すぎることによって,くびれ米が発生するとみられた.その後代の固定系統を様々な環境で栽培したところ,Tlが豊熟初期の温度と密接な負の関係にある反面,Clは出穂後の温度の影響を受けないために,Tl/Clが豊熟初期の温度によって変動し,それに伴ってくびれ米歩合が変化するという環境的な因果関係が明らかにされた.
著者
今西 茂 松本 麻子 松本 麻子
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.405-412, 1994-12-01
被引用文献数
3

トマト(Lycopersion esculentumとナス属野生種(Solonum lycopersicoides)の稔性ある体細胞雑種を育成する目的で,トマト栽培種大型瑞光とS. LycopersionのLA2386の葉肉プロトプラストを電気融合法によって融合させた.融合に先立ち,体細胞雑種を選抜するための処理として,ヨードアセトアミド(IOA)処理を行い,トマトプロトプラストを部分的に不活性化した.融合後,プロトプラストをS. Lycopersioプロトプラストがカルス形成できない修正TM2(MTM2)培地で培賛した.体細胞雑種(推定)はトマトプロトプラスト由来カルスが苗条形成できないMS3ZG培地から苗条を形成させることができた.最終的に,約300個体の体細胞雑種(推定)を柚物体にまで育成した.植物体の雑種性はまず形態観察及びアイソザイム分析によって判定した.形態観察では,全ての植物が雑種性を示す生長をし.各々の親の特徴を示す形態を表した.長い節間を持つ直立性の茎はトマトのもつ特徴であり,長い開花迄日数,多年性,ナス型の菊筒はS. lycopersicoides)の特徴であった.葉縁,花序,花弁,栗色は両親の中間を示した.
著者
斎藤 彰 矢野 昌裕 岸本 直己 中川原 捷洋 吉村 淳 斎藤 浩二 久原 哲 鵜飼 保雄 河瀬 真琴 長峰 司 吉村 智美 出田 収 大沢 良 早野 由里子 岩田 伸夫 杉浦 巳代治
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.665-670, 1991-12-01
被引用文献数
23 92

Restriction Fragment Length Polymorphism(RFLP)法を用いて,主にインド型イネ,Kasalathと日本型イネ,遺伝子標識系統FL134の間でRFLPを示すDNA断片を検索し両品種を親とするF_2集団144個体の分離調査から,遺伝子連鎖地図を作成した.この地図の全長は1,836cMであり,従来の形態,生理-生化学的遺伝子地図(木下1990)及びこれまでに発表されているRFLP地図(McCOUCH et al1988)よりそれぞれ58.5%および32.2%長い.従って,これらのRFLP・DNAマーカーを用いてすでにマップされている遺伝子や末だマップされていない遺伝子を今後効率的に,正確にマップできると推定された.
著者
関山 太 山県 弘忠
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.p146-151, 1976-06

水稲パーオキシダーゼザイモグラムの器官特異性を検出する目的で,4種類のポリアクリルアミドゲル電気泳動法を比較検討した。このうち垂直カラムによる焦点電気泳動法が優れていたが,市販の泳動分析装置てばアイソエンザイムの分離が不十分であった。そこで著者らは新しくユニット式ポリアクリルアミドゲルカラム電気泳動装置(U-タイプ)を作製した。U-タイプは6本のゲルカラム用ガラス管,これらガラス管を支える上下2枚の支持板,上部および下部電極,支持板と上部電極を支える左右2本の支持棒,および泳動距離の調節装置などから成り,外径10mm以下,長さ50〜200m?のガラス管を泳動目的に合わせて選定できること,泳動途中でゲルカラム毎に通電の中断あるいは開始ができること(ユニット配列),さらに泳動に必要な電極液の量が陽極0.25〜0.6ml(カラム直径3〜5mmの場合),陰極20mlと少量でよいことなどの利点を有する。水稲品種銀坊主の第1.3葉令期(第2葉がその全長の約3分の1まで伸長した時期)の植物体を供試し,U-タイプにより直径3mm,長さ150mmのゲルカラムを用いて泳動し,多数の明瞭なバンドから成る安定なザイモグラムを得た。これら36種の泳動条件を比較した結果,最適泳動条件は電圧が10V/cm,泳動時間が16〜18時間,電極液濃度が0.8%V/V(P)〜2.2%V/V(T)あるいは1.2%V/V(P)〜3.3%V/V(T)であった。
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.195-200, 1996-06

種苗法第12条4・第1項の規定に基づき登録された品種は農林水産省より告示・通達されている.新しく通達された品種について,種苗課の了解を得てその内容の一部を抜粋して紹介する.なお,農林水産省試験研究機関および指定試験で育成された農林登録品種については本誌上で若干くわしく紹介されているので,ここでは登録番号,作物名:品種名,育成地を記すに止める.記載の順序は登録番号・作物名:品種名,特性の概要,登録者(住所):育成者氏名とし,登録者の住所は公的機関については省略し,その他は各号の初めに現れる場合にのみ記載し,登録者と育成者が一致する場合は登録者のみを記載することとする.六号では平成7年3月9日(第4289号〜4348号)及び平成7年3月15日(第4349号〜4408号)に登録された品種を紹介する
著者
加藤 正弘 上堂 秀一郎 田中 孝
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.475-484, 1990-12-01
被引用文献数
2

自然複二倍体のアビシニアガラシ(Brassica carinata BRAUN 2n=34)にブロッコリー(B.oleracea L.var.italica PLENCK 2n=18)を連続戻し交配して,B_2世代においてB. carinata細胞質を持つ2n=18を作出した.このB. carinata細胞質を持つB_2個体と正常細胞質のブロッコリーとの間で正逆交雑を行い,B. carinata細胞質がブロッコリーに及ぼす影響を調査した.連続戻し交配過程における種子稔性は,染色体数が2n=18に近づくにつれ指数関数的に高くなった.またその過程に現われた花形の変化および雄性不稔性はブロッコリーとの正逆交雑からBrassica carinata細胞質の影響と推定された.両細胞質系統を比較した結果,B. carinata細胞質の個体は正常細胞質の個体よつ,光合成速度,クロロフィル含量などが低下していることが確認された.さらに,寒波による低温(-5〜-6℃,約8時間)に遭遇し,甚だしい寒害が認められ,Cゲノム種がもつ耐寒性の核内遺伝子は異質細胞質のもとでは充分機能し得ないことが分かった.
著者
志村 喬 稲葉 豊年
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.205-213, 1953-06-30 (Released:2008-05-16)
参考文献数
19
被引用文献数
1

1. Several morphologicai and physiological characters of triploid varieties were compared with diploids. 2. There was no clear difference on the leaf size and shape between triploids and diploids, but triploid leaves were thicker than those of diploids. As a rule every internal tissue of triploid leaves was thicker than diploids. It is evident that triploid leaves had larger stomatas of which the distribution density vias lower, compared with diploids. 3. No difference between both the plants could be recognized on the res.istance to brown blight total nitrogen and tannin content in suminer, the reduced form vitamin C content in winter, and regeneration power in cutting. Triploid varieties was more hardy to cold, and some of them had extremely early growing spring bud. The water reserving ability of triploid leaves isolated from stem was greater than that of diploids in September, but the relation changed to be indifferent. in December. 4. Generally triploid fertility was very low but the difference of fertility between each triploid variety was noticed. The pollen grains of triploids showed high sterility. 5. From progenies of triploids, we discovered one aneuploid plant (2n=44). The characters were same like those of triploids and the meio. sis was proceeded abnormally. 6. With colchicine treatment to the growing point of germinated seeds, some tetraploid plants (2ri=60) were obtained. At present, tetraploid plants are growing slowly and they have, dwarf form.
著者
小川 紹文 山元 剛 KHUSH Gurdev S. 苗 東花
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.523-529, 1991-09-01
被引用文献数
5

イネ白葉枯病抵抗性に関する研究は主に日本と国際稲研究所(IRRI),フィリピンで行われてきたが,植物防疫上病菌の相互交換が行えなかったため,両国のみならず各国のイネ白菜枯病抵抗性に関する研究結果は相互に比較検討出来なかった.このため,日本農林水産省とIRRIはイネ白菜枯病抵抗性に関する研究の相互比較を行うと共にその共通基盤を作成するため,1982年に共同研究を開始した.すなわち,日本とIRRIの判別品種をフィリピン産及び日本産白菜枯病菌レースを用いて分析し,抵抗性遺伝子を一つずつもつ準同質遺伝子系統の育成をして,イネ白菜枯病菌レースの国際判別品種を確立することとした.その結果,1987年に準同質遺伝子系統の一組が育成され(OGAWA et al.1988),最近その準同質遺伝子系統を供試した研究結果も公表され始めた.このため,その準同質遺伝子系統の育成経過とその育成主体を明らかにするため本報告を行った.
著者
加藤 鎌司 山下 俊二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.475-484, 1991-09-01
被引用文献数
6

コムギの出穂期は日長反応性,低温要求性及び純粋早晩性の3要因によって決定される複合形質であるから,その育種に際してはこれら3要因が出穂期にどのように関与しているかを明らかにする必要がある.またこのためには各要因を他の要因と切っ離して評価する必要がある.そこで研究では,日長反応性の評価法について検討するとともに,秋播き栽培したコムギ品種の圃場出穂期と上記3要因との関係を検討した.在来コムギ158品種(Tab1e1)を供試し,高知大学附属農場に1983年11月15日に播種し,出穂期を調査した.また全日長条件下での催芽後止葉展開迄日数(Dof)を一定値にする最短の低温処理期間によって低温要求性を評価した.純粋早晩性及び日長反応性の調査に際しては,低温処理により完全に春化した後12時間及び24時間の両日長条件で栽培し,24時間日長条件下でのDofにより純粋早晩性を,また日長の違いによるDofの変化により日長反応性を評価した.なお,後者のための指標として長・短日条件下でのDofの差及び比の2種類を用いた.出穂期には4月13日〜5月18日の,低温要求性にはO日〜80日の,そして純粋早晩性には27.6日〜49.8日の品種問変異が,それぞれ存在することが明らかになった(Fig.3).また日長反応性については,10.3日〜103.1日(差),もしくは!.30〜3.51(比)の品種間変異が認められた(Fig.3).
著者
笹原 健夫 五十嵐 弘
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.495-498, 1989-12-01
被引用文献数
2

澱粉無添加区および澱粉を10,20,30,83,167gを加えた6区の還元状態の異なる土壌におけるイネの3生態種の平均出芽率および初期生長の差異を検討した.3生態種の平均出芽率および初期生長とも土壌がある程度還元状態になった状態(20g澱粉添加区)で最大値を示し,還元がさらに進行するように澱粉を加えた区で減少した.20g澱粉添加区で,どの生態種の平均出芽率および初期生長も高い値を示したのは,2-5%の酸素分圧でイネの出芽率が高まること(野口,1937;VLAMIS and DAVIS,1943)と関係していると推察される.どの澱粉添加区でも,日本型品種はインド型およびジャワ型品種よりも高い平均出芽率を示した.なお,ジャワ型品種は日本型品種およびインド型品種の中間の平均出芽率を示した.ジャワ型船種およびインド型品種より日本型品種の還元抵抗性が高いのは,日本型品種が長期にわたって水苗代の還元土壌へ播種されてきたことに対する適応によると推察した.異なる還元土壌での草丈の変動は,生態種間で差異がみられなかった.
著者
Hsan Sai Aung 重永 昌二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-12, 1990-03-01

本研究はライコムギに出現する分枝穂の型と出現頻度が,遺伝的背景や播種時期の違いによりどのように影響されるかを明らかにしようとしたものである.八倍体ライコムギ!系統と六倍体ライコムギ11品種・系統(Table1)を,5回の異なる播種期により栽培し,その結果出現した分枝穂の種類と頻度を調査した(Table2).分枝穂の種類は,穂軸分枝による分枝穂と小穂軸異常による分枝小穂に大別され,前者にはHay-fork形分枝穂,Y-fork形分枝穂,および止葉節分枝穂が見られた(Fig.1).また後者では出現部位を穂の基部,中央部,および先端部に分けて記録したが,基部に出現する分枝小穂の頻度が高く(Table2う,バナナ形双生小穂,対面双生小穂,密生分枝小穂,輪生小穂,角穂分枝小穂等の分枝小穂が出現した(Fig.1).分枝穂の多くは正常穂よつも一穏当たり小穂数および小花数が優り,着粒数が優っていたものは4品種・系統,劣っていたものは3品種であった(Table3).分枝穂の播種期別出現頻度は9月10日播種の場合が最も高く,2月13日および10月13日播種がこれに次ぎ,11月23日,12月24日播種の場合は低かった(Table2).9月播種の場合は幼穂形成期の日平均気温が約5℃の低温になること,2月および10月播種の場合もほぼ同程度の低温に幼穂形成期が遭遇すること(Fig.2)が分枝穂出現頻度を高くする原因の一つと考えられる.分枝穂の出現頻度は品種や系統により異なり,八倍体系統は六倍体系統よりもその頻度が高かった.また六倍体の4品種にはどの播種期の場合も分枝穂が出現しなかった.これらのことから,ライコムギには幼穂形成期の低温に遭遇することによって分枝穂を形成し易い遺伝的背景をもつものと,それをもたないものとが存在するように考えられた.しかし染色体構成や細胞質の違いと分枝穂の型および出現頻度との間には明瞭な関係は見いだせなかった.
著者
明石 良 足立 泰二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.85-93, 1991-03-01
被引用文献数
1 15

一般にアポミクシス草種と言われているギニアグラス(Panicum maximum Jacq.)は,系統及びその遺伝子型によってアポミクシ又の程度を異にする.本報ではギニアグラスの未熟胚カルスから,高頻度に体細胞不定月三(SE)を形成した結果を示す.また,供試した品種および系統間に差異が認められ,アポミクシスとの関連についても検討を加えた.本実験で用いたギニアグラスは,農業生物資源研究所植物分類評価研究チーム囲場(宮崎市霧島)で保存中のもので,3保存品種及び9系統の計12genotypeを使用した(Table 1).滅菌した豊熟巾の種子から,O.5〜1.0mmの未熟胚を摘出し1Omg・1^-1,4-D,10%CW,O.8%Agarを添加したMS培地により25℃暗黒条件下で培養した(Fig 2).培養30〜40日後,カルスの上部に形成されたSEは解剖顕微鏡下で切り離し,さらにMS培地(1mg・1^-12,4-D,5%CW,0.2%Gelrite)で継代培養を行なった.またSEの発育促進のために1.0mg・1^-1Kinetinと1,Omg・1^-1GA3及び5%CW添加のMS培地に置床した(Fig.3).カルスは,培養後3〜5日目頃,胚の中央部分から形成され,その多くは透明なやわらかいカルスであった.しかし,その後,培養15日目頃には摘出胚の胚盤または中央部に相当する部分から白色でコンパクトなカルスが出現し始め,40日目には,カルスの.上部一面に形成された.さらに培養を重ねるにつれて,それらは突起状の不定胚構造を呈した(Fig 1).品種Petrie及ぴGattonでは,SEの形成卒が他の未熟胚よりも高かったのに対し,S67及びN68/96-8-o 1Oでは低く,N68/84-1-o 8では全く得られなかった(Table1).これらのSEを個別に分離して上述の発芽促進培地に置床したところ,Petrie,Gatton及びNatsuyutakaの3品種からは高頻度で植物体を誘導することができ,SEの形成卒と植物体再分化との間には品種及び系統間で顕著な差が認められた.そこでSE形成卒とアポミクシス程度との関係について調査を行なった(Fig.4).これによると本実験で供試したギニアグラスはSEの形成卒とアポミクシス程度によって3つのグループに分けることができ,その中でもPetrie及びGattonはSE形成卒が高く,さらにはアポミクシスの程度も商い値を示していることが判明した.